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聖剣伝説せいけんでんせつ4


プラットフォームプレイステーション2
開発スクウェアエニックス
発売スクウェアエニックス
発売年月日2006年 12月
ジャンルアクションアドベンチャー
プレイ人数1人(2人で操作することも可能)
セーブデータ120KB、4ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
自由度が高い 寓話的 幻想的・描写が細やか 幻想的・上質 工夫が生きる 望まれなかった一本





・ゲーム概要

 「原点回帰」をテーマに、スクウェアの人気2DアクションRPG「聖剣伝説」シリーズの最新作として発売された3Dアクションゲーム
 前作「聖剣伝説3」の発売から11年の沈黙を挟んで発売された新作・・・という期待が大きかったゆえに、その見当外れな内容にブーイングが殺到、クソゲーの烙印を押されてしまったという罪作りな一品である。
 が、単品のアクションゲームとしてみればその水準はかなり高く、「クソゲー」の名に似つかわしくない傑作である。

 本来であればシリーズを1からレビューするべきなのであろうが、諸事情から本作を単独でレビューする。


・シリーズのおさらい

 ・・・とはいえ、本作の内容を語る前に軽く「聖剣伝説」シリーズの歴史を振り返っておこう。

 ・「聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜」(1991、GB)
 記念すべき第一作。当時の最新機スーパーファミコンで製作されていた「FFIV」に先駆け、ゲームボーイでシリーズの「外伝」として発売されたもの。
 その内容は見下ろし型のアクションRPGであり、FFとの関連は「チョコボ」や「魔法・アイテムの名称」といったごく一部分に限られていたが、独自の人気を博したらしく「聖剣伝説」としてシリーズ化するきっかけを作り出した。
 また、その後数度にわたってケータイ用アプリとして(カラー付きで)配信されており、現在でもプレイ可能となっている。

 ・「聖剣伝説2」(1993、SFC)
 第二作にして「ファイナルファンタジー」の外伝という枠を離れ、「聖剣伝説」を独自のシリーズとした一作。
 バグの多さが目に付くが、グラフィック、音楽、ストーリー、システム、全てが高いレベルでまとまった完成度により非常に高い評価を得ている。
 本作もケータイアプリやバーチャルコンソールで配信されており、現在でも容易にプレイ可能。

 ・「聖剣伝説3」(1995、SFC)
 第三作。「2」を発展させたような内容で、システム周りではバグ関係の改善、画質の向上、ゲームテンポの低下、などの変化が見られる。
 主人公を6人の中から選択できる、それぞれに7通りの戦闘スタイルが用意されている、など高い自由度を持ち、そのグラフィックも相まって本作を一番と推す声もある。
 本作は現在のところ一切の移植・リメイクが行なわれていないためSFCでしか遊べないのだが、その内容は現在でも見劣りしない。

 なお、主人公の一人である「リース」はシリーズぶっちぎりの高人気を持つキャラクターであり、「聖剣伝説は知らないけどリースは知ってる」という人もいる模様。

 ・「聖剣伝説 LEGEND OF MANA」(1999、PS)
 「3」から4年。発売順から言えば4作目に当たる、プレイステーションで発売された「外伝」的一品。ベルトスクロール型のアクションRPG。
 システムこそ独特である物の、「せつなさの残る物語」や「絵本のようなグラフィック」といった感動的な内容から、シリーズ中でも名作との呼び声が高い。
 本作はゲームアーカイブスで配信されているためPS3やPSPでのプレイも可能だ。

 ・「新約 聖剣伝説」(2003、GBA)
 「LOM」から4年。第一作に後期シリーズのキャラクターやシステムを加え、ゲームボーイアドバンス向けにリメイクしたもの。
 が、内容は第一作からかけ離れた物となっており、ストーリーに納得のいかない部分があるなど、ファンからは否定的な意見が多い。

 ・「聖剣伝説DS CHILDREN OF MANA」(2006、DS)
 DSで発売されたダンジョン型アクションRPGで、本作「4」の発売前に本作の10年後の世界を描いた内容。
 1つの村を拠点にしてダンジョンを攻略してゆく形式で、戦闘の単調さ、ダンジョンの単調さから「連打ゲー」と呼ばれることも。

 ・「聖剣伝説 FRIENDS OF MANA」(2006、ケータイ用アプリ)
 「LOM」を元にしたオンラインゲーム。主にSoft Bankケータイ向けのペット育成型RPG形式。
 プレイヤーが住む地方によってゲームの舞台が変化する・・・というジオゲーム的な側面を持っていたが、金額のためか、はたまた機種のためか、(それとも単純に内容のためか)満足なプレイヤー数も獲得できずに2011年をもってサービスを終了した。


 ・・・と、本作「聖剣伝説4」(2006、PS2)まで15年続き、かつ現在も「最高傑作はどれか」の議論が熱く交わされる、歴史・人気のあるシリーズなのである。(後半説得力無いけど)
 なお、本作から現在に至るまで、当時開発中だったと思われる「聖剣伝説 HEROES OF MANA」(2007、DS)以外のシリーズ作品は発売されておらず、本作が最高傑作の議論に加わることも無い。


・ストーリー

 本作のストーリーは「原点回帰」をテーマにした「4」らしく、シリーズの鍵となる「マナの女神」と「聖剣」の成り立ちをテーマにした物となっている。(シリーズとの厳密なつながりは不明)


 〜〜〜
 とある池のほとりで、この世界に生きる8種族の精霊たちが話し合いを行なっていました。
 今訪れようとしている世界の危機を前にして、精霊と、人と、世界とのつながり、そのあるべき姿について話し合っていたのです。
 かつてそれぞれをつなぐきっかけとなった、長い長い、絶望と希望の物語を振り返って・・・。

 はるか昔、世界がまだ平らかで、人が魔法を知らなかった頃・・・。
 ファ・ディールの大陸には五つの国と、そのなかつ海に浮かぶちっぽけな島がありました。
 島の名は「イルージャ」。
 島には、世界の始まりからそこにあるという大樹と、それを守る聖獣がいると信じられ、大陸の人々からは禁断の地とされておりました。
 ですが、大樹はいつのころからか少しづつ石へと変わり始め、今では長い長い眠りについていたのです。

 それを、樹の民であり、大樹の巫女である少女「リチア」と、幼なじみの少年「エルディ」は不安そうに思っておりました。
 「石の樹が またもとどおり緑の姿をとりもどす日が いつかくるのかな…
 そんな時です。五つの国の一つ、氷の国ロリマーの王「ストラウド」が、大勢の兵士を連れて島へと攻め込んで来たのです。
 二人は大樹と樹の村を守るため、兵士たちの目を盗み、大樹を守る守護聖獣が眠るという樹の洞へと入ってゆきました。
 しかし、二人がそこで見たものは、不思議な精霊「フィー」と、大樹の種子と、そして・・・。
 〜〜〜


 ・・・と、おおまかにはこういう内容である。
 この後、魔界の扉を開こうとするストラウドを倒し、リチアを救い出すため、エルディとフィーが力を合わせて戦ってゆく物語が展開される。
 シナリオとしては全8章(ステージ)に分かれており、プレイヤーはその物語のハイライト部分をアクションとしてプレイすることとなるわけだ。

 アクションというジャンルも手伝って登場人物が少なく、物語も駆け足で進んでゆくが、王道的ながら緩急のあるストーリーや3Dならではの細やかな表情の動きなどが十分に楽しめる物となるはずである。


・システム(基本)

 さて、そんな本作は「」、「ムチ」、「パチンコ」という3つの武器を操り、ステージ中にある「MONOモノ」を駆使して進めてゆく。
 「MONO」とは、ステージ中にあるオブジェクト、ぶっちゃけて「物」のことである。

 本作の敵キャラクターたちは普通に撃破してもほとんどメリットが無く、かつ攻撃の終わりに反撃してくるなどかなりの強敵であることが多い。
 ではどう対処すればよいのかと言えば、「MONO」をぶつける、落とす、などして敵を「パニック(以下「ピヨり」)」させて、そのスキに攻撃・撃破してしまえばよいのだ。
 ピヨり中の相手に攻撃することで安全に倒すことができ、また主人公の能力を上昇させる「メダル」が放出されるため、いかに「MONO」を利用できるか?が本作の難易度を左右するわけである。

 敵がピヨる時間は「MONO」の大きさや数、種類によって変わるため、周囲を観察すれば効率よく戦える場所やそうでない場所が見えてくる。
 例えば野原で戦う場合。
 平地で敵と遭遇してしまうと周囲の岩や丸太を投げつけるまでにスキが出来てしまうが、丘の上からそれらを転がしその後を追うように突撃すれば、すでにピヨった敵に先制攻撃を仕掛けることが出来る。
 また平地であってもタルが積み上げられた場所などに誘導すれば、一斉に崩れるタルによって大勢の敵を強烈にピヨらせることが出来る。
 これら柱、テーブル、爆弾、台車など、ステージ内のありとあらゆる物が「MONO」として活用できるため、その自由度はかなりのものだ。


 では、そんなゲーム内で、主人公の武器が果たす役割について見てみよう。

 先ずは「剣」だが、これは敵や「MONO」を攻撃するために使用する基本的な武器だ。
 「」で使用し、続けて押せば連続攻撃にもなる。この武器で攻撃することにより「メダル」が放出されるので、役割としては
 「相手へダメージを与える・メダルによって主人公を強化する」という面を担っているわけだ。
 メダルによって威力が強化され、一定のレベルになると連続攻撃の回数が増えてゆく。

 次に「ムチ」。これは「MONO」や敵をつかみ、引きずって運んだり、投げつけて攻撃したりするための武器だ。
 「」で対象に向かって伸ばし、つかんだ状態から再度「」で投げ飛ばす。
 これを利用して「MONO」を敵に向かって投げつけたり、あるいは敵同士をぶつけてピヨらせるのがこの武器の主な使い方だ。つまり、
 「攻撃するためのチャンスを作り出す・敵を無力化する」という役割を持っているわけだ。
 メダルによって行なえることが増えて行き、重い「MONO」や敵を動かせるようになったり、つかんだものをコマのように回せるようになったりする。

 そして「パチンコ」。これには無限に使える「まんまる石」と特殊な効果を持つ「精霊の魂」の二通りの玉がある。
 方向キーで使用する玉を選択し、「」で発射。長く押して主観視点にすることも可能だ。
 「まんまる石」は相手に対して射撃攻撃を行なうもので、
 「高所にあるMONOを落とす・飛行する敵を駆除する・危険な敵を狙撃する」ことに力を発揮する。
 「精霊の魂」は8通りの種類がありそれぞれに効果が異なるが、いずれも使用することで敵をピヨらせることが可能で、中にはボスに有効なものもあるなど、
 「緊急時の切り札・敵を一網打尽にする強力な武器」として活躍してくれる。


 ・・・と、それぞれが明確な役割を持って用意されているわけだ。
 これらを駆使し、周囲の状況を見極め、いかに効率よく敵を攻撃するか?
 そんな戦術の組み立てといざ敵に襲い掛かる瞬間とのメリハリが、他にはないこのゲーム独特の魅力となっている。


・システム(強化)

 さて、本作の主人公は「メダル」によって強化される。
 赤いメダルは「HP」、青いメダルは「MP」と「使用できる魔法」、緑のメダルは「攻撃力」と「アクションの種類」をそれぞれ強化させる。
 種類こそランダムだが敵をピヨらせさえすれば1章の間にいくらでも入手することが出来、主人公を大きく強化することが可能となっている。

 が、いくら主人公を強化しても、そのレベルは次の章に持ち越されない。

 主人公の能力は初期値に戻り、改めて同じスタートラインから次の章が始まるのである。
 本作はRPGでも、アクションRPGでもない。アクションである。求められているのはキャラクターの育成ではなく、プレイヤーの上達なのだ。そういった意味での仕様なのだが・・・。
 当然と言うか、これまでの「聖剣伝説」からは考えられないシステムであり、難点として槍玉に上がることが多い。

 アクションに慣れたプレイヤーや、効率よくメダルを稼げるプレイヤーならばなんてことは無いのだが、そうでないプレイヤーからすれば自分の腕をキャラクターの能力で補間することが困難となり、ステージごとに「稼ぎ」を行なわなければならない・・・ということになる。
 要はプレイヤーへの間口が狭くなったわけだ。


 とは言え、主人公を強化する手段は他にもある。「エンブレム」である。
 これはステージ開始前にいくつか装備でき、「初期攻撃力を上げる」や「防御力を上げる」、はたまた「回復アイテムのドロップ率を上げる」といった効果を得ることが出来る。
 初期ステータスが高いと言うことはそれだけ戦いやすく、早い段階からメダルを集められる、と言うことだ。

 そんなエンブレムの入手方法は2つある。
 一つは、「クリアタイムで最高ランクを○回取る」や「○○を使って敵を○体倒す」といった困難な条件を達成したときの報酬として。
 もう一つは、「チャレンジアリーナ」内のショップで購入可能な救済措置として、だ。
 上級者がやり込みの勲章として集めてもいいし、初心者がお金を集めて相対的な難易度を下げてもいい、という位置づけなわけである。


 結論から言えばメダル、エンブレム、のどちらにせよ、時間をかければ主人公を強化し、難易度を下げることが可能な強化システムが取られているわけだ。
 ステージ中にセーブすることが可能な事も手伝って、余程の理由がない限りは最後まで攻略出来るはずである。


・グラフィック、音楽

 「聖剣伝説」と言えば、そのグラフィックや音楽の上質さに定評があるシリーズだ。本作は「2D」から「3D」へと姿を変えてしまったものの、それらの品質は失われていない。
 個人的には、特にキャラクターの動きや表情の変化がPS2でも屈指のレベルだと思う。
 口や目のみならず、眉や頬までもが自然に、動的に変化し、さまざまな表情の移り変わりを演出するのだ。
 そんなキャラクターたちが織り成すムービーは幻想的ながらもリアリティがあり、キャラクターの心情が伝わってくる素晴らしい出来となっている。

 また音楽については、幻想的であったり、迫力があったり、悲壮感があったり、といった曲が50曲(アリーナ、オプション込み)用意されており、そのいずれも特徴を持った名曲として仕上がっている。

 これら音楽やムービーは「チャレンジアリーナ」内のショップで購入可能であり、購入すればいつでも再生が可能である。


・まとめ

 ここまでの見解から、本レビューをまとめよう。
 本作はアクションゲームとして、十分「傑作」レベルの内容である。
 が、アクション「RPG」である聖剣伝説シリーズの続編、最新作、ナンバリングタイトル、としての「聖剣伝説4」と言う、重いタイトルを与えられてしまったことが最初にして最大の失敗であった。
 シリーズのファンからは否定され、シリーズを未プレイの人からは敬遠され、結果として否定的な意見のみが聞こえてくる有様となった。
 当然と言えば当然の結果なのだが、「聖剣伝説」から切り離し、一本の別のゲームとして、先入観の無い目で見てもらえば、このようなことにはならなかったのではないかと、そう悔やまれてならない一本である。

 もっともそんなわけで価格がガタ落ちしているので、シリーズに縁の無いアクションゲーマーでも手を出しやすく、価格の割りにどっぷりと楽しめる内容となっている(ハズ)。
 ファンタジックなアクションに興味がある人、工夫を利かせた戦いに燃える人、かつ聖剣シリーズを未プレイな人に、是非ともオススメしたい一本だ。


・余談

 欧米人は日本人よりも3D酔いしにくい、というウワサがある。
 そのためかどうかはわからないが、海外レビューでの本作(英題「DAWN OF MANA」)の評価はさして悪くない。
 ただ「聖剣(MANA)」シリーズではない、と酷評されているのみである。

 また、本作は2コンを挿し、2Pに「フィー」の魔法を操作してもらうことが可能である。
 ・・・どっかで聞いたとか言わないように。





・関連作品

・「聖剣伝説」シリーズ「関連なんて無かった」。


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