サイトトップ/ゲームレビュー/影牢


影牢(かげろう) 刻命館(こくめいかん) 新章(しんしょう)


プラットフォームプレイステーション
開発テクモ
発売テクモ
発売年月日1998年 7月
ジャンルトラップアクション
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
「罠ゲー」の基礎を築いた 凄惨 リアル志向 生々しい コンボ発見の楽しさ サウンドテストで悲鳴聞き放題





・ゲーム概要

 1998年にテクモから発売されたトラップアクションゲーム。前作「刻命館」に引き続き「悪の側に立つ」というコンセプトを守りつつ大幅なシステムの変更を行い、より洗練された「罠ゲー」としての基礎を築いた。
 特に「トラップコンボ」というシステムは多くのプレイヤーを夢中にさせ、「いかに大量のArkを得るか?」や「いかに美しく殺すか?」、はたまた「タライで人は死ぬのか?」などなど多種多様なコンボが研究されて行った。


・シナリオ

 「人間」と「刻人」が共存する世界。人間とよく似た容姿を持ちながら青い血、青い肌を持つ刻人たちは寿命や病で死ぬことが無く、高い文明によって人間を支配していた。
 人間はといえば、そんな刻人たちに畏敬や羨望の念を抱きながらも、その支配に甘んじて豊かで平和な生活を謳歌していた。

 しかし、人間の権力者は刻人に取り入り永遠の寿命を得るという野望を抱き、刻人は「人間狩り」と称し陰で多くの人間を殺めてきた。

 永遠の寿命を狙う権力者デッドムーン。
 800年にわたり国を支配する国王エクリプス。
 刻人支配からの開放を狙うゲリラ組織レッドブラッド。
 そして、「マリオネットプロジェクト」の被験者である少女ミレニア。

 「人間狩り」の暴力による死というリスクを回避するために発案された、幼い人間の子どもを誘拐し、人間を殺すことが使命であると教育して人間自身の手で人間狩りを行わせるという暗黒の計画。
 計画が動き出した時、時の歯車は少しずつ狂いだす・・・。

 ・・・といったところ。


・システム

 このゲームの目的は、刻人の地を訪れる侵入者達を「トラップ」にハメて殺すことである。
 主人公ミレニアはトラップを仕掛け、起動する以外の攻撃を持たず、あとはただひたすら距離をとり逃げるか、自らを餌に敵をおびき寄せるかしかない。
 しかし、いや、だからこそ、何も知らない侵入者がのこのことトラップの効果範囲に侵入したその瞬間、トラップの起動ボタンを押すことが病み付きになるほどの快感となる。

 トラップには天井に仕掛ける「天井トラップ」、壁に仕掛ける「壁トラップ」、床に仕掛ける「床トラップ」と、始めから部屋に存在する「仕掛け」の4種類がある。
 トラップの設置は操作可能な状態であればいつでもどこでも行うことが出来、「同じ系統のトラップは1部屋につき1つ」や「1つのステージで使用可能なトラップは1系統につき3種類ずつ」、「1つのブロックにトラップは一つ」などのルールさえ守れば自由に、何度でも設置することが出来る。
 そして設置後トラップごとに設定された「チャージタイム」を経て、トラップが使用可能となるのだ。


・トラップの一例

 では、このゲームに登場するトラップの一部を紹介しよう。

 ・メガロック
  初期装備トラップの一つ。天井から大岩が落ちてくるという、シンプルながら破壊力バツグンの主力トラップ。鉄球や溶岩の塊に派生させることが出来る。

 ・アロースリット
  初期装備トラップの一つ。壁から勢いよく矢が飛び出し、敵を射るという扱いやすいトラップ。設置位置から離れた場所でヒットさせると得られる「ロングレンジヒット」ボーナスを得やすい。

 ・プレスウォール
  初期装備トラップの一つ。壁がせり出し、相手を押すだけ・・・という一見地味な移動系トラップ。だがこれを使えば柱を倒すことが出来たり、落下したメガロックを転がすことが出来たりとその用途は意外にも広い。

 ・ベアトラップ
  初期装備トラップの一つ。いわゆるトラばさみで、命中した相手を拘束することが出来る。拘束中に天井や壁のトラップをチャージすることで4ヒット以上のコンボも可能となる。

 ・タライ
  前作から引き続き登場したお笑いトラップ。天井からタライが落下し、相手の頭を直撃する。ダメージはたいしたこと無いがArk倍率が高い。

 ・カビン
  今作から恒例となったお笑いトラップ。さかさまのカビンが天井から落下し、相手の頭に「カポッ」とはまる。そのコミカルな見た目とは裏腹に性能は凶悪。

 ・スプリングフロア
  床が飛び出し、ヒットした相手をちょうど4ブロック移動させる移動系トラップ。位置の調整などに非常に便利。

 ・ギロチン
  はじめから部屋に存在する「仕掛け」の一つ。宙に浮かぶ巨大な刃が、その下に来た人間を真っ二つに切断。その凄惨な内容どおり高いダメージを誇る。

 ・斬殺換気扇
  はじめから部屋に存在する「仕掛け」の一つ。天井で回転する鋭利な送風機が接触した敵を微塵に切り刻む。当てるには工夫が必要だが、ガリガリという独特の効果音は一見の価値あり。


・トラップコンボ

 そして、複数のトラップを連続でヒットさせることが「トラップコンボ」である。
 トラップコンボには、「敵をすばやく、安全に倒せる」、「評価点Ark(通貨のようなもの)が多く得られる」といった利点があり、そして何より工夫を凝らす楽しみがある、このゲーム最大の魅力だ。

 [初級編]
 ベアトラップ→プレスウォール→メガロック
 当てやすいが威力の低いベアトラップ、当てづらいが威力の高いメガロック、をプレスウォールでつなげることによって両方の長所を組み合わせたコンボ。

 [中級編]
 (階段の下で)ベアトラップ→アロースリット→(チャージするまで待って)アロースリット→(階段に)メガロック
 メガロックが階段を転がることとアロースリットのチャージ時間がベアトラップの効果時間より短いこととを利用したトラップコンボ。

 [上級編]
 場所:西の森の館・拷問部屋
 (階段の下で)ベアトラップ→アロースリット→(プレスウォールに付け替え)→(階段に)メガロック→プレスウォール→電気椅子
 上のものに「トラップの付け替え」と「仕掛け」の要素を追加したもの。トラップが強力なものになっていればこれだけで敵を倒しきることも可能。

 ・・・と、3つほど紹介したが、これらはほんの基礎に過ぎない。トラップのヒット数は10Hitまで有効だし、得られるArkも数万まで達する。敵によっては一部のトラップが効かないこともあり、トラップコンボ開発はとことんまで楽しめる、研究しがいのあるシステムとなっているのだ。


・侵入者

 ・・・さて、ここまででも十分陰惨な内容だったが、このゲームが「悪」であることを決定的に象徴しているのはやはり、敵キャラクターである「侵入者」たちだろう。
 彼らは単なる「敵キャラクター」ではなく、それぞれがそれぞれの人生を背負った「登場人物」だ。刻人に恨みを抱く戦士がいれば、永遠の寿命に目がくらんだ権力者がいる。子どもの病気を治そうと訪れた父親がいれば、館の怪物を倒しにきた勇者がいる・・・。
 一人ひとりが名前を持ち、互いに関係を持つ「人物」たちなのである。そういったプロフィールは「エネミーデータ」で確認が可能だ。

 そして、ミレニアはその全てをわけ隔てなく殺す。
 「侵入者は殺す」という命令を淡々とこなすミレニアの姿はまごうことなき、いっそ痛快な程の悪としてプレイヤーの目に映るだろう。
 だが、「敵キャラクターは倒す」と淡々と彼らにトラップコンボを決めている自分に気付いたとき・・・ミレニアとの奇妙な一体感を感じたとき、きっとその瞬間が他のゲームでは味わうことの無い「影牢」の魅力を・・・本当の「悪」の快感を、知った瞬間なのだと思う。


・まとめ

 ・・・とまぁ、R指定したほうがいいんじゃないかと疑ってしまうほどダークなこのゲーム。シナリオや設定もそうだが、トラップコンボ研究もハマると中々抜け出せなくなる。
 残酷描写をとっても、末永く遊べるという点をとっても、自己責任の必要な大人向けのゲームだといえるだろう。


・ワンポイント攻略

 ・第一話に登場するヨカル。トラップセット画面では表示されないが、実はトラップを当てることが可能で・・・。
 ・ほとんどの侵入者が「扉」と「階段」を通るため、そこに罠を仕掛けておくのが基本戦略。慣れてきたら相手の攻撃モーションにトラップを当てる「カウンターヒット」を狙って、そのまま部屋の仕掛けにご招待・・・と行くのも面白い。
 ・作中何度か行う爆弾防衛戦。非常に難易度が高いが、実は爆弾のある部屋で戦うとミレニアが優先的に狙われるため爆弾の起動を防ぐことが可能。どうしても攻略できないときは活用すると良い。

 ・エンディングは4種類。分岐する条件は「倒した敵の数」、「刻人の碑文」、「キースと戦うか否か」。特にED NO.3なんて自力で見つけるのは極めて困難だろう。

 ・サウンドテストはタイトル画面、「PRESS START」の状態でR1を4回、R2を6回。一度クリアしてからやってみよう。





・関連作品

刻命館前作。だが内容はまるで異なる。
蒼魔灯続編。バグが多かったりシナリオが奇天烈だったりするが、トラップなどのバリエーションが格段に増えた。
影牢II -Dark Illusion-続編。とは言えどうしようもない内容。
・モンスターファーム本作の天井トラップ、「スエゾー」の元ネタ。
・影牢 〜ダークサイド プリンセス〜
「影牢II」から9年ぶりにリリースされたシリーズの新作
既存のトラップを「華麗」、「残虐」、「屈辱」、の3つの分野に分けトラップコンボの評価を見直し、それぞれのトラップの順番や位置を設定して半自動的にトラップコンボを完成させる「トラップシーケンス」システムを中心として「コンボ」の魅力を強く押し出した一作。
また「アーマーブレイク」という新システムや「屈辱」系トラップの確立によってお色気要素が随分と増している。
・影牢 〜もう一人のプリンセス〜
上記「ダークサイドプリンセス」のディレクターズカット版。
「影牢」以降の過去作のキャラクターがそれぞれ性能を変えたうえで使用出来たり、「エネミーエディット」で過去作のキャラクターを再現出来たり、と復刻版的な要素も多数盛り込まれているようだ。
・影牢 〜トラップガールズ〜
擬人化を題材にした青年・成人向けソーシャルゲームを多数リリースするDMMゲームスがサービスを行う異色作。
視覚面ではおおむねそれに沿ったデザインが施されているがゲーム内容はコンパクトながらも「ダークサイドプリンセス」シリーズを引き継いだ本格派。
トラップごとにレベルや装備スキルという育成要素を持ち、出撃コストや使用回数と言ったソーシャルゲームらしい要素と併せて自身のチームを構成するトラップの吟味に頭をひねる内容となっているようだ。
「2015/12/01」時点ではまだまだ未実装の要素やゲームバランスの粗さ(特にアビリティ関連のインベントリの厳しさと、ぶっ壊れ気味なアローシューター)を抱えているが、さてこの先どう調整されて行くのだろうか・・・?

・・・結局、その後いくつもの構想やストーリーが未実装のまま「2016/03/30」のメンテナンスを最後に更新が停止、約一年でサービスフィニッシュすることとなったようなのだが。
・無双☆スターズミレニアがまさかのゲスト出演。
無双系として際限なく押し寄せる敵をバキュームフロアでまとめたりスプリングフロアでかっ飛ばしたりメガロックでまとめて粉砕したりする。


イラスト:「ミレニア」


サイトトップ/ゲームレビュー/影牢