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PHANTASYファンタシー STARスター ONLINEオンライン

PHANTASYファンタシー STARスター ONLINEオンライン Ver.2


プラットフォームドリームキャスト、Windows
開発セガ、ソニックチーム
発売セガ
発売年月日2000年 12月(DC版無印)
2001年 6月(DC版Ver.2)
2001年 12月(Windows版)
ジャンルネットワークRPG
プレイ人数1〜4人〜???
セーブデータ1つ45ブロック(※同一本体でのみ使用可能)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
ハクスラMO ファンタジーSF キャラクリ要素あり 壮大・ボイス無し 粗削り(無印)
乱暴(Ver.2)
家庭用機向けオンラインゲーム初のヒット作





・ゲーム概要

 2000年にドリームキャストで発売されたオンラインアクションRPG作品。
 インターネットというものは当時まだ国内で広がり始めたばかりで、料金プランというものもまだあまり整備されていなかった。
 通常の電話回線を利用して通話料に上乗せする形で使用料を払うものや、いくばかお得だが接続に専用のモデムを必要とするものがあり、それでなお4000〜6000円/月の通信料が発生していた、そんな時代である。
 本作のオンラインサービスにおいてはさらに有料の「ハンターライセンス(400円/30日、1000円/90日)」をクレジットカードやWebMoneyで購入する必要があり、ソフト本体(6800円(税抜))より継続してプレイする料金の方が高額となっていた有様だ。

 しかしながら、本作の最盛期には同時接続数2万6000人(国内)、登録者30万人(国内外)という数のプレイヤーが本作に熱狂していたという。
 ネットワーク接続を視野に入れて開発したゲームハード「ドリームキャスト」、オンライン機能に対応するよう開発したゲームソフト「ファンタシースターオンライン」、先進的な試みを思い付いては実現させていた、かつてあったセガの黄金期の一端であろうか。

 もちろん現在では非公式のエミュレートサーバーを除いてオンラインサービスを終了しているが、本作はオフラインでもプレイ可能なソフトである。
 家庭用機向けオンラインゲーム初のヒット作であり、昨今の「ハクスラ」、「MO」、「COOPプレイ(協力プレイ)」、の礎となった本作を、実際にプレイしてみてその後のオンラインゲーム史を考察するのも一興というものだろう。
 本ページではドリームキャストで発売された第一作と、そのバージョンアップ「Ver.2」について触れることとしたい。


・ゲームシステム(基本・操作編)

 本作はリアルタイムで移動や攻撃、アイテムの使用といったアクションを行う「アクションRPG」である。
 キャラクターはダンジョンの奥地を目指して歩き回り、ロックされたゲートを発見したら付近のエネミーをせん滅、エネミーの方を向いて「アタック」を実行したり状況に応じて魔法に当たる「テクニック」や「アイテム」を使ったりし、道が開けたらより奥に進んでゆく。
 仕掛けと言えるものもたまにはあるが、基本は小さいエリア内で戦闘を繰り返すだけというごくシンプルな構成だ。

 戦闘の基本となるアタックは「武器」と「キャラクター」の組み合わせによって3段階のモーションが用意され、それぞれを素早く出せて命中率もよい「アタック」、出が遅く命中率も低いが威力の高い「ヘビーアタック」、出が遅くさらに命中率が低いが特殊な効果のある「エクストラアタック」、として繰り出すことができる。
 「命中率」・・・というのは敵キャラクターに攻撃を当てられるかどうかではなく、その後さらに敵の回避率と自身の命中率によって攻撃の効果が出るかどうか、「Miss」となるかどうかに関わってくる概念だ。
 また、3段攻撃は後半ほど命中率にボーナスがかかるので「アタック」・「アタック」・「ヘビーアタック」と続けて出すと効率が良い、とされる。

 なお、これらの攻撃は3ボタンの裏・表、合計6つの「アクションパレット」に登録して繰り出す必要がある。
 のだが、複数種類ある「テクニック」や「アイテム」もこの6つの中に登録しなければ即座に使えないうえ、本作ではまだアクションパレットの切り替えの概念が無かったため、ゲームシステムと操作周りはどう考えてもボタン数が噛み合っていない
 また視点操作に関してもキャラクターの向きを相手に固定する「ロックオン」の操作が無いほか、微調整が効かずキャラクターの向きに合わせる操作のみ。
 回避や防御に相当するアクションも(基本的に)無いので敵の攻撃からは根性で耐えるか移動で避けるかしかなく、またなぜか敵の近くに寄ると強制的に「走り」から「歩き」状態になってしまうなど、操作性は端的に言えば「劣悪」の部類だ

 なぜこうも使えるボタン数が少ないのかと言えば、操作が洗練されていないのはもちろんだが「チャット」にボタンを一つ割いていることも原因の一つだろう。
 アクションパレットに相当する「」、「」、「」、とチャットを起動する「」ボタンが並んでおり、戦闘中であってもメニュー画面を介さず、手早くコミュニケーションを取ることが可能であったのだ。

 チャットには50音表から一文字一文字選択して変換する「ソフトウェアキーボード」、あらかじめ一定の文章を登録しておく「ショートカット」、色や形を組み合わせたシンボルによって意思疎通を図る「シンボルチャット」、特定の単語を組み合わせる「ワードセレクト」、が用意されている。
 また、専用規格のキーボードを用意すればさらに円滑にチャットできるほか、「ロビーアクション」というジェスチャーを取ることも可能となる。
 ソフトウェアキーボードではどうしても入力が遅くなるが密なコミュニケーションを取ることができ、ショートカットは軽い挨拶や戦闘中の急を要する連絡に使用可能、ワードセレクトではこの2つの中間のような感覚で使用でき、シンボルチャットやロビーアクションはよりユニークなコミュニケーションを取ることが可能、といったところか。
 また、ワードセレクトはソフトの言語設定に沿って表示されるため国や言葉の枠を超えてコミュニケーションを取ることが可能だったことも特筆に値するだろう。
 家庭用機におけるチャット機能としては、驚くほど高度で充実しているのだ。
 まさに「『はじめまして』から始まるRPG」(本作の代表的なキャッチコピー)というところである。

 改めて見るとこの「チャット」にボタンを一つ割いた采配は、本作を語るうえで無視できない部分だと思う。
 このせいで戦闘で使用できるボタンが限定され、3種のアタックと回復魔法、攻撃魔法、MP回復アイテムを設定したらいっぱいいっぱいという有様、強化魔法やら弱体魔法やら蘇生魔法やらを考えればどうしても枠を取り合って技能を取捨選択せざるを得ないという形になる。
 そんな不便を押してまで「チャット」を基本操作に取り入れたこと、そしてその不便が偶然にもキャラクターの役割分担を促し、攻撃重視や回復重視、弱体重視といったキャラクターの個性を演出していったことがやはり本作を「オンラインゲーム」たらしめていたと思えるのだ。

 なお、チャットが充実していると言っても本作はチャット専用のツールというわけでもない。
 これも本作の特徴の一つと言えるのだが、チャットにおいてはログウィンドウにメッセージが表示されるのではなく、


 [゚Д゚]
 ┏━Λ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
 ┃キャラクターの口元から吹き出しが出るのである。┃
 ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛


 つまり、生身のプレイヤーというよりはキャラクターというフィルターを通してコミュニケーションを取ることとなるのだ。
 次の項でそのキャラクターの個性、ビルドについて見て行くこととするが、その前にこの当時すでに「なりきりプレイ」、「RP」の概念があったことには触れておきたい。
 外見と能力に個性があり、自由に動かせるキャラクターがいて、幅広いコミュニケーションが取れることが、オフラインゲームでもチャットツールでもできない本作ならではの魅力であり、大ヒットの一因であったのかもしれない。


・キャラクタービルド

 本作の「主人公」は、「種族・性別」と「クラス」の組み合わせ9通りから選択し、外見を調整したプレイヤーの分身だ。
 といっても外見に関しては「顔」・「髪型」と「髪の色(スライダー)」、「服の色(選択式)」、「肌の色(選択式)」、「体型と身長(スライダー)」、しか設定できず、あとから服装を変更する着せ替えなどの要素もない(Ver.2で再設定はできるようになった)ので、現代からすればやや物足りないか。
 こうした「外見の設定」は後年の同様のゲームにおいて重要視され充実してゆく要素となったが、この点に関してはまだ黎明期のソフトと言うところだろうか。

 さておき、「種族」と「クラス」はそれぞれ3通り。
 ・平均的な能力と外見を持つ「ヒューマン
 ・長い耳を特徴とし、魔法に当たる「テクニック」の使用に長けた「ニューマン
 ・機械によって構成され、「テクニック」を使用できない代わり身体能力の高い「アンドロイド

 ・近接戦闘に長け大型の武器を使用できる「ハンター
 ・遠距離戦闘に長け複雑な銃器を使用できる「レンジャー
 ・テクニックの使用に長け高度なテクニックを使用できる「フォース

 だ。
 ただこれらは自由に組み合わせられるのではなく、あらかじめ設定された9通りの組み合わせから1つを選択する形式になる。
 続編「EP.1&2(通称GC版)」では選択可能な組み合わせも増えるが、今作ではまだ以下の通りだ。

 ・ヒューマー:ヒューマン男性+ハンター。高い攻撃力に加え補助テクニックで強化・回復も可能な万能キャラクター。外見は若手のイケメンだがアフロやモヒカンを選択することもできる。
 ・ハニュエール:ニューマン女性+ハンター。近接戦闘にはやや不安があるが攻撃テクニックでの範囲殲滅能力で補える。外見は露出の多い若い女性。
 ・ヒューキャスト:アンドロイド男性+ハンター。テクニックを一切使用できないが物理面は最強。ただしマテリアルで・・・(小声)。外見は鎧騎士。

 ・レイマー:ヒューマン男性+レンジャー。遠距離から戦闘に参加でき、状況に合わせてテクニックも使用できる柔軟なキャラクター。外見は壮年の兵士。
 ・レイキャスト:アンドロイド男性+レンジャー。遠距離から高威力攻撃ができるがテクニックが使えず足音がうるさい。[゚Д゚]<ハコモアイシテ
 ・レイキャシール:アンドロイド女性+レンジャー。メイドロボ風の外見に人気が高い。アンドロイドに共通の利点だが、一部の状態異常を無効化しトラップを視認することができる。

 ・フォマール:ヒューマン女性+フォース。どの武器においても専用の攻撃モーションを持ち、武器の選択によってはテクニックを使わない直接戦闘でも強い。外見は妙齢の僧侶。
 ・フォニューム:ニューマン男性+フォース。テクニック関連の能力が非常に高いうえ、モーションの観点でフォニュエールに勝るDPSを発揮できる。外見はバカ王子。
 ・フォニュエール:ニューマン女性+フォース。テクニック関連の能力が非常に高いが、近接戦闘は不得手。少女風ながらいくつか民族的なモチーフを取り入れた特徴的な外見を持つ。

 キャラクターは「レベルアップ」によってこういった得手不得手の特徴をさらに伸ばしてゆくこととなる。
 ただ、消費することで任意のパラメータを伸ばすことができる「マテリアル(当時種族ごとのキャップなし)」の使用や、「マグ」の装備によって任意の補正を加えることもできる。
 「マグ」とは生物のように成長する能力を持った機械装置で、プレイヤーは任意の消費アイテムを「エサ」として与えて「育成」させながら攻撃力や防御力といったパラメータを鍛えることができるのだ。
 また一定量成長すると「進化」して外見が変わったり、「フォトンブラスト」という特殊攻撃を習得したりもする。
 本作内ではレアアイテムとして複数個取得することもできるので、慣れてきたら状況に合わせて複数のマグを使うということもできるだろう。

 この「マグ」の選択もキャラクターの個性の一つと言うところで、攻撃力に極振りしたものだったり、「無敵」行動を持つ物であったり、機械の翼や蓮の花といった外見に特徴のある物だったり、と選択の余地があり、特に続編「EP1&2」では「シャトブリーダー」なんて呼ばれる育成師も現れたとか。

 話を戻すが、キャラクターの構成に次いで選択するのは「武器」だろうか。
 大まかな武器種別に関してはシステムが単純なこともあってあまり選択の余地があるとは言い難いのだが、本作には「エレメント」や「フォトン」による性能のブレ幅というものがある。
 お気に入りの武器を可能な限り理想に近い能力で入手する、現代では「(レア)掘り」と呼ばれる楽しみ方が出来たわけだ。
 その乱数的な要素の選別には時間と労力がかかり、自然と愛着がわくため、愛用品としてプレイヤー一人一人の個性の演出に一役買ったと言える。

 とくに、唯一無二の特殊な性能を持つ「レア武器」の存在は重要だった。
 レンジャーでも使えてノーコストでHP吸収攻撃を繰り出せるチェーンソー「チェインソード」や、どのキャラクターでも装備できるショット「インフェルノバズーカ」、モンスターの一部を再利用して作った「シノワビートブレイド」、といったものだ。
 入手が難しいのはもちろんのこと、その他の武器にあるような型にはまらない戦い方ができた「特別さ」が、より一層自分のキャラクターへの愛着を強くしたと言えるだろう。

 結論から言えばこうした装備の入手・選別が本作を継続してプレイする数少ない「目標」でありメインコンテンツであったわけだが、さてここには困った仕様が二つほどある。

 一つは「セクションID」というもので、キャラクターにはその名前によって決定される「10種類のID」があり、これによって出やすいアイテム・出づらいアイテムが強制的に割り振られてしまうというもの。
 つまり、剣を使うハンターなのに銃ばかり出る設定になったり、テクニックを使えないアンドロイドなのに高Lvテクニックばかり出る設定になったり、といったことが起こりうるわけだ。
 オンラインプレイにおいてはパーティーのリーダーに割り振られたIDがパーティー全体に適用されたほか、プレイヤー同士でアイテムをトレードして解決できむしろ交流を促す要因となっていたわけだが、ソロプレイへの影響を考えればよくできたシステムとは言い難いところ。
 「PSO」シリーズでは続編もこのシステムを取り入れたが、「PSU」など後継シリーズでオミットされたのはむべなるかなというところだ。

 もう一つは、無印版の後に追加された「Ver.2」における「アルティメット」難易度の設計だ。
 この難易度では敵キャラクターのパラメータが別物と言えるほどに強化され、とくに「回避率」の伸びによってそれまでに入手していた愛用品のほとんどがMiss連発の不用品と化してしまったのである。
 他のプレイヤーと協力して遊ぶ「オンラインゲーム」である以上はこの変更を受け入れなければ継続して遊べなくなったわけだが、この難易度の激変は旧コンテンツをことごとく殺す悪手だったと思わざるを得ない。
 同作ではまた「ダウンロードクエスト」の導入という試みも行われていたのだが、こちらはまだ試験的な導入にとどまっていたのが惜しまれるところだ。


・ゲームボリューム

 さて、本作の舞台は拠点となる街が一つと、構造がほぼ固定化されたメインダンジョンが4つ、ショートストーリーを追いながら専用のダンジョンを探索する「クエスト」が21個+αといったところ。
 さらに「ノーマル」、「ハード」、「ベリーハード」、「アルティメット(Ver.2)」とストーリーの周回数に応じた難易度が設定できるわけだが、この数から言えば何百時間とプレイするほどのゲームボリュームは感じられないだろう。

 というわけでやはり「武器」についてより掘り下げてみたい。
 まず、繰り返しになるが武器には「エレメント」や「フォトン」による性能のブレ幅というものがある。
 「エレメント」とはコモン武器に付きうる特殊な能力で、武器の先頭に特別な名前が付き、「エクストラアタック」で様々な効果を発揮できるようになるというもの。
 例えば「ヒートセイバー」なら炎属性付きの攻撃を繰り出せる片手剣、「ドレインブラスター」なら相手のHPを吸収できるライフル銃、「バーサークエッジ」なら自分のHPを減らしながら高威力の攻撃ができる一対のナイフ、という具合だ。
 世の中には「マスターソード」や「デビルビーム」、「ヒートロッド」といった武器を熱心に探し集めるプレイヤーもいたようだが、まあそれは置いておこう。

 「フォトン」とは一部を除いてどの武器にも付きうるボーナスで、「〇〇のダンジョンの敵に〇%ダメージボーナス」、あるいはまれに「命中率に〇%ボーナス」が付与されるというもの。
 また本作は「グラインダー」というアイテムを消費して武器を強化(+1/1個、確実に成功)することができ、この強化値の限界が低レアリティの武器ほど高いという特徴があるため、初期に特性の充実した武器を手に入れた場合も無駄にならずしばらく使い続けることができるという計らいもある。
 Ver.2では見事にぶっ壊れたし、後継のオンラインシリーズでは強化が使用の前提みたいなことになる武器や作品も出たが、まあ本来は低レアの救済くらいが強化システムの正解なのだろう。

 さておき、「スペシャルウェポン」と「レア武器」という「エレメント」が付かない特殊な武器もある。
 「スペシャルウェポン」は、コモン武器と同様の外見ながら「エレメント」が固定されていて高い性能を持つ武器群だ。
 高難易度のエリアでは通常のコモン武器に混じって入手できるようになり、順当に行けば武器はこれらに更新されてゆくこととなる。
 もっとも、気に入ったエレメントやフォトンが無いとすればコモン武器を使い続けても構わない水準だろう。

 「レア武器」はその他の武器とは異なる特徴を持ち、本来装備できないクラスで装備出来たり専用のモーションで攻撃出来たりといった独自性を持つ。
 ゲームバランス崩壊上等の「ぶっ壊れ」から見た目以外に特徴のない「ネタ武器」まで多岐にわたり、相応に入手に困難が伴うため多くのプレイヤーにとって共通した目標となった。
 同じ武器を目指す者同士でパーティーを組むことが出来れば、たとえ全く同じダンジョンを何十周することになろうともその過程は娯楽として楽しめた、と言うところである。
 現代(2019年3月末)のオンラインゲームにおいても、希少な成果を求めて同じ工程を繰り返す、という構造は大きく変わらない普遍的な物であると言える。

 ところが、本作にはここで大きな問題がある。「データの改造」である。
 本作はプレイヤーのデータを手元のビジュアルメモリに保存し、サーバーなどに情報を残さない設計であったため、データ改造によってレアアイテムを入手するという不正が横行してしまったのだ。
 しかも、本作にはアイテムのトレードの概念があり、こうした不正をアイテムの配布という形で拡散しようとする者も現れたのである。
 さらには、運営側・・・セガにおいてこういった不正を取り締まろうという動きは無く、ユーザー間の良識にゆだねられて相応に揉めることとなったという。

 ・・・というか、本作には不正対策のためかオンラインモードで正常にゲームを終了しなかった場合アイテム全ロスト(Ver.2では若干緩和)とかいう狂気の仕様があり、他にもセーブデータとゲーム機本体の情報が結びついていて本体が破損すれば実質データロスト、キャラクターが戦闘不能になるとその場に装備武器を落とすが他のプレイヤーが拾えるので泥棒が発生、ととんでもない仕様が散見される。
 黎明期の粗さと言うべきか、公式BBSの管理もロクにしていなかったセガの怠慢と言うべきか、まあさすがに現代では考えられない特殊なケースとして深く考えないこととしよう。

 脱線になるが、個人の考えとして「ゲーム性(テレビゲームに限らず)」というものは「ルール」、「参加者」、「攻略と成果」、の3つで成り立つものだと思っている。
 ルールが定まっておらずコロコロ武器やキャラクターの性能を変えるようでは成り立たないし、
 プレイヤー(ユーザー)が減って頭数が揃わなければ始めることもままならず、
 参加者の間で成果に変化が無ければより良い結果を出そうと工夫する意味もない、
 と言うところだ。
 これを踏まえたうえで、データ改造というのは「ルールを破ること」や「他人とは特別な状況下に置かれること」、「成果だけを得ること」、に快感を見出しているのであって、ゲームのゲーム性を楽しむ行為では決してないし、他人を巻き込むのはさらなる迷惑行為に他ならないと明言しておきたい。

 と、不愉快な話にしてしまったので本題に戻ろう。
 もう一つ本作で語るべき武器として、「Ver.2」で追加された「S武器」というものがある。
 これはレベルや装備、マップが固定化された「チャレンジモード」を高評価で踏破することによって獲得できる景品であり、武器種別を選択して好きな名前を付けることができる自分だけの武器である。
 グラインダーによる強化上限も「+99」までと破格の数値であり、この武器がキャラクターの個性における一つの到達点であったと言えるだろう。
 ただし、くだんの「チャレンジモード」とはオンライン限定のモードであり、2人以上の参加が必須。
 少々くさい事を言うようだが、本作においては信頼のおける仲間こそが最高のレアだった・・・とまとめられるだろう、うん。
 誰かのせいで失敗するギスギス感というのも、この「チャレンジ」で作られてしまった感が無いでもないのだが・・・。


・ストーリー

 さて、ここまで全く触れていないが本作のストーリーについても簡単にまとめておこう。

 「パイオニア計画」…それは、母なる大地の衰えにより余儀なくされた大規模移民計画である。
 無人探査機により発見された惑星「ラグオル」に、超長距離航行用の移民船「パイオニア1」が到着した。
 移民団は、周辺調査を行い、生活の拠点となる「セントラルドーム」の建設に乗り出した。

 そして7年後、「パイオニア1」からの招聘しょうへいを受けて、本格的な第二移民船「パイオニア2」が惑星「ラグオル」に訪れる。
 衛星軌道上に「パイオニア2」が到着し、「セントラルドーム」と通信回線を開く直前、惑星表面上に大爆発が発生。
 「セントラルドーム」との通信は途絶えた。

 いったい惑星「ラグオル」に何が起こったのだろうか?

 (説明書より抜粋)

 ・・・そして、プレイヤーは「パイオニア2」所属の互助組織「ハンターズギルド」の一員として惑星ラグオルの調査を依頼されることとなる。
 大爆発の原因は何か、「パイオニア1」の住人たちはどこへ消えたのか、惑星ラグオルに眠っていた古代文明とは何か・・・。
 そして、「パイオニア1」に先んじて搭乗していた天才ハンター、「赤い輪のリコ」の行方とは。
 本作の謎の数々は、ダンジョンに残された「英雄」の足跡を追うことで少しづつ明かされてゆくこととなるのである。

 また、物語本編と並行して進めることができるショートストーリー、「クエスト」も複数用意されている。
 これらはダイエットのためにエネミーと戦闘するので護衛してほしい、とか、甘いものが無くて頭がおかしくなりそうなので何か見つけてきてほしい、とか、コミカルなものがあり息抜きになるほか、回復アイテムが高カロリーで太る原因になるとか「パイオニア2」では食事制限が厳しいとかと言った世界観を掘り下げる役割も果たしているのが心憎い。
 反面、ストーリー中のプレイヤーキャラクターの行動や反応は乏しく、どういった受け答えをしているかはほぼプレイヤーの想像力にゆだねられていると言える。

 正反対に世界観に乏しくプレイヤーキャラクターを乗っ取って好き勝手動かされるという比較例を挙げられないでもないが、ともあれ。
 少々味気ないとも言えるこのストーリーデザインだが、「プレイヤーの自由行動によってのみ物語が進行する」という一点で言えばむしろオンラインゲームとして理想的なデザインとさえ言ってよいだろう。


・Ver.2でのその他の追加

 「アルティメット」や「チャレンジモード」については軽く触れたが、「Ver.2」になって追加された要素はもう少しある。
 具体的にはプレイヤー同士で対戦を楽しむことができる「バトルモード」、ボールゲームを遊ぶことのできる「新ロビー」、同じ目的のプレイヤーを検索できる「チョイスサーチ」、などだ。
 もちろん、「レベルキャップの開放」や「新レアの追加」も忘れてはならない。
 一方で無印版の内容は余すことなくプレイできるので、もし今からプレイしたいとなれば「Ver.2」のディスクを探したほうが若干お得・・・かもしれない?


・まとめ

 本作は、オンラインゲーム史においては「家庭用機向けオンラインゲーム初のヒット作」と言ってよい存在だろう。
 これは「ドリームキャスト」というハードが先進的にネットワーク通信機能を取り入れて開発されたものであり、比較的低いハードルでオンライン協力ゲームという「新体験」を味える土台となったことが大きい。
 また、先進的であったがためにユーザーを取り合う競争相手がいなかったことも当時の覇権を取る要因となったはずだ。
 とはいえ、それだけではない。
 アクションゲームとしては操作性が劣悪で、RPGとしては物語が薄く、内容は難易度を分けることで水増ししているといった本作だが、一方でコミュニケーション機能は驚くほど充実していて、ゲームを続ける明解で共通した目的があり、個人個人の個性を演出できる、と、多くのプレイヤーが参加する「オンラインゲーム」として必要な部分こそは備えていたのである。

 例えばキャラクターを見ることでクラスやレベルなどのプレイスタイルを類推でき、すぐに同じレアアイテムに向かって見知らぬ他人、それもはるか遠い異国の相手とも会話を交わしながら協力することができるというのは、やはり唸るべき水準だ。
 特にコミュニケーションに関して言えば、相手の冗談に対してアタックを返してツッコミを入れる、キャラクターに合わせたなりきりネタをショートカットに入れる、変顔のシンボルチャットで雰囲気だけを伝える、と、文字の入力だけにとどまらない選択肢がありごく自然に意思疎通できたことが煩わしさ無くオンラインゲームの面白さを伝えることに成功した秘訣だったように思う。
 これから考えると、「PvP」や「ランキング・リーダーボード」もオンラインゲームならではのコンテンツではあるが、そうしたゲーム性の追求以外にも娯楽を見出せるのがオンラインゲームの強みと言えるのではないか、と愚考するところだ。

 一方で、本作において不正に対する対策やアップデートによるボリュームの追加が不足していた件は「オンラインゲーム」とするならば改めるべき問題点であっただろう。
 追加ディスクの「Ver.2」で多少改善された部分もあったが、継続的なサポートが必要なこれらの問題に対して本作はそもそも対応できる設計に無かった・・・のかもしれない。
 また料金体系に関しても、当時の通信料に対して良心的な「月額代」の設定は老婆心を掻き立てられるところ。
 本作はその後2007年4月までオンラインサービスを継続していたが、本作の展開当時経営危機に陥っていたセガの事を考えると本作は利益的にはヒット作とは言い難い状況にあったのではないかと妄想してしまうのだ。
 例えば後継作「PSU」が1260円/月に始まり、後にアイテム課金や有料クエストまで取り入れたハイブリッド料金になったことなどは本作の反動があったような、反省は無かったような。

 さておき、今ソロでプレイすれば「粗い作品」止まりであるだろう本作だが、それでもかつて大勢を熱狂させ、「月額制」や「ハクスラMO」といった形でオンラインゲームの礎を作った魅力に思いを馳せることはできるだろう。
 ソシャゲに台頭され、すっかり下火となった感のある現在の国内オンラインゲーム事情・・・。
 オンラインゲームというものに新鮮味が無くなり、多数の競争相手の中でユーザーを取り合っているという「時代」が悪いと嘆くこともできるが、その前に内容にオンラインへの参加しやすさがきちんと守られているかは疑ってみてほしい。
 グラフィックを追求しすぎて必要スペックが跳ね上がっていたり、特定の時間に報酬が集中するシステムを用意したり、攻略に特定の職構成・人数を必須とする高難易度だったり、常に更新を必要とする装備群だったり・・・。
 オンラインゲームに本当に求めたいものは何なのか?
 本作には、「はじめまして」の言葉と共にその答えが隠されているかもしれない。





・関連作品

・「ファンタシースター」シリーズセガの看板RPG・オンラインRPGシリーズ。「極端に科学技術が発達したファンタジー世界」という独特の世界観を持ち、根強い固定ファン層を獲得していた。
・「ファンタシースター四部作」セガ・マークIII、メガドライブでリリースされていたRPG作品4つの総称。
世界観のほか、3Dダンジョンや女性主人公、どこでもセーブ可能など当時目新しい試みが多数取り入れられていた。
リメイク・移植においては「コレクション」という形でセットで移植されることが多い。
本作以降のオンライン作品との接点は、「ダークファルス」の存在やいくつかの単語の名称にとどまりプレイしていなくとも大きな問題はない。
・「PSO」シリーズ本作とそのボリュームアップ版、および続編にあたり「Episode」として追加されていったシリーズの総称。
国内外にサービスを展開し、昨今のハクスラMOアクションRPGの礎となった作品。
・「PSU」シリーズ「PSO」シリーズから世界観を一新し、WindowsとPS2向けにサービスを展開したシリーズ。
が、サービス開始から多数の問題を発生させ自虐ネタに事欠かないシリーズともなった。
・「PSPo」シリーズ「PSU」シリーズをPSP向けに調整したシリーズ。「1」・「2」の開発はアルファシステム。
当時大ブレイクしていた「モンハン」に続く形とはなったが、大きなヒットを記録しPSPの看板タイトルの一つに数えられるほどとなった。
個人的には「2」がシリーズの理想形に最も近い作品であった。
・「PSZ」「PSO」の世界観をベースにDS向け作品として作られたシリーズ。
とはいえ世界観は年少プレイヤーでも楽しめるライトでハートフルなデザインであり、システムも「フォトンアーツ」を導入したアクション色の強い物となっている。
現在(2019年3月末)のところ正式な続編はないが、これを最高傑作と推す声もある。
・「PSO2」当サイトでも大きく扱っていたタイトルなのでここでは割愛。どうしてこうなった。
・「PSO2es」「PSO2」のスピンオフタイトル。こちらも内容は割愛する。
・「PSNova」「PSO2」のスピンオフタイトル。開発はトライエース。
最初期はPSO2の要素を再構築したゲームバランス、「ギガンテス」という巨大エネミー、といったわかりやすい強みがあったのだが、そもそも料金面で基本無料のPSO2が同ハードで遊べたため話題は乏しかった。
ストーリー内容や、その後のアップデートによる改悪、DLCの料金体系が劣悪だとして評価は芳しくない。
・「PSイドラ」実質的な「PSO2」のスピンオフタイトル。
PSシリーズ30周年記念作品として制作されたソーシャルゲームだが、シリーズとの接点があまりに少ないほか「イドラ化」やガチャの内容などに批判意見が多く、やはり評価は芳しくない。
・「モンスターハンター」シリーズカプコンの「狩りゲー」、アクションRPGシリーズ。
シリーズと直接的な接点は(ほぼ)ないが、黎明期において本作が企画の元になったと言われている。
・「Borderlands」シリーズ2kゲームスのFPSアクションRPGシリーズ。
シリーズと直接的な接点はないが、個性豊富な武器メーカーや巨大モンスターの登場するSFといった世界観が「PSU」と近く、レアを狙うハクスラMORPGとしてプレイスタイルも似る。


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