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ページ公開:2012/05/29


闘神伝とうしんでん3


プラットフォームプレイステーション
開発タムソフト
発売タカラ
発売年月日1996年 12月
ジャンル3D対戦格闘
プレイ人数1〜2人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
ほぼ別物 駆け足 派手だが、粗い バリエーション豊富 キャラは水増し? (ほぼ)シリーズ最終作





・ゲーム概要

 プレイステーションを中心にリリースされた3D格闘ゲーム「闘神伝」シリーズの第3作。(外伝込みなら7作目。)
 壁・天井の設定、「闘神連技」の採用、浮かせコンボの導入・・・と本作はこれまでのシステムを大幅に見直し、まるで別物と言った内容に仕上がっている。
 本作以降「パズルアリーナ」、「カードクエスト」、とキャラにすがって延命する方向に走ってしまった本シリーズにおいて、(「昴」を除けば) 最後の格闘ゲームという位置にある本作の出来は、果たして・・・?


・「闘神伝」シリーズ

 先ずは、「闘神伝」シリーズの歴史についておさらいしてみよう。
 1993年12月にセガからリリースされた「バーチャファイター」。
 世界初の3D格闘ゲームであったバーチャファイターはそのグラフィックはもちろん、実在の格闘技の動きを再現している点、ガードボタンを採用した3ボタン制である点、リングアウトの概念があった点、などが従来の格闘ゲームと大きく異なっていた。
 さて後にセガサターンに移植されたバーチャに対し、1995年1月にプレイステーションで発売された初の3D格闘ゲームが「闘神伝」であったわけだ。
 (「鉄拳」のPS移植はその3ヶ月ほど後。ちなみにプレステ初の2D格闘はかの「ツインゴッデス」である。
 リアル志向であったバーチャに対して闘神伝は飛び道具や飛び込みといった2D格闘の概念をベースに「側転」を加えた内容であり、派手で親しみやすく、「一発必殺技」の存在もあってライト層を中心に人気を集めたという。

 その後、1995年12月に発売された「闘神伝2」では「オーバードライブゲージ」や「ダウン攻撃」といったシステムを搭載し大味なバランスになったものの、アーケードに移植、OVA発売、など最も多くの人気を集めた。
 当時のアンソロジーコミックに目を通すとエリスやトレーシーに加えて設定のみのキャラクターであった「ナル」が頻繁に登場しており、シリーズの設定やキャラクターの人気の高さをうかがい知ることが出来る。

 さてそれと並行しセガサターンでは1995年11月に「闘神伝S」、1996年6月に続編として「闘神伝URA」が発売されるも、どちらも格闘ゲームとしての出来は悪い物だった。
 同1996年にはGB向けの「熱闘闘神伝」、2のリメイクである「闘神伝2plus」、デフォルメキャラクターによる外伝「にとうしんでん」、と新作(?)ラッシュが続き、その締めくくりとして発売されたのが本作、「闘神伝3」であったわけである。
 最終的にはこれが(「昴」を除けば) シリーズ最後の格闘ゲームとなり、その後は1997年6月に「パズルアリーナ闘神伝」、1998年4月に「闘神伝カードクエスト」、1999年8月に「闘神伝 昴」が発売され、シリーズは終わりを迎えた。


・ストーリー

 ではそんな本作を設定から見てみよう。

 これまで秘密結社によって開催され、さまざまな激闘を生み出してきた「闘神大武会」。・・・その裏では、常に「ある組織」が暗躍してきた。
 モンドに結社の内情を探る依頼を出し、総帥であるマスターの命を狙い、ヴァーミリオンを大会の覇者に差し向け、またカインの養父が暗殺者として活動していた「組織」・・・。
 「闘神伝」を巡る一つの謎であった「対抗組織」が、ついにエイジら戦士達の前に立ちはだかったのだ。

 組織の名は「アゴーン・デオス」。
 彼らの崇める闘いの神アゴーン・デオスの再生をたくらむ古代宗教組織である。
 神の再生に必要とされるのは強き戦士の血と、無垢なる少年の肉体。
 前大会後、最適の器として狙われていた「マスター」が秘密結社崩壊と共に行方不明となったことで、その標的はエイジらに移ったのであった。
 謎の男ヴァーミリオンの襲撃から1年・・・新たな「闘神伝」が幕を開ける!


 ・・・と、だいたいの背景はこうである。
 大半の伏線が投げっぱなしであったシリーズの中で、「対抗組織」の存在にスポットライトを当てた内容であるわけだ。
 公式ガイドブックいわく「前作のキャラクター達を仲良しにしたかった」らしく本作の「1P GAME」ではプレイヤーキャラチームVS「組織」という構成になっており、表キャラそれぞれに対応した裏キャラクター「ダークサイドキャラ」が存在している。
 つまり前作メインキャラ+新キャラの14名x2で、28名+ボスキャラクターというKOFばりの大所帯が展開されているのだが・・・。
 まぁ、とりあえずは基本システムを見てみるとしよう。

 (なお、アゴーン・デオスの元ネタはラテン語の「agon」、「deus」だと思われる・・・が・・・。)


・システム

 前作からさまざまな変更のあった本作のシステムは、もはや別物と呼んだ方が近い。

 先ずは「闘神連技」について。
 従来の闘神伝は強・弱と武器・蹴りからなる4種類の攻撃ボタンが存在し、繰り出される攻撃は距離や状態によって変化した。
 その中で近しゃがみ弱蹴り〜近立ち強武器〜遠立ち強武器〜必殺技などとコマンドを連続して入力することで前の技の硬直を「キャンセル」し、連続技(コンボ)としたのがこれまでのシステムであった。
 これは2D格ゲーマーならなじみの深いものだろう。

 だが本作は一切のキャンセルを廃止し、「×」や「→〜↓」といった所定の手順でボタンを押すことで技が派生する「闘神連技」というシステムを採用し、コンボを実現している。
 (「スターグラディエイター」のプラズマコンボなどに近い。)
 コマンドの受付時間は長めに取られており、ポンポンとボタンを押しているだけでも必殺技で締める連続技が発動する・・・というライト層にはうれしいシステムだ。
 反面、キャンセルコンボが持つ自由度や緊張感は損なわれているわけだが、ともあれ。
 本作はその他のシステムもこういった「手軽さ」、「見る楽しさ」、「操作する面白さ」、を重視し、プレイヤーへの敷居を下げる設計となっている。
 初代「闘神伝」の2D格闘らしさを追求した続編が「2」であるのに対し、親しみやすさを追求した続編が「3」である・・・と考えれば近いかもしれない。

 もっとも本作は「空中・ダウン中の相手にも攻撃がヒットする」ため、「闘神連技」が唯一のコンボというわけでもない。
 相手をさまざまな技で「浮かし」、落下に合わせて必殺技や闘神連技を決めると言ったコンボも可能である。
 が、これについては調整が甘く、同一の浮かせ技を連発して相手を浮かせ直す「お手玉」も可能となってしまっているため、その点は残念と言える。
 浮かされてしまった側は落下するのを待つか、ボタンを連打して「体勢を立て直す」かしかない。
 ・・・そんな窮地からの反撃を可能にするのは、新システム「ソウルボム」だ。

 「ソウルボム」とは一試合中に一定回数のみ使用可能な攻撃で、出が早く、空中でも使え、自分の周囲や前方など広い範囲をまとめて攻撃する、という起死回生の効果を持っている。
 空中受身の後に使用して追撃を避ける、相手の飛び込みに合わせて迎撃する、壁際に追い詰めた相手の反撃に合わせて連続ヒットを狙う・・・と、その応用範囲は広い。
 キャラクターによって性能が異なるため、攻撃向きのボム、防御向きのボム、とその使い方を練習してみよう。

 今ちらりと出したが、「壁と天井」というのも本作ならではの要素だ。
 壁の効果としては、浮かせられたキャラクターが「壁」に接触すると無防備な状態で弾き返され、追撃の的となる・・・というのが一つ。
 もう一つは、吹き飛ばされたキャラクターが「壁」に激突したとき、その勢いを利用して相手に突進する「ウォールカウンター」が使用可能・・・と言うのが一つ。
 天井はどちらかと言うと演出効果で、一部の技は相手を強烈な勢いで打ち上げ、天井に叩きつける、と言うものだ。
 どうにも窮屈な感じがするし、闘神伝の風物詩であった「リングアウト」が無くなったのも寂しいことだが・・・。
 必殺技で相手を壁まで吹っ飛ばし、その相手が反動を利用してこちらに飛んできて、待ってましたと反撃技で天井に叩き付け、ソウルボムで追撃する、といった、空間を縦横無尽に動き回るド派手な戦闘はなかなかに見ごたえがある。
 (なお、この「壁や天井を利用した攻防」は同社の「D-XHIRD」に一部引き継がれている。ひどい出来だが。

 あとはガード不能打撃投げのような仕様となった「投げ」や、「投げ抜け」の実装、投げの応用で相手との位置を入れ替える「背面取り」、喰らった相手を「よろけ」させる攻撃の登場、燃える・凍る・感電するといった「ヒット演出」、拳銃キャラの「リロード」・・・
 などがある。

 ・・・と、非常に意欲的な内容なのだが。
 本作にはもう一つ重要なシステムがある。「30フレームモードと60フレームモードの選択」だ。
 フレームとはつまり秒間の描画回数のこと。これが多ければなめらかに動き、少なければカクカクした動きになるというもの。
 30フレームモードは画像がきれいな代わりに、処理が多い分動きが粗い。
 60フレームモードは動きがなめらかな代わりに、背景のテクスチャなどが省略されている。
 プレイヤーはこのどちらかを選択してゲームをプレイすることになるわけだが・・・。

 やはり人間取捨選択となると欲が出てくるもので、「きれいな画像でなめらかには動かなかったのか」という思いがどうしてもぬぐえない。
 例えば画面の描画はプログラムの処理が一巡したことも意味するため、30フレームと60フレームでは入力の受付回数が倍異なることになる。
 つまり・・・CPUと対戦してみるとよくわかるのだが、レバガチャでの回復速度が段違いになる
 また、60フレームモードと30フレームモードではキャラクターの落下速度が微妙に異なるらしく、描画モードによって成立しなくなるコンボもある。
 (例:スイレイの「〜屈」など)
 では60フレームモードで本格的な対戦を楽しむべきかと言うと、背景がレゴブロック製になる60フレームモードのグラフィックではいまいち盛り上がれない。
 プレイヤーに選択の幅がある分「良し」とするか、技術的な限界がちらほら見える分「悪し」とするか・・・。
 なかなか難しいところだ。


・キャラクター

 さて「ダークサイドキャラ」なる設定を追加し、総計28人+ボスキャラクターもの人数が登場した本作。
 表キャラは前作までの面々だとして、気になる「ダークサイドキャラ」とはどんなものだろうか?

 まず、ダークサイドキャラは基本的に「表キャラと同じ武器を使う」ということで対になっており、闘い方も似通ったいわゆる「コンパチ」的なキャラクターが中心となっている。
 通常技や必殺技の大半を流用 共有したうえで、それぞれキャラの生命線となるような技に違いを与えているのだ。
 例えば立ち弱蹴りが下段で相手のガードを揺さぶるのに長けたカインに対し、ダークサイドキャラの「テンカウント」は空中で使用できる飛び道具によって相手への牽制に長けたキャラになっている。
 また、騎士道精神を大事にするあまり蹴り技・ダウン攻撃が無いデュークに対し、ダークサイドの「バルガ」は平然とダウン中の相手に蹴りを入れることが可能・・・というのは設定的にも面白い組み合わせだ。

 ・・・が、前作に登場していた「ヴァーミリオン」と表キャラの「巖城 汀」や、前作のホーを削除して登場した「バイホウ」とホーのアニメデータを流用したらしい「スイレイ」など完全に別キャラとして作られている組み合わせを見ると、その扱いの差に釈然としない物を抱かずにはいられない。
 実は大半が数あわせの間に合わせだったんじゃ・・・。

 さてデザイン面について見ると、ラスボス含めどこかで見たようなキャラクターが目を引く
 先ほど名前の出た「テンカウント」はどう見ても「ポォーーウ!」のマ○ケルだし、新主人公デヴィッドのダークサイドキャラはホッケーマスク+チェーンソーというわかりやすい姿、ソフィアのダークサイドキャラはド○ンジョ様とキ○ットウーマンの中間といった状態だ。
 と、ここまではSNKあたりがよくやるレベル。
 問題はシリーズに幕を引くラスボスの使う技だ。

 ・・・ネタバレが激しいので一応反転するが、

 ・両手を前に突き出し青白い気を飛ばす「波輝弾
 ・回し蹴りを放ちつつ相手に突進する「ヘルズサイクロン
 ・跳び上がりつつアッパーカットを3連発する「トリプルイリュージョン
 ・画面を暗転させて相手に無数の打撃を放つ「アベル・アルティメットファントム

 ・相手の懐を殴りつけ、左右の連打から炎をまとって飛び上がる「ブラックサバト(連打)
 ・左正拳2発から右正拳につなぐ「□・□・△
 ・左右の正拳から裏拳につなぐ「□・△・△
 ・瓦割りの動作から踏み込んだ突きを放つ「ダウンビート

 ・・・などと、ヤバすぎてシャレにならないレベル
 前作のカオスが使用した「地獄奥義」もヤバかったが、まぁあれはネタキャラだからと笑って済ませられなくも無かった。
 だがよりによって2度目。反省の色が全く無い上、ラスボスでこれ・・・。
 実はシリーズが終ったのってコイツが原因なんじゃないか?と思わずにはいられない。

 また、一定条件をクリアすると出現する隠しボスキャラクターについては・・・。
 現代なら発売禁止になってもおかしく無いレベルであった・・・。


・対戦バランス

 ・・・さて、実際の対戦バランスについてはどうだろうか?
 率直にまとめると、隠しボスと一部バグじみた強さを持つキャラを除けば各キャラクターの個性が活きており、特徴を最大限に生かした上である程度誰とでも闘って行けるマイルドなバランス・・・と言ったところだろうか。
 というのは、エイジは「」連技が扱いやすく、カインは「×」連技と浮かせ技が中心で、デヴィッドはスーパーアーマーが最大の武器、と、分かりやすい「強み」が用意されている点が大きい。
 ワンパターンと言えばワンパターンだが、キャラクター毎の立ち回り方がはっきりしているため使う分には実力を引き出しやすく、相手にする分には致命打を警戒しやすい、と、とっつきやすい内容になっているのだ。
 一部バグじみた強さを持つキャラを除けばダメージバランスは低め、リングアウトは無し、軸ずれも「2」よりだいぶマシ・・・ということで「事故死」の危険も少なく、それでいて「秘伝必殺技」、「ソウルボム」があるため最後まで逆転の可能性がある、白熱した対戦が楽しめるだろう。
 ややマイルドすぎて刺激が足りない感じもするが、これはこれでいいのかも知れない。


・まとめ

 リングアウト連発、ワンコンボ5割、などやらかしてきた「闘神伝」シリーズを見直し、格闘ゲームとしての「見る楽しさ」、「操作する面白さ」を追求しただろう本作「3」。
 闘神伝シリーズの尖った個性が丸められ、なかなか「遊べる」出来となったものの、シリーズの続編としては違和感のある内容だ。
 グラフィックは当時としても粗く、一部「ダークサイドキャラ」の水増し感や魅力の無さも減点対象と言える。

 とはいえ、操作の簡単さ、キャラの多さ、演出や動きの派手さ、白熱する対戦バランス、と、「大勢で楽しめる魅力」はシリーズトップクラスである本作。
 対戦の駆け引きは見ている側にも分かりやすく、初心者であっても軽快にコンボ・必殺技が決まる。
 そんな「見る楽しさ」、「操作する面白さ」、へ魅力を感じる人に興味を持って欲しい一本だ。





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D-XHIRDエイジがゲスト出演。
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・闘神伝カードクエストなぜかボードゲームに。
闘神伝昴シリーズにトドメを刺した問題作。


闘神伝:キャラクター紹介


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