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闘神伝とうしんでんURA


プラットフォームセガサターン
開発ネクステック
発売タカラ
発売年月日1996年 9月
ジャンルアクション
プレイ人数1〜2人
セーブデータなし(セーブ機能がない)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
奇怪 不明瞭 非常に粗いが、
その分動きはマシ
「2」と同様 やったもん勝ち 独自要素多し





※※※ 今回はかなり大目のネタバレを含みます。 ※※※


・ゲーム概要

 1996年に発売された、セガサターン版闘神伝の第2弾。
 本作は「闘神伝2」を元にオリジナルストーリー・キャラクターを加えて移植された内容となっており、「列伝」モードを搭載した微妙な 前作「闘神伝S」と同様、物語に対して力を入れていることが伺える。
 格闘部分がイマイチだった「闘神伝S」の続編が格闘バランスが大胆である「闘神伝2」の移植・・・となれば、もう絶対にマトモなことにはならない気がするが、その予想はもっと悪い方向へ裏切られることとなった。

 なお、本作は「S」、「2plus」に存在していたセーブ機能を失っているうえ、パッケージのジャンル欄には「アクション」と記載されているなど、既になんかもう不安な雰囲気をかもし出している。


・ストーリー

 現在、世界中で格闘家を中心とした猟奇殺人事件が頻発している。
 鋭利な刃物で標的を斬殺し、目撃者はたとえ女、子どもであろうと抹殺。犯人の正体はおろか動機、目的さえ不明・・・という不気味な事件である。
 が、インターポールはこれら一連の犯行が半年前に起こった「闘神兵計画強奪事件」に端を発する物と断定していた。
 インターポールが犯罪防止のために研究を重ねていた戦闘用人造人間「闘神兵」。
 一人の科学者によって偶発的に完成した第1号は科学者の上司「ヴェルト=ロットバイラー(ボルフ)」によって強奪されており、今回の事件は闘神兵の完成に必要な「死闘データ」の収集が目的である・・・として極秘裏に調査が進められていたのであった。

 そんな中、一連の事件に「兄」の姿を感じ取っていたエイジ。
 独自に事件を追っていたエイジであったが、突如。「リッパー」なる人物に襲われ、まさかの敗北を喫してしまう。
 「次は、殺す
 去り際に放たれたその言葉・・・エイジは新たな戦いへと闘志を燃やしていた。
 「猟奇殺人事件」を探る者、「闘神兵」を追う者、リベンジへと燃える者・・・。
 それぞれの運命の糸は今、さらなる死闘へと向かってもつれ始めるのであった・・・。


 と、おおまかにはこんな感じである。

 が、本作には前作の「列伝モード」のようなストーリーを語るモードが存在せず、攻略本の類も出版されていないため、プレイヤーはパッケージ、説明書、オープニング、エンディング、のみからストーリーを判断することとなる。
 ところがそのエンディングというのがなんとも・・・。
 ・・・まぁ、まずは本作で追加されたキャラクターたちから見てゆくことにしよう。


・新キャラクター

 本作で新たに追加されたキャラクターは、「リッパー」、「ロンロン」、「ボルフ」、そして「闘神兵」の4人だ。
 既存キャラクターと合わせれば15人となるのだが、パッケージではボス・隠しキャラクターを除いてか「11人の闘士」として紹介されているのが少々もったいない。


 ・リッパー
 パッケージでもでかでかと紹介されている本作の看板キャラ。武器は「カタール型サバイバルナイフ」(ジャマダハル)で、キャッチコピーは「戦慄の復讐鬼」。
 タイトルの「URA」は「アルティメット・リベンジ・アタック」の略であり、本作はいわばリッパーの復讐劇を描いた内容であるわけだ。

 が、エンディングまで遊んでみても誰に復讐したかったのかさっぱりわからない

 数少ない情報としては「闘神兵を追っている」、「スタッフロールにおいてリッパーの影が前作の「クピードー」となっている」、究極宝技の名前が「カッティングエイジ」・・・などといったヒントがあり、エイジ、ショウ、クピードーあたりが怪しく思えるが・・・。
 結局、後の「闘神伝カードクエスト」でクピードーの双子の弟であり、「闘神伝S」後に行方不明となった姉の敵を討とうとしているのでは・・・ということが明かされたものの、その敵が誰なのかは現在まで不明のままである

 性能面を見ると、各技のリーチこそ短いものの突進技が充実している中〜近距離タイプ。
 中でも特に逆波動コマンドの多段ヒット突進技「ライトニングスティンガー2」の性能がズバ抜けており、綺麗にヒットすれば4割ほど持っていく高威力。
 だがこの技の真の恐ろしさは通常投げのダウンを拾えることにあり、タイミングこそシビアだが「通常投げ→ライトニングスティンガー2」だけで7割強いただけるのは少々ブッ壊れてると言わざるを得ない
 このコンボ後、投げでダウンするはずだった相手は強制的に立ち状態となる。そのためボヤボヤしてるともう一度投げが決まり・・・。
 後は、ご想像にお任せしたい・・・。


 ・ロンロン
 本作の問題児。武器は「ハンマー型スタンガン」で、キャッチコピーは「天才科学者」。
 「闘神兵」を完成させた科学者であり、研究の成果を奪われたことに対して「著作権の侵害よ!」、「甘っちょろい正義感よりも女の自尊心のほうが数倍も強いのよ!」とのコメントを残して戦いに参加している。
 外見的特長を述べると、「三つ編み」、「丸メガネ」、「ネクタイ+Yシャツ」、という地味っ娘属性を持ちながらも、「ボイン」、「超ハイスリットのミニスカート」、「真っ赤なヒール」、というセクスィー属性も併せ持つ闇鍋状態
 さらには「ダッシュ攻撃で転ぶ」、「攻撃時に顔をそむける」、通常攻撃のボイスが「いやん♪」(あるいは「にゃん♪」)、等々挙動がいちいち人の神経を逆なでしてくれる
 「ウザかわいい」から「かわいい」を抜いたようなキャラクターである。

 性能面では通常攻撃のリーチが短い代わりに上下段に撃ち分けできる飛び道具「ボンバーボール」、「ボンバーボーリング」がそこそこ扱いやすい・・・が、攻撃時に技名を叫ぶためバレバレとどうしようもない。
 強いて言えばジャンプしつつ対地飛び道具「ビリビリステッキ」を撒き散らしたり、隠し必殺技の「ラインボンバー」を連発したりする戦法が地味にいやらしいという、使われると全く楽しくないキャラクターである。


 ・ボルフ
 今回の事件の黒幕で、本作のラスボス。ダウン攻撃はジャンピング土下座。以下ネタバレ自粛。


 ・闘神兵(レプリカント)
 今回の事件のキーパーソンで、ゲーム中2度にわたり闘うことになる中ボス。
 その外見・性能は最強の戦士である「ショウ」を参考にして作られており、ショウと同様の技を駆使してプレイヤーに襲い掛かる。
 と、いうか、ほとんどショウの色違いキャラクターであり、その性能・AIはショウ本人と比較しても見劣りしない。
 それどころか各技後のスキがショウよりも短く、攻撃力も変わっていないため、ショウ自身よりもやや強力なキャラクターとなっているのである。
 初代「闘神伝」から登場する隠しボスキャラクターを強化した上で中ボスにコンパチさせるあたり、本作のゲームバランスがいかに劣悪か推して知るべしといったところだ。


 ・・・といった面々が、本作で登場した新キャラクターたちである。
 これに「闘神伝2」のキャラクターたちが加わって総勢15人となるのだが、今回の戦いは「秘密結社」とは完全に無関係なものであるためか「ガイア」、「カオス」は登場していない。
 の、わりに、「2」の大問題児はちゃっかり登場しているあたり、単純に人気がなくてハブられただけなのではないか・・・などと邪推してしまってならない。
 (特にガイアはシリーズが進むにつれだんだんと扱いが悪くなっているようだが、「3」では多少マシになっているのでガイアファンの方々は安心して欲しい。)


・システム

 さて本作のシステムであるが、基本的に「2」から大きな変更はない。
 3D格闘には珍しい「飛び道具」が存在しながらも、「側転」の存在によって3Dならではの攻防が楽しめ、「一発必殺技」によって初心者にも敷居が低い・・・という「闘神伝」シリーズの中にあって、「オーバードライブゲージ」や「ダウン攻撃」で対戦をより攻撃的でエキサイティングなものとしていた「2」。
 非常に大味ではあったが、アーケードに移植されるなど高い人気を集めた「2」の移植版である本作は、それらのシステムにほとんど手を加えることなくセガサターンという媒体で「2」の対戦を楽しめる設計となっている
 ・・・はずだった。だけどネクステックは間違って余計なものも入れちゃった。

 一つ、簡単な実験をしてみよう。「URA」を起動したら、1Pは「リッパー」、2Pは「エリス」を選択し、対戦が始まるまで「上」を押しっぱなしにしてみる。すると、

 リッパーが跳び上がって着地したあたりでやっとエリスが動き出すという驚愕の光景が
 そう、本作は「試合開始後、操作可能となるまでの時間がキャラクターごとに異なる」というとんでもない問題を抱えているのだ。
 某スネオ対酔っ払い’95じゃあるまいし。

 さらにいくつかの問題点を挙げてみると、

 ・一部の空中必殺技が連続ヒットすることがある (カインの「レイジング・サン」、エリスの「シックル・ダンシング」など)
 ・ダウンからのリバーサル無敵が長い (起き攻め出来ない)
 ・乱舞技にロックが掛からない (エイジの「百鬼猛襲剣」が途中でガードされる)
 ・一部バウンドしてダウンする投げ技が拾える (特にリッパー)
 ・キャラクター選択時のグラフィックが恐ろしく粗い

 といった物があり、またその他の変更点として、

 ・オーバードライブゲージがたまりづらい
 ・ダメージなど「2plus」よりも「2」に近い (↓↓での側転も消えている)
 ・キャラクターの組み合わせによっては特殊な勝利ボイスが有る
 ・エリス、ソフィア、ラングー、は新コスチュームに。

 という物もある。

 これらが対戦バランスにもたらした影響は非常に大きく、上記リッパーの「投げ→ライトニングスティンガー2」で7割強のほか、
 「レイジング・サン」の連続ヒットで即死もありうるカイン、
 「ラブ・シャワー」で対空に成功すれば4割半入るソフィア、
 「2」の威力が復活し前ジャンプ「ヘルム・クラッシュ」3発で相手を倒せるデューク、
 地上の相手に「弱ホーミングスワロー→強シックル・ダンシング」だけで6割以上軽く持っていくエリス、
 隠し技、ゲージ技、どちらも密着で8〜9割いただけるホー、
 カインの「レイジング・サン」に対応する「月光扇」がやっぱり連続ヒットするショウ、レプリ、

 ・・・というどこかぶっ壊れちゃってる方々ばかり 壊 滅 的 バランスが楽しめる。
 悪い意味でブシドーブレード一歩手前である。

 これはこれでオイシイが、ここまでバランスが崩壊しているようでは「格闘ゲーム」と呼べるかどうか怪しいものである。
 もしや、それを把握した上で「ジャンル:アクション」だった・・・!?
 ・・・なんてね。


・エンディング

 もうこれ以上悪いことなんてそうそう無いと思うが、本作のエンディングはその「そうそう無いこと」の一つである
 ネタばらしになるが、本作の「闘神兵」にまつわる各キャラクターのストーリーはよりにもよってロンロンの報告書でまとめられてしまう
 映像的には背伸びするロンロンを背景に文字がカタカタ出てくるだけというなんとも味気の無いもので、大まかな内容は

 「今回の事件は○○の活躍によって解決〜犯人はボルフ〜より安全な「本当の闘神兵」を作ってゆくつもり〜リッパーがコソコソ行動していたけど気に入らない〜今回勝手な行動をしてすみませんでした〜」

 といったところ。各キャラクターによる違いは冒頭の名前の部分だけという手抜きぶり
 リッパーとロンロン本人の場合は若干の変化があるが、いずれにせよなんかおいしいところ全部持っていかれたような虚脱感があるのは否めないだろう。
 それと、パッケージやディスクレーベルでプッシュされている「リッパー」をエンディングで「気に入らない」などネガキャンする感覚がまるで理解できない。リッパー本人のエンディングはさらに具体的な理由が述べられており、達成感もへったくれもない有様である。


・隠しオプション

 格闘部分もダメ、物語部分もダメ、な本作だが、裏技だけは妙に充実している。
 その中でも特に注目したいのが「隠しオプション」だ。方法としてはタイトル画面で「ABZXYC」、「AZCXBY」、「AYCXBZ」、「AXYZCB」、後Rを押しながらオプションに入るというもの。
 ここの設定をいじると「リングアウトなし」や「両者無敵」、「ランダムに飛び道具発生」という一風変わった対戦を楽しむことが出来る。
 特に「両者無敵」はなかなか新鮮で、技やコンビネーションの練習に使えるほか、リングアウトのみを決着とするデスマッチなんて遊び方も可能だ。

 他にも「同色キャラ対戦」に「ステージと曲のランダム化」、「ライフゲージ非表示」、などユニークな設定が存在しており、飽きが来ないようにといろいろと趣向が変えられる親切設計となっているのだ。
 ・・・これで基本がしっかりしていればなぁ・・・。


・まとめ

 シナリオ面ではせっかくオリジナルストーリー、オリジナルキャラクター、を持っているのに説明不足でそれを全く活かせておらず、
 システム面ではいろいろと問題を抱えており常識的なバランスも取れていない有様、と、キャラゲーとしても対戦ツールとしても壊滅的な出来の本作「URA」。
 グラフィックも粗く、音楽は「2」からの流用が中心とトコトンどうしようもない。

 結果としてシリーズ内での出来は最底辺を争うほどであるのだが、ここまで来るとそのブッ壊れっぷり一発ギャグの塊のように見えてくるから不思議である。
 そうでなくとも外伝「パズル」、「カード」に登場するリッパーの格闘する姿を見られるのは本作だけであるし、特定の組み合わせ専用の勝利ボイスも豊富など、シリーズのファンであれば持っていても損をしないだろう一品だ。


・おまけ

 「試合開始後、操作可能になるまでの時間」を大雑把に比較した結果があるので、ここに記載する。

最速 リッパー
かなり早い ショウ、レプリ
早い エイジ
やや早い ボルフ
普通(ややムラあり) ロンロン、カイン、ラングー、デューク、モンド、トレーシー、ホー、ヴァーミリオン
遅い ソフィア、エリス





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