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ページ公開:2020/12/22


Broken Helixブロークンヘリックス


プラットフォームプレイステーション
開発コナミ(Konami Computer Entertainment Chicago.)
発売コナミ
発売年月日1997年 5月(北米)
1998年 3月(日本)
ジャンルTPS
プレイ人数1人
セーブデータ1つ2ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
操作性悪し 映画調、マルチエンド 粗い、暗い フルボイス かなり厳しい ややUFO知識が必要





※今回のレビューはややネタバレを含みます※


・ゲーム概要

 1997年にコナミのシカゴ支部で開発された三人称視点アドベンチャーゲーム。
 ストーリーはアメリカの陰謀論でおなじみ「エリア51」を舞台として、秘匿された研究を巡る暴露と隠蔽の攻防が繰り広げられるというSFアクション映画調のもの。
 他の要素を見てもリアル頭身としているものの全体的に粗いグラフィックスや、女性キャラクターが極端に少ない男衆だけのストーリーライン、バイオハザード系のラジコン操作で銃撃戦をやるというとっつきづらさに、説明不足の即死ギミックの数々、と当時の「洋ゲー」に連想するステレオタイプをコッテリと体現した奇ゲーである。

 とはいえグラフィックや操作性は当時のアメリカでさえ酷評されたらしく、現代日本ではなお厳しく映る水準なのだが、いっそその「時代」を楽しむくらいのマニアになりきって見ていってみよう。


・エリア51

 本作の物語は「悪名高きエリア51」の研究者たちが反乱を起こし、爆弾を仕掛け立てこもったというところから始まる。
 ――そもそもエリア51とは実在のアメリカ軍基地なのだが、長年その存在がはぐらかされ政府が公式に存在を認めたのはなんと2013年になってのことだった。
 あからさまに存在する基地を公式には認めようとしなかったうえ、UFOが墜落したという「ロズウェル事件」との関連や周辺でたびたびUFOが目撃されているという噂が一部の陰謀論者やSFオタクの目を引きフィクションにも人気の題材となったスポットというわけだ――

 さておいて、本作の反乱が起きた原因というのは政府がこの基地におけるすべての研究を中止させようとしたためだという。
 これに対し反発した研究者たちのリーダーはこの基地の研究内容をマスコミを通して暴露しようと目論んでおり、一方で政府は機密を保持するため特殊部隊を投入してすべてを闇に葬ろうとしているという緊迫した状況に陥っている。
 そしてここに投入されたのが主人公、爆弾処理のエキスパートである「ジェイク・バートン」だ。
 ニヒルで爆弾処理という命がけの仕事すらどこか他人事のようにこなす彼だが、しかしこのエリア51にはある因縁を感じていた。
 それは幼い頃に飛行機事故で亡くした彼の父が、かつてこのエリア51で働く研究者だったと言うこと。
 そして、この件に関わる前に父の友人を名乗る謎の人物からジェイクがこの事故の真相を知るだろうと告げられたこと。
 爆弾以上の危険な匂いを感じつつも、今エリア51の扉が彼に開かれるのだった――。


・主な登場人物

 ・ジェイク・バートン (吹き替え:神奈延年)
 本作の主人公。一応軍人なのだが礼儀知らずで皮肉が絶えない問題人物。
 短髪角刈り、筋肉モリモリマッチョマンの玄田哲章ボイスがよく似合う外見なのだが吹き替えされた声は神奈延年氏(林延年名義)による線の細いイケボ

 ・フィッツ (吹き替え:掛川裕彦)
 反乱を起こした研究者たちのリーダー。
 とはいえエリア51で行われている研究のすべてを知っているわけでは無く、怪物が人間を襲う映像と「ブロークンヘリックス」というプロジェクト名から軍事目的の非人道的な研究を類推し真相を暴くべく行動を起こした。

 ・リース (吹き替え:青野武)
 「ブロークンヘリックス」の研究責任者。
 エリア51で行われていることのすべてと、ジェイクの父の死の真相についてを知っている最重要人物。

 ・サラ (吹き替え:米本千珠?)
 フィッツによって招かれたニュースレポーター。
 名前のあるほぼ唯一の女性キャラクターで、フィッツの計画における重要人物。

 ・ブラックドーン (吹き替え:平野正人?)
 今回の件の「始末」を任されている特殊部隊のリーダー。
 初めは心強い味方だが、開始10分しないくらいで敵対する。


・序盤の展開

 ゲームはエリア51の入り口から始まる。
 操作方法に慣れようとウロウロ向き直っているうち、目の前の扉から脱走してきた研究者がブラックドーンらに文字通り次々と爆発四散させられてゆくというショッキングな導入だ。

 本作は三人称視点のアドベンチャーゲームとして、主人公を背後から見た視点で操作し仕掛けられたギミックに対処したり敵と撃ち合ったりして進めてゆく。
 移動は左右が旋回に割り振られたラジコン操作。左右への平行移動がある反面旋回はやや小回りが利かず、また視点がキャラクターの視線を基準にしているため足元や周辺の状況が映りにくい。
 特に視線および銃の照準に関しては上下の角度を手動で調整する必要があり、なおかつドローンのように小型で空中を浮遊する敵が多数登場するというなんとも手のかかるゲームデザインである。

 さらに、ゲーム中ではこの操作系にしてジャンプで穴(落ちたら即死)を飛び越えたり敵を踏んづけて倒したりと言ったアクションを要求される場面もある始末だ。

 また、本作ではやたらと暗い場面が多く、銃のマズルフラッシュ以外に明かりを得る手段もない。
 ゲーム終盤の展開によっては真っ暗な場所にいる黒い服の敵の集団から対象を護衛しなければならないという場面もあり、まあ酷評されてしかるべきという操作まわりだろう。

 さておいてゲーム序盤の目標は基地に仕掛けられた2つの爆弾の解除・・・なのだが、20分という制限時間が提示される一方で具体的にそれがどこにあるのかは知らされない。
 ならばと慌てて自分の足で情報を稼ごうとすると、一つはすぐに見つかることになる。近場の男子トイレにデンと置かれているのだ

 まいったな・・・こいつはみたこともないそ゛」「か・み・さ・ま・の・い・う・と・お・り・・・と(パチン)
 (;゚Д゚) 。o(そんなんでいいんだ・・・。) 「いっこはかたつ゛いたせ゛


 しかし同時に「セキュリティーカメラにきをつけろ。」なる文章が表示されてフィッツが激高し、もう一つはどこかと歩き回っていると一方的に時間切れが宣言されて木っ端みじんにゲームオーバーと相成ってしまう。
 おそらく大多数のプレイヤーはこんな調子で最初のゲームオーバーに唖然とすることだろう。

 実は基地の最初のフロアにはいくつかの「セキュリティーカメラ」が仕掛けられており、先ずはこの位置を把握してショック銃で無力化するという工程が必要とされる。
 カメラは地味な色合いで気付きづらいのだがゲーム開始地点そばにモニタールームがあり、ここでカメラの視界を覚えておくことでフロア内のどこにカメラが仕掛けているかを想像して対処する、というのがスマートな攻略として用意されていたのだ。
 ほぼほぼ初見殺しでしかないとは思うが

 気を取り直して対処してゆくと最初の爆弾の近くにカードキーを必要とする扉があり、カードキーはとある部屋に落ちている。
 扉の向こうには地下へ降りるエレベーターがあり、なるほど次の爆弾はこの先かと降りてゆくと・・・。
 エレベーターから出た瞬間に3機のタレットから一斉射撃を受け、ハチの巣になってゲームオーバーと相成ってしまう。

 実はこのタレットは別のエレベーターから行ける管制室にオンオフのスイッチがあり、先にこちらを切っておくという工程が必要とされる。
 冒頭で爆散する研究者の少しあとには続く研究者がおり、この情報は彼に話しかけて聞き出しておく、またついでにキーカードも受け取っておく、というのがスマートな攻略として用意されていたのだ。
 要するに、全編こんな感じで見落とし厳禁の死に覚えゲーである


・その後の展開

 しかし、ここまででの展開にやや気になるシステムもある。
 それはプレイヤーの行動を問わず基地の入り口に向かった研究者たちで、本作ではこうして独自の行動パターンにのっとってプレイヤーと並行して行動するキャラクターがいることを「4次元時間管理システム」と銘打っている。
 とはいえ結果から言えばこのシステムの影響を受けるのはあとはブラックドーン率いる特殊部隊くらい、同時期のHalf-Lifeなどと比べると本格的に実装されたものではないのだが、このシステムが意味するところは本作はキーパーソンが死亡することを念頭にストーリーにいくつかの分岐を確保している、と言うことだ。

 例えばこの後順調に進めてゆくとニュースレポーターのサラと接触して彼女をフィッツの元まで護衛する流れになるのだが、サラとの合流に手間取ると彼女はブラックドーンに始末されてしまい、あるいは合流できても護衛に失敗してしまうことが考えられる。
 この場合フィッツに協力して基地を脱出するというストーリーラインは進行不能となるが、しかしほかにフィッツの気を引くものを持って行けばフィッツに代わり研究の真相を探るというストーリーラインが進んでゆくこととなるというわけだ。

 これも結果を言うと他の護衛対象は失敗すると即ゲームオーバーというパターンばかりなのだが、こうして分岐してゆく物語、特にそれぞれ異なる勢力に味方して物語の真相に迫るという展開は評価が高かったようだ。
 また、本作ではNPCに話しかける際に「平和的」か「暴力的」かの態度を選んで会話することができ、これによって聞き出せる情報が変わることがある、というシステムもある。
 この点についても「暴力的」で得をすることはほとんどないのだが・・・キャラクターになり切る、柔軟なアプローチを可能にする、といった面では悪くない体感要素だろうか。

 ・・・とはいえ、ハッピーエンドに終わるルートはわずかに一つのみ。
 それ以外はジェイクが後悔を口にするバッドエンドで、サラの護衛に成功したルートについては「ブロークンヘリックス」が結局何だったのか分からないままという非常に消化不良な終わり方となってしまう。
 (本作終盤の敵はグレイ型エイリアンがサソリの遺伝子によって変異したモンスターというなかなかブッ飛んだ設定なのだが、これもストーリー中の解説なしにはピンと来ないだろう。
 例として挙げなかった残る2つのストーリーラインについてはそもそもの分岐条件がかなり分かりづらく、魅力と推すにはためらわれるというのが現代にしての私見である。


・まとめ

 声と外見にギャップのありすぎる主人公やドリフばりに繰り返される即死トラップの数々、とっつきづらい操作系など序盤にバカゲー要素が多数見いだせるものの、進めてゆくとストーリーにひと工夫ありアプローチを変えながら周回したくなるスルメゲー・・・
 と言ってもいいのだが、やはり現代ではどの要素も粗さが気になりファーストコンタクトで脱落しかねないだろう厳しい内容の一作。
 もう少しフォローしておくとフロアごとの目標や構造が多様で飽きづらく、ゲーム中盤以降の戦闘は強力な武器の入手や護衛するべき仲間の同行によって手に汗握るものとなってゆくのだが、それらも画質の悪さ・操作性の悪さによって悪印象に転びかねないのが不安なところだ。

 粗さを許容できるかいっそ懐かしさとして楽しめるかくらいのマニアであれば一考できるが、実現度の半端なシステムを見ているとそれはそれで「もっと面白くできたのでは」という想いが湧いてくるやるせない一本である。
 なお、爆弾処理の「かみさまのいうとおり」のくだりは原語版では「Eeny, meeny, miny, moe」、要するに邦訳はアドリブではなくかなり忠実に行われていることを補足しておく。


・ワンポイント攻略

 ・ストーリーの分岐タイミングは、
 1.サラをフィッツまで護衛する(してしまう)
 2.爆弾を解除せずにレベル3に降りてしまう
 3.上記2つを満たさず、フィッツにブロークンヘリックスのファイルを渡す
 4.上記に加え、レベル3でケージの中にいるクリーチャーに話しかけておく
 とそれぞれ軌道に乗るだろう。

 ・ゲーム終盤では戦闘の頻度と難易度が急上昇する。序〜中盤でアイテムの回収を甘く見ると気付いた時には詰んでいるかもしれない・・・。





・関連作品

KILEAK,The BloodPSのFPSアドベンチャー。
国産ゲームなのだが、詰みデータを作りうる厳しい(というか理不尽な)ゲームバランスや、地下研究所を舞台に繰り広げられるエイリアンと遺伝子を題材としたストーリーなど作風が似ている。
オーバーブラッドPSのFPS・TPSアドベンチャー。
こちらも研究所という閉鎖空間を舞台に遺伝子研究にまつわるストーリーが繰り広げられるというプロットを持つ一本。
基本的に主人公に体力の概念が無いため、ゲーム内のギミックの大半が即死という思い切りぶりである。
・アローン・イン・ザ・ダークPC向けのTPSアドベンチャー。
バイオハザードの原型ともされる3Dアドベンチャーの始祖的存在で、ラジコン操作や盛りだくさんの即死トラップといった特徴は本作にも受け継がれた感がある。
・ハーフライフPC向けのFPSアドベンチャー。
当時において革新的なAIシステムを導入し、NPCすべてが各々の行動原理に従って独自に行動をとるというリアルかつ柔軟なゲームデザインを実現した。


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