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ページ公開:2015/09/15、最終更新:2024/09/17


Dark Chronicleダーククロニクル


プラットフォームプレイステーション2
開発レベルファイブ
発売ソニー・コンピュータエンターテイメント
発売年月日2002年 11月
ジャンルRPG
プレイ人数1人(ただし、データ間での交換要素あり)
セーブデータ1つ52KB以上、アルバムデータは490KB以上


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
ギガ盛り かなりご都合主義 丁寧かつシチュエーション豊富 上質で個性豊か ライドポッド無双 サブ要素豊富・・・過多





※※今回のレビューはやや多めのネタバレを含みます※※


・ゲーム概要

 ダンジョンで集めたパーツを組み合わせて自分好みの冒険の拠点を作って行く「ジオラマRPG」としてPS2と同時にリリースされたRPG「ダーククラウド」。
 パーツの細部まで作り込まれた「ジオラマ」が売りである一方で実際の内容はジオラマ制作上の制約が多くゲームバランスも極端という、少々荒削りな内容であっただろうか。

 本作「ダーククロニクル」はそんなダーククラウドの続編として作られ、前作の屋台骨であった「ジオラマ」の自由度が格段に増した一本だ。
 具体的には、マス目に依らず任意の位置・方向に置けるようになったパーツ群、好きな色への「ペイント」機能の追加、ゲーム全体を通して住人を自由に配置できる「移住」の概念、といったものだ。
 またジオラマのパーツを作るために必要な「素材」は敵からのドロップなどによって入手するようになっており、ジオラマパートとダンジョンパートはより密に関係するものとなったと言える。

 とはいえ、本作においては「ジオラマ」もゲームの一要素に過ぎず、更なるシステムとして「写真と発明」、「ライドポッド」、「変身バッジ」、「スフィーダ」、「釣りとギョレース」、といった多数のサブシステム・ミニゲームが詰め込まれている。
 ともすればゲームボリュームと自由度に富み末永く楽しめる一本ととれるのだが、果たして・・・?


ストーリー

 本作の物語は蒸気とガスランプの明かりに満ちた町「パームブリンクス」で暮らす発明少年ユリスと、剣と魔法が形作る「100年後の世界」の王女モニカが「1万年前の世界」の変化によって壊された歴史を戻すために2つの世界を作り直してゆく、という物だ。

 幼いころから母と離れ離れに暮らしその面影を追い求めるユリスは、やがて町と遠くの世界を繋いでいた「バース鉄道」の元技師スターブルの下で日用機械を修理して日々を過ごすようになっていた。
 そんなある日、滅多に無い町の外からの訪問者として「ポルカスサーカス団」が訪れ、町全体を賑わせることがあった。
 ユリスもまたこれに興味を抱きサーカス団のテントへと訪れたものの、そこで出会った不思議な子供に翻弄されるうちにサーカス団の団長ポルカスとパームブリンクスの町長の密会の現場に出くわしてしまい、パームブリンクスの外の世界が大変な状態になっている事、ユリスの身に付ける赤い宝石が「アトラミリア」という巨大な力を秘めた石である事、を知ることとなる。
 そしてまた、ポルカスはサーカス団を装ってアトラミリアを探して回っていた悪の手先であると言う事も。
 と、ポルカスはこの話を盗み聞きしていたユリスと、その身に付けた赤い宝石を見つけてしまう。
 ポルカスが繰り出すサーカス団の団員に追われながらパームブリンクスの町を逃げ回ったユリスは親友のドニーの助けを借りて地下水道へと逃れ、愛用のスパナと借り受けた旧式のピストルを手に地下水道を抜けた「町の外の世界」を目指すのだった。

 やがてポルカスの妨害を退けたユリスは町の外へと抜けだし、間もなくしてスターブルが修理した「バース鉄道」の列車に迎えられた。
 スターブルは「この世界はパームブリンクスを除いて大部分が滅びている」「復興するためにバース鉄道で世界を見て回る」という信じがたい話を明かしたが、自らの目で外の世界を見たユリスは自然とその話を受け入れたのだった。
 そして一団は改めて外の世界へと列車を走らせたが、それを再度ポルカスが妨害し、列車ごと攻撃にさらされることとなった。
 あわや、という瞬間、虚空から先の不思議な子供が現れ、青い宝石を身につけた少女へと姿を変えたかと思うと動揺するポルカスを斬り伏せ一団を救ったのだった。
 モニカと名乗った少女は自らを100年後の世界から逃れてきたと説明し、この世界の異変によって未来にも変化が起きている事、これらの原因が遥か太古の世界の巨悪「グリフォン大帝」である事、そして「アトラミリア」に時代を行き来する力がある事を説明した。
 そして、現代を復興させれば未来の世界も共に蘇り、蘇った未来の世界にはグリフォン大帝の討伐に繋がる術があるという希望を示したのである。
 やがて列車が停止したシャーロットの森、ばく大な知識を蓄える老樹ジュラクが根付くはずの地から、2人の歴史を取り戻す旅は始まるのだった。


 と、本作は「現在の世界でダンジョンを攻略してジオラマを再生させ」、「ジオラマの完成度に応じて復興する未来でイベントを進める」、という流れを持つ。
 ストーリーとシステムを繋ぐ重要な要素であるジオラマについて、次に詳しく見て行く事にしよう。


・ジオラマ

 本作のジオラマはジオラマの「舞台」の中で好きな位置・好きな向きに「ジオラマパーツ」を配置して行く設計で、パーツによっては好きな色のパターンに着色できるほか、また家に取り付ける煙突やランプと言った小物は数や位置がある程度好きに調整可能となっている。
 そして配置する住人も好きに設定する事が出来、ともすればショップを集めた町、好みのNPCを集めた町、住人関係にストーリーを持たせた町、といった想像の広がる設計となっているわけだ。
 ・・・ただ、やはりゲームとしての体裁か未来の復活に必要な「正しいジオラマ」の条件は設定されており、これを満たそうとするとジオラマの内容はだいぶ制限されることとなってしまう。
 ストーリーを進めてしまえばまぁおおむねジオラマの条件は無視してもかまわないのだが、結果的に未来がグズグズに荒廃することとなるので気分的には後味が悪いか。
 未来の姿は「正しいジオラマ」の達成度以外の分岐が無く、この辺りはもう少し遊びを持たせてほしかったところである。

 また、パーツの配置に関する制限も少々首をかしげる部分がある。
 1つのマップ内に配置できるパーツの数は「ポリン」という単位によって制限されており、パーツごとに定められたポリン数の合計が最大ポリン数を越えては配置出来ないようになっている。まあ早い話がポリゴン数の上限である。
 だが、それとは別にこのパーツはいくつまで、あのパーツはいくつまで、という制限もあり、特に「家」のパーツは「1種類につき4つまで」という妙に厳しい縛りがあるのだ。
 レンガの家で町を作ろうと思っても木やわらの家が混じってしまい、かつそちらはもう3軒立てられると言う少々納得のいかない設計である。
 またマップの端とジオラマを配置できる限界のラインの間もかなり広く取られており、細かいながらここも落ち着かない点だろうか。

 さて、いくつかの家の種類に触れたついでに本作に登場するジオラマの舞台をさっと見て行く事にしたい。

 ・シャーロット
 森の中の開けた広場というマップ。老樹ジュラク復活のために3種類の巨木を並べて植えるスペースを確保する必要がある。
 手に入るパーツは木の家や木の台にわらの家、専用パーツは丘や水路など。

 ・てんびん谷
 独立した4つの台地がそれぞれ他の台地の重さによって天秤のように傾くと言うマップ。配置するパーツの重さを合わせる必要があり自由度が低いほか、台地同士を徒歩で移動できないため完成したジオラマを見る楽しみも薄い
 手に入るパーツはレンガの家や教会にブロック(最小)など、専用パーツは中華屋台。

 ・ベニーティオ
 海岸の上に桟橋を作り、その上で町を作って行くと言うマップ。桟橋の置き方一つで町の形が大きく変化し、重ねて使う事の出来る「ブロック」系パーツの腕の見せ所でもある。
 手に入るパーツは鉄の家や鉄の台に橋ブロック、専用パーツは件の桟橋やボートなど。

 ・ヘイム・ラダ
 火山のふもとの台地を、間欠泉を泥で埋めながらならしてゆくと言うマップ。最終的には最も広いマップとなり、「ブロック」系を活用した最大規模の町が出来上がるマップである。
 手に入るパーツは階段ブロックと鉄のエントツ2、後は専用パーツのクレーンやアームなど。

 ・月下宮殿庭園
 ラストダンジョンの庭を、ヒントを基に正確に復元してゆくマップ。自由度は無く、パズルゲーム的な位置付けである。


 以上5つである
 というか、パズル色の強いてんびん谷とラストダンジョンを除けばわずか3つである

 前作より数が減っている点は自由の代償と言うべきなのだろうか
 この数を見ると、未来世界のバリエーションの物足りなさも納得かもしれない。


・ダンジョン

 さて、ジオラマを構成するジオラマパーツの入手方法についてだが、これは徹底してダンジョンに由来している。
 ダンジョン内でパーツのレシピや「正しいジオラマ」の条件が記された「ジオストーン」を集め、ここから明らかになった情報を基にして必要な「素材」をダンジョン内の敵から集める。
 そうしてジオラマを作り未来が復活するたびにキャラクターのHPや防御力を底上げする強化アイテムが出現してキャラクターを強化して行けると言う、奇麗なハックアンドスラッシュの構造が採られているわけだ。
 また、本作はそうして手に入れた素材を武器の強化アイテムに作り替える「スペクトル化」というシステムが存在している。
 「スペクトル化」したアイテムは武器の「合成ポイント」を消費して取り付けることで属性値や種族特効を高める効果を発揮し、戦闘の報酬と余ったジオラマ素材の活用という2つの要素を担うわけである。

 ・・・と、概要だけならば完成度の高いシステムに思えるのだが。
 悲しいかなダンジョン中ではスペクトル化して武器を強化するためだけに用いる「クリスタル」というアイテムも獲得でき、しかもモンスターのドロップなどで素材と同程度手に入ってしまうので素材をスペクトル化して強化に用いるのは大体合成ポイントの損である。
 また素材の入手性についても問題があり、例えば最初のジオラマ「シャーロット」では木の家や木の台などで「ゴロゴロ丸太」の必要性が高いのだが、対応したダンジョンでこのアイテムを持っているのは周囲の数倍のHPを誇る強敵「トーレ」のみで、出現数の多い「パンプキンヘッド」などは一切素材アイテムを持っていないという有様。
 設計自体はハクスラらしいものなのだが、実際のゲームバランスは調整不足の感が漂う物だ、と言えるだろうか。
 なお、不足した素材はNPCから購入可能なので最低限の救済措置は用意されている。

 ちなみに、そんなダンジョンを戦い抜く武器はユリスがスパナ・ハンマーと各種の銃、モニカが剣と魔法の腕輪。
 今作も武器に耐久度があり「リペアの粉」が手放せないが、耐久度の回復アイテムが近接武器・銃・腕輪と3種類に分かれているため遠距離攻撃だけを使いこむ戦法はあまり有効では無く、適度に近接武器にも活躍の場があることとなっている。
 ユリスのスパナ・ハンマーは重い分一撃の威力に長けるためチャージ攻撃重視、モニカの剣は素早く振れるため接近時の連続攻撃重視。
 ユリスの銃は凄まじい連射速度のマシンガンや豪快な爆発の起きるグレネードなど爽快感が高く、モニカの腕輪はある程度のタメを必要とする代わりにホーミング性があり命中率に長ける。
 ユリスとモニカの2人だけならば戦闘のバランスはそこそこ取れていると言えるだろうか。


・写真と発明

 さて、ジオラマと関連してゲームの進行を支える重要要素に「写真」と「発明」がある。
 「発明」とはユリスが複数のネタから発明品を考えて作成する、というシステムで、そのネタの収集に使うのが「写真」であるわけだ。
 例えば「木箱」、「窓」、「噴水」、の写真から発明品を考えると魚を飼うための「アクアリウム」を思いつき、「小麦粉」、「暖炉」、「ポーカーズベーカリー看板」では「ふんわりパン」を思いつくといった具合だ。
 中には「グレネードガン」や「盗賊のリング」などの強力な武器や、「パンサーブーツ」や「ピエロのくつ」と言ったコスチュームアイテム(靴だけだが)をいきなり発明できる例もあり、ファインダーを通してジオラマを眺める、という遊び方には強力な発明品を連想する楽しみも感じられるかもしれない。

 ・・・ただ、こちらもやはり自由度はあまり感じられない。
 というのは、発明によって作れるアイテムの種類には限りがあってプレイヤーのイマジネーションを十分に反映できないということと、アイテムに対応したレシピが限られていると言うことから。
 例えば「暖炉」で思いつく先ほどのふんわりパンだが、これを「オーブン」に変えるとなぜか発明できなくなり、またそもそも「パン」そのものを写真に収めても発明には一切影響しない。
 さらにパン系アイテムとしては他に「カリカリパン」があるのだがこちらは発明する手段が無く、ゲーム全編を通して材料アイテムの「小麦粉」を消費するのは「ふんわりパン」と「とろりんチーズ」の2つしかないあたりは頭を抱えざるを得ないところ。
 「かぼちゃ」を加えたパンプキンパイや、「丸太」を加えたバウムクーヘン、「魚」を加えたパイ包みといった料理は全く無いわけだ。
 まあ料理専門のゲームでも再現しきれない範囲なのでこの例は酷かもしれないが、先の「丸太」の写真がゲーム中一切の発明に使えない、などと明らかにされるとシステムとしてのボリューム不足を感じずにはいられない事だろう。


・ライドポッドと変身バッジ

 とはいえ、発明システムの最大の恩恵は「ライドポッド」の武装を発明できることにある。
 「ライドポッド」とはゲーム序盤でスターブルから託される有人ロボットで、ユリスはスクラップから組み上げられたこのマシンを使って冒険を助けて行くこととなる。
 そして「ワイン樽キャノン」や「バケツレッグ」と言った武装を生み出し、ライドポッドを自分好みにチューンアップして行く・・・というのも発明システムの魅力であるわけだ。

 ただ、そんなライドポッドには大きな難点がある。「強すぎること」である。

 ライドポッドはダンジョン中ならいつでも呼び出す事が出来、時間経過か被ダメージによって減少するエネルギーが尽きるまで運用する事が出来る。
 とはいえダンジョン1フロアは悠々探索しきる事が出来る性能で、本作は1フロアごとに外に出て体勢を立て直せる設計なので耐久力の問題はほぼない。
 武器の修理についてはリペアの粉を使用して50%ずつ回復する事が出来るが、これもスターブルに修理を依頼することで手持ちの武装全てを無料かつ無限に修理してもらう事が出来る。
 複数の武器を持ち歩けば弾切れの心配はなく、運用コストも生身より安いわけだ。
 移動速度についても、初期パーツこそ遅いがある程度進めると生身を上回る速度となる。
 そして、何よりも驚異的なのがその攻撃能力。
 初期状態の「鉄球アーム」でさえ初期ダンジョンのザコの大半を即死させるほどのオーバースペックであり、さらにその後スターブルから安価で購入できる「ワイン樽キャノン」はその1.5倍ほどの攻撃力のホーミング式グレネード弾を両腕から連射するという凄まじい暴れっぷり。

 何この魔導アーマー
 ちなみにライドポッドの攻撃で即死しない相手は同様にロボットに搭乗したエネミーなどで、生身の攻撃を軽減する能力からほとんどどうしようもない耐久力を誇るためゲームは大半において生身の活躍の場が無いライドポッドゲーである。
 ただ、ダンジョン中にはモニカしか操作できないエリアや生身で戦わなければいけないボスがおり、ここではキャラクターの強化が必須となっていると言える。

 また、ライドポッドと対を成すモニカの特殊アクションである「変身バッジ」について。
 これは「ギフトボックス」によって特定のアイテムをプレゼントしたエネミーから入手できる特殊アイテムで、文字通りその種族のエネミーに変身して攻撃などが使えるようになると言うもの。
 武器の耐久力を減らさない事や同種のエネミーから情報を引き出せる事などメリットがあるにはあるのだが、いかんせん武器を装備できない貧弱な攻撃力に変身前と共有するHPなど、悲しいぐらいに見劣りするアクションである。
 転倒効果のある攻撃でハメられると言った涙ぐましい能力はあるが・・・。


・ミニゲーム

 さて、本作の要素としてはまた「スフィーダ」と「釣り・ギョレース」というミニゲームも挙げられる。
 「スフィーダ」とはゴルフとビリヤードを合わせたようなゲームで、壁などにぶつかるたびに赤・青と色を切り替える「スフィア」をロッドを使って弾いてゴールにぶつけるというもの。
 スフィアは同じ色のゴールには反発する性能があるので、スフィアとゴールが同じ色だった場合は壁などにぶつけてワンクッションを置き、色を整えてからゴールに入れてやる必要があると言うわけだ。
 ゲーム中では敵を殲滅し終わったタンジョンのフロアにスフィーダのセットが登場し、これをPAR数以内に攻略することでボーナスアイテムのプレゼントやコスチュームアイテムと交換できるコインの入手という報酬を得る事が出来る。
 スピンやパワーの調節など本格的な作りで、ゲームクリア後には専用のゲームモードも開放される。

 ・・・のだが、ダンジョン内で行う物はあまりビリヤードらしさは感じられない。
 というのは、ダンジョン内の接触判定が異常にリアルなため。
 例えば最初のダンジョンである「地下水道」では、壁の柱に当たればあらぬ方向へ飛んでゆき、道のわきにある側溝にスフィアが落ちれば即池ポチャ扱い。「壁にぶつけて色を変えて」・・・というのは、だいたいとんでもない方向に飛んで行ったり勢いが足りなくて側溝に落ちたりとまるで実現できない状態であるわけだ。
 また「シャーロット」に対応した森のダンジョンでは壁として利用できるのは茂みぐらいで、道の外に生える木は一本一本柱状の当たり判定があってどこに飛んで行くかまるで推測不能な有様。
 結局「色を変える」と言うアクションは高く打ち上げて床に当てた後スピンで転がすといったあまり関係ないテクニックで補うこととなってしまい、ダンジョンの作りとルールが酷く噛み合わない内容となっているのである。
 ちなみに、PAR数はゴールとスフィアの距離に通路の曲がり角の回数などを加えて計算されているらしく、てんびん谷に対応したダンジョンでは「通路が無い開けた空間」と計算されているのかバナナカーブでUターンするくらいのPAR1を迫られる事があるのだがまぁこれは余談の域。

 また、「釣り」と「ギョレース」についても触れておこう。
 「釣り」は前作同様、スポットと時間帯を選択して任意の餌を用意し投げ釣りを行うと言うもの。
 ここで釣り上げた魚は「しちりん」で焼いて回復アイテムとすることが出来るほか「アクアリウム」に入れて飼育・交配する事が出来、やがて育てた魚の速さや強さを競うのが「ギョレース」、というわけだ。
 今作の「釣り」は海や温泉での釣りも加ったほか特殊な操作を必要とするルアー釣りも追加され、ダンジョン中では釣り上げた魚のサイズがスフィーダ同様コインの入手条件となっているなど前作よりぐっと存在感を増した内容。
 「ギョレース」ではそうして釣り上げた大物からサラブレッドを生みだして競わせる物で、いざレースが始まれば魚を見守るほかない育成中心のミニゲーム。
 本編中では一定期間毎に釣り大会・ギョレース大会が開催されて攻略に役立つアイテムが賞品となるので、本編の攻略と並行して進めて行く内容だろうか。


・難点

 ・・・と、多彩な要素を詰み込んだゲームであり、それぞれに魅力もあるのだが、実際にプレイするとある難点が中盤から最後まで付きまとうこととなる。
 というのは「タイムパラドックスをテーマにしているのに行き当たりばったりのご都合主義的なストーリー」でも「自由度の高さが内容の薄さで活かせていないジオラマ」でも「ライドポッド一強の極端なゲームバランス」でもなく、何より「所有できるアイテムの少なさ」である。

 振り返ってみよう。本作にはジオラマを作るための素材アイテムがあり、それぞれを蓄えて新しいジオラマパーツの作成に備えて行くこととなる。これが28種類。
 パーツに着色するためのペンキが8種類。
 武器を強化するためのクリスタルが10種類。
 ゲームクリアまで非売品のレア強化アイテムが24種類。
 入手必須のキーアイテムが、序盤において5種類ほど。
 消費アイテムが全部で45種類。
 釣り具関連が14種類。
 そして最後に、ダンジョン内で次のフロアへ進むために必須となるカギ系アイテムで2種類。

 ここまでの合計でアイテムは136種類という数になったが、本作で一度に抱えていられるアイテムはわずか114枠のみ
 効果の低い消費アイテムや使わない釣り餌、上述通りほとんど使い道の無い小麦粉などを廃棄すればまあ収まる数ではあるのだが、本作はそれに加えてユリスとモニカの両手の武器、スフィーダロッド、ライドポッドのパーツ、ユリスとモニカのコスチュームアイテム、釣り上げた魚、がそれぞれスタック不可能のアイテムとして存在するのである。
 まず収まるわけが無い
 ジオラマ用アイテム、釣り用アイテム、コスチュームアイテム、戦闘用アイテム、とそれぞれ用途の異なるアイテムを一か所にまとめて圧縮してしまった事で本作は多彩な楽しみを提供しながらもその全てを満足に楽しむ事が出来ず、ゲームの長きにわたって「楽しみの取捨選択」という苦悶を続けなければならない設計となってしまったわけである。

 ちなみに、シナリオ中でジオラマが解禁されたタイミングで一度のみ所有可能なアイテム枠の拡張がある。
 それまで108枠だったものが6枠増えて114枠になると言う嬉しいイベント
 ・・・かえってドケチに感じるところである。


・まとめ

 「ジオラマ」、「写真と発明」、「ライドポッド」、「スフィーダ」、「釣り・ギョレース」、と多彩な楽しみを詰め込んだ本作。
 ただ詰め込み過ぎた結果それぞれの要素が希薄であったり荒削りであったりと難のある内容となってしまっており、どれか一つに絞って充実した内容には出来なかったのか、という悔しさが残るところだろうか。
 もっとも「ジオラマ製作」、「写真撮影」、「ガレージキット」、「ゴルフ」、「釣り」、「ダービー」、と多彩な趣味を疑似体験できる内容と取れば、一つの世界観にどっぷりと浸る、長く楽しめる一品となるかもしれない。
 そういった趣味の時間に飢えている人で、アクションRPGやジオラマ製作に興味がある人にならばオススメできる一本だろう。


・ワンポイント攻略

 ・「ベルト」の写真は少々特殊。ある人物が身につけている物を狙おう。
 ・「しちりん」や「スクープメモ」は捨てることも売る事も出来ない。役には立つが呪いのアイテムの一種のようだ。
 ・ダンジョン中にある星のバリアはゲーム後半まで解除できない。スルーしよう。

 ・エンディング後のおまけシナリオではモニカが使えない。気になるならば別のデータを残しておこう。
 ・エンディング後にゲームを新しく始めると、クリア時のデータが持っていたコスチュームを次の周の初期コスチュームとして選択できるぞ。
 ・武器や発明の一切は持ち越せないが、アルバムを通してネタを持ち越すことは可能だ。逆に言えば現在のデータでの取り逃しに固執する必要も無いぞ。





・再評価メモ(2024/09/17)

 少し時間をおいてまたプレイしてみたのだが、ゲームのDL販売が主となった現代においては「様々な要素がありながらそのいずれも完成度が物足りない」という本作への歯がゆさをいっそう強く覚えてしまった。
 なにか物足りないごとに「新マップ追加!」や「バレンタインイベント開催!」、「ジオラマパーツ設置上限解放」に「スフィーダの難易度緩和」などの見慣れた文字が頭の中を舞ってしまうのに、実際にパッチやDLCによってゲーム内容が改善したり追加されたりすることは、決してないのだ。
 実際、「マイルーム」や「マイハウス」のハウジング要素や「釣り」ミニゲームなどはオンラインゲームでは定番であり、本作にはその先駆的な顔があったと評価できるのだろうが・・・。
 ・・・なまじ比較できてしまうだけに、そうした未来が用意されていない本作を現代にプレイするのは、少々、しんどいところあるかもしれない。





・関連作品

ダーククラウド前作。ジオラマRPGという魅力を実現する内容であったもののジオラマの自由度には難があった。


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