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ページ公開:2012/11/20


玻璃ノ薔薇(がらすのばら)


プラットフォオムプレイステーション2
開発シング
発売カプコン
発売年月日2003年 11月
ジャンルサイコサスペンスアドベンチャー
プレエ人数1人
セエブデエタシテムデータ 69KB
ゲームデータ1つ129KB


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲエムバランス その他
未成熟 唐突・不自然 あまり似てない 単調だが、焦燥感あり 悪い 協力:
株式会社ジャニーズ事務所





・ゲエム概要

 2003年にカプコンから発売されたクリック型アドベンチャーゲーム。
 プレイヤーはTOKIOの松岡昌宏氏扮する新聞記者「影谷貴史」を操作し、モダンの花咲く昭和4年に起きた「とある未解決連続殺人事件」の真相を探ってゆく・・・という内容。
 主人公は謎の指輪の力を用いて相手の心を読むことができ、これがゲームを進めるうえでのカギとなっている。

 なお主人公の「影谷貴史」はTOKIOの松岡昌宏氏に似せてモデリングされているばかりでなく、本人が声を当て、本人がモーションキャプチャーを行ったという徹底した主演ぶり。
 当時のプレイステーション2では「プロジェクト・ミネルヴァ」や「武刃街」といったタレントゲーが頻出していたので、その流行に乗った一本というところだろうがなかなか本格派である。
 ファンにはうれしいのだろう。たぶん。


・物語ノ粗筋

 「キネマ屋敷連続殺人事件」―それは昭和四年、新世界キネマ社を起こした芳野堂伝衛門氏の服毒自殺に端を発した未解決連続殺人事件である。
 伝衛門氏の死後、氏の親族など「キネマ屋敷」に集まった男女がわずか3日の間に5人も殺害され、残された生存者たちもその間の出来事については皆一様に口を閉ざしたという。
 捜査は遺産を目当てにした内部の人間の犯行という見方が強かったものの、決定的な動機や証拠は見つけられず、被害者の一人が犯人という疑いを残したまま迷宮入りしたとされる。

 平成15年 秋。東日タイムズ記者「影谷貴史」のもとに、記事を読んだと関係者の孫である「片桐尚美」が訪れたことで事件は再度動き出した。
 祖父の遺品から事件を記した手帳を見つけ出した片桐尚美が事件に興味を持ち、影谷にさらなる調査を依頼したのである。
 やがて廃墟のまま残されていた「キネマ屋敷」を見つけ出した2人は手掛かりを求めて屋敷を訪れ、そして・・・広間に残された懐中時計に触れた途端、事件当時のキネマ屋敷にタイムスリップしたのだった。


 ・・・というのが物語の導入部である。
 この後わけもわからぬまま伝衛門の隠し子「七瀬和弥」として振る舞うこととなった影谷貴史が、ずれた時空にて孤独におびえる尚美を助け、事件の真相を解き明かすために屋敷の人々の本心を解き明かしてゆく、というのが物語のあらすじとなっている。
 一応連続殺人事件を舞台にサスペンスという体裁をとってはいるが、推理シーンなどは一切無く話を聞いて回るだけの内容なのでその点は留意しておきたい。
 カプコンつながりで「逆転裁判」の探偵パートというか、「逆転検事」の捜査パートのみを延々やっていると思えばだいたい正解である。


・主ナ登場キャラクタア

 ・影谷貴史
 主人公。現代(平成15年)に新聞記者として「二十世紀の未解決事件紀」という記事を書いたことがきっかけとなり、キネマ屋敷を訪れ事件当時へとタイムスリップしてしまう。
 事件内では丁度同じタイミングで屋敷を訪れることとなっていた「七瀬和弥」として振る舞い、登場人物から事件の背景を聞きだしてゆく。
 またタイムスリップ後に気がついたとき相手の心を読みとる「指輪」を身につけており、これによって相手の心を読むことが出来るようになっている。
 性格は好奇心が強く無鉄砲だが粘り強い・・・とのことだが、作中のセリフはほぼ相手の言葉をオウム返しに繰り返すだけの物であり、どうにも頼りない。

 ・片桐尚美
 ヒロイン。ある事件関係者の孫であり、遺品の中から「手帳」を見つけ出したことで影谷と共にタイムスリップに巻き込まれる。
 しかし不完全な形でタイムスリップが行なわれたらしく、平行した時空にて無人のキネマ屋敷を彷徨う姿のみが影谷に見える状態となる。
 これを回復するために「心のカケラ」というアイテムを集めることでエンディングが分岐するのだが・・・。

 ・芳野堂伝衛門
 物語の発端となった人物。大戦(第一次世界大戦)中に大陸に渡り記録映画を制作し、これを足がかりに「新世界キネマ社」なる一大映画会社を興す。
 2人の妻との間に4人の子供をもうけるが、妻とはいずれも死別。後に関東大震災にて顔にやけどを負ったことから人格が変容し、同居していた子供を屋敷から追い出して3人目の若妻と隠匿生活を送っていた。
 同時期に、生き別れていた隠し子の「七瀬和弥」の所在を特定し屋敷に呼び寄せたが再会前に服毒自殺。その不自然さから「毒殺」として警察の捜査が入ったが・・・。

 ・七瀬和弥
 伝衛門の隠し子。誕生直後から生き別れとなっていたが、事件前に居場所が判明し屋敷に呼び寄せられていたらしい。
 影谷と瓜二つの姿をしているらしく、面識のある執事や伝衛門の若妻は影谷を和弥だと思い込んでいる様子だが・・・?

 ・伊原遼次
 伝衛門の死を調査しに訪れたが、事件が連続殺人に発展することを予見していたなど不審な点の多い刑事。
 初対面時、その考えを読み取ると・・・。

 ・片桐光太郎
 片桐尚美の祖父で、事件を記した手帳を残した人物。
 影谷の姿を見て明らかに挙動不審な態度を取るが・・・。


・ゲエムシステム

 さて、アドベンチャーゲームとして本作を見た場合、システム面ではどのような特徴があるだろうか?
 一つに、本作の進行を管理する「時間の概念」がある。
 本作の舞台となる「キネマ屋敷連続殺人事件」は3日間に起こった出来事であり、影谷がタイムスリップした時刻から数えた56時間が1時間ずつに区切られ、捜査の課題、「ステージ」として管理されているのである。
 ゲーム中の時計でこの1時間以内に史実通りの捜査を完了できない場合、歴史の整合性のためか時刻が巻き戻されペナルティを負ってしまうのだ。
 逆に言えば(ゲーム中の)1時間という範囲で行動がまとめられており、これによって程よいゲームテンポが得られている。
 反面「史実通りの捜査」以外の行動がほとんど取れず、自由度に関しては難が残るのだが。

 また、本作は登場人物から話を聞きだすシステムも特徴的である。
 「フリーワードシステム」と名づけられたこのシステムは、相手のセリフから気になる範囲を抽出し質問することで会話を広げて行くというシステム。
 例えば「庭の赤い花を見つめる彼を目撃しました」という文があった場合、「赤い花」から花の位置の話、「目撃」から目撃した状況の話、などをそれぞれ引き出すことが出来る。
 この際「赤い花」にはある程度文字揺れが許されており、「庭の赤い花」、あるいは単に「花」でも反応してくれる。
 これが、自分がリアルタイムで質問しているような感覚を味あわせてくれるのでなかなか面白い。

 とはいえ、質問されたこと全てをあけすけに話す人ばかりではない。重要なことを秘密にする人も多い。
 こういった状況で活躍するのが相手の「心を覗く」システムである。
 会話の中で相手が秘密にする単語を見つけた場合、「審判の右手」と名付けられた能力を用いることで相手の秘密を断片的な画像として読み取ることができるのだ。
 もっとも大概は前後の状況から類推できる程度の秘密なうえ、読み取った秘密を暴いて相手を追い詰めるなどの活躍は一切ないのだが。
 このシステムは体力に相当するポイントを消費して行うため、進行上の障害としいう位置づけにあると思われるのだが・・・。
 本文中で秘密に相当する単語を何度も繰り返したり、主人公が独白を挟んだり、とあまりにも露骨に隠されているため体力の消費と手間ばかりが気になる形である。

 なお、「審判の右手」は登場人物本人に使用することもでき、その場合は登場人物の考えていることを読み取ることができる。
 慇懃な執事の本音や高飛車な女性の本心があらわにされ、時にはそれが物語の意外な伏線となっていたりもする。
 体力の消費が馬鹿にならないうえ進行に関係しないためボーナス的な要素なのだが、一度ゲームをクリアした後で積極的に使うとなかなか面白いだろう。


・余談

 なおこれは余談になるが、本作の主人公と同様に相手の心や物質の記憶を読み取る能力を持つ青年を主人公にした「サイコメトラーEIJI」というコミックがある。
 これは後の1997年、1999年に土曜9時のドラマシリーズとしてドラマ化され、その際の主演が松岡昌宏氏であった。
 本作で氏が主演されたのもその辺りの事情が見え隠れするが、松岡氏だからサイコメトラーなのか、サイコメトラーだから松岡氏なのか、その辺の真相は不明である。


・マトメ

 「相手の心を覗く力で未解決事件の謎に立ち向かう」というテーマはユニークだったと思うが、どうにもそれを実現しきれていない印象の残る本作。

 アドベンチャーゲームとして見た場合はボーナス要素以外に謎らしい謎がなく、ちょっと会話システムの変わったイベント消化ゲーにとどまっている。
 密室から脱出する、仕掛けを解除する、暗号を読み解く、といったシチュエーションはほぼなく、それでいて「広大な屋敷のどこで次のイベントが発生するのか?」が不明瞭な場合があり難易度は不当に高い。
 一応「タングラム」というパズルを攻略することで次のイベント発生地を教えてくれるサブキャラクターがいる物の、もう少し自然な形で、流れに沿ったヒントを提供することはできなかったのかと思えてならない。

 また、一本のサスペンス物として見てもその完成度は高いとは言えない。
 序盤においては登場人物の思惑や因縁が濃密に描写され盛り上がりを期待させるものの、殺人が起きた後ものほほんとだべり合っている姿にはパニックや恐怖感はまるで伝わってこない。
 また終盤にて判明する犯人の動機、犯行のトリック、真犯人発見の経緯、といったものはただ脱力の一言である。
 ついでに指輪の正体やタイムスリップした原因などは明かされず、その他伏線めいた不可思議な現象などは何だったのだろうと思わざるを得ない。

 結果として本作で魅力となりうるのはTOKIOの松岡昌宏氏演じる主人公と、謎を展開しつつ緊張と不安を掻き立てるオープニングムービーくらいだと思われる。
 オープニングムービーに限れば必見の出来なので、サスペンスや松岡氏に興味があれば騙される覚悟で探してみるといいかもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・タングラムを解くことでヒントを与えてくれる偉哉少年(のタングラム)。彼と会話してイベントを進めることもあるので、自力で解きたい人もたまに顔を出してみよう。
 ・そのタングラムは問題のパターンがランダムに選ばれる。クリアできない場合再度話しかけてみるとよい。





・関連作品

・サイコメトラーEIJIPS用アクションアドベンチャー。コミック版がベースとなっている。


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