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Neo ATLUSネオ アトラス


プラットフォームプレイステーション
開発フリップフロップ
発売アートディンク
発売年月日1998年 2月
ジャンルシミュレーション
プレイ人数1人
セーブデータ1つ6ブロック、2ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
やや粗さがある 未知と不思議 シンプル 国際色豊か? 序盤ほど面白い 現代の世界地図





・ゲーム概要

 一風変わったゲームでおなじみのアートディンクが、自社のPCソフト「THE ATLUS(1991)」をプレイステーション向けにリメイクした一品。
 ゲームは大航海時代のヨーロッパから始まり、「貿易」によって資金を稼ぎながら新大陸や黄金の国ジパングを捜す「航海」に発ち、やがては空白の世界地図を自分の発見した世界で埋めていく・・・という内容。
 ゲームの流れを左右するのはプレイヤーの代わりに航海を行なう提督たちの報告を「信じるか、信じないか」という決断であり、これによって世界はまるで異なった変化を遂げてゆくことになる。

 アートディンクらしい独特の内容であるが、伝説の生きる大航海時代の世界観や空白の地図を埋めてゆく達成感にはきっと誰しもが冒険心をくすぐられることだろう。


・探険航海

 ポルトガルの貿易商である主人公は、優良な貿易品を探してヨーロッパ周辺地域の探険航海を繰り返していた。
 やがてその功績が国王アフォンソ5世(※実在の人物)の目に付き、国王直々の親書が届いたのである。
 いわく、王国の航海事業発展のために未開地を探索しその発見物を逐一報告する代わり、資金の援助と発見した特産品を独占的に扱う許可を与えるという「貿易特権契約」の誘いである。

 言ってみれば、この親書を機に主人公はヨーロッパ周辺のみならずアフリカ、インド、ジパング、と世界全てを探険する使命を与えられたのだ。

 さてプレイ上での具体的な手順であるが、プレイヤーは地図上の未知領域に向かって「航路」を引き、自身の代わりに航海を行う「提督」率いる船団を派遣、一定日数の後に帰還した提督から航海の報告を聞き、その情報を「信じる」か「信じないか」決断して地図を埋めてゆく・・・という流れとなっている。

 例を挙げてみよう。本来、アフリカ大陸の東南には「マダガスカル島」が存在する。だがこの領域を未知の物として探検航海した場合・・・?
 「アフリカ大陸から突き出た陸地を発見」とマダガスカル半島になってしまったり、
 「アフリカ大陸東部には大小さまざまな島が浮かんでいる」とマダガスカル諸島になってしまったり、
 最悪「海が広がっているばかりで陸地は発見できず」と跡形もなく沈没したり、と、さまざまな報告が返ってくるのだ。

 そういった報告を「信じる」ことで未確定の領域は確定されてゆき、逆に「信じない」場合は航海をやり直し新たな報告を待つこととなる。
 「少しでも確定地域を増やして早く先に進みたい」と進行を優先するも良し、「現実的には島なのだから、島発見の報告以外は信じない」と信念をつら抜くも良し、「陸地を増やして貿易用の都市を増やそう」と打算的な方向に走るも良し、そのあたりはプレイヤーの方針次第であるわけだ。
 またもう一つ例を挙げると、アメリカ大陸を求めてヨーロッパから西へ航海したときに、北アメリカでも南アメリカでもない謎の大陸にぶつかることがある。

 大西洋に浮かぶ幻の大陸、「アトランティス」である。

 これは必ず見つかるものではなく、その存在をかたくなに信じ、「陸地は無かった」と言う提督を繰り返し航海に向かわせて、いつかきっと見つけ出す・・・という立ち位置にある。
 「自分の信じる世界とはどんな姿か?」という本作のテーマや、「信じる」「信じない」の信念を貫く意義を表した、実に本作らしい要素だと言えるだろう。


・発見、調査

 さて、そうして発見した島や陸地には特産品を持つ「都市」と、さまざまな「発見物」が配置されている。
 これらは地図上に宝箱の状態で配置されており、具体的には「スフィンクス」や「ストーンヘンジ」といった遺跡、「金の羊」や「白黒グマ」といった珍獣、はたまた「太陽の鏡」や「哲学の卵」といったアイテムなどが存在する。
 いずれも発見することで報奨金が与えられるほか、遺跡では提督を調査に派遣することでさまざまなイベントが発生する、と、新たな土地への期待感を支えてくれる大切な要素である。

 また、この「調査派遣」によりこの世界の不思議に触れてゆくのも本作の楽しみ方の一つだ。
 例えば序盤で「ペレス提督」を仲間にするイベント。

 ゲーム序盤、ヨーロッパのリスボン周辺では主人公(プレイヤー)が発見したさまざまな遺跡や洞窟に興味を持つ「ペレス」という学者のうわさを聞くことが出来る。
 後に彼とコンタクトをとり、探険航海を進めていると、ヨーロッパの西に「海に浮かぶ街」なるものが発見できる。
 巨大な街ひとつが、海の上でゆらゆらとゆれているというのである。
 主人公は国王から命じられてこの謎を調査することになるのだが、派遣した提督は街に近づくことさえ出来なかった、と頼りない報告を返すばかり。
 すっかり困り果てているとペレスが主人公の元を訪れ、「それは蜃気楼ではないか?」という考察と共に自身の目でそれを確かめたいと言う申し出を行ってくる。
 これを受けてペレスを「海に浮かぶ街」へ派遣してみると、ペレスはやはりこれが蜃気楼であると確信し、見事、蜃気楼の元となった街を見つけ出すのである。
 こうして主人公と互いに信頼を得たペレスは、科学的な視点で世界の不思議を調査する提督として探険航海の仲間になるのであった。

 というもの。
 この後改めて蜃気楼の街を「調査」してみるとアイテムが発見でき、以降の探険における心強い武器となる。
 このように「調査派遣」は調査する提督によって報告が変化したり、特定のアイテムがカギとなって進展したり、あるイベントが別の調査の助けになったり、と謎解き要素盛りだくさんでプレイヤーを楽しませてくれるのだ。
 発売当時に行なわれた「聖牛イヴラークの謎」を解き明かしてメイプルリーフ金貨を当てるキャンペーンなどは、本作の謎解き要素の充実ぶりを端的に表していたと言えるかも知れない。


・貿易

 そんな探険航海には、船舶代、提督への給料、と何かとお金が入り用になる。
 国王からの援助をあてにしてもよいのだが、そこは本業である「貿易」でたっぷり稼ぐことが望ましい。
 細かい数字は抜きにして、世界の各都市には一つの「特産品」が設定されている。ロンドンには「綿織物」、リスボンには「ワイン」、と言った具合だ。
 このうち二つの都市を「貿易航路」で結ぶことで貿易が行なわれる。離れた土地で高価な品物を貿易すると大きな収入が得られるので、その辺を念頭に貿易先を決めればいいわけだ。

 と、言いたいところだが、貿易にはもう一つの側面がある。「加工貿易」である。
 例えば、価値の低い「硝石」「硫黄」を貿易してみると貿易先で「火薬」が発見され、高価な特産品として新たな貿易を行なうことが出来るようになるのだ。
 これはさらに発展可能で、
 「真珠」+「マダス貝」→「黒真珠」
 「黒真珠」+「指輪」→「黒真珠の指輪」
 といかにも高価そうな加工品が出来たりもする。
 序盤のうちは難しいが、こうして新たな加工品を探し莫大な利益を求めるのも本作の楽しみの一つであるわけだ。


・世界の姿

 そうしてゲームを進めていくと、さまざまな「うわさ」を耳にし、やがてある判断を迫られる。
 すなわち、「この世界は丸いのか?平らなのか?」という決断だ。

 ゲーム中でさまざまな情報を与えてくれる「うわさバルーン」の中には「世界は丸いに決まっている」、「世界は平らであるに違いない」、と世界の姿に対する情報を扱ったものがあり、これを「信じる」か「信じない」かの決断が世界の真の姿を決めるのだ。
 これのほか、作中でとあるイベントを攻略することで「巨人に支えられた球体」説と「象、亀、蛇に支えられた平面」説も登場することになる。
 後に挙げた物ほど見るのが難しいと思われるが、1度クリアした後はそれらの世界観を目指して再度プレイしてみて欲しい。
 「世界は巨人に支えられているはずだ」と信じ続け、それを証明して見せたときの感動はひとしおであるはずだから。



・まとめ

 ・・・と、実に独創的で盛りだくさんな内容を持つ本作。冒険心や好奇心旺盛な人にぜひオススメの一本だ。
 ただ、システム面にいろいろと粗さが散見され、ゲーム終盤に入ると確認し損ねた領域をチマチマと埋めていく作業が中心となるなど、その辺で少々根気が必要となる。
 後に発売された「ネオ アトラスII」はそんな本作をリメイクし、「博物図鑑のコレクション」「交易所の採用」「航路の自動設定」とさまざまな点が遊びやすくなっているので、もし興味を持ったならば入門編として「II」からプレイしてみると良いかもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・神話的な世界観にするためのカギは、ヨーロッパのどこかにある「箱舟」の調査。発見するのは難しいが、余裕があれば「振り子」を使って探してみよう。
 ・「イヴラークの謎」のカギは3つの「神体」にある。うち2つと2つは・・・





・関連作品

・THE ATLUS、THE ATLUS II本作の前身に当たるPCゲーム。
インターフェースは非常にシンプルであるが、本シリーズのキモとなるシステムは既に形成されている。
・ネオ アトラス II続編というより、本作のリメイク。
「交易所」や航路の自動設定など、本作をより遊びやすい内容に調整している。
・ネオ アトラス IIIPS2での続編。
コンセプトを3D化し、「地球儀の中で未確定地域を探索する」という内容に。


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