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誰もが胸にPSを 〜スマホ用PSエミュレータについて〜


・前置き

 プレイステーションエミュレータである。
 先日ふと「エンドセクター」がやりたくなったものの、権利関係が複雑なのか(あるいは単に人気がないと見られたのか)アーカイブスでの販売はなく、PSPやVitaでのプレイは不可能ということだった。

 (おさらいのようなものだが現代でもSFCやPSのオールドゲームを遊びたいという需要は根強くあり、ニンテンドーストアやPSストアといった公式ショップで最新ゲーム機向けのダウンロード販売がなされている。
 価格もリーズナブルで形態機でプレイ可能となることによるメリットが様々あるものの、しかしこれらは当時のヒット作からピックアップされた一部であり、いまだに配信に未対応のソフトが数多くある。
 特に「アジト3」や「ゲッPーX」など権利関係で複雑なソフトは、今後とも配信の目は限りなく薄いだろう。
 こうした配信の限界が、あるいはTSUTAYAでのVHSレンタルなどの復古需要を生んでもいるのだが・・・。)

 そこでふと考えたのがスマホ上でPSソフトを動作させる方法、すなわち「PSエミュレーター」の利用であったわけだ。


・違法性?

 よく誤解されるが2021年8月17日現在時点で「エミュレーター」そのものに違法性はない。
 違法なのはBIOSやゲームソフトのデータを他人に譲渡する行為、およびそうした不正な入手元からデータを入手する行為である。
 と、解釈されている。
 以下ではこの点に関する個人の理解をまとめておくが、疑問や不明な点があった場合はぜひ自身でも調べてみてほしい。
 (参考1:「弁護士梅村陽一郎のブログ(千葉県弁護士会所属)」より「昔の原稿2003年3月版(エミュレータは違法なのか?)」)
 (参考2:「PSエミュレータ「Virtual Game Station」に関するwikipediaの記事(英語)」)

 エミュレートに関しては、実際のゲーム機において最も基礎的な部分である「BIOS(基本入出力システム)」の著作権の保護が重要とされる。
 実際のゲーム機のBIOSを複製してエミュレーターに組み込んで配布した場合、著作権における「複製権」を侵害する違法行為となる。
 しかし実機のBIOSを参照せず独自に同様の挙動をとるBIOSを開発し配布することは著作権の保護の範囲外とされ、またBIOSを組み込んでいないエミュレーターはゲーム機として機能せず特段違法性はない。

 ゲームデータに関しては、例えばテレビ番組を録画したり、スマホに持ち出し番組としてコピーしたりといった行為は「私的利用」として合法とされる。
 購入したソフトウェアをCDからPC、またスマホにコピーするという行為もこの「私的利用」の範囲内だろう、という考え方がなされている。
 (BIOSも同様とされる)
 ただしデータにかけられた「コピーガードなど」を解除することはれっきとした違法行為(「技術的保護手段の回避」に触れる)であるので注意したい。

 という解釈に基づけば、「BIOSの著作権を侵害しないエミュレーター」を入手し、「所有するゲーム機のBIOSをコピーして組み込み」、「所有するゲームソフトのデータをコピーして動作させ」、「かつこれを他人に提供しない」ように利用する分には、現時点では違法とは言えないわけである。
 (もちろん、今後の法改正や解釈いかんによってはこの限りではなくなる可能性もある。)

 ただもう一度、BIOSやゲームソフトのデータを他人に譲渡する行為、およびそうした不正な入手元からデータを入手する行為は違法であり決して行わないようにとは心に留めておきたい。


・エミュレーター

 さて、長い前置きはこれくらいにして実際のエミュレーターのリンクを掲載しよう。

 ePSXe
 フリーウェア。PC用PSエミュレーターとしてはもっとも有名なePSXe。
 年々バージョンアップされていった独自BIOSの完成度が高く吸出しの手間を取らずとも安定して動作し、エミュレーター初心者やPS本体を未所持の方に向けてはこちらがおすすめできる。

 ePSXe for Android
 \370のシェアウェア。上記ePSXeのスマホ版。

 DuckStation
 広告なし・完全無料のスマホ用PSエミュレータ。
 ただし独自BIOSを搭載しておらずBIOS吸出しの手順が必須、またムービー中の音飛びや方向キーのナナメがめっちゃ押しづらいなどの難点もある。

 さてPSソフトの用意に関してはCDから「iso」イメージとしてコピーする必要がある。
 推奨するソフトウェアは「CDmanipulator」、もちろんというかなんというか、この作業はPCが必要だ。
 (スマホのみの方は知人に借りるかネットカフェを利用するかしよう。)
 CD一枚の容量はおおよそ700MB、とはいえこの容量をフルに使っているゲームはむしろ珍しい方なので一般的なスマホアプリと比べて特別重さを気にするということはないだろう。

 また、「DuckStation」に関してはBIOSを手元のゲーム機から「吸出し」して用意する必要がある。
 この「吸出し」の手順がまた複雑怪奇で多種多様、そもそもがコピー行為を想定していないだろうBIOSに対する法的な保護の範囲も気になる所なのだが・・・。
 ・・・調べた限りではPSPをCFW(カスタムファームウェア)化してBIOSを吸い出す手順が最も簡単で用意するものが少ないので、こちらの解説へのリンクを掲載しておこう。

 1.PSPのCFW化
 →「PCゲーマーのレビューとエミュレーター」より、「2021年最新版!6.60向け!CFW・HBL改造をPSPに導入、インストールする設定・やり方と機能!PSP 3000/go全てのモデル対応
 2.BIOS吸出し
 →「エミュレータ情報室」より、「PlaystationのBIOSの吸い出しについて


・ソフト一例

 では、最後に当サイトで紹介したゲームからスマホでのプレイを勧めたいソフトを8本ほど挙げてみよう。

エンドセクター

 テキストアドベンチャーとカードバトルを組み合わせた異色RPG。
 テキストアドベンチャーを読み進め、その選択に応じて随所で戦闘が発生するという流れはちょっとした空き時間に少しずつプレイするというスタイルによく噛み合い、カードを収集・育成しながら最高のデッキを目指すという長期的な目標があることも今どきのゲームと比べて見劣りしない。
 対戦やトレードに対応しづらいことが物足りないものの、スマホ上でのプレイというスタイルにおいて特に再評価したい一本だ。

ディオラムス

 バトルロイヤル系ボードゲーム。
 4種類のオフェンスと4種類のディフェンスを選択してライバルに攻撃を仕掛け、最後まで生き残った者が勝者となる特殊だがシンプルなルールが持ち味。
 決着を早める仕掛けがなく対戦が長引いてしまうこともあるが、攻防の選択が中心となるだけに長考を必要とせず空き時間のプレイにはもってこいだ。
 またコントローラー一つでも対戦が可能という特徴があるため、スマホを使いまわせば対人戦まで余すことなく楽しめるだろう。

ネオ アトラス

 大航海時代シミュレーター。
 大航海時代の空白の地図に探検航海の航路を引き、あらわになった陸と海の姿を「信じる」か「信じない」か選択して世界を確定させてゆくという流れ。
 陸地にはまた調査できる「発見物」や交易を行える「街」が現れることがあり、航海の結果を待つまでにも冒険心を刺激する要素が尽きることはない。
 ゲームは中断しやすく、プレイするごとにゲーム世界が変化するほか、ゲーム全体では4つのマルチエンドがあるため長い間楽しむことができるだろう。

玉繭物語

 モンスター収集型RPG。
 古代日本を思わせる独特の世界観の中「森のしもべ」と相対し、これを合成・育成して己の戦力「聖魔」としてゆく流れを持つ。
 「聖魔」の合成は能力のみならず外見までもがモーフィングによって複雑に変形するというもので、そのオリジナリティーは現代でも一見の価値ありだ。
 今どき見なくなったバイオ操作がとっつきづらく、ゲームクリア後は「永劫の回廊」というランダム生成一本道ダンジョンを延々潜るだけと飽きやすいのだが、フルボイスのメインストーリーは今見返しても色あせない見ごたえである。

封~領域エルツヴァーユ

 3D格ゲー。
 といってもゲーム中使用するボタンが「方向キー」と「攻撃」・「防御」2ボタンのみ、コマンドのたぐいもレバー入れ+攻撃かレバー入れ+攻撃2回かレバー2回+攻撃かと極めてシンプルな設計。
 防御に上下段の設定がなく飛び道具系の攻撃が多数、むしろフィールドを走り回って回避しながら攻撃を叩きこむことが中心となるアクション寄りのデザインである。
 そのためスマホでの操作もあまり苦にならず、アニメや特撮番組をモチーフにしたキャラクターの派手なアクションを眺めて楽しめる一本だ。
 (若干スベっ・・・というのは禁句である)

パラサイト・イヴ

 3DRPG。
 メジャータイトルでアーカイブス配信ももちろんあるが、エミュレーターの「倍速機能」や「どこでもセーブ機能」が本作にとってはたいへんありがたいので挙げておこう。
 メインゲーム内で武器アイテムや強化アイテムを収集・合成して最強の武器と防具を育成し、やがて全77階の高難易度ダンジョン「クライスラービルディング」を踏破する・・・という長期的な目標は、単調なルーチンを多く含むものの育成の面白みを味わう分には悪くない。
 リアルタイムでキャラクターを動かして攻撃を回避するという若干アクション性のある戦闘システムなども、スマホRPGに慣れているとかえって違和感なく楽しめる代物かもしれない。

蒼魔灯

 3Dアクション。
 自力で攻撃する手段を持たない少女を操作して愚かな侵入者を「トラップ」の効果範囲におびき寄せ、剣を振り上げた瞬間にその起動ボタンを押す――。
 独特なゲームシステムを持つ「罠ゲー」シリーズのうち、「蒼魔灯」はゲームを周回して様々な組み合わせのトラップを製造・吟味してゆく周回要素がある作品だ。
 ストーリーが残念とかバグが多いとか難点も少なくないが、スマホで長いスパンで楽しむとしたらこの周回要素とトラップコンボ研究の規模が特に相性の良い一本となるだろう。
 なおアクションだが単にストーリーをクリアするだけであればトラップにハメて一方的に倒してゆけるため、操作にあまり不安を感じなくてよいのも向いているか。

火星物語

 3DRPG。
 同名のラジオドラマをベースに「話」仕立てにまとめられたRPGで、充実したキャラボイスによる寸劇を眺める楽しさが最大の魅力。
 冒険あり、コメディあり、シリアスあり、ちょっぴりお色気ありのストーリーは大人から子供まで楽しめるお茶の間向けだ。
 反面行動の自由度のなさや物語の分岐のなさがネックであり、これがセーブポイントの少なさや育成の選択の狭さなど副次的な問題にも結びついている。
 もっとも実際の戦闘では「オブジェ」をどう応用するかの戦術があっていろいろと試行錯誤でき、セーブやイベントスキップといったシステムの不足はエミュレーターであれば補えるはずだ。
 特に、メモリーカードの枚数を気にすることなく全話分のセーブデータを確保できる、という点は本作で一番望まれる楽しみ方ではないだろうか。
 クリア後のゲームボリュームはないが、好きな回やシーンをいつでもプレイバックできるという遊び方を十分な理由としてここに並べよう。


 ・・・他にもまだまだ、「聖剣LOM」や「街」、「ロックマンDASH」などPSにはいまだ遊びがいを覚えられる傑作がたくさんある。
 オールドゲームというだけで見逃すことなく、10代以下の若年プレイヤーもプレイステーションソフトというものを積極的に探してみてほしい。





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