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ページ公開:2020/11/10


Acidアシッド


プラットフォームプレイステーション
開発たき工房
発売たき工房
発売年月日1999年 7月
ジャンルパズル
プレイ人数1〜2人(対戦モードあり)
セーブデータ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
煩雑 一応ある、程度 視点操作に乏しい テクノ調だが地味 劣悪 AcidはDNAのA
・・・らしい





・ゲーム概要

 1999年に発売されたパズルゲーム。
 極彩色を用いた幾何学的なグラフィックや電子音を用いたテクノミュージックによってサイバースペースという世界観を演出し、この中で大砲のような自機を操作し的を破壊してゆくという概要を持つ。
 特徴的なのは、自機が放つ弾は重力や衝突の概念を持ち、物理演算に相当するような複雑な軌跡を描いて飛翔するという点。
 これによって障害物を超えさせて目標に当てる曲射や、壁に当てて物陰を狙う反射といったテクニックを駆使してゆくのが本作のゲーム性というわけだ。

 言うなればゴルフゲームの変形というところだが、サイバースペースで的のポリゴンを破壊してゆくというデザインにはカタルシスがあり、本作には相応の個性を感じることができるだろう。


・第一印象

 ・・・とはいえ、個人的に初めてこのゲームの存在を知った時に抱いた感想は「難しそうでよくわからないゲーム」だった。
 というのは、本作の弾丸の基本が「放物線を描く」ことにあるためだ。

 重力の概念が無く直進する場合は難しくはない。
 射撃地点から目標地点を向いた時に考えられる弾の軌道は一種類しかなく、目視さえ出来ていれば後は「左右の向き(方位角)」と「上下の向き(仰角・俯角)」を合わせて撃てばいい。

 ところが放物線を描くとなるとそうはいかない。
 射撃位置から目標地点を向いたとしても弾の進む速度と落下する速度に応じて無数の軌道を考えることができ、しかも落下を無視できる程度に高速で飛んでゆかない限り軌道が目標に届くことはない。
 これを目標に当てるには向きに加えて「目標までの距離」を調べたうえで「弾の速度」に合わせた「仰角の補正」を加えなければならず、しかもそのいずれかが誤っているだけで目標には当たらなくなるわけだ。

 しかして、このゲームはこの放物線を基本としたうえで「壁に反射させる」や「障害物を避ける」といったテクニックを駆使するというもの。
 壁に反射させるとなれば追加で「当てる角度」を考える必要が生まれ、最終的に「壁で反射した放物線」という難解な軌道を想定しなければならない。
 障害物を避けるとなればまた「放物線の高さ」を予測する必要が生まれ、さらに「放物線に接しうる障害物」の位置を類推する空間把握能力が強く問われることになる。
 考えるほど複雑さは増すばかりだが、これらを駆使しても「的に当てて破壊する」という目標が変わらないとすればそれは達成感に益せず手間だけを増やす結果となりはしないだろうか?

 要するに、考えることだけ多くてめんどそうという印象に至ったわけである。

 ところが、実物を触ってみるとその印象はまるで予想だにしない方向に跳ね返ってゆくこととなったのだった。


・操作性

 本作は「ステージ」単位に区切られており、それぞれのステージは用意された「ターゲット」をすべて破壊することでクリアとなる。
 この中でプレイヤーが操作する「ガンシップ」は位置が固定されており、

 1.主観視点で方向キーを操作し「左右の向き」と「上下の向き」をターゲットに合わせる
 2.L1・L2ボタンで「仰角を補正」できる(しなくてもよい)
 3.ボタンで射撃体勢に入り、再度ボタンを押して動的に増減する「パワーゲージ」を任意の位置で止める
 4.さらにボタンで動的に変化する「カーブゲージ」を任意の位置で止める
 5.カーブゲージを止めたら弾丸が発射される

 という手順で弾丸を発射、ターゲットへの命中を狙ってゆくこととなる。

  _,._
 (;゚д゚) ・・・ん?

 ・・・というわけで本作には左右への「カーブ」の概念があり、これを利用して障害物を迂回するというテクニックが求められることもある。
 中にはカーブと反射を併用する必要のあるステージもあるが、これは弾丸の軌道が極めて予測困難となり難易度が跳ね上がることだろう。

 いや、まあ、それも厳しいのだが・・・動的に増減するゲージを止めるという操作がかなり厄介だ。
 繰り返しになるが放物線というものは弾丸の速度によって軌道が変わる。
 というのに撃ち出す強さに関しては向きや補正と異なり任意の調整が利かず、タイミングを計る操作を必須としているわけだ。
 パズルゲームとしては、この点は自分の解法を実行しづらくする難点として映ることだろう。

 ・・・そう、実行しづらくするのだ。
 弾が左右にそれるカーブの度合いを動的に変化するゲージを止める形で決めなくてはならないのだ。
 ここでしつこく放物線に話を戻すが、落下を無視できる程度の速度が得られる場合、要するに近い距離では仰角の補正がなくとも目標に当てることができる。
 これを本来のゼロ距離射撃というわけだが、もちろん本作ではそうではなく仰角の補正を行わせるためにほぼすべてのステージでターゲットとの間に十分な距離が取られている。
 そして十分な距離があると言うことは、ちょっとでも左右にそれたら目標から大きく外れてしまうということである。
 というのにこれまた任意の調整が効かず、さらに多少前後しても目標に届けばよいパワーゲージとも異なりカーブゲージは正確に中央で止めなければ全てが台無しになるという影響度。

 なんとか目押しできる程度の速度であるほか初期位置が中央で固定なので直進は連打で何とかならなくもないとはいえ、端的に言ってしまうとこの「カーブゲージ」の目押しが出来ないとゲームが成り立たない、という操作系なのである
 パズルゲームとしては、心底あり得ないと思う

 というべきか、本作のUI(画面表示)を詳しく見てゆくとますますパズルゲームとしては怪しくなってゆく。
 まず、「弾の軌道を予測するガイド」が表示されない。
 その軌道の予測そのものがゲームの目標なのだと言うことかもしれないが、放物線はともあれどれくらい強くカーブがかかるのか?に関してはもう数撃って慣れるしかなくパズルとしての前提に疑問が浮かぶ。

 一方、「目標までの距離」、「現在の向き(横・縦とも)」、「仰角による予想最高飛距離」は数値としてはっきりと明示されるのでここは参考にできる。
 一部のステージを除いて風などの影響はないため、同じ向き・同じ補正・同じ強さ・同じカーブで撃った弾は常に同じ軌道を描き、この点で数値で表現できる「正答」の存在するゲームではある。

 だが「発射した弾の履歴」等は一切なく撃った弾は不安定なカメラワークで一度映されておしまい、カメラの位置が悪い場合などは目標に対して上下左右にどの程度距離があったのか?を知る術がない
 これでは「正答」に至るまでどのくらい調整すればよいかという判断は、反対方向にもあえて外してその中間を探るなどの手さぐりで進めてゆくしかないだろう。

 というべきか、そもそも「ステージの構造が十分に確認できない」。
 ステージの構造については
 ・ステージ開始前のイメージイラスト(投影図)
 ・ガンシップからの主観視点映像
 ・ステージ中で自由に確認できる俯瞰図

 の3つで把握できる・・・のだが、イメージイラストはあくまで簡易形式で省略された情報が多く、主観視点では死角が多数発生し、俯瞰図は距離は分かっても地形の高さなどがさっぱりわからない
 本作のテクニックの一つとして障害物を山なりの放物線で飛び越えるというものがあるわけだが、山なりの放物線で飛び越える必要があると言うことは主観視点での視線が障害物に遮られていると言うことであり、俯瞰図も用をなさない以上は地形の構造や目標との位置関係はやはり数撃って確認するくらいしかない。
 要するに基本テクニックのはずなのにそれを実行するための情報がサポートされていない

 見れば見るほど情報を処理する「パズル」ゲームとは思えない設計が並ぶのだが、どっこい、実際のステージ内容を見るとその疑念は確信に変わることだろう。


・ステージ内容

 実のところ、本作には「スコア」の概念がある。
 少ない弾数でクリアしたり短い時間でクリアしたりすると評価に反映されるほか、反射などによって複数のターゲットを射抜く「コンビネーションコンボ(以下「連鎖」)」を決めれば大きなボーナスを得ることができる。

 そこで本作のステージ1を見てみると、ガンシップの正面と背後にターゲットがひとつづつあり、それぞれの先は虚空という設計だ。
 ・・・は?

 ガンシップとターゲットを通る軌道は虚空にのみ込まれて消えるだけ、このステージでは的に当てても連鎖などは狙いようがないと言うことになる。
 ということはこのステージの「解法」は見た目通り正面と背後のターゲットそれぞれを撃っておしまい、きちんと放物線を合わせることが出来れば考えることは特にないという設計だ。
 なおもちろん、的を外した弾が壁に跳ね返ってターゲットに当たるようなラッキーヒット・・・など望むべくもなく、外した場合は外れ具合の塩梅を見て適当に調整して撃ち直す、を繰り返すことになる。
 ・・・チュートリアル相当なのかと思えば、この後もこうした「ターゲットを個別に狙うだけしかない」ステージが頻出する

 そう、反射、反射と言ってきたが実はこれは限定的なギミックで、本作のステージは「当たると弾が反射するブロック」と「当たると即ミスとなるブロック」、「当てると破壊できるブロック」が虚空に浮かんでいるという設計。
 基本として虚空が広がっているものだから反射のテクニックは反射を想定したステージでしか出番がなく、どのステージでも連鎖による大正解を狙うことができるなんて夢のあるレベルデザインではないのだ。
 結局本作は一つ一つの的をコツコツ狙って当ててゆくしかないのが大半、それもカーブゲージなどの劣悪なUIによって操作がままならないことで難しくなっている、という始末なのである。

 はなはだしきは、ステージ中に移動する障害物が配置されておりカーブゲージが中央に来るタイミングとギミックがどけるタイミングとを合わせなければならないステージなんて代物もあり、操作性の悪さをレベルデザインに利用した悪質な形となってしまっている。

 なお、ステージ内には「ボス戦」というものもある。
 それぞれが特殊性の強いギミックを有しているのだが、パッケージにも描かれた最初のボスについて見ると「ステージ内をランダムに飛び回るため素早く狙わなければならない」という内容。
 これまた放物線さえ合わせれば直に当てるだけでOK、考えることは特になく素早い操作だけが問われるという形だ。
 やはり本作はパズルゲームでも何でもないのではなかろうか


・まとめ

 世にクソゲーと呼ばれるものは多数あるが、本作は言うなればクソゲーがクソゲーたる条件のひとつを体現した問題作
 カーブゲージの目押しを筆頭に極めて不便で理不尽なUIに苦戦するがゲームの目標は見えている的に弾を当てるだけというのが多数、パズルゲームとして熟考する面白みはロクになく・・・というべきかステージ内容の確認方法やカーブのかかり具合の表示と言った前提情報が欠けており数撃ってなんとかするしかないあたりパズルかどうか疑問、総括は「操作性の悪さにどこまで慣れることができるかを問うゲーム」というところになる。

 とはいえ、なんだかんだ言っても放物線のコントロールは「慣れ」でどうにかなってしまうのが人間である。
 脱線となるが重力の影響がある弾を曲射したり反射させたり、という要素は現代のFPSにおいてグレネードランチャーの挙動として実現されているものが複数あり、これらの熟達が強い楽しみとなることは保証しておきたい。
 知る限りでは「Far Cry2」の迫撃砲代わりになるM-79や「Destiny2」の遠隔起爆可能で弾数も多いファイティング・ライオンは特に魅力的だったのだが、まあそれは置いておくとして、この経験を踏まえると本作が目指した面白さそのものは間違ってはいなかったように思えるのである。
 これを踏まえ、「操作性が悪すぎる」ことでゲームはぶち壊しになると示した一作という見方をしたい。

 ・・・まあ、ステージ設計の方も大概ではあるのだが。


・ワンポイント攻略

 ・発射後任意で起爆できる特殊弾。ゲームオーバー後も持ち越されるのでできる限り浪費は避けたいが、逆にステージ内のブロックから回収し自爆(真上に勢いのない弾を撃つ)することで稼げなくもない。
 ・カーブゲージはパワーゲージ停止時に素早く二連打することで中央で止めることができる。できるがやっぱり方向キーで調整したかったなぁ・・・。





・関連作品

is internal sectionPSの変形3Dシューティング。
本作同様極彩色を用いた視覚刺激の強いゲームデザインを持つ。


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