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ページ公開:2024/01/23


THE MYSTIC DRAGOONSミスティックドラグーン


プラットフォームプレイステーション
開発エクシング
発売エクシング
発売年月日1999年 6月
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ2ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
設定を生かせず ご都合主義的 かなり粗い 貧弱 大味 当時でさえ古臭い





※※今回のレビューにはネタバレが含まれます※※


・ゲーム概要

 1999年、「FF8」や「レジェンドオブドラグーン」と同年のプレイステーション末期にリリースされたファンタジー世界観RPG。
 タイトルにある通り「竜騎士」や、タイムトラベルに当たる「航時」、ターンの区切りがなく動的に進行するアクティブタイムバトルなどスクウェア製RPGの影響を色濃く受けたことがうかがえる作品。
 キャラクターデザインも「アリオン(アニメ原画)」や「アルスラーン戦記(1991)(キャラクターデザイン)」の幻想的な絵柄で知られる神村幸子女史を起用しており、説明書のほかに同サイズのミニアートブックが付属する気合の入れようだ。

 ・・・がそのグラフィックは粗いドットで描かれた2D、繊細なイラストは非常に劣化してしまっており、スプライトの拡大や変形を多用して立体感を演出するというスーパーファミコン時代に多く採られた手法を多用するなど、一見して当時でさえ古臭さを覚える作風でもあった。
 ”友情や恋、そして愛。 何百年、何千年と人々の間に変わることなく生き続ける想い。 この永遠の思いがつまった物語が生まれました。”(ジャケット裏より一部抜粋)というロマンス志向なあおり文を掲げる本作の内容は、さて・・・?


・世界観

 大国「グレイゼル」と「プラーマ(アネモス)」の間で高まった緊張は、その間にある小国「ゾンマー」を東西に分ける代理戦争という形で衝突を迎えた。
 それまで労働力や加工材料として珍重されていた家畜である「ドラゴン」さえも兵器として投入されたこの戦争はのちに「竜戦争」と呼ばれ、竜を駆る「竜騎士」の誕生を意味する「AD(アフタードラグーン)0年」として歴史の節目となる出来事であった。
 25年続いたこの戦争だったが、しかしある日聴衆の前で演説を行っていた東ゾンマー元首とその城が突如消滅するという形で終結に向かうこととなる。
 秘密裏にプラーマが研究していた時空干渉技術「航時」によって歴史改変が行われた結果である。

 AD34年、「航時」の危険性を憂いたゾンマーの竜騎士たちは航時に不可欠とされる水「ピュアウォーター」をたたえる海を大規模に汚染し航時を封じる「封印作戦」を決行。
 グレイゼル、プラーマ両国が介入する混乱に見舞われながらも、竜騎士団副団長「ナバル・クーリガン」の手によって封印は成された。
 事後的にではあるが、この封印をしてグレイゼル、プラーマ両国は軍事目的で航時を利用することを禁ずる条約を締結することとなったのであった。
 しかし・・・これによって世界からすべてのピュアウォーターが失われたわけではない。
 プラーマはこの戦争で大きな戦果を挙げた「竜騎士」の本格的な訓練を開始しつつ水面下でさらなる航時の研究を進め、グレイゼルは竜よりも優れた戦力と繁殖力を持つ「モンスター」の開発を行い、三度の衝突が起きるのはただ時間の問題という情勢であった。

 そして現在、AD50年。
 グレイゼルの政治をつかさどるエバレス家の次女であり時の女神クロノスの巫女でもある「エルミス・D・エバレス」は神殿の水鏡を通してある予知を得てしまう。
 プラーマから放たれた竜がふたたび航時を行い、すべての歴史を暗黒に塗り替えてしまうだろう・・・。
 一方、プラーマの辺境にある小さな養竜場では少年たちが竜の出産を見守っていた。
 なかでも実の家族のようにこれを見守る少年こそは「クリフ・クーリガン」、かの竜騎士の名家クーリガン家の血を引く子である。
 本来であれば、戦火から離れた平和な日々の一ページに添えられるはずだったこのひとときは、しかしてグレイゼル軍の怒声によって上書かれた。
 「世界を滅ぼす邪悪な竜を根絶やしにせよ、竜を育てる竜守どもを皆殺しにせよ」
 振り上げた小さな拳もひねり上げられ、ただただ故郷と家族が焼け焦げてゆくのを眺めることしかできない少年たちだったが、プラーマの戦略竜騎士部隊「タクティカルドラグーン」が駆け付けたことによってグレイゼル軍は撤退し辛くもこの日を生き延びることとなる。
 ことの終わりを見て冷淡にもこの場を立ち去るタクティカルドラグーンたちの背を目で追い、少年たちは明日をどう生きるか選ばねばならなかった。
 グレイゼルに復讐するためには、自分たちが竜騎士になるしかない――と。


・ドラゴンと航時

 ――というわけで本作の重要なキーワードに「竜」と「竜騎士」、そして「航時」があるといえる。
 のだが、「竜」はこうして牧場で育てられている通り完全に「家畜」であり、特に主人公の視点では「世界を滅ぼしうる天災にも等しい存在」という古典的なドラゴン像とはかけ離れた存在だ。
 となると、これを制し相棒として共に戦うという「竜騎士」も少なからずロマンが削がれるところ。
 もうひとつのキーワード「航時」を行える超常存在という一面もあるものの、これまた竜の寿命が人間未満の数十年という描写があって「人類を超越する長命さと深遠な知識を持つ」というドラゴン像には反するもの。
 竜自身が生きた記憶ではなく「水」という媒体を必要として航時が行われるのであれば、ぶっちゃけたところペガサスでもグリフォンでも用は足りるのではないかと物足りなさを覚えるばかりだ。

 そして、この「航時」がまた物語としての質を落としている。
 そもそも、自身としては「タイムトラベルもの全般にご都合主義的な要素を覚えてしまってあまり傑作を数えないのだが・・・。
 例えば、序盤には「最近封鎖されてしまったトンネルをタイムトラベルして通過してくる」、とか「在庫のないアイテムを過去に戻って取ってくる」とかといった形で発現する。
 些細な場面で能力を発現させて伏線としたものか、と思って進めてゆくと、結局作中の「航時」の半分くらいはこの手のニアミスを解決するスケールのちっちゃいものである。
 実はタイムトラベルといっても本作の舞台となるのは現在の前後数十年の範囲でしかなく、絶滅した古代生物との戦闘だの高度な機械システムへの侵入だのといった文明が一変するレベルの変化はないのだ。
 トンネルなら迂回路を探す、在庫がなければほかの持ち主を探す、とほかの選択肢が見え隠れするような問題でもタイムトラベルで解決してしまうのは、物語が進むほど安直という気がしてならない。

 一方「歴史改変」は使い勝手が良すぎる。
 冒頭の元首抹消を参考にすれば、本作で過去に干渉した場合「航時を行った基準点から先の未来で」・「干渉された対象のみの限定的な範囲に」影響が出る形となる。
 元首不在の混乱の歴史はどうなったにせよ「どこにもつながらない」別の歴史となり、また同時に基準点となる現在は「どこの未来からも干渉されていない」独立した歴史であると解釈できる。
 (といっても、中継点をとるような航時を行った場合中継点から基準点までの歴史の変化が反映されたり関係者の記憶があいまいになったりと描写に収拾がついていない場面もある)
 「改変を阻止する」、「改変を改変しなおす」、という概念こそ有効だが、現実の不都合な部分をピンポイントかつ一方的に書き換えることができる非常に強力な行動だといえる。

 これを乱用すると「なんでもあり」で収拾がつかないというわけだが、主人公側に関してはこれについて「水」と、「目的の時代を示す触媒」が必要という設定で使用を控えさせている(自由行動の中で移動することもできない)。
 これをして作中では「触媒」の入手に奔走するという場面もあるのだが・・・。
 「去年買った帽子だから去年に移動できる」とか「3年前に壊された防壁のかけらだから3年前に移動できる」とかといった具体例を見るに触媒は割と何でもよく、特定のアイテムにこだわる必要は全くないのではないかと釈然としない。
 また、敵側は最後まで主人公の存在そのものを抹消しようなどとはせず終始舐めプである。
 できることの多さに反してやらないことが多すぎて、物語ありきの物語であること、ご都合主義的であるということがどうしても意識されてしまうわけだ。


・システム

 さてシステム面での本作の特徴はどうかというと、あまりない。
 タイムトラベルが演出にとどまっていて探索や狩りの範囲を広げる役に立っていない、という点でひとつ加点なし。
 あるいはひとつには「竜騎士」としてドラゴンに騎乗できるというシステムがあるにはある。
 これは物語のごく序盤からドラゴンに乗ってワールドマップを飛行して移動できるという爽快感と、ドラゴンのブレスや体当たりといった強力な攻撃を繰り出せる痛快さとして実現されてはいる。
 ・・・ものの、敵大陸の上空にはバリアが張ってあって侵入できないということで徒歩からあまり探索可能範囲が広がらず、騎乗して戦闘できるのはほぼこの飛行移動中のランダムエンカウントのみ、と非常に限られてしまっている。
 しかもどういうわけかこれで遭遇する敵はごく序盤から終盤まで通して変化がなく、ちょっと進んだくらいでドラゴンの強力な戦闘力は持て余すだけの過剰戦力となってしまうのだ。
 そんななのでドラゴンの育成システムなどもなく、物語要所の戦闘はほぼ徒歩、主人公が竜騎士である実感はあんまりない

 それから、アクティブタイムバトルに関しては「シグナル」という概念で特徴づけた「フリーターンシグナルバトル」と銘打っている。
 ターンの区切りがなく素早さに応じて動的に行動可能になるのがFFシリーズでおなじみ「アクティブタイムバトル」だが、本作はこれに加えて準備段階を示す「シグナル」という概念を加えたのだ。
 いわく、シグナルが「赤」の状態は気が動転していたり息が上がったりしていて攻撃の命中率が低く、時間経過で「黄」を経て「青」になることで準備が整い万全な攻撃を行える、と説明している。
 敵の中にも「おどす」などこのシグナルの色を後退させる行動にターンを割く者もいるほどなのだが・・・。
 魔法攻撃なら必中なので、ぶっちゃけシグナルを意識して時間を空費する意味はまるでない
 タチの悪いことに本作の魔法は使えば使うほど威力と消費MPが上がる「熟練度」の概念を取り入れているうえ一度に複数の対象に攻撃する「まとめがけ」も可能、対して物理攻撃は威力が伸びるわけでも複数に攻撃できるわけでもなく完全に性能に後れをとってしまっている。
 また「隊列」や「両手持ち武器」の概念もあるのだが、この魔法優遇のバランス下では全員盾持って後列がド安定なのは言うまでもない。

 むしろ不満な点として、ゲームバランス面で「行動不能状態異常がやたらと多い」を挙げておこう。
 眠り・麻痺・混乱、というバリエーション自体は珍しくもないものの、本作は「基本的な属性攻撃に状態異常が付随している」、いわばモンハンの属性やられのような概念があり、大半のモンスターがパーティー複数に対して状態異常を撒いてくるという日常があるのである。
 シグナルが青に変わるのを待つ間に麻痺や混乱を食らって行動がパーになるというリスクを考えれば、ますますシグナルを意識して行動を止めるなどという戦術は選びえないものだろう。

 また、「エネミーの行動パターンに変化がない」。
 体力が減ろうが弱点攻撃を受けようが本作のエネミーは使用可能な魔法や特技をランダムに繰り出すだけ、という単調なルーチンで一貫している。
 (運が悪いとドレインまとめがけ連発で黒字化されるようなのもいる)
 特に体力の高いボス戦は、なまじ回復魔法が強力で一発で立てなおせるだけにそのタフネスがただただ繰り返しの手間と時間を意味するという非常に退屈なものとなってしまっている。
 だからといって、キャラクターが行動不能になってどうだ戦線が崩壊するだろうは安直だと憤るだけだが。
 竜騎士カインがバルバリシアのバリアをジャンプで破ったりルビカンテがマントをチラチラさせたりした「FF4」が1991年スーパーファミコン発。
 比べるのも酷かもしれないが、「FF8」の1999年にリリースするには当時でさえ二世代以上古臭い内容というところだろう。


・まとめ

 また、グラフィックに関してはドット絵のスプライトを基本としていながら拡大・縮小を多用して立体感を出そうとしているのでドットがつぶれたり逆にジャギー(ギザギザ)が目立ったりとかえってクオリティを下げる印象を与えてしまっており、音楽に関しても深みがなく単調な印象を受ける。
 ほか若干ネタバラシになるが、ジャケットの表や裏でペアで描かれロマンスを予感させる主人公クリフと敵国の王女エルミスはべつに愛憎劇と言えるほど会話があるわけでもなく、これに期待すると完全に肩透かしを食らうだろう。
 システム、ストーリー、グラフィック、サウンド、ゲームバランス、とどこに注目しても魅力とは言いがたい難作・・・というのが率直なところだ。
 主人公クリフは「やってみなくちゃ、わからない」を口癖としているが、これも「うまくいかなければ歴史改変で修正する」とセットのようなもので教訓となるような主題もなく、感想はなんとも空虚なものである。

 (私事だが、12年前にも一度本作をレビューしようと攻略に取り組んだもののあんまりにあんまりなので途中で投げたのだった。
 時間をおいて遊んでみても、やっぱりその気持ちは変わらなかった感。



・ワンポイント攻略

 ・ストーリー展開上、クリフは一人旅になる状況が多い。詰み防止に回復魔法の熟練度を上げておくのが無難だ。
 ・あまり意味がないとは言ったが、ゾンマー首都には空中戦の戦績に応じて最強クラスの装備がプレゼントされるロケーションがある。早いうちに利用できるので遠慮がなければ活用しよう。
 ・「崩れさるマルマロス」と「枯れゆくデンドロン」は実質隠し魔法。ただし、その在りかはごく序盤だ。





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