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ページ公開:2020/04/14


AZELアゼル PANZER DRAGOON RPGパンツァードラグーンRPG


プラットフォームセガサターン
開発セガ
発売セガ
発売年月日1998年 1月
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ21ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
独創的だが完成度が高い 賛否あり 時代相応の粗さはあるが、幻想的 名曲ぞろい カジュアル、万人向け いまだ(2020年4月)に移植無し





※※※今回のゲームはプレミアゲーのレビューとなります。プレイ難度の高いゲームとなっておりますがご容赦ください※※※

・ゲーム概要と前置き

 セガサターン初期に発売され、自機の360°周辺を見渡すことができるという爽快感と臨場感の高いゲームシステムや「黄昏の時代」という幻想的で退廃的な世界観などの革新的な魅力の数々から「傑作」として名高い「パンツァードラグーン」。
 第二作「パンツァードラグーンII」はさらに自機の成長や必殺アクション「バーサク」、スコアの概念を取り入れてシューティングゲームとしての完成度を高め、さらに「ラギ」という一頭の家畜と帝国の襲撃から始まる濃密な物語にも確かな読みごたえを持たせて再びの「傑作」としてシリーズを拡充した。
 特に第一作はその後セガ・エイジス版としてのリメイクや第四作「オルタ」のオマケ要素としても再収録され、さらに先日こんなニュースもあった
 時代を超えて愛される「名作」として恥じないシリーズであろう。

 ところが、シリーズのうち第三作「アゼル」は少々事情が異なる。ゲームジャンルがRPGなのだ
 世界観を徹底的に掘り下げた物語の読みごたえや、スクロール方向に縛られずゲーム世界を自由に冒険できるという垂涎の魅力はあったものの、ゲームとしてのプレイスタイルは異なってしまい、状況の展開速度やそれに伴う緊張感、エイムして敵を撃破する達成感、といったいくつくかの魅力はやはり削がれてしまった。
 ありていに言えば、「コレジャナイ」として敬遠する人が多くセールス的には前作「II」から大きく落ち込んだらしい。
 (拾い物の数字によれば「II」が28.9万本に対して本作は10.9万本だという。)

 しかし、リスクリターンを見極めて移動する「位置取り」の概念や「モーフィング」によって戦闘中に能力値を振り分けながら戦闘するという特徴的なバトルシステムは必見であり、また人間の目線で「黄昏の時代」の人々の生活を観察できる物語は好奇心を刺激してやまない。
 ゲームとしてはやはりこれも「傑作」であり、現代では中古ソフトにそれなりのプレミアがついた値で取引されているようだ。

 というわけで当サイトで紹介する基準としている「ワゴンゲーム」には全く当たらないのだが、今回は「番外編」という扱いにしてレビューを行ってみたい。


・「黄昏の時代」

 まずは本シリーズに共通する「黄昏の時代」について。

 どこまでも続く岩肌、荒れ果てた大地。そして、失われた時代「旧世紀」の朽ち果てた遺跡。それが人類にとってのすべてだった時代――。 (本作説明書より抜粋)

 かつてこの惑星には、反重力や物質転送など途方もなく高度な技術を有する文明があった。
 しかしなお人々はお互いに争いを繰り返し、そのテクノロジーを組み込んだ人工生命体を兵器として繁殖させ、大地から空までも無尽蔵の敵意で覆いつくした。
 一方でその制御には携帯可能な道具から巨大な建造物までの様々な手段を講じ、それはやがて人間の数を含む環境一帯を観察して制限するという狂気にも似たものに至り、大掛かりなシステムにむしろ支配されるようにもなっていった。
 結果、この文明がどの様にして滅んだのかを知る者は誰も残っていない。

 現代に残るのはわずかばかりの緑とそこにはびこる「攻性生物」、そして果てしなく広がる荒野である。
 辛うじて生き延びた人々はいくばかの水場を見つけて集落を築き、攻性生物の存在におびえながら採集や狩猟によって日々の糧を得ていた。
 いつ命を失うともわからない、この退廃的な世界をして旧世紀の研究者は「黄昏の時代」にあるという。

 しかし、そんな人類にも一つの希望が現れた。
 旧世紀のテクノロジーを再利用することに成功した「帝国」の登場である。
 「帝国」は旧世紀の強力な兵器によって攻性生物を駆除し、ふたたびこの惑星に人間の地を主張することに成功したのだ。
 しかし一方で、その強大な力は数多くの争いの種にもなっていた・・・。


・本作のあらすじ

 「旧世紀の遺跡を警備する。」この日エッジ (CV:石田 彰)たちの傭兵団が受けていたのはほんのよくある仕事のひとつであった。
 帝国が躍起になる研究や調査は、旧世紀の遺物に引き寄せられる攻性生物や、帝国に対抗して旧世紀のテクノロジーを研究する周辺国家によってたびたび脅かされ、これらを退けるために白兵戦に熟練した傭兵団に依頼を出すと言うことが珍しくなかったのである。
 若いエッジにとっては「クイドゥ ノスタ ドゥフェンシオ? (概訳:どうして自分たちが守るのか?)」と漠とした好奇心を刺激される仕事であったが、ベテランのルーアにとっては「デ オムニオ アウデ ゲスカルデ(概訳:(帝国に)殺されたくなければ興味を持つな)」とつれない有様だった。

 何事もなく退屈に終わるかと思える仕事だったが、その静寂は攻性生物の襲撃によって破られる。
 一匹の攻性生物が遺跡に乱入し、鋭い爪と強固な甲殻によって傭兵団の攻撃をものともせず、多数の負傷者を出しながら遺跡の奥地へと入り込んでしまったのだ。
 あわや全滅かと思われたが、攻性生物は遺跡の中に封ぜられていた「それ」を見てひるみ、エッジの蛮勇とルーアの機転によって辛うじて撃退に成功する。
 「それ」は、旧世紀特有の文様に包まれて眠る美しい少女のように見えた。

 間もなくして帝国軍に迎えられ九死に一生を得た一団は、しかしその帝国軍によって次々に射殺された。
 黒い飛行船の艦隊を率いて現れた男は名をクレイメン (CV:伊武 雅刀)といい、遺跡に眠る「それ」を手に入れるため帝国に反逆してこの地に訪れたようだった。
 家族代わりであった傭兵仲間を皆殺しにされ、遺跡の少女が連れ去られてゆくのを見たエッジは、自らも覆面の男ツァスタバによって胸を撃たれ闇の中に転落していった・・・。

 時と場所を移し、クレイメンの反逆からしばらくしたのちに「帝国」の首都がクレイメンの工作による大爆発に巻き込まれ物理的に消滅した。
 時の皇帝は旗艦「グリグ・オリグ」の中でこの報告を受け、旧世紀の遺跡の強大な力と、それを追うクレイメンの導きに歓喜せずにはいられなかった。
 ほんの一艦隊を率いるクレイメンと帝国全体の戦力差は歴然。この一件はより大きな「力」を巡る争奪戦が始まる口火だとされたのである。

 だが、ここにその争奪戦に加わる不測要素がひとつある。
 ゲームをプレイするプレイヤーと、主人公エッジ、そして相棒のドラゴンである。
 それまで休眠していたはずの遺跡がエッジの転落と同時に再起動し、蘇生されたエッジは第一作のカイル、第二作のランディと同じようにドラゴンとの出会いを果たすのだ。
 (ネタバラシに近いが伏線として、この時点で作中のキャラクターが独自の言語(通称「パンツァー語」)から日本語を話すようになる。海外プレイヤーにはわかりづらい演出かもしれない。)

 かくしてエッジたちは空に飛び立つ。クレイメンへの復讐心と、遺跡の少女を奪還するという使命心をもって進路を北に。
 しかし、エッジたちがクレイメンや帝国より遥かに強大な敵に立ち向かうことになることも、遺跡の少女が「アゼル (CV:坂本 真綾)」と名付けられてエッジたちの前に立ちはだかることも、エッジとドラゴンが出会った本当の理由も、まだ誰も知るものはいない・・・。

 ・・・とこういったあらましだ。
 なお本作の結末には当時賛否あったというが、そろそろ時代が追い付いてきたというか、他の創作作品で同種の衝撃を体験済みでそれほど拒否感なく受け入れられる・・・という方が増えているのではないかと思う。


・ゲームの流れ

 さて、RPGとしての本作は主要なロケーションを選択する「ワールドマップ」を介してダンジョンを探索したり街で準備を整えたりして進んでゆく。
 そして、ダンジョンに当たるパートは「飛行移動」としてドラゴンに乗って移動や調査を行い、街に当たるパートは「歩行移動」としてエッジを操作して移動や調査を行うこととなる。
 「歩行移動」のパートではエッジを移動させながらも「ロックオンモード」を起動させて周辺の気になるものにカーソルを合わせて調査するという形式。
 少々手間を感じるところもあるが、本作の独特な世界観を自由に視点を動かして楽しめるのは心躍る。
 また「ロックオン」には遠近の概念があり、近くの物は手に取って観察したり直接話しかけて情報を得たりするが、遠くのものは全体像を観察したり他人の会話に聞き耳を立てたりと異なるアプローチをとるというシステムもある。

 「飛行移動」では広大なマップをドラゴンに乗って縦横無尽に飛び回り探索する。
 操作系はシリーズとしてはやや異なり、上下で高度を調整するが左右は旋回操作になり、Bボタンを押し続けて加速・前進するというもの。
 左右の平行移動が無いのがやや気になるかもしれないが、それほど特異なものでは無いし、すぐにスクロール方向に縛られず自由に探索することができる利点に夢中になるだろう。
 また、このモードでも気になったものにカーソルを合わせる「ロックオン」操作によって調査を行う。
 こちらは距離の区別がなく、向きや位置関係を問わず気になったものにアクセスできるという直感性が快適だ。
 また飛行移動パートで調査できるオブジェには「調査」と「移動」、それから「破壊」の3通りのアプローチがある。
 特に「破壊」はドラゴンのレーザーで行い、粉々に砕けてゆく対象物にちょっとしたカタルシスを感じるポイントである。

 そして「戦闘」は飛行移動パートからランダムなタイミングで突入するランダムエンカウント制。
 シンボルエンカウント制で前もって回避できたりダメージを与えられたりすれば・・・なんてふと思うこともあるが、なあに本作のバトルシステムはそう退屈せずに楽しめるだろう。

 なお、本作のフィールド移動に関してはもう一つ「昼夜の概念」というユニークな点がある。
 一部イベントに関わってくるのはそうなのだが、それよりも「黄昏の時代」を昼夜両方の時間帯から観察できると言うことが嬉しい点だ。
 日光のもとで活発に行き交う人々と、夜間にわずかな明かりを付けて自宅で安寧を得る人々。
 日光に照らされた「旧世紀」の白い遺跡のまぶしさや、夜間に発光する遺跡の回路の妖しさ。
 さまざまなコントラストが本作にリアリティや多面性をもたらしていると言える。


・位置取りバトル

 本作のバトルシステムの最たる特徴は「位置取り」の概念だ。
 これは敵集団を中心としてその正面、側方、後方、のいずこかに位置して攻撃を行うというものである。

 例えば正面に装甲をまとった敵は後方について装甲の薄い側を攻撃すると効果的だし、正面に加速して突進するという攻撃パターンを持つ敵は側方や後方について強力な攻撃を回避することができる。
 しかし、例えば正面に弱点があるが正面に強力な攻撃を繰り出す敵の場合は・・・?
 敵の行動を見て、手の止まったタイミングを見て正面に移動、全力で攻撃したのち安全地帯に退避する、といったメリハリのある行動が有効だ。
 本作はまたアクティブタイム制でもあるのである。

 さらに細かく見ると、エッジとドラゴンには「3本」までストックできる行動ゲージが用意されている。
 時間経過でゲージが溜まるとこれを消費して行動でき、行動したのちは再度ゲージが溜まるのを待つ、とこういう流れだ。
 位置取りにおいて「移動」する場合はその間ゲージが溜まらないが消費することもないので、息切れで止まると言うことは無く必要を感じたら積極的に移動して回るのが良いだろう。

 ゲージを消費する「攻撃」にはいくつかの選択肢があり、ひとつはエッジの「」による射撃。
 これはやや威力が低いが特定の部位を集中して攻撃することができ、例えば群れのリーダーを優先して落としたり弱点を集中攻撃したりといった場面に適している。
 またゲームが進むと「パーツ」によるカスタマイズが可能となり、威力を上げたり攻撃対象を増やしたりといった特性を持たせることが可能である。

 またひとつはドラゴンの「レーザー」。
 これはドラゴンから近い敵や部位を優先して攻撃し、威力も高い。ドラゴンの成長にもよるが複数の敵を同時に攻撃できるのでザコ戦では特に主力となるだろう。
 逆にボス戦ではあまり使えない・・・と言いたいが、弱点部位を複数ロックできるボスもいるのでやはり相手によっては主力である。

 それから「バーサーク」。
 これはドラゴンの「BP(バーサークポイント)」を消費して放つ、まあ魔法のようなものである。攻撃型バーサークは2ゲージ、回復型バーサークは1ゲージ、BPを消費しない専用バーサークは3ゲージ、と設定されている。
 回復とのトレードオフになるうえ2ゲージも消費してしまうが、ほとんどの攻撃型バーサークは強力な全体攻撃。一撃で敵を蹴散らしてしまうことも可能だ。
 ちなみに本作には5段階の「戦闘評価」システムがあり、素早く・被ダメージを抑えて戦闘を終えるほど経験値や資金が溜まりやすくなっている。
 攻撃型バーサークは、使い所を見極めればこの点で効率的な成長につなげることもできるかもしれない。
 本作はセーブポイントに触れるとHP・BPが全回復するシステムを採用しているので場所によっては「稼ぎ」も可能だろう。

 なお、「戦闘評価」はメニューから見ることができる「エネミー情報」に記録される。
 人によって気にすると思うが一度きりしか戦えないボスエネミーにもこの評価が記録されるので、こだわるタイプの人はより巧い戦い方を求めて何度も挑戦してみたいところだ。

 さておいて、戦闘ではさらに「アイテム」の使用と「銃のカスタマイズ」、「モーフィング」の発動にもゲージを消費する。
 この「モーフィング」が、本作にとって重要なもう一つのシステムなのだ。


・モーフィング

 「モーフィング」とは、ドラゴンが姿形を変化させて特定の能力に特化できるというシステムである。
 特化できる能力は「4つ」あり、「攻撃力」、「防御力」、「心技力」、「機動力」、からなる。
 そして、これを分配した円盤状で好きな位置を設定することでモーフィングを行い・・・すなわち2つまでの能力に極振り可能な仕様となっている。
 「攻撃力」はレーザーの威力を上げる。「心技力」とのトレードオフなので攻撃力と防御力に特化した重戦車、あるいは攻撃力と機動力に特化した突撃ミサイルと言った形態が可能である。
 「心技力」はバーサークの威力と消費効率を上げる。これは攻撃力のみならず回復力を上げることも意味するので、対ボス戦において特に頼もしい。
 「防御力」は受けるダメージを減少させる。重要なのはこの「モーフィング」が戦闘中にも行えると言うこと。つまり、この形態はとっさの防御としても運用することができるのだ。
 「機動力」は位置取り中の移動速度が上がる。言いそびれたが本作は強力な攻撃が来る位置に警告が出るので、これをとっさに回避しそもそも喰らわないこと、またゲージが溜まらない不利を極力減らすこと、が出来れば一方的な試合展開すら可能だろう。

 また、こうして選択した形態によってドラゴンは特殊な「スキル」と「専用バーサーク」を使うことができる。
 「攻撃型」は3ゲージ溜まった状態でランダムに反撃でき、専用バーサークではレーザー威力上昇状態になる。
 「心技型」は3ゲージ溜まった状態でBPが徐々に回復し、専用バーサークではまとまった量のBPを回復する。
 「防御型」は3ゲージ溜まった状態でさらに防御力が上昇し、専用バーサークでは防御力上昇状態になる。
 「機動型」は3ゲージ溜まると全ての状態異常から回復し、専用バーサークでは行動ゲージの蓄積速度上昇状態になる。
 特に特化していない「標準型」は3ゲージ溜まった状態でHPが徐々に回復し、専用バーサークではまとまった量のHPを回復する。

 なおこうしたモーフィングは戦闘中の能力のみならずレベルアップ時の能力上昇にも影響を与え、攻撃型はレーザー威力、心技型はBP、防御型はHP、機動型は銃威力、が伸びやすくなっている。
 普段RPGで魔法を使い渋るタイプでも、レベルアップが近い時はややBPに振っておいた方がボス戦で楽になるかもしれない?

 このモーフィングと各形態の特徴が「位置取り」や行動ゲージの設計と良く噛みあっており、先に挙げたようなとっさの防御や、優位な位置取りを見極めての高速戦闘、複数のバフを併用しての優位性の確立、といった多様な戦術を可能としているのだ。
 ただボスを撃破するのみならず、「エクセレント」の戦闘評価を狙うとなればこうして様々な戦術を検討する甲斐があるものだろう。

 それから、けして忘れてはならないのはこうしたモーフィングは、ドラゴンの姿形を変化させると言うことである
 現代ではあまり珍しくもないが当時においては新技術の部類。攻撃型に振れば鋭角的に、防御型に振れば鈍角的に、機動型に振ればスマートに、心技型に振ればずんぐりと、と振ったポイントの量に応じて動的に形態が変化するのは驚きと没入感を与えたものである。
 これは「NiGHTS」でも一部の表現として用いられていたが、プレイヤーの設定に応じて自在に変化する形では本作において本格的に導入され、これがのちに「PSO」でのキャラクターメイキング要素にもつながってゆくこととなる。
 今は見る影もないが、かつてのセガの黄金期の一端と言うところだ。


・映像

 グラフィックに関しては、さすがに時代相応の粗さを否めない。
 とはいえイベントなどではキャラクターの表情が豊富に用意されており、ドラマチックさに関しては十分伝わるものがあるように思う。
 また、旧世紀の遺跡やドラゴンの攻撃などでほとばしる「光」の演出に関しては色あせない美しさがある。
 最たるものは「アトルムドラゴン」の必殺技「ビクシオマ」だろうか。
 闇の中に交差する光線が徐々に密度を上げて行き、やがてすべてを光に包んで後に何も残さない・・・という演出は敵ながら見惚れるものがある。
 個人的にRPGの光魔法として屈指の出来だと思うので一見の価値ありだ。


・音楽

 それから、本作は音楽の見るべき点も多い。
 シリーズの幻想的な雰囲気があるのはもちろん、RPGとして非戦闘時の穏やかな曲が豊富なのだ。
 どこか寂しげな響きのある「キャンプ」の曲や、チャカコポという楽しげな音の混じる「ゾアの村」の曲、また「ウル遺跡」のようなダンジョンの中にも探索中には穏やかな曲が流れるものがある。
 これらはシューティングでは無く、RPGとして世に出た本作ならでは聞く機会のできた曲たちだと言えるだろう。

 それと、キャラクターボイスがほぼフルボイスなのも嬉しい点である。
 あまり登場人物が多くなく、特にアゼルを除いてメインキャラクターに女性がいないという硬派?な本作だが、声優陣は豪華でモブキャラクターにも声が充てられており、これまた町を見て回る楽しみのもとになることだろう。


・まとめ

 続編を望まれる傑作シリーズにありながら、まるで正反対のゲームジャンルにおける番外品としてリリースされた本作。
 そのゲームボリュームに対してセールスはあまり振るわず、新作「オルタ」まではおよそ5年の時が空くこととなってしまった。
 しかし、「オルタ」の完成には本作の存在が必要不可欠であり、シリーズを振り返れば本作もまた「傑作」として疑う余地はない物だろう。

 第一作と第二作のいくらかの人物やボスキャラクターが登場しているためシリーズ経験者にこそ勧めたいが、一方でゲームジャンルをRPGとしたことで間口が広く、独特の世界観を隅々まで楽しめることやオリジナリティの高いバトルシステムを採用していることがあってRPG好きにも是非にと勧めたい一作である。
 とはいえリメイクや移植の一切が無く、中古価格にプレミアがついている本作は少々手を出しづらいところでもある。
 (なおセガサターンはポリゴンの構造が特殊で互換機やエミュレータを作るのが難しいと聞きかじっていたが、「Polymega」というものができたらしい。)

 やはり、第一作・第二作とプレイする環境が整っており、そのうえでRPGが好き、オールドゲームにさほど抵抗が無く、特にポストアポカリプスなほの暗い世界観に惹かれるといった自身の条件を振り返ってから、価格に納得がいくかをよく検討してみてほしい。
 合う人にならば、という言い訳がましい条件の上でだが、DISC4枚組の大ボリュームは満足感たっぷりに堪能できること間違いなしだ。





・関連作品

パンツァードラグーン第一作。ドラゴンに乗った少年を自機としたシューティングゲームで、正面のみならず左右・後方に視点を切り替えて敵に対処するという特徴的なシステムを取り入れた。
これによってドラゴンを操作して攻撃を避けるシューティングらしさと主観視点で敵の不意打ちに対応するガンシューティングらしさを併せ持ち、さらに「黄昏の時代」の幻想的かつ退廃した世界観を没入感高く味わえるという魅力も実現していた。
 
パンツァードラグーンII第二作。より物語性を増したシナリオに加え、スコアやバーサクといったシステムを取り入れたことでシューティングゲームとしての完成度も上がっている。
 
・パンツァードラグーン ミニゲームギア用に発売されたと言う怪作。あまりにも雰囲気が違うためファンアイテムとして割り切るべきか。
 
・SEGA AGES 2500 パンツァードラグーン第一作がPS2でまさかの復活。グラフィックの雰囲気は変わったがほとんどそのままの移植度。
 
・パンツァードラグーン オルタXboxでまさかの新作。今までの雰囲気そのままにXboxのスペックで作成された世界やAZELから続くシナリオなど「新作」の名に恥じない傑作。
 
・Far Cry PrimalUBIソフトのFPSRPG。直接関連があるわけではないが、ゲーム世界で独自の言語を使用しているという点に本作を彷彿とした。
ティグリ!ティグリー!


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