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ページ公開:2013/10/15


D-XHIRDディ・サード


プラットフォームセガサターン
開発ネクステック
発売タカラ
発売年月日1997年 5月
ジャンル格闘アクション
プレイ人数1〜2人 
セーブデータ13ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
意欲的だが、粗い 非常に混沌 動きが粗い やや幻想的 粗い 「闘神伝」の流れをくむ一本?





・ゲーム概要

 3D格闘ゲームながらも2D格闘ゲームらしい要素を残し、親しみやすさと独特なプレイ感を特徴とした「闘神伝」シリーズ。
 そのさんさんたる内容のセガサターン移植作である「闘神伝S」、「闘神伝URA」、のノウハウを受け継ぎ新たに生み出された格闘ゲームが本作「D-XHIRD」である。
 前2作をプレイしていると嫌な予感しか覚えない1本なのだが、
 「“待ち”の状態を有利とさせない、攻撃重視のゲームを生む新システム!!」、
 「超高速&超立体バトル!全ての立体空間を戦闘フィールドとして使用する!!」、
 「演出効果も合わせて、連続技の中に必殺技が盛り込まれる「ニューコンボ」誕生!!」、
 というキャッチコピーを見るに、様々な新システムを盛り込んだ意欲作であることがうかがえる。
 基礎の方をしっかりと作り込んで欲しいという感想をぐっと飲み込み、新システムに期待を抱きたいところだがその内容は果たして・・・?


・システム

 「闘神伝」シリーズの流れをくむ本作は、やはり基本システムにおいて共通した部分が大きい。
 武器を持ったキャラクターが3D空間で対面し、飛び道具や軸移動を駆使して対戦する、と説明すればどちらを指したものなのか戸惑うところだろう。
 とはいえ、本作にはさらに意欲的な新システムがいくつも取り入れられており、全体としての遊びごたえは「闘神伝」とは一味も二味も異なるものとなっている。

 先ずはキャラクターの行動全般を管理する「D.D.S(ダイナミック・ディメンション・システム)」。
 これはキャラクターの行動が様々に派生し、空間を利用した自在な戦法が取れるよう設計されたシステムであるらしい。
 例えば本作の軸移動は短く跳ぶ「サイドステップ」、大きく跳ぶ「サイドジャンプ」、相手の側面に回り込む「スピンターン」、の3種類が用意されており、前後へのステップを組み合わせることで相手の周囲を自在に動き回ることが出来るようになっているという。
 前方ステップからは連続技を繰り出す、サイドステップでフェイントをかける、フェイントと見せかけてサイドステップ攻撃に派生する、スピンターンで回り込む、といったアクションが可能であり、なるほどこの点で正面にしか対応できない「ガード」はあまり有効でないことがうかがえる。
 また、本作には「闘神伝3」にて登場した壁や天井の概念も用意されている。
 キャラクターが跳び退いた時に壁と接触すれば、これを蹴り反動で大きく跳び上がったり相手に向かって突進したりといった行動が可能となるのである。
 大きく飛び上がって天井と接触すればさらに天井を蹴って移動や攻撃が可能であるなど、空間を活用した攻防のアイディアは圧巻だ。

 ・・・と、概要だけならばなかなか魅力的なシステムなのだが。
 残念ながらそれぞれのアクションの後には硬直が用意されており、自在に動き回る爽快感というのはあまり感じられない。
 その他にもサイドステップは無敵時間が無く回避として通用しづらいし、大きく回り込めるとされるスピンターンも密接で側面に回り込める程度でガードを崩す手段としての活用は難しい。
 壁や天井を利用した攻防はユニークであるがリングアウト式のステージでは使用できず、あまり本格的に組み込まれたものとは言い難いだろう。


 実際のところ、「待ち」対策のシステムはD.D.S以外の部分に用意されていたようである。「ガードレベルゲージ」なるものだ。
 これは相手の攻撃をガードしたり飛び道具系の必殺技を使用したりすると減少し、武器が破壊されるリスクが発生するというもの。
 「ああ、サ○スピね」などと思わずにはいられないのだが、それにしてはいくつか納得のいかない点が散見されるシステムとなっている。
 先ずは武器を破壊する条件であるが、これはゲージを一定量まで減少させて武器破壊効果のある必殺技を命中させる、というもの。
 残念なことにゲージを空にするだけではダメであり、そのうえ必殺技もガードではなく、ヒットさせる必要があるのである。
 そもそもゲージが空になるまで待ちに徹している相手が大振りな必殺技を喰らってくれるはずも無く、待ち対策としては相当存在意義の怪しい物となっている。
 ・・・それどころか。
 逆転用の強力な必殺技として「体力ゲージ&ガードレベルゲージ赤点滅時」限定などという技が用意されているため、不利な側は待ち戦法をとってガードレベルゲージを削ってもらうのが有効、などとなりかねない。
 「待ち」を否定するためのシステムを「待ち」を必要とする要素として組み込むという本末転倒ぶりには、なんとも困惑せざるを得ない。

 ・・・と、この時点で相当システムを持て余しているようなのだが。
 さらに本作には通常技限定のオリジナルコンボ「自主連」、攻撃を弾いて相手を浮かせる「超ガード」、リングアウトから復帰する「崖蹴り上がり」、自ら素手状態になる「武器を捨てる」、などその他にも多くのシステムが組み込まれている。
 とはいえ「自主連」は下段攻撃や必殺技を組み込めない、「超ガード」は使用の制限が甘く待ち戦法に活躍してしまう、「崖蹴り上がり」はわざわざリング外にジャンプすることが有る、「捨てた武器」を拾う際は武器が吸いつくようにワープする、とそれぞれで粗さが見え隠れしてならない。
 意欲的な姿勢については非常にうれしいのだが、何を目指しているのか不明瞭な辺りは残念と言うほかない。


・ストーリー?

 このように意味不明なまでに複雑なシステム群であるが、ストーリーは輪をかけて複雑であり、意味不明である
 というのもキャラクターそれぞれの設定が暴走しており、二重人格やら特務機関のエージェントやら神と人のハーフやらとバックボーンが濃密な反面、キャラクター同士のつながりがほとんど語られていないという点が大きい。
 「格闘大会が有ったので参加した」や「伝説の剣を巡って争奪戦を繰り広げている」といった、キャラクター同士が戦う理由が見えないのである。
 この点は「URA」についても同様のことが言えたのだが、なんとも受け継いで欲しくない部分である。
 一応キャラクター全てに関連を持ち、物語の核を成すという「マザー」という存在について触れられているものの・・・。
 「『マザー』―――それは人なのか、それとも偶像のものなのか、その全ては不明とされている。“彼ら”と呼称することが正しいかどうかは分からないが、彼ら『マザー』の存在は、有史以前より確認することが出来たようだ。
 と、「物語の核」自体が不定形というどうしようもないブラックジョーク状態である。
 もっとも、エンディングで「TO BE CONTINUED..“2”」などとのたまう未完の物語であることを考えると全て些細な問題である気がしないでもない。
 大風呂敷を広げて伏線を投げっぱなし、というあたり、つくづく「闘神伝」シリーズの(余計な部分の)流れをくんだ一本である。


・キャラクター紹介

 ・ボウイ (CV:草尾 毅)
 母親代わりの少女「セシル」を殺されたショックで幼い頃に実の母親を殺害されていたことを思い出し、凶暴な別人格を発現させた復讐の旅に生きる少年。武器は未来人から奪い取った「カノンブレイド」。
 キャラクター性能としては弱武器からのコンボが優秀なほか、武器から繰り出される必殺技が特徴的。

 ・セイヤ (CV:森川 智之)
 獣や、時には人を狩るハンターとして生きる少年。実はボウイの双子の兄弟であり、生誕時に凶暴な精神を奪われて以来それを奪い返さなければならないという強迫感に囚われている。
 いわばボウイのライバルに当たるはずなのだが、コンボらしいコンボが無く性能は厳しい。

 ・ルシファー (CV:野島 健児)
 ボウイやセイヤに行われた“禁断の実験”によって生まれ過去何百年と生き続けてきた“神と人の間に生まれた者”。全ての秘密を知っているらしく、手当たり次第に闘いに関わる者の命を狙う。
 「臓腑の絶叫(蹴り飛ばし)」、「邪なる天使の光(バク転斬り上げ)」、「地獄の炎よ闇を焼き尽くせ(バリア)」、と技名が楽しいキャラ。

 ・サンジュウロウ (CV:銀河 万丈)
 “サオトメ”によって愛する家族と門弟を皆殺しにされて以来復讐に生きる男。だがその事件の裏には衝撃的な真実が隠されていたことをサンジュウロウはまだ知らない。(プレイヤーにも分からない。)
 判定が強く相手をダウンさせる弱強コンボが非常に厄介。超必殺技として「百鬼猛襲剣」を使用するが・・・?

 ・サブリナ (CV:皆口 裕子)
 『イザナギ』や『マザー』などのトップシークレットを調査する情報局の諜報員。ボウイらとは関わりの無い普通の人間であるが、それゆえに彼らの過酷な運命を見届けるべく闘いに赴く。
 武器を手放すと多彩な投げ技が使用可能になる投げキャラ。時には自ら武器を捨てるのも有りだろうか・・・?

 ・メロウ (CV:曽我部 和恭)
 『マザー』を守護するために生み出された人造人間の末裔であるが、『イザナギ』の目覚めまでその自覚と能力を封じられており流浪の人斬りとして日々を過ごす男。
 飛び道具を持たない反面各攻撃のバランスが良い中〜近距離キャラ。地味ではあるが堅実である。

 ・サオトメ (CV:古川 登志夫)
 サブリナが属する情報局の“特務機関”に所属するS級エージェント。過去にサンジュウロウの関係者を皆殺しにし、現在はカレンを誘拐せんと暗躍している。その目的は「我々人類の行き付く地」にあるらしいが・・・?
 2本の短刀による連続攻撃を得意とするキャラクター。飛び道具の少なさやリーチの短さは突進攻撃などでカバー可能。
 なお、当時にはサオトメを主人公にした読み切りコミカライズが存在したらしい。(未入手につき詳細不明)

 ・シュナイダー (CV:中井 和哉)
 突如ボウイの前に現れた正体不明の男。情報局の調査によれば遺伝子的に完全に同一の人物が存在するらしく、クローン・・・ではなく未来から訪れたタイムトラベラーであると推測される。
 棒術使い。技の出は全体的に遅めであるが、飛び道具「アース・カノン」は出が速く扱いやすい。

 ・コオジン (CV:江川 央生)
 中国の奥深くで活動する老仙医。「最後の希望」であるとして幼少期のカレンを育てたらしい。
 拳法風の動きとプロレス技を使いこなすパワフルおじいちゃん。当て身投げや飛び道具まで死角が無い。

 ・カレン (CV:藤巻 恵理子)
 ボウイの母親代わりであった「セシル」に瓜二つで『マザー』や情報局に命を狙われる「真人類」の少女。
 連続ヒットする特殊技や飛び道具を得意とするキャラ。武器を失ってもヒップアタックや投げ技と言った切り札が活躍する。
 スカートを履いたパンチラ担当キャラだが、よりによって裏技でスカートが半透明になったり、いっそ履き忘れたりするという悲惨なキャラである。

 ・ヴィナース (CV:平井 裕子)
 ボウイが幼いころに殺害された実の母にして母代りの少女「セシル」殺害の実行犯であり「禁断の実験」を受けた新人類の母。ゲーム中では中ボス。
 ステップアタックや飛び道具が強く、文字通り相手を寄せ付けない強さを発揮する。

 ・イザナギ (CV:郷里 大輔)
 『マザー』の実験によって生み出された創造神であり、幾千年もの眠りから目覚める最中にある。本作のラスボス。
 誰のエンディングにも登場しないという空気っぷりであり、神というのが比喩なのかそうでないのかさえ不明。
 武器は己の拳であり、武器破壊が発生しないことからガードレベルゲージが飾りという反則じみたキャラである。

 ・シャドウボウイ (CV:草尾 毅)
 ボウイの中に眠る凶暴な別人格にして、セイヤの本来の人格。隠しボスとして登場する。
 性能についてはボウイのコンパチだが、相手によっては弱武器連打が永パになるなど非常に凶悪。

 ・セシル (CV:永島 由子 ※ラジオドラマのみ)
 幼くして孤児となったボウイが引き取られた家の娘。ボウイに愛情と優しさを教え母代りとして過ごすも、ヴィナースによって殺害されボウイの旅のきっかけとなる。
 オープニングにて姿を見ることが出来るが、その最期の姿は凄惨と言うほかない。

 ・ララ (CV:なし)
 セイヤに恋心を抱き、シャドウボウイと面識を持つらしい少女。
 設定のみの存在であり、あまり本筋と関係は無い模様。

 ・エイジ (CV:大倉 正章)
 「闘神伝」シリーズの主人公であるエイジ・シンジョウその人。最後の隠しキャラとして登場する。
 年齢設定や技を見るに「3」と「昴」をつなぐミッシングリングのようだが、あるいは単なるゲスト出演かもしれない。


 なお、本作にはキャラクターの名前を自由にエディットできるという微妙すぎる機能が搭載されている。
 カラーエディットやコスチュームエディットならまだしも、ディスプレイネームだけエディットしてどうしろと言うのか。また、これだけ濃厚なキャラクターに一体どんな名前をつけろと言うのか。疑問は尽きない。


・ラジオドラマ版

 そんな内容の本作ではあるがそれなりのヒットを予想していたらしく、本作の発売に先駆けて本作の序章とも言うべき内容のラジオドラマを放送したらしい。
 内容については結局「本当の闘いはこれからだ!」で終わるうえ影も形も出てこないキャラが2名ほどいるなどほとんど参考にならないのだが、ここにおいても「D-XHIRD」は独創的な仕掛けを盛り込んでいた。
 それは「マルチシナリオ」である。
 「仮面ライダー龍騎」の最終回などは記憶に新しいと思われるが、2通りのシナリオを用意してリクエストの多い方を正史として放送するという形態だ。
 半分が未放送回となるこの仕掛けを1話以降毎回行ったあたり、全4話という短さも納得と言ったところだろうか。


・まとめ

 「独創的」という単語が誉め言葉に当たるのか、はたまたそうでない意味合いを持つのか、そんなことを考えずにはいられない一本
 システムでもストーリーでもアイディアを詰め込みすぎた結果収集の付かない有様となっているのがどうにも残念であり、「2に続く」などと言う未完成感あふれる一文が全体の雰囲気を集約している気がしてならない。
 ただ室内ステージでの壁と天井を利用した攻防は見ごたえが有り、また意味不明過ぎるストーリーもいっそバカバカしい物として楽しめなくも無い。ある意味最悪の裏ワザも有る。
 「闘神伝」シリーズとの関連もあるので、そういったあたりに興味が有ればいくらか遊べる一本となる・・・かもしれない。





・関連作品

・「闘神伝」シリーズ本作の源流と言える3D格闘ゲームシリーズ。
「側転」を織り交ぜた攻防は単純ながら戦略性に富んでいたといえる。


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