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ページ公開:2011/06/14


時空探偵(じくうたんてい)DD 〜(まぼろし)のローレライ〜


プラットフォームPS・SS
開発SACOM
発売アスキー
発売年月日1996年 7月 (同時発売)
ジャンルシネマティック・アドベンチャーゲーム
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック、3ファイルまで(PS)
18ブロック、3ファイルまで(SS)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
未熟 ボリューム不足 無残 意外と豪華 非常にヌルい パッケージ買い禁止





・ゲーム概要

 プレイステーション、セガサターン両方で発売されたムービーゲーム。
 会話や移動のすべてをムービーで行う「インタラクティブ・ムービー(シネマ、ドラマ、etc)」系のゲームであり、プレイヤーは時空探偵・DDとなって依頼人の父を探すため巨大飛行船「ローレライ」の内部を捜査してゆく・・・という内容。
 Disc2枚組で1時間半を超えるムービーを収録し、「時空探偵」や「特殊遺伝子保持者」などの設定から、時空を移動しながら底知れぬ闇の計画を調査する壮大な物語が語られる・・・かに見えるが・・・。


・ストーリー

 西暦2238年。過去へのタイムトラベルを自由に行えるようになった人類だが、それは同時に時空を超えた犯罪の出現を意味していた。
 歴史の改変、別時代への逃亡、絶滅した動植物の売買・・・それら「時空犯罪」の増加と共に、それらを専門に扱う探偵もまた出現することになる。
 「時空探偵」の出現である。

 この物語の主人公、鳴神 雷蔵(なるかみ らいぞう)もまた鳴神探偵事務所を経営する時空探偵であり、「ドラキュラ」の特殊遺伝子保持者であることから通称「DD (ドラキュラ・ディティクティブの略)」として知られていた。
 ・・・とは言え、「美女の依頼以外受けない」というポリシーからほとんどヒマそうにしており、その日も机に足を乗せてスポーツ新聞を眺めている有様であった。
 助手の霧姫(きりひめ)・アイスマンも、事務所に水着で乱入して「海に行きたい」とせがむ始末。そんなけだるい日常に依頼人の美少女が訪れてきたことから、今回の事件は始まる。

 少女の名前はレニ・ラヴァル。特殊遺伝子保持者用の全寮制学校に通う学生である。
 依頼の内容は「1ヶ月前に失踪した父を探して欲しい」というもので、遺留品などを調査すると様々なことが明らかになった。
 レニの父は超電磁工学の権威である天才科学者クルト・ラヴァル博士であること、命を狙われるような事件に巻き込まれ、娘を巻き込まないために失踪したこと、半径200メートルほどの巨大な「装置」を別の時代に転送したこと・・・。
 巨大な陰謀を予感した雷蔵であったが、霧姫の一喝もあって博士の後を追って時空移動を決意。霧姫の手によって無残な姿に変えられたタイムライドに乗り込み、1939年の世界へと向かうのだった。

 「装置」が転送されてくるであろう1939年の北極に到着した一行は探査機を放った後に休憩を取ることにし、秘密兵器の開発が活発でタイムライドの存在を迷彩できるドイツへと向かった。
 ところが、雷蔵はそこで意外なものを目にする。飛行船「ローレライ」の処女航海の記事である。
 掲載された写真に写っているのは、船長のヤンウェ、実業家のシュトラッサー、そして設計者の・・・クルト・ラヴァル。
 自分の知る姿より年老いた父にショックを受けたレニだったが、真実を知るため父に会うことを決意。雷蔵と共にローレライへ乗り込むことにした。
 ・・・だが、その陰では怪しげな男たちが暗躍していた。
 自由、希望、不安・・・様々な意図と謎を乗せ、飛行船ローレライはドイツの地を飛び立つのだった・・・。


 ・・・といったところまでがDisc1の内容であり、また、オープニングとゲーム開始直後に流れるムービーの内容でもある。
 つまり言ってしまえばオープニングムービーだけでディスク1枚使ってしまったわけで、これはもう嫌が応にもこの先の内容に対して期待が高まるものである


・キャラクター

 ・鳴神 雷蔵 (なるかみ らいぞう) (CV:森川 智之)
 年齢不詳(2210年代生まれ?)、職業は時空探偵「DD」。
 通常の探偵業に加えて時空犯罪関連の仕事も引き受ける「時空探偵」だが、美女の仕事以外は引き受けないというポリシーを持っているため、常に事務所でヒマそうにしている。
 性格は一見「軽いヤツ」で女好きだが、物事の本質を捉える観察力・判断力をしっかりと備えた「決めるときは決める」タイプ。
 また、「ドラキュラ」の特殊遺伝子保持者であり、それが「DD」の由来でもある。
 吸血によって怪力やサイコメトリーなどの特殊能力を発揮することが可能。
 蛇足だが、攻略本内の短編小説によるとコウモリに変身する能力もある模様。

 ・霧姫(きりひめ)・アイスマン (CV:横山 智佐)
 15歳(2223年生まれ)、職業は高校生兼雷蔵の助手。
 ひょんな事件から知り合って以来、天才的なタイムライド制御の腕で雷蔵をサポートしている助手の少女。
 オープニングでいきなり水着姿で登場し、その姿のまま来客を迎えるという常識外の行動を取っているが、むしろ雷蔵より現実的な性格で事務所の経理なども担当している模様。
 パッケージではチャイナドレス姿だが、ゲーム中でそのようなシーンは一切存在しない。

 ・レニ・ラヴァル (CV:平松 晶子)
 17歳(2221年生まれ)、職業は高校生。
 今回の事件の依頼人であり、ヒロイン。「ウィッチ」に属する特殊能力保持者でもある。
 「1ヶ月前に失踪した父を探して欲しい」という依頼と共に事務所を訪れ、残された手がかりを追ううちに「ローレライ」へと乗り込む。

 ・クルト・ラヴァル (CV:西村 知道)
 59歳(2199年生まれ)、職業は元超電磁工学者、現B.L.G.主任技術者。
 今回の事件のキーパーソンであり、レニの父親。
 ある「装置」を過去に転送し、自らも過去へと移動したが、その意図は直接彼の口から語られるまで明らかになることはない。

 ・リヒャルト・シュトラッサー (CV:石塚 運昇)
 48歳(1891年生まれ)、職業は資産家。
 B.L.G.(ベルリン飛行船会社)の経営者でもあり、ローレライのオーナーでもある。
 クルト氏とは20年来の親友で、ローレライの設計もほとんどを彼に任せたというが・・・?

 ・カーリン・シュトラッサー (CV:根谷 美智子)
 17歳(1922年生まれ)、職業は学生。
 リヒャルト・シュトラッサーの一人娘で、全寮制の女学校に暮らす典型的箱入り娘。
 境遇の近いレニと意気投合し、出会ってすぐにお友達となる。

 ・エンハルト・ヤンウェ (CV:藤本 譲)
 51歳(1888年生まれ)、職業はローレライ号船長。
 シュトラッサー氏、クルト氏と親友であり、ローレライ号の乗員の手配をしたのも彼であるらしい。

 ・マッツォ・ベラスコーニ (CV:金尾 哲夫)
 46歳(1893年生まれ)、職業は航空会社の技術者。
 物語にほとんど関係しない、完全な脇役である。
 気さくな性格で雷蔵にも陽気に話しかけてくれるが、戦争のことしか考えていないこの時代に対し否定的な考えを抱いている。
 蛇足として、SS版にものすごい悪人面のオマケ画像が収録されている。

 ・マリア・ヘルシング (CV:林原 めぐみ)
 23歳(1916年生まれ)、職業は歌手。
 ローレライにもディナーショウへ出演するために乗船したが、ドイツ上空を一周するはずの本船が海上を飛んでいることに不信感を抱いている。
 なお、雷蔵たちのチケットを手配したのは彼女であるらしく、クルト氏やシュトラッサー氏、ヤンウェ船長の関係を知っていた・・・など隠れた情報通でもある模様。

 ・エルヴィン・グルンツ (CV:丹下 桜)
 19歳(1920年生まれ)、職業はローレライ号接客係。
 勤務態度はまじめで、語調もしっかりしているが、男の割に容姿や声が女性っぽい。
 なお、シャワーシーンが存在する。

 ・滅砂(メッサ)・シュミット (CV:大塚 芳忠)
 28歳、職業は新聞記者。
 偽名っぽい名前だが本名。ローレライの設計者であるクルト氏へ取材するために乗船した。

 ・三郎(さぶろう)・北家(ホッケ)・ウルフ (CV:大友 龍三郎)
 クルト博士を狙ってレニを尾行していた怪しい男の一人。


・システム

 ムービーの合間に移動方向やアクションを指示し、謎を解きながらゲームを進める・・・というインタラクティブ・ムービーの特徴のほか、本作ならではのシステムにはどのようなものがあるだろうか。
 それはドラキュラの特殊遺伝子を活用した「特殊能力」である。トマトやドリンクを摂取することによってパワーゲージが貯まり、腕力の上昇やサイコメトリー能力の発動といった能力を発揮、過去に起きた事件などを捜査する際に活躍するのだ。
 また、イベントによっては女性から吸血し、一気にパワーゲージを最大値まで貯めることができる。そのシーンはあたかもキスシーンのように物語を盛り上げてくれる

 ・・・予定だった、と思う。たぶん。
 というのも、本編内でその特殊能力を使う必要があるのは2〜3回のみで、吸血する必要があるのは1回のみなのである。
 おまけにその1回も確立によって了承されたり断られたりするので、「痛いのダメなの〜」とか言って断られ、シリアスな流れがブチ壊しになる恐れがあるのだ。
 ネタばらしになるが、ゲームの舞台はローレライ号の内部のみで、Disc2の物語に関してもあっさり見つかるクルト氏とか取ってつけたような吸血(キス)シーンとか、過程を省略して「とりあえず見せ場だけ作っとけ」な流ればかりとなっており、未完成感がぬぐえない。
 そもそもゲーム内の主な流れはあの人の話を聞け、この人の話を聞け、のいわゆる「おつかい」ばかりで、「探偵」らしい推理要素なんて何もない。
 ついでに言えば時空移動のシーンも最初と最後のみで、「時空」である意味も薄い。
 「ドラキュラ」もその吸血シーンとトマトを注文するシーンくらいである。

 ・・・たぶん、もっといろんなことやりたかったんだろうなぁ。とか漠然と思いつつ、自分は一体このゲームに何を期待して購入したのかとむなしくなってしまった。


・PS版・SS版の比較

 さて、ここで気になる両バージョンの違いだが、

 ・プレイステーション版
 エンディング後にキャラクターボイスを聞けるオマケモードが存在する

 ・セガサターン版
 パソコンでディスクの中身を調べるとオマケ画像のフォルダが存在している
 あと説明書のイラストが豊富

 以上である
 グラフィックの質は大差ないし、内容の変更なんて皆無なのでどっちを選んでも同じような物だろう。
 強いて言えば、メモリーの容量を圧迫しないセガサターン版の方がいくらかマシか。



・ムービーの美麗さ

 書くだけ無粋である。



・まとめ

 きっぱり言って、「時空移動モノ」が好きな人にも、「探偵推理モノ」が好きな人にも、「吸血鬼モノ」が好きな人にも、「チャイナドレス」が好きな人にも、本作は危険な存在である。
 よくもまぁここまでパッケージと内容を外せるものだと感心してしまうが、逆にその肩透かしっぷり闇鍋ごった煮状態が気になるという人は手を出してみてもいいかもしれない。





・関連作品

時空探偵DD2 叛逆のアプサラル続編。だが内容はフルボイスのノベルゲームとなっている。
蛇足だが、「2」によると事務所を開いたのが2年前なので、看板に書かれた「探偵捜査40年の実績」は完全にサギである


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