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PHANTASYファンタシーSTARスター POTABLEポータブル


プラットフォームプレイステーションポータブル
開発アルファシステム
発売セガ
発売年月日2008年 7月
ジャンルロールプレイングゲーム
プレイ人数1〜4人
セーブデータ1つ384KB、プラスDLC分


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
コンパクトだが移植度高し 完結する外伝 紙芝居型 雄大 成長が早め 続編へのデータ引継ぎはほぼ無し





・ゲーム概要

 プレイステーション初の携帯ゲーム機「プレイステーションポータブル」のキラーソフトの一つとなったアクションRPG作品。
 「ポータブル」の題の通り本作はオンラインアクションRPG「ファンタシースターユニバース」を原型とし、開発を「アルファシステム」にゆだねて制作されたタイトルである。
 本作の前に「モンスターハンターポータブル」、および「2nd」がミリオンセラーを記録する大ヒット作品となったように同様のゲームシステム(マルチプレイ可能なハクスラ型アクションRPG)はPSPと相性が良く、本作も70万本弱を売り上げる好ヒット作に数えられることとなった。
 一方でモンハンの後を追う形になったため「モンハンのパクリ」などと批判する口もあったが、なあにこれは了見の狭い子供特有の物だろうと一蹴しておこう。

 サービスから約2周年を迎えつつある原作「PSU」の知名度に、ゲーム雑誌付属のUMDやデータダウンロードでプレイできた大ボリュームの体験版の配布、そしてまあ「モンハン」とは正反対のSF的でヒロイックな世界観。
 当時のゲーム勢力図において一つの輝ける星となった本作、「PSPo」の内容について見てみることとしよう。


・移植度

 繰り返しになるが、本作は「PSU」をベースにした外伝的な作品。まずは本編経験者向けに簡単な比較をまとめてみよう。
 ゲームの発売時期としては「イルミナスの野望」の後であり、「ジャストアタック」や「SUVウェポン」・「ナノブラスト」が実装済み。
 武器やPAに関しては当時実装されていたすべての要素が収録されており、アクションゲームとしての面白みはほぼ余すことなく再現されていると言っていい。
 かつ、育成面は超長時間をプレイするオンラインゲームと違ってサクサクレベルアップできるくらいの目標値に整えられている。
 顔のパーツを選択し好きなコスチュームを組み合わせる自由度の高いキャラクタークリエイトも健在であり、これらを「ポータブル」に楽しめるのだからソロプレイするアクションゲームとしての面白さは本編より上と評しても構わないだろう。

 反面、インターネットを利用したマルチプレイ機能は完全にオミットされてしまっている。
 本作におけるマルチプレイは近距離のPSP間で通信を行うアドホック・パーティー限定の物で、気心の知れた仲間と一か所に集まってプレイするという形態になる。
 このため「チャット」も「マイショップ」もなし。当然・・・なのか「カットイン」もなく、「ロビーアクション」はごく限定的な種類が使用可能という程度にとどまっている。
 さらに「マイルーム」と「ロビー」がほぼ削除
 「マイルーム」はパートナーマシナリーとの会話画面のみとなり、「ロビー」は背景画像上のアイコンを選択して機能を利用する形となった。
 「PSU」は世界観の表現にこだわって特にロビーの制作に力を入れた(入れすぎた)作品であったが、その辺りはバッサリと切り捨てられたというわけだ。

 また、ストーリーも負荷を考えてかプレイヤーキャラクターが一切映らず、登場人物の立ち絵とテキストウィンドウのみで展開するという形に改められた。
 もっとも変わらずフルボイスであり、キャラクターの主観視点で物語に参加していると考えればあまりチープな感じは受けないと思われるが。

 総括すると仮想世界での滞在を楽しむようなPSU本編とは大きく毛色を変えた、シンプルなマルチプレイヤー・アクションRPGにシェイプアップされた作品と言うところである。
 システムや世界観は多くを共有するが、求める面白さは異なるのだと念頭に置いてからより詳しい内容を見て行くことにしよう。


・戦闘システム

 本作はリアルタイムで移動や攻撃、アイテムの使用といったアクションを行う「アクションRPG」である。
 キャラクターは所定のマップの中でボスキャラクターを撃破するなどの目標達成を目指す「ミッション」に参加し、奥地へ進む中で道を阻む敵がいたらこれを殲滅、エネミーの方を向いて「アタック」や「スキル」を実行したり状況に応じて魔法に当たる「テクニック」や「アイテム」を使ったりし、道が開けたらより奥に進んでゆく。
 本作の「ミッション」の内容は複雑な仕掛けよりも小さいエリア内で戦闘を繰り返すことを主としたごくシンプルな構成であり、戦闘の報酬に期待して同ミッションを繰り返しプレイする「周回」を念頭に置いた設計である。
 ・・・とまあ、ベースシステムはすっかりおなじみだ。

 キャラクターはいくつかの「戦闘タイプ」を選択して能力値や装備可能な武器などの傾向を定め、装備した武器によって攻撃アクションを決定させる。
 武器は
 ・攻撃が当たる距離まで接近する必要があるが、PPを消費する強力な「スキル」とPPを回復させる効果がある「通常攻撃」の2種とを臨機応変に繰り出せる「近接武器
 ・攻撃ごとにPPを消費するが遠距離から攻撃出来、一部はキャラクターの主観視点からの正確な攻撃も可能な「射撃武器
 ・攻撃ごとにPPを消費するうえに攻撃ごとの硬直も長いが、追尾や座標指定などの特殊な軌道を持ち専用の防御力を参照する「法撃武器

 に大別することができ、戦闘タイプもそれぞれの扱いを主としたものに分類できる。
 また武器には「片手武器(左右固定)」と「両手武器」の概念があり、うち片手武器は右手用の武器種と左手用の武器種を同時に装備して併用した戦闘が可能である。
 例えば片手剣「セイバー」で攻撃しつつ距離が空いたら片手銃「ハンドガン」で追撃したり、片手鞭「ウィップ」の下準備として片手ビット「マドゥーグ」で広範囲に防御力の弱体化テクニックを放ったり、といった具合だ。
 これらは「アクションパレット」という形で一度に6枠まで登録し好きなタイミングで切り替えることができるので、様々な状況を想定して準備を整えたいところだ。
 本作のプレイヤーキャラクターは細かに外見を調整可能であると共に、こうした柔軟な戦闘スタイルを設定可能であることで各々の個性が出る魅力的なマルチプレイヤー向けゲームになっていたと言える。


 さて、近接武器の「スキル」についてはもう少し詳しく見てみよう。
 「スキル」とは武器アイテムごとに管理されている「PP」を消費して繰り出す強力な攻撃のことだ。
 PPを消費しない「通常攻撃」が目の前目掛けて武器を振る程度であるのとは対照的に、体全身を使って突進したり飛行したりして広範囲を攻撃する物が多い。
 本作では「広範囲に命中する攻撃は巨体を持つボスに対して複数ヒットし有効打となる」というシステムもあって戦闘ではこれが中心となりがちだが、反面攻撃が長く途中で中断することもできないので攻撃にはリスクもある。
 もっとも、攻撃の最中には相手からの攻撃を受けてもひるまない「頑強(スーパーアーマー)」の特性を持つ物が多く、これらの動作中に回復アイテムを使って回復することも可能なため、リスクを踏まえても戦闘ではこれらを連発するのが有効だ。
 一方、相手からの攻撃を防ぐには移動して避けるか命中率・回避率のパラメータによって運良く無効化できるかしかなく、そもそもの攻撃もスキルの激しい動きをカバーするような広範囲やら追尾やらと回避させる気のない物が揃っている始末。
 総括として本作の戦闘は全力で殴りながら殴られろという脳筋仕様が基本である。
 ここにようやく回避・防御アクションを取り入れたのが本作と同時期に開発されていた「PSZ」や次回作「PSPo2」なのだが、まあ本作はそういうものだと思っておこう。
 特定のタイミングで追加入力を行うことで攻撃のダメージが増す「ジャストアタック」システムがあるので、闇雲ではない正確な入力に意味があるのがせめてものアクション性と言うところだ。


・キャラクタークリエイト

 本作の舞台となる「グラール太陽系」には4つの種族があり、プレイヤーはこのうちから1種と性別を選択してゲームを開始することとなる。

 ヒューマン:他の種族の原型となった種族。ガーディアンズコロニーや温暖な惑星パルムに多く入植しているが、他の惑星やコロニーでも活動しており太陽系内で最多の人口を持つ。
 キャスト:ヒューマンの労働力として、彼らに似せて作られた機械を基とする種族。500年にわたる戦争によって人権を獲得しており、現在は主戦場となった惑星パルムを再興して管理している。
 ニューマン:太陽系内で用いられる「フォトン」というエネルギーとの親和性を高めるよう、感覚系を主にヒューマンから人工的に進化させられた種族。水の豊かな惑星ニューデイズの中心を成している。
 ビースト:第三惑星モトゥブ開発のために獣に似た強靭な肉体を持つよう進化させられた種族。肉体の組成を変化させて巨大な獣の姿になる「ナノブラスト」という特殊能力を持つ。

 それぞれの種族は外見のみならず能力面にも特徴があり、ニューマンはテクニック(魔法のようなもの)関連の能力が高いが非力で打たれ弱く、ビーストは最高の攻撃力を持つが命中率(当てた攻撃の効果が出るかどうかの判定)が低く、ヒューマンは比較的テクニックの適性があるが器用貧乏。
 そしてキャストはテクニック関連の能力が壊滅的な代わりそれ以外が高水準でまとまっている、という具合となっている。
 また本作ではキャストに巨大な機械兵器を召喚して周囲を一掃する超必殺技「SUVウェポン」が、ビーストに攻撃力や防御力を強化した巨大な獣の姿に変身する超必殺技「ナノブラスト」が、それぞれ用意されている。
 反面、ヒューマンとニューマンにはとくに何もない。これも「2」での改善点の一つとなるので覚えておきたい。

 外見に関しては、鼻や地肌などを決める顔のベースに加えまゆ、目、まつげ、耳、髪型、を選択でき、身長や体型、髪の色はスライダーで詳細に設定可能である。
 衣類についてはゲームを進めることでNPCショップから購入でき、トップス、ボトムス、シューズ、を組み合わせたり一体型のスーツを選択したりしてコーディネートできる。
 本作の防具は「シールドライン」という不可視の存在なので、防具と外見は無関係に設定可能なのだ。
 また世界観を表現する場が大幅に縮小した本作ではあるが、衣類の品ぞろえは惑星ごとの文化の差が現れており見ごたえが有る。
 惑星パルムは近未来的ながらもカジュアルなウェア、
 惑星ニューデイズは和風で神道を思わせるものが多く、
 惑星モトゥブは毛皮などを使用し露出も多いワイルドなスタイル、
 といった具合だ。
 マルチプレイヤー要素に乏しいため着せ替えてもあまり張り合いがないはずだが、それにしては当時オンラインの本編に実装されていたものすべてが収録され、十分満足のゆくボリュームが用意されていると言える。

 キャラクタークリエイトに関してはオンラインゲームである本編とほぼ変わりなく、もしかしたらここでキャラクターへの愛着を育んでオンラインへの導入口となるよう目していたのかもしれない。


・ストーリー

 本作は本編「PSU」のEP1とEP2の中間の時期に当たる物語である。
 「グラール太陽系」に襲来し環境を脅かした浸食生命体「SEED」。
 個の生物として活動するほかにウィルスのように他の生物に感染し変質・凶暴化させる能力を持ち、果ては土壌そのものや機械を制御するAIにも干渉して大規模な被害をもたらした存在である。
 その最たるものは「Aフォトン」を研究するコロニーひとつを丸々取り込んで「巣」に作り替えた「HIVE」事件であろう。
 しかし、これはガーディアンズのイーサン・ウェーバーや同盟軍の働きによって鎮圧され、以降太陽系内で大規模なSEEDの発生は確認されていない。
 現在SEEDの名が挙がる機会というのは散発的に発生する「残留SEED」や、凶暴化した原生生物の浄化という程度までに鎮静化していた。

 「あなた」は、そんな中で一人のガーディアンズとして活動を始めたばかりの新人である。
 ガーディアンズ総裁の娘「ライア・マルチネス」を教官としてひどくしごかれた甲斐あって実力が高く評価され、GRM社から新世代キャストのプロトモデル「ヴィヴィアン」のパートナーとしてモニター試験を任されることとなった。
 なんでも従来のキャストよりも優れた処理能力と、「人間らしい」感情表現を搭載するべく設計されたモデルだという。
 といっても、今現在のヴィヴィアンは人物としての基本的な人格を備えているもののいまひとつ頼りなく、人間らしさを意識したり価値観の違いに反発したりと苦悩しているさまが伺えるのだが。

 この日、あなたはそんな彼女を伴ってガーディアンズ・コロニーで起きたガードナーマシナリーの暴走事件の調査に訪れた。
 これも恐らくは各地で散発的に発生する残留SEEDの影響だろう・・・と結論付けるころ、あなたはここで「ヘルガ」と名乗る事件の首謀者と、その背後にある「イルミナス」という組織に出会うのだった・・・。


 ・・・というところ。
 本作のストーリーは各惑星を二回りするくらいというやや物足りない長さだが、マガシとドウギを除く前作の主要人物が勢ぞろいする豪華な内容となっている。
 これはファンサービスでもあると思うが、また理知的なビーストであるレオや、ニューマンながらフォトンへの適性がほとんどないカレンといったキャラクターが物語の世界観を説明するうえで適したキャラクターであったという事情もあるのだと思う。
 彼らとの出会いを経て各種族へのイメージや常識を改めてゆくヴィヴィアンは、かつてのイーサンと同じく主人公兼狂言回しとしてふさわしい人物であると言える。
 かつ、それがプレイヤーキャラクターとは別に存在することでプレイヤー自身には新人であったりローグス上がりであったりカムバックしたベテランだったりといったロールプレイの幅が守られている。
 一方でプレイヤーと登場人物の関係が希薄と言うことも無く、例えば女性キャラクターを選択した場合はナンパ魔のヒューガに声を掛けられる・・・というサブイベントが起きることは印象的だ。

 何かが飛び切り目を引くというわけでもないが、本作のストーリーは過不足のない模範的な水準であると評せるだろう。


・まとめ

 「世界観」というテーマにこだわった「PSU」のスピンオフながら、あくまで「マルチプレイ可能なハクスラ型アクションRPG」というベースを守りシェイプアップされた本作、「PSPo」。
 マイルームやロビーが消えた寂しさがある反面、アクションやキャラクタークリエイトは見事に移植されており手軽に遊べる「ポータブル」版タイトルとしての水準は高い。
 各々の個性を形に起こしたキャラクターを操って、余暇時間に手軽にアクションを楽しみ、仲間同士集まれば協力して攻略し、お互いの育成やレアアイテムを比べてまた遊ぶモチベーションとする、同ジャンルの面白さの基盤はしっかりと押さえていると言っていいだろう。
 アクションの単調さや極端なレアアイテムがない点に物足りなさはあるものの、その辺りの不満解消は「PSU」本編や続編「2」で・・・といった所だろうか。
 一時ブームだっただけあってワゴンゲーとして見つけるのも苦ではないはずなので、シリーズや同ジャンルを体験してみたいという人に特にオススメの一本である。





・関連作品

・「ファンタシースター」シリーズセガの看板RPG・オンラインRPGシリーズ。「極端に科学技術が発達したファンタジー世界」という独特の世界観を持ち、根強い固定ファン層を獲得していた。
・「ファンタシースター四部作」セガ・マークIII、メガドライブでリリースされていたRPG作品4つの総称。
世界観のほか、3Dダンジョンや女性主人公、どこでもセーブ可能など当時目新しい試みが多数取り入れられていた。
リメイク・移植においては「コレクション」という形でセットで移植されることが多い。
本作以降のオンライン作品との接点は、「ダークファルス」の存在やいくつかの単語の名称にとどまりプレイしていなくとも大きな問題はない。
・「PSO」シリーズオンラインRPGシリーズ第一作とそのボリュームアップ版、および続編にあたり「Episode」として追加されていったシリーズの総称。
国内外にサービスを展開し、昨今のハクスラMOアクションRPGの礎となった作品。
・「PSU」シリーズ「PSO」シリーズから世界観を一新し、WindowsとPS2向けにサービスを展開したシリーズ。
が、サービス開始から多数の問題を発生させ自虐ネタに事欠かないシリーズともなった。
・「PSPo」シリーズ「PSU」シリーズをPSP向けに調整したシリーズ。「1」・「2」の開発はアルファシステム。
当時大ブレイクしていた「モンハン」に続く形とはなったが、大きなヒットを記録しPSPの看板タイトルの一つに数えられるほどとなった。
個人的には「2」がシリーズの理想形に最も近い作品であった。
・「PSZ」「PSO」の世界観をベースにDS向け作品として作られたシリーズ。
とはいえ世界観は年少プレイヤーでも楽しめるライトでハートフルなデザインであり、システムも「フォトンアーツ」を導入したアクション色の強い物となっている。
現在(2019年3月末)のところ正式な続編はないが、これを最高傑作と推す声もある。
・「PSO2」当サイトでも大きく扱っていたタイトルなのでここでは割愛。どうしてこうなった。
・「PSO2es」「PSO2」のスピンオフタイトル。こちらも内容は割愛する。
・「PSNova」「PSO2」のスピンオフタイトル。開発はトライエース。
最初期はPSO2の要素を再構築したゲームバランス、「ギガンテス」という巨大エネミー、といったわかりやすい強みがあったのだが、そもそも料金面で基本無料のPSO2が同ハードで遊べたため話題は乏しかった。
ストーリー内容や、その後のアップデートによる改悪、DLCの料金体系が劣悪だとして評価は芳しくない。
・「PSイドラ」実質的な「PSO2」のスピンオフタイトル。
PSシリーズ30周年記念作品として制作されたソーシャルゲームだが、シリーズとの接点があまりに少ないほか「イドラ化」やガチャの内容などに批判意見が多く、やはり評価は芳しくない。
・「Borderlands」シリーズ2kゲームスのFPSアクションRPGシリーズ。
シリーズと直接的な接点はないが、個性豊富な武器メーカーや巨大モンスターの登場するSFといった世界観が本作と近く、レアを狙うハクスラMORPGとしてプレイスタイルも似る。


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