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刻命館こくめいかん


プラットフォームプレイステーション
開発テクモ
発売テクモ
発売年月日1996年 7月
ジャンルトラップシミュレーション
プレイ人数1人
セーブデータ9ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
シリーズ中でも独特 邪悪 だいぶ粗い おどろおどろしい やや「トラップ」が使いづらい ダンジョン経営系の元祖?





・ゲーム概要

 1996年というプレイステーション初期にテクモより発売されたトラップシミュレーションゲーム。
 最大の特徴は、「正義の勇者となって悪の主を倒す」といった王道的ストーリーの真逆を行く、「悪の主となって正義の勇者を迎え撃つ」という革新的なコンセプトにある。
 その独特な内容は多くの人間に衝撃を与えたようで、後に「ダンジョン経営」系と呼ばれるゲームが数多くリリースされるなど、新たなジャンルの開拓者とでも言うべき存在となった。

 なお以降のシリーズ作品は本作品とはまるで異なる「罠ゲー」という方向性を確立していったため、シリーズ中にあっても「異端」である一本となっている。


・基本システム

 「悪の主となる」というコンセプトを持つ本作は、ストーリーのみならずシステム面も非常に特徴的だ。
 先ずは、ゲームの舞台となる呪われし館「刻命館」での戦い方について。
 プレイヤーはこの「刻命館」の主となり、館の中で侵入者たちと殺すか殺されるかの争いを繰り広げるわけだが、その中で主人公が持つ攻撃手段は館に仕掛けた「トラップ」かアイテムを消費して召喚する「モンスター」かのみとなっている。

 「トラップ」には、
 落石や壁のヤリといった「ダメージ系」、
 鉄格子やクレーンといった「捕獲系」、
 タライやガスといった「混乱系」、
 の3つがあり、プレイヤーはこれらのトラップを駆使して侵入者たちを「殺す」か「捕獲する」ことが求めらている。

 トラップは刻命館の中に存在する「魔界ゲート」か「魔力室」で「MP」を消費し、トラップごとに設定された「効果範囲」が重ならないようにするなどの制約を受けて設置。そして自らをオトリにするなどして侵入者をおびきよせ、トラップの効果範囲に入ったら「発動」させて攻撃していくのだ。

 「ダメージ系」トラップで体力の減った侵入者は「捕獲系」トラップで捕獲し、
 「魂を抜いてMPにする」、
 「殺してワール(お金)を得る」、
 「モンスターの素材として保管」する、
 といった陰惨極まりない方法で活用することが出来る。

 トラップの設置に必要な「MP」も重要であるが、トラップの開発など戦力の増強に欠かせない「ワール」も捨てがたい・・・など、長いスパンで侵入者を有効利用してゆくことがこのゲームを攻略するひとつのカギとなっているわけである。
 ・・・今にして見るとよくこんなゲームが年齢制限無しで発売できたなと思わざるを得ない

 と、非常に特徴的な「トラップ」システムだが、本作では侵入者の「回避」や主人公の「熟練度」などによっては発動しても避けられることがあり、「効果範囲を重ねられない」というシステム上2つ、3つのトラップを連続してヒットさせる「コンボ」も存在しない。
 さらにトラップは使用すると解除されてしまい、トラップを使い果たしたら「魔界ゲート」や「魔力室」まで設置し直しに行く必要がある・・・など、少々シリーズ最初の作品らしい粗さがあるのも否めない。
 そういった意味で次回作「影牢」のように洗練された面白さには欠けるのだが、本作の場合はその「粗さ」がゆえに独自のシステムも多く存在している。

 その1つが人間を素材に作られる「モンスター」だ。
 これは事前に作成しておけば「設置」などの手間を踏むことなく、「封龍石」というアイテムを消費するだけで使用できる攻撃手段であり、次回作以降で失われてしまった本作のみの要素である。
 例えば「ワーウルフ」の場合、侵入者である「トラップブレイカー」、「モンスターハンター」、「忍者」X2、を材料に作成し、その後は任意のタイミングで召喚、近くにいる侵入者を襲わせることが出来るようになる。
 トラップの設置に手間がかかる本作において「モンスター」が果たす役割は大きく、トラップを使い果たした際の緊急手段に使えるほか、トラップに掛かった相手への追加攻撃としても役に立つ。
 さらには繰り返し召喚することで攻撃力などが上昇してゆくため、末永く使用できる愛着ある存在となっているのだ。
 プレイヤーの命を狙ってやってきた侵入者たちが怪物に改造され、同じ目的を持つ侵入者たちの命を奪う・・・
 ・・・つくづくよくこんなゲームが年齢制限無しで発売できたなと思わざるを得ない

 ともあれ、プレイヤーは侵入者たちの攻撃を避けつつ「ダメージ系」トラップまでおびき寄せたり「モンスター」を召喚したりして攻撃し、瀕死の侵入者を「捕獲系」トラップで捕獲。「MP」や「ワール」、「素材」にして次の戦いに備えてゆく・・・。
 というのが、本作の基本システムとなっているのである。


・独自のシステム

 そのほか、本作独自のシステムにはどのような物があるだろうか?

 1つに、「館の増改築」がある。
 主人公はあくまで「刻命館の主」であるため、(基本的に)ここからテリトリーを移動することはない。その分、ワールを消費して館を自分の好きに増改築し、戦場を自分にとって有利なように変えることができるのである。
 例えば、回廊状の通路を作っておけば逃げ回っても端に追い詰められることがなくなるし、体力を回復できる「ベッドルーム」を複数用意しておけば体力が少なくなっても安心・・・など。
 増改築できる部屋は「書斎」や「食堂」などインテリアにも特徴があるため、自分の好みでデザインしたり、複雑な廊下を作って迷路ごっこを楽しんだり、といった楽しみ方も可能だ。
 ただ本作に「仕掛け」はないため、それほど劇的な効果が得られないのが少々残念である。

 また本作には「アイテム」という概念もある。
 使用することで体力を回復できる物、売却することで高値で売れる物、主人公の基礎パラメータを上昇させるもの、などがあり、プレイヤーの虐殺ライフを助けてくれる。
 これらは侵入者の「商人」と会話することで売買が可能だ。
 商人はナベ・カマを投げつけて攻撃してくるので、巧みなフットワークで回避しつつ近づいて話しかけてみよう。

 それと、侵入者から得られる「MP」や「ワール」が重要な本作には「人間狩り」というシステムもある。
 これは物語の合間に発生し、任意の職業を持つ人間を侵入者として館に招くことが出来る、というボーナスステージのようなものだ。
 モンスターの製造に必要な材料を集めるのも良し、新たに開発したトラップを練習するのも良し。特に物語後半では登場しなくなる「商人」を呼び寄せるのにも有効だ。
 この「人間狩り」でのみ登場するレアな職業もあるため、モンスターコレクターにとっては特に重要度の高いシステムだと言えるだろう。

 ・・・といったシステムが、本作「刻命館」独自の物として存在しているのである。


・シナリオ

 長い冷戦状態にあった「ゼメリス」、「エンゼリオ」二国間の関係は、ゼメリス第一皇子「[主人公]」とエンゼリオ王女「フィアナ」の結婚によって回復に向かおうとしていた。
 エンゼリオへの長旅からかえってきた「[主人公]」は早速父である現国王へとこの喜ばしい報告を行なおうとしたが、その最中に国王は何者かの手によって暗殺されてしまう。使用された凶器は「[主人公]」が携えていた剣であったことから、「[主人公]」は輝かしい未来が待つ皇子から一転、国王殺しの反逆者として処刑されることとなってしまったのであった。

 処刑当日、十字架に掛けられ、自身を慕ってくれた民衆たちの前で火にあぶられる「[主人公]」。その周囲には民衆たちが自身を口々に罵倒する姿と、弟である第2皇子「ユリアス」が薄笑いを浮かべている姿があった。
 あまりの無力感に絶叫する「[主人公]」。
 「力が・・・力が欲しい。神でも悪魔でもかまわない。誰か力を!・・・私に力を!!!
 その時。激しい雷鳴が「[主人公]」の身を打ち、その姿を跡形もなく消し去ってしまったのだった。

 「・・・目覚めよ、闇の子よ。力を求める者よ。
 深い森の中、何者かの呼び声に目を覚ました「[主人公]」は、その声に促されるままに呪われし館「刻命館」へと足を踏み入れた。
 その清らかな魂と引き換えに、「復讐」という願いを叶えるために・・・。


 ・・・といった、イントロの時点で既に陰惨極まりないストーリー

 以降のシリーズと比較すると、本作の主人公はあくまでプレイヤーの分身であり、固有のグラフィックもデフォルトネームも持っていない点が特徴的だ。
 ゲーム中の「主人公の行動」は全て「プレイヤーの行動」であり、人間を殺すのも、逃がすのも、全てはプレイヤー次第となっている。

 「人間を殺すことが使命」と教育された無垢の少女ミレニア、
 自己防衛のために戦いの道を選んだ少女レイナ、(後半すっごいノリノリ)
 運命に翻弄される王女アリシア、(プレイヤーも翻弄されっぱなし)
 のいずれとも異なる、自らの意思で選ぶ「悪」の物語。
 それがシリーズの他の作品とは一線を画す、本作独自の魅力となっている。


・まとめ

 全体的に荒削りであり、荒削りであるがゆえに洗練された続編にはない魅力を持つ本作。
 その存在はシリーズ中でも異端の物として存在しており、正当な続編を持たない・・・と言っても過言ではないオンリーワンな一本だ。
 本作独自のシステムに興味を持った人、「悪」の側に立つ物語をたっぷりと楽しみたい人、などに、自己責任の上でオススメしたい良作である。


・ワンポイント攻略

 ・トラップは、アイコンが高速回転するギリギリまで侵入者を近づけてから発動すること。侵入者が近いほど成功率が高いぞ。
 ・館1F西側の、カギが掛かって開かない扉。非常に不便だが、これを開ける事が出来るのは第2話のトレジャーハンターのみなのであしからず。
 ・物語の進行に関わる強敵「ウィズボーン」。だが「仮面」の効果を熟知すれば・・・!?

 ・ユリアスに「デスプリンセス」をぶつけると・・・?





・関連作品

影牢続編。だが内容はまるで異なる。
蒼魔灯「影牢」寄りの続編。トラップ図鑑の名称が「刻銘鑑」になっている。
影牢II -Dark Illusion-自称「影牢」の続編。本作と同じく主人公が王族の人間だが・・・。
 
・某VII「電プレ」の攻略本によると、希望小売価格の決定に影響したとか・・・?
(ワールの初期値が6980なのはその名残らしい。)


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