サイトトップ/ゲームレビュー/機甲兵団J-フェニックス
ページ公開:2025/10/07


機甲兵団きこうへいだんJ-フェニックス 序章編じょしょうへん

機甲兵団きこうへいだんJ-フェニックス


プラットフォームプレイステーション2
開発タカラ
発売タカラ
発売年月日2001年 2月(序章編)
2001年 6月(本編)
ジャンルアクション
プレイ人数1〜2人(データ対戦、i-LINK対戦可能)
セーブデータ1つ60kB以上、5ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
「アーマードコア」を追う ややチープ メカデザイン:大河原邦夫 主題歌付き 続編「バーストタクティクス」にデータ引き継ぎ可能





・ゲーム概要

 2001年に発売されたロボットアクションゲーム。
 時代背景的にあまり本数がなかった「カスタマイズ」の魅力の実現に取り組んだ一作で、自身が操縦する人型機動兵器についてヘッド・メイン・アーム・レッグ・腕兵器・肩兵器のパーツを自由に組み合わせることができるほか、ジェネレーターや装甲版、WCS(武器管制システム)と視覚に反映されない内部的なパラメーターを調整する項目も用意されている。
 ロボットのカスタマイズと言えばジョイメカファイトでもメダロットでも比較対象はあると思うが、本作は直接ロボットを操縦することやこうしたパーツの多さから「アーマード・コア」シリーズと比較して語られることの多いシリーズである。

 その一方ではメカのコンセプトデザイナーとして「機動戦士ガンダム」や「勇者王ガオガイガー」など日本のロボットアニメの大黒柱として活躍してきた大河原邦夫を迎え、主人公やその仲間たちに軽快なやり取りを用意し、それらの声優として山寺宏一や大塚明夫といったこれまた強力な声優陣を揃えている。
 その点、興味を持つ間口を広く採り、広い層に向けて「ロボットカスタマイズ」という当時ニッチ寄りであった魅力を伝導する一作と言えると思うのだが、さてその内容は・・・?


・序章編

 ・・・内容は、先ずは定価1980円の「序章編」のリリースという形で世に出たのだった。
 人型機動兵器「パンツァーフレーム(以下「PF」)」の開発によって軍事的優位を得た傭兵国家「アルサレア」は、しかしそれを快く思わない「ヴァリム共和国」によってPFの技術を模倣され軍拡競争に巻き込まれることとなった。
 だが、それだけでは飽き足らずヴァリムはアルサレアの軍事・政治的首脳グレン将軍を暗殺、これを宣戦布告に代えPFによる侵攻を開始したのだった。
 しかし、アルサレア国内では混乱を恐れこの事実を隠蔽、表向きはグレン将軍が健在であるとして、国内で最も信頼の厚いPF部隊・「グレン小隊」の隊長(CV:山寺宏一)をその影武者として任命した。
 この瞬間から彼の、仲間とともに前線で命を懸けるエースパイロットと、国家の存亡を左右する最高意思決定者との、あまりにも責任重大な二重生活が始まったのだった。

 そしてそれを彩るのがグレン小隊の仲間であるドジでお調子者のキース(CV:関智一)と口やかましく隊長ラヴのアイリ(CV:白石妙子)、そして新人オペレーターのフェンナ・クラウゼン(CV:岩男潤子)。
 ・・・この二重生活の狂言回し、ツェレンコフ参謀本部長(CV:立木文彦)の判断によって配属された、グレン・クラウゼン将軍閣下のご令嬢である。
 彼女の登場によって隊長の二重生活にはさらに「父」の役割ものしかかったのであった。

 しかしてヴァリムのPF軍団はアルサレア国内の混乱を好機として容赦なく国境を脅かす。
 その中の一際黒い影(CV:大塚明夫)の前に屈したグレン小隊は、これからの戦いの激しさを予感せずにはいられなかった・・・。

 ・・・といったところまでの内容で、出撃可能なミッション3つ、機体バリエーション3機、対戦モードと、敵が無限湧きするスコアアタックモード、それから設定資料集というデータ引き継ぎ可能な有償体験版である。
 「序章編」への要望によって本編では「ある程度の間合いを詰めて切りかかる近接武器の実装」や「方向キーの左右をキーコンフィグに対応(ラジコン操作で、左右で平行移動の操作に対応していなかった)」、「難易度設定の導入」といった改善に結びついたとは言うが・・・ワゴン価格ならまだしも、定価と見比べると正直立腹する内容ではあるまいか。
 なにしろ結果論として、本編の「改善項目」であるはずの踏み込み近接武器は「序章編」からのデータ引き継ぎ特典で獲得という形、さらに引継ぎを行わない場合本編クリア後の隠し要素の大部分がプレイ不可になるため、実質的に本編(定価7480円)を完全にプレイするためには「序章編」の購入・プレイが必須となっているのである
 また、本作の目玉であるはずの「カスタマイズ」について、序章編の内容では「パワーユニット」、「レッグモーター」、「冷却材」、の3部位について登場するパーツが重量やエネルギー使用量が同一で性能が単純に向上した上位互換という形になっているのも痛い。
 のちに痛感するが、こうして「パーツを順々に更新することで攻略できるゲームだ」と考えてしまうと本編ではとんだ手痛い目に合う新仕様が導入されるのであった。


・カスタマイズ基本編

 では、本作のキモである「カスタマイズ」について見てみよう。
 人型機動兵器「パンツァーフレーム」は頭部に当たる「ヘッド」、胴部に当たる「メイン」、腕部に当たる「アーム」、脚部に当たる「レッグ」、といった「外装」を規格の範囲内で自由に組み合わせられるほか、武装については両手それぞれに任意の「腕兵器」と、両肩それぞれに任意の「肩兵器」を搭載することができる。
 例えば左手(ボタン)に連射力があり使いやすい「サブマシンガン」を、右手(ボタン)にホーミング性があり威力の高い「グレネードランチャー」を、として射撃戦中心に組んでもいいし、いや遠距離武器は肩兵器(ボタンで腕・肩切り替え)で補えるのだから「レーザーソード」で接近戦に備えた方がいい、と考えてもいい。
 弾数に限りがある銃器ならともあれ、使用に限度のない「レーザーソード」を両手に持つのはさすがにムダ・・・というのも、本編では装備を左右対称にすると敵の攻撃に転倒しにくくなる、というようなボーナスがかかる「BURM」システムが導入されたことで無意味ではくなっている。
 ただ、「BURM」システムはかなり賛否両論ありそうな仕様なのでのちにまとめて記述する。

 「外装」についてもう少し詳しく見ると、それぞれの部位には「HP」と「衝撃・熱防御力(DEFINP・DEFTHE)」が設定されており、また「重量(WT)」と「エネルギー要求量(EP)」の制約を持つ。
 「HP」と「衝撃・熱防御力」については高いに越したことがないのだが、「重量」と「エネルギー要求量」が容量を超過した機体では出撃することができない。
 「重量」は「レッグ」に容量たる「積載量(MAXWT)」のパラメータがあって、大型でがっしりしたパーツのほうがこれが高く、さらに耐久面でも優れている形となるのだが、一方で「歩行速度(SPEED)」とトレードオフになるのが悩ましいところだ。
 ちなみに本編ではこれに「地上旋回速度(HANDLG)」、「空中旋回速度(HANDLS)」、「ジャンプ速度(JSPEED)」、のパラメータも加わってやたら煩雑になった・・・わりに全機2脚型で操作感はあまり変化しない。
 また、「アーム」パーツは腕兵器を設定しない素手攻撃の威力に関わる「攻撃力(ATT)」のステータスを持つ・・・が、今作(序章編・本編)では近接を含む兵器攻撃力には影響しないのでそれはあまり意識しなくてよい。
 「ヘッド」と「メイン」については特別な効果はないが、「メイン」は耐久面や重量と言った基礎ステータスの数値が大きく、「ヘッド」は一部パーツにWCS(武器管制システム)に影響する隠しパラメータがある。

 さてもう一方の制約、「エネルギー要求量」については外見に反映されない内部パーツの一つ「ジェネレーター」によって決定される。
 「パンツァーフレーム」においてはエネルギー周りを決定する「ジェネレーター」、エネルギーを消費して一時的に加速する「ブースター」、ロックオン性能を決定する「WCS(武器管制システム)」、ミニマップの性能を決定する「レーダー」、衝撃防御力に影響する「アーマー」、パンチ攻撃力に影響する「パワーユニット」、基本の歩行速度に影響する「レッグモーター」、熱防御力と移動速度とパンチ速度に影響する「冷却材」、の8種類の内部パーツを検討する必要があるわけだ。
 これをめんどくさいとみるかやりがいと見るかで本作の向き・不向きが端的に現れると思うが、まぁ本編ではお任せビルドもできるし中盤辺りから「機体別組立」といって一式用意されたビルドを選択することもできるので気にしないならしないでもいい。

 要するに、「重いか、エネルギー要求量が高いパーツほど性能が高い」、「この2つはレッグとジェネレーターの性能で決まり、それもやはり重い方が性能がいい」、「パンチ攻撃力など重要視しないステータスに関わるパーツは軽いものでいい」、「重量級のパーツは移動速度が落ちるが、移動速度を上げるパーツも重いほど高性能なので結局差は埋められる」、という基本を押さえておけばそう迷うことはないだろう。

 ・・・あれ、このゲーム重量級大正義じゃね?と思うところで、まぁ実際そんなもんだが、そうもいかないのが本編で取り入れられた・・・「BURM」システムなのである。


・カスタマイズ応用編

 「BURM」システム、それはパーツを選別して組み上げられた機体が「どういった設計コンセプトなのか?」を判断されてステータスに様々なボーナスやペナルティがかかるシステムである。
 これが最もわかりやすいのが本来想定された規格通りのビルドを行う「機体別組立」、これによって組み上げられた機体は「完全規格」の判定を受けて耐衝撃・耐熱防御が+50%される。
 機体によってはさらに武器の攻撃属性が実弾やブレードといった「衝撃系」に偏っている「攻属特化衝」が付いていくらか最大HPへのボーナスも付いてきて、カスタムに困ったらとりあえず「機体別組立」を優先すれば安定感を得られるだろう。
 どの機体にどの内部パーツが必要なのか、必要なパーツがいつアンロックされるのか、すげえわかりづらい不親切設計だけど。

 ところが、例えばここで主人公機の「Jファーカスタム」について見てみるとアーマーをひとつ上位のものに積み替えられる重量とエネルギー要求量の余裕がある。
 カタログスペック上、上位互換なのだから早速積み替えようと思ってみると・・・「完全規格」のボーナスが消失して最終的な防御力はむしろがくっと減少してしまうのだ。
 数値とにらめっこして良かれと思ったカスタマイズが逆効果になる・・・これは少々評価が難しい。
 カスタマイズに不慣れかあまり関心がない初心者は「機体別組立」によって新たな機体をアンロックしてゆくことを目標及び導線と据えて操縦アクションを楽しめばよい。
 あるいは冷却材の厳選などむしろ望むところというマニアはBURMシステムの発動を見比べながら最高のビルドを探る面白みがあるだろう。
 だが・・・その中間と言うべきか、普通のRPG(JRPG)などで「ゲーム進行に応じて強力な装備に更新してゆく」という遊び方に慣れたプレイヤーにとっては、基本どのゲームでも通用する黄金律が通用しない、遊び方の導線を取り上げられたような困惑に陥るのではなかろうか。
 本作が「ロボットアニメ風の親しみやすい世界観」によって間口の広い表現を採ったことを思い返せば、これは若芽を摘む悪手だったと思うところだ。

 さて、ではもう一歩踏み込んでみよう。
 「完全規格」に向けて開発を進めてはいるが内部パーツや兵器が足りない場合、しかし外装が一式同じ規格であれば「全規格外装」と判断される。
 兵器の選別を念頭に「完全規格」のJファーカスタムから両手両肩の兵器を取り外した状態もまた「全規格外装」と「完全左右対称」だけが発動している形となる・・・のだが、実は「全規格外装」に目立ったボーナスはなし。
 これはむしろ他のBURM判定を邪魔する要素でしかないようなので、ヘッドを他のパーツ・・・例えば「Jファー量産型」に積み替えてみる。
 と、「機体軽量D」が有効化されてブースターの加速が+80%、最高速が+60%、エネルギー消費が-20、エネルギー上限が+43%、移動時のグリップ力が-30%、陸上旋回速度が-3P、空中旋回速度が-4Pされ、「完全無装備」によって衝撃防御力が+90%、HPが+40%、パンチ攻撃力が+145%、パンチ速度が+100%されることとなる。
 ただし、この状態でグレネードランチャーでも持たせると「完全無装備」ではないので防御力のボーナスが消えるわ軽量化の評価が「機体重量E」に落ちてブースター関連のボーナスが落ちるわ・・・というかそもそも今作(序章編・本編)では「兵器攻撃力」がBURMシステムの影響外なので、強力な兵器と強力なボーナスはトレードオフの関係になるようになっている、と言うべきか。

 まったくわけがわからないというか、カタログスペックに対してBURMシステムの影響が大きすぎるというか・・・。
 この要因としてはまた、BURMシステムには「稼働率」の概念があり、仮に一定の条件を満たしていようとも他の条件を併用して「稼働率」を高めないと判定が発生しないこともある、ということと、機体の軽量化がやたらこの稼働率を高めるということの都合もある。
 このうえでやたら強化手段が豊富な「パンチ攻撃力」については、軽量型機体に限って軽量の度合いに比例してパンチ力が向上する「特殊補正」があるため、重量級パーツでマッシヴに決めるよりも細腕の女性型ビルドのほうがステゴロ特化型(準巨大人型兵器もワンパン)になるというからわけがわからない。
 無理やり納得するとしたら、積載量システムが重量型に有利だった半面、BURMシステムは軽量型に有利なようにできている、というべきか。
 この救済措置という切り口で見てみれば、逆に限界まで重量級のパーツを揃えたビルドは「機体重量A」・「積載重量A」なる判定がついてブースターの性能がカクッと落ちる一方旋回速度や歩行速度にボーナスがついて、重量級のレッグパーツの弱点を補うような設計となっているのだ。
 ちなみに、このブースターへのペナルティが不満なら「全規格外装」を優先すればよい。
 ・・・が、難解でわかりづらく、ただでさえ積載量の関係で選択肢の少ない兵器にさらに属性を揃えるなどの「縛り」を要求してしまっている点であまり良い設計と褒めたくはないところだ。
 そしてその難解さは、「BURMハイパーモード」に言及する時に最高潮となる。


・カスタマイズ限界編

 「ハイパーモード(以下HM)」、それはある程度のBURMシステムが稼働している場合に限り発動可能となる、ミッション中に任意の一定時間機体が不思議な力でパワーアップするというシステムである。俺のこの手が(ry
 発動の条件は「完全規格」でも満たすことができ、例えばJファーカスタムなら防御力と移動力がおよそ1.5倍になるHMを4回使え、ヴァリムの量産型PF「ヌエ」なら倍率には若干劣るが約3倍効果時間が持つHMを3回、試作型PF「アシュラ」なら攻撃力(パンチのみ)4.5倍に防御力7.5倍という目を見張る高倍率を誇るが効果時間が発動モーションより短いので一瞬光って固くなるだけの出オチ、とそれぞれに個性がある。
 ひるがえって先の頭だけ量産型の武装解除Jファーカスタムを見てみれば、倍率がほとんど上がらないが効果時間だけは長いというしょっぱいHMが2回使えるという形なのだが・・・。
 このうえで、ミニマップの表示にしか影響しない「レーダー」を積み替えてHMに表れる変化を見てみると、効果時間が1/4ほどに短くなってみたり、移動速度1.8倍の代わり防御力0.25倍というピーキーな性能になってみたり、使用可能数が増えたり減ったりする。
 パーツを積み替えることとHMの性能との間にほとんど因果関係が見いだせないのだ
 重量かエネルギー要求量かの端数が計算式に関わっているのだろうかなどと憶測を働かせてみるものの、プレイヤー視点ではまったくのランダムというほかなく、理想の基本性能と理想のHMを両立することはほぼ不可能と言うべきだろう。

 実際この点には不満が多かったらしく、続編「バーストタクティクス」ではHM関連のステータスは冷却材に由来するように簡略化し、今作(本編)だとNPCの誰も使わないHMを敵のザコでさえ積極的に使用してくるよう存在感を高める調整を採ったようだ。
 加えて、「バーストタクティクス」では内部パーツにもHPや防御力を設定したりパンチ攻撃力にしか影響しなかった「パワーユニット」や「BURM」システムを兵器攻撃力に影響するように調整したりと大幅な見直しを取り入れたあたり、本作のカスタマイズ周りはまだ手探りのさなかにあったというべきだろうか。
 あるいは、「アーマード・コア」シリーズも作品ごとに大胆な仕様変更を取り入れているあたりは「試行錯誤の仕方を試行錯誤する」ことが同ジャンルの命題である、というべきなのかもしれないが。


・実地試験編

 ・・・というわけで長い長いカスタマイズの話は十分として、そうして設計した機体で挑む実戦、「ミッション」はどういったものだろうか?
 結論から言うとすごく残念である。

 「序章編」で遊べる3つのミッションは、
 ・起伏のある丘で僚機とともに敵PF群を撃破する第一話
 ・岩の柱が障害物となる平原で敵PF群を撃破したのち強敵「グリュウ」機と対決する第二話
 ・気化爆薬が充満しており近接武器を使うしかない基地内部を探索する第三話

 という構成。
 視界が開けていて撃ち合いが有効な屋外戦と、狭い通路を進みながら不意の遭遇に対処する必要があり近接戦闘が有効な屋内戦、ちょっとした強敵の顔見せも用意したバランスの良い構成だと言える。
 そして、これに加えてクリア後に「縦に長い空間の軌道エレベータ戦」と「PFのサイズをしてなお視界に入りきらない超巨大人型兵器戦」の開発中画面が披露され、「J-フェニックス」の題を象徴するウィングパーツの活躍の場、激しい空中戦への期待感を煽ったのだが・・・。

 ひとつには、空中戦があんまり楽しくなかった
 PFで空中戦を行う場合、「ジェネレーター」の容量内で「ブースター」に応じたエネルギーを消費してホバージェットを発動し重力に逆らう、という形になるのだが、このつり合いが結構厳しくある程度ビルドを吟味しないと息切れしてしまい高度を維持することすら難しい、というバランスになっている。
 これは敵にしてもあまり大差なく激しく上下運動しながら接近してくるという調子であり、お互いに空中にいる場合は攻撃一つするにもブランコに乗りながらババ抜きでもやるかのような曲芸が要求される始末となっている。
 本来であればこうした状況に特効となるのはホーミング性能の高いミサイル、特に複数のミサイルを一斉発射する「MLRS」や広範囲を爆撃する「フライキラー」といったところなのだが、よりにもよってこれらは空中機動力を高める「ウィング」と同じ肩兵器なのでトレードオフの関係にある
 かろうじて腕兵器にもホーミング性の高い「グレネードランチャー」などがありはする・・・のだが、これまた敵側もそれをバッチリ把握しているうえ、プレイヤーに限ってこうした対空兵器によって撃墜され極端に高度を落とすとミッション失敗扱いになるという理不尽仕様。
 結論から言うと空中戦ミッションは最も「カスタマイズ」が不自由な内容なのであった。

 ちなみに、軌道エレベータ戦は足場を飛び移るアスレチックパートがある以外はふつーに足をつけて戦う屋内戦で、巨大人型兵器とやらは身じろぎひとつしない巨大オブジェのおできを狙い撃つだけの人型である理由が何一つない残念仕様であった。

 これだけボロクソ言ったうえでなお指摘しなければならないのが「防衛戦」、あるいは「耐久戦」と言える形式のミッション。
 一定時間の経過をミッション目標としていて敵が際限なく出現する、いわゆる「無限湧き」をする・・・のだが、この際のリスポーンの仕方が撃破からほとんど間をおかずに自身の頭上周辺に唐突にスポーンするというもので、撃破した瞬間に全回復しつつ死角に移動して制圧射撃を行ってくるということに等しい
 この際討伐数に応じて報酬が増えるというような要素もないので、「敵を撃破する」ということが敵に利する行動にしかなっていないわけだ。
 機動力か耐久力重視のビルドで逃げ回るのがベスト・・・と言えるのだが、その間も僚機が勝手に敵を撃破するので結局頭上から奇襲を受けることからは逃れられないミッションもある。

 ちょっとプレイヤーに何をさせたいのかわからない

 ゲーム終盤だととくにこの耐久時間を延ばすことを難易度を上げることとして肯定したフシがあるのだが、困難に伴う苦痛と単なる苦痛をはき違えているだけであってタイパ重視の現代じゃ受け付けられないだろうなとスマホに手が伸びるところだ。


・兵器編

 ・・・というわけで全体的に残念仕様な本作だが、しかして「兵器」のバリエーションに関してはまっとうに評価しておきたい点の一つである。
 特に注目したいのが、武器には単純な上下互換の関係がないという点。
 例えば初期武器の「サブマシンガン」に対して熱エネルギーを持たせた「レーザーマシンガン」という改良品があるものの、レーザーマシンガンは威力上昇と引き換えにジェネレーターのエネルギーを消費するようになってブースターの発動と競合するようになり、特に空中戦への適性が著しく損なわれることとなってしまう。
 また、「サブマシンガン」は装備全体を見ても軽量で装備する機体を選ばない一方、「レーザーマシンガン」は3倍重くそもそも装備可能な機体を選ぶという面もある。

 それから近接武器に関しては、主人公らグレン小隊では「レーザーソード」を使用し、宿敵グリュウは「カタナ」を主に使用する。
 威力に関しては完全に同格なのだが、「レーザーソード」は攻撃属性が熱なのでサブマシンガンが通用しない衝撃防御の高い敵の弱点を効率よく突くことができ、「カタナ」はエネルギーを消費せずに使えるほか「攻属特化衝」や「左腕の剣豪」、「二刀流」といったBURMシステムの発動要件を満たしやすい。
 また、「カタナ」についてはその他同型武器が複数出ているものの、それぞれで袈裟切り、突き、踏み込み切り、薙ぎ払い、と攻撃モーションが異なる一面もある。
 それぞれのモーションについて「クラブ」、「レディーレイピア」、「フォースソード」、「カタール」、と競合があるものの、重量・威力・振りの早さといったステータスを見比べればプレイヤーごとの好みというものも分かれるところだろう。

 ちなみに、本作の「パイルバンカー」は間合いに入った敵の動きを止め短い演出ののちに必殺の一撃を叩き込むという「投げ技」に類する使用感である。
 ほんの一瞬間合いに入れば(ほぼ)必中させられるため、空中戦でチョロチョロ飛び回る敵に対しては足場でパイルバンカーを構えて待ち伏せる居合切り(居合突き?)戦法がなかなか実践的だと思う。

 ほか、本作で特にと勧めたいのは複数発のミサイルを一斉発射する「MLRS」。
 敵を一定時間視界に収めて「ロックオン」することで発射可能となるミサイル兵器のうち、一体の敵、あるいは複数の敵に対して複数回のロックオンを実行し一斉にミサイルを発射、相手を追尾して連続大ダメージというこの武器はロボットものの花形武器と言った存在だろう。
 本作の「WCS(武器管制システム)」はこの兵器に対する影響が強く、例えば使用する側に立てばロックオンごとの所有時間が短いWCSを選択することによって激しい機動戦でも安定感のある高火力を発揮できるようになるし、あるいは使用される側になればミサイルにロックオン可能なWCSか否かがその対処法を撃墜と回避とで分けることとなる。
 残念なのは、本作は原則1度に1つの兵器しか使用できない仕様なので「両肩にMLRSを乗せてロック数が2倍の同時発射数が2倍!」とはならないということと、繰り返し空中戦対策としては転落死防止のウィング最優先で選びづらいということ。
 ただし肩兵器としては異常に軽く(サブマシンガンよりさらに軽い)搭載するPFを選ばないため、ブースター消費量カットのBURMが発動した軽量型機体で空中戦に投入する戦法がないわけでもない。

 一方で・・・何かの間違いかと思うものの、「ニアフレア」・「ファーフレア」といった「爆風によって攻撃する」系の肩兵器を試してみたところほとんど相手にダメージを与えられない割に自爆ダメージはバッチリ入るという現象を確認した。
 続編「バーストタクティクス」でも同様だったので仕様ではなく当プレイ環境(エミュレータ、PS4のBIOSを用いたPCSX2)が悪いのだと思うが、「完全規格」機体でこれを搭載した機体がなにもないうえ、その場でダメージ0の爆風を起こして自発的に転倒し起き上がり無敵で回避するというデバッグツールみたいな肩兵器「クラッカーボム」が実装されているあたり、近距離で爆風を起こして攻撃する「ニアフレア」で自爆してしまうのは不具合ではなく必然なんだろうなと頭を抱えるところである。


・まとめ

 当時まだ数の少なかった機体のカスタマイズ要素を取り入れたロボットアクション、「機甲兵団J-フェニックス」。
 全体として残念感漂う出来ではあるもののアニメ風の作風に寄せることや「BURM」システムという形で設計コンセプトをさらに特化させるといった試みは「アーマード・コア」シリーズとはまた違った形の方向性を示した物であり、その後の「バーストタクティクス」や「2」といった続編につながったほか、その他の後追いを促し「ロボットカスタマイズ」をひとつのジャンルとして認めさせる一助となったのではないかと思う。
 今となっては同ジャンルとして比較できる作品も多数現れ、喜ばしい一方で本作の立ち位置は苦しいものの・・・もしも地上戦を中心とした重量感のある操作系や、しかしてなおホバーで走り回ってMLRSを撃ち込む開放感、パイルバンカー一本で敵集団と渡り合う緊張感といったものに興味があれば、なお本作を特にと勧める理由となるものだろう。
 そしてもちろん、大河原邦夫がコンセプトデザインを手がけたというヒロイックなメカデザインも本作の魅力か。
 クリア後に開放できるようになる隠し機体・・・どうみても勇者王な「アポロン」と、ヴァルシオーネによろしくな「アリス」も、まぁ・・・既成概念に囚われないユニークな試みだったと言えばそう思えなくもない。
 「序章編」と「本編」セットでの入手を強く推奨する必要があるが、ロボット好き・・・主にアニメの人型機動兵器というガジェット好きには興味を持ってもらいたい作品だ。


・ワンポイント攻略

 ・「攻属特化衝」はHPにボーナス、「攻属特化熱」は防御力にボーナス。耐久力が厳しいと思ったら発動を狙ってみよう。
 ・難所のシャトル防衛は厳密に言うと無限湧きではなく敵が枯渇することもある。といってもかなりハイペースに撃破しないと先に目標時間になるくらいの数だが・・・。
 ・パーツの開発資金が足りなくなったら無限湧きする敵をひたすら倒し続けるスコアアタック、「百機斬り」モードで資金調達しよう。

 ・「完全規格」に必要なパーツは百機斬りモードでリーダーボードのトップ(11機撃破)に乗れば確認できる・・・正直もうちょっと簡単に確認させてくれと思うが。また、主人公機の「Jファーカスタム」も「Jファー量産型」も完全規格に「序章編」からの引継ぎ特典が必須の課金機体(というのも変だが)である
 ・ちなみに序章編特典を除外して最も簡単に「完全規格」を実現できるのはヴァリム軍の量産機体「ヌエ」。表題機で空中戦対応型の「Jフェニックス」は完全規格が揃う頃には作中の空中戦がほぼ終わっているという嫌なオチがあったりして・・・。
 ・パンチ力を上げるパワーユニットでありながら倍率が1を割っていて搭載するとむしろ弱体化する「ロヴィトS」。ところが完全規格にこれを要求するPFが6機もあるうえに軽量ステゴロ特化型の場合謎の特殊補正がかかって一転最も倍率が高くなる超重要パーツでもある。やっぱりわけがわからない

 ・「序章編」からコンバートした場合プレイ可能になる「スペシャル」難易度。ここでいきなり敵として登場する「アリス」だが使用する分には序章編は不要である。説明書参照。
 ・「スペシャル」難易度を攻略して、かつ資金が十分なら隠しパーツが開発される。特にレッグパーツはえらい性能があるが・・・。
 ・空中戦適性が上がる「ウィング」だが、ジェネレーターやブースターの性能が十分でなければ結局は重力に逆らえず墜落する定め。変な話だが空中戦で滞空戦法を取るなら重量型の機体のほうが楽で、軽量型の機体は肩にミサイルやカッターを積んだジャンプ狙撃戦法のほうが適性がある。





・関連作品

・「アーマード・コア」シリーズフロム・ソフトウェア製のロボットカスタマイズアクションシリーズ。
とくにプレイステーションでリリースされた初代はスペックの制約がある中でなお独自の作風を出すことに成功し同ジャンルのパイオニアとなった。
・機甲兵団J-フェニックス バーストタクティクスデータ引き継ぎ可能な続編。
様々な点でブラッシュアップされており完成度が高まった一方、本編クリア者向けの鬼のような難易度に設定されたうえちょっと運が悪いとゲーム進行不能になる致命的な設計ミスが放置されているあたりテストプレイは足りてなかったんだと思う。
・「機甲兵団J-フェニックス」シリーズ「バーストタクティクス」ののちは主人公を交代しデータ引き継ぎも一旦途切れることとなった。
あいにく「バーストタクティクス」で心折れたのでその後のシリーズ作は未プレイで詳細不明。
フレームグライドドリームキャスト向けのロボットカスタマイズ対戦ゲーム。
ロボットものにしては異色のファンタジー世界観を舞台にし、ホバーで高速機動しながら僚機を「召喚」したり敵を追尾する氷魔法を放ったり敵を串刺しにする異次元への門を開いたりする戦闘が展開される。
またパーツには「破損」の概念があり、特定部位を狙って攻撃する正確さや戦術が対戦を有利にするというテクニカルな要素があった。
ただしゲームモードが1対1(僚機除く)の対戦しかなく、属性に有利不利があることや対戦フィールドと兵装の相性が無視できないこと、盾を装備できない重装機体にあまりメリットがないことなど多少アンフェアな面も散見される。
・カルネージハート エクサロボットプログラミングシミュレーション「カルネージハート」シリーズのPSP向け外伝作品。
プログラミングを組んだロボットが実際にどう動くかは見守るほか出来なかった従来作に対してリアルタイムでロボットを操縦する要素を取り入れアクション仕立てにした冒険的作品。
部分的にこれを組み合わせることもでき、移動だけは自分で操作しつつエイムと射撃はプログラムに任せるということもその逆もできる。
かなりの傑作だと思うのだが続編や移植の一切がなくプレミア付きである・・・。
War Tech FightersPC向けロボットカスタマイズアクション。
悪いゲームではないんだが、宇宙空間を主とした内容で操作系がほぼ戦闘機なうえパーツの上下互換が激しく順々に更新してゆくだけと正直コレジャナイロボだった。
ロボデザは悪い意味で洋画風。
Mecha Knights: NightmarePC向けロボットカスタマイズアクション。
クエストを周回してランダムドロップの装備を集めるトレジャーハント要素を取り入れたロボットカスタマイズアクションで、ホバー移動やミサイル攻撃などロボットらしい高機動や実弾兵器を両手両肩から一斉発射するトリガーハッピー感が楽しめる。
のだが、敵がパラノーマルな異次元生物で、クエスト内容がひたすら大量の敵がスポーンして押し寄せてくる一辺倒、「一度にスポーンする敵の上限」の設定がある通りPCのスペックとプレイ可能な最高難易度が比例しているようなもので、弾切れの概念があるのに近接武器の概念がないなど個人的に合わない部分の方が多かった。
ちなみにテキスト量が多く感情的なセリフが多いが日本語未対応。
Project NimbusPC向けロボットアクション。
これまた空中戦を大前提としているもののロボットの機動力が非常に高くハイスピードな戦闘を楽しめるほか、ストーリーやキャラクターデザインが日本アニメ風に設計されており全編を通して見栄えする。
のだがカスタマイズ要素はなくストーリーモードで使える機体はミッションごとに固定、ミッションを周回し報酬で機体を強化してゆく「ウォーフロント」モードもカラーリング変更に対応していないなどすごく悔しい内容だった。
アリス・ギア・アイギススマホ向けアクションシューティング。
基本無料でガチャ要素があるものの、各部位の外装や兵器を収集して理想のビルドを実現し、宇宙空間を主として高速機動しながら敵の機械兵器と撃ち合いつつ、時には相手の懐に潜り込んでビームブレードで一刀両断にするというアクションシューティングとカスタマイズの面白みをともに高いレベルで実現した一作。
ただしキャラクターはロボットではなく美少女で、メインストーリーはかなりご都合主義補正が入ったスポ根もの。
ソシャゲ特有の足止め要素もたっぷりとあり、カスタム要素は結局「重ね」というか、育成要素ほど重要ではなかった。


サイトトップ/ゲームレビュー/機甲兵団J-フェニックス