サイトトップ/ゲームレビュー/クーデルカ
ページ公開:2020/09/22


KOUDELKAクーデルカ


プラットフォームプレイステーション
開発サクノス
発売SNK
発売年月日1999年 12月
ジャンルホラーRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
戦闘が余分 映画調 暗い 単調 謎解き要素が薄い 技術的実験作





・ゲーム概要

 1999年12月、次世代機「プレイステーション2」の発売を控えたプレイステーション末期に発売されたゴシックホラーRPG。
 スクウェアから独立したスタッフがSNKのもとで立ち上げた新会社「サクノス」の第一弾RPGで、本作で培われた技術はのちに「シャドウハーツ」へと生かされてゆくこととなる。
 技術面での最たるものは「モーションキャプチャー」を積極的に導入しリアリティのあるCGムービーを表現した点であり、特にムービーに登場する最大4人の人間を同じ場所で演技させて収録するというのは当時日本国内の技術では実現不能な課題であったという。
 またキャラクターの唇の動きをセリフにプレスコする「リップシンク」という加工を行ったことも本作独自の試みであった。

 ・・・のはいいがモデリングにおいては世代相応で、そもそものCGムービーもゲーム全体に対してほんの一部の要素でしかない。
 映像以外のゲームの設計が何かと粗い事もあって、結局試行錯誤をゲームとして落とし切れていない難作というのが大勢だろう。

 ドラマCDやキャラクターデザイナーによるコミカライズ版などメディアミックスを積極的に行っていたという特徴もあるが、残念ながらそれらにはノータッチであるため以下はゲーム版の情報のみで見てゆくこととする。


・ストーリー

 イギリスはウェールズ地方。アバースワースにほど近い、海沿いの断崖に、人気もなく廃墟と見まごうようなネメトン修道院がある。
 9世紀にダニエル・スコトゥス・エリウゲナ修道士によってロマネスク様式の修道院として建てられたそれは、時代を経てゴシック様式の大聖堂や鐘つき堂、近代式の宿舎などが併設されていったが、16世紀に修道会を禁ずる制令が発布されるのを待たずして寂れ、廃墟と化したこの場所は、17世紀に入って政治的な犯罪者や虜囚などを閉じこめたり処刑したりする目的に使用された。
 当時の番人の手記によればひとたびここに収容された者がふたたび日の目を見ることは決してなく、命を絶つためでも、尋問のためでもない、ただただ拷問のための拷問が女子供を問わず日夜繰り返されていたという。
 しかしそのような地獄も虜囚を助けるべく行動した何かしらの集団によって壊滅し、ふたたび廃墟となった時代を経て現在はどこぞのもの好きが大枚をはたいて住み着いたらしい。

 ――時は1898年、10月31日。
 奇しくもこの人気のない修道院に3人の客人が訪れていた。
 一人は修道院に眠るという財宝に目がくらみ訪れた男、エドワード・プランケット。(モチーフは実在の人物
 一人はヴァチカンの命を受けて「ある物」を探しに訪れた神父ジェームズ・オフラハティー
 そしてもう一人は、霧深い田舎道で馬を走らせる女――。
 霊能力を持ち「ある女の亡霊」に導かれたという元ジプシー、クーデルカ・イアサントであった。

 はたしてこの3人を待ち受けていたのは、この世のものとは思えない異形の怪物、来訪者を拒む仕掛けの数々、命を狙う謎の襲撃者、そして一人の女性を巡るひとつの悲劇であった――。

 (一部「制作資料」より抜粋)

 ・・・というところ。
 セリフ回しなどは口汚かったり大仰だったりと「映画らしい」選び方がなされており、主人公3人の人間関係はかなり険悪な所からスタートする。
 「恐怖」の表現も超現実的な怪物に襲撃されるパニックホラー、亡霊の恨みつらみが異常現象を通して現れるオカルトホラー、正体不明の襲撃者に疑心暗鬼になるサスペンス、ある強い動機のために殺人を繰り返す異常者を描いたサイコスリラー、と複合的な内容としており、この世界観をゲームとして自分の視点で疑似体験できるというのは魅力的な内容に映ることだろう。

 ・・・映って欲しかったんだけどなぁ
 残念ながら、本作はこれらの背景を「ゲーム」に落とし込む段階でかなりの失敗をやらかしている感がある。
 どこから手を付けるべきかためらうが、どうにか全体を俯瞰するつもりで見てみることにしよう。


・ゲームシステム

 はじめに本作のゲームシステムは「RPG」というジャンル、それも「JRPG」にまとめることができる。
 ゲーム世界の中で敵キャラクターと戦闘を繰り返して経験を積み、キャラクターを成長させながら物語上の様々な困難を突破し大団円を目指すという流れがあるのである。
 この時点で「パニックホラー」の要素は危うくなる。どんな強敵であれ、レベルを上げて戻ってくれば突破できるとなると生命を脅かす存在としてのインパクトは弱い。

 それでもゲームバランスであったりリアルタイムバトルであったりといった設計次第では十分脅威を表現できるはずなのだが、本作の場合は防御面の育成や回復行動が強く安定した攻略が可能で、バトルの進行もランダムエンカウント式かつターン制。
 つまりキャラクターは被ダメージを一桁に抑えられるくらいにモリモリ強くなり、移動中に敵キャラクターを見つけて慌てて逃げるというような体験は無く、戦闘に突入しても時間をかけてじっくり対応することができる。
 悲しいかなJRPGの戦闘や育成という要素が本作では「ホラー」というテーマに対して全くのミスマッチとなっているのだ。

 さて次に、本作の舞台は陰惨な歴史を持つ修道院である。
 侵入者が簡単に秘密を暴けないように様々な仕掛けが道をふさいでおり、プレイヤーは謎解きやキーアイテムの捜索に奔走することになる。
 ・・・謎を解くべく歩き回っていると回避不能のエンカウントが発生する、というのは煩わしい。
 煩わしいのだが、一方で本作は敵キャラクターの能力のインフレが激しく、スムーズに進んでしまうとレベルの方がおっつかないという難点がある。
 謎解きをザコに邪魔されるのも、謎が解けているのにレベル上げに時間を食うのも、どっちに転んでも面白くない

 さらに、修道院の中にアイテムを購入できる「ショップ」の類がない
 幸いにしてセーブポイントに触れると全回復するので補給が切れて詰みデータになるようなことはないのだが、アイテムはマップに落ちているものを拾うかモンスターのドロップを集めるかでしか手に入らない。
 しかも本作では状態異常の治療魔法が存在せず、魔法を封じる「サイレンス」や行動できなくなる「パラライズ」といった影響のある状態異常にはアイテムを消費せざるを得ない。
 消費せざるを得ないのだが、序盤からザコの通常魔法にどっちかが付いてくる嫌がらせっぷりなのでまとまった数を狙う「狩り」に重要性があると言える。

 ・・・のだが、なんとこのうえ武器に耐久度の概念がありロストする
 当然修理なんてシステムは無く、というか運次第で破損するシステムなのかゲーム内に耐久度の表示がない
 戦闘中は不意に素手になるリスクが付きまとい、予備を確保しようにもその入手手段はドロップの運次第。
 あるいは「狩り」の最中に武器が折れて元手が無くなることだってありうる(というか実際ボス戦中に予備含め2本連続で折れて大変な思いをした経験がある)ので、これに関してもまったく理不尽なシステムである。

 ちなみに戦闘システムは後でまとめて見ることにするが、結局素手で攻略するのが一番安定感があった
 というのは素手でも十分な攻撃力を確保できることや武器の破損を警戒しなくていいことという都合があるのだが、それに加えてインベントリを圧迫しないからという都合もある。
 実をいうと本作は装備・消耗品(スタック可能)・キーアイテムをまとめて48個までしか持ち歩くことが出来ず、預け所や床に置くようなシステムもない。
 このうえでゲーム中盤(DISC2)は特にキーアイテムの種類が多く、一品モノの装備を捨てたくないとまで言い出すとインベントリにはほぼ余裕がなくなったのだ。

 一方で、キーアイテムを使う修道院の謎解きも不満点として挙げたい。
 何というと、2か所以上で使用するキーアイテムが極端に少ない(2つのみ)のだ。
 つまりキーアイテムを手に入れることで探索範囲が広がるという感覚が・・・面と言うよりも点として、乏しいのである。
 それも仕掛けよりも先にキーアイテムが手に入るというパターンばかり続くので、探索に抜かりが無ければ仕掛けの数々はただ通り抜けるのみだ。
 攻略ルートに無駄がないとして好意的に見てもいいのだが、キーアイテムを手に入れた時の高揚感に乏しく、当面インベントリを圧迫されるという荷物という感覚が湧くのは面白くない。
 例えば構造の似た洋館を舞台とする「バイオハザード」と比較すれば、あちらはアイテムBOXに不要なアイテムを預けておくことができた反面必要な仕掛けを前にして取りに戻るという手間がかかった。
 しかし、比較対象として並べてみるとその取りに戻るという手間があってこそルートを考案する感覚や仕掛けを突破するという意識を強調し楽しみに結びついていたのではないか、と愚考するところだ。

 ついでに比較を続けると、本作のカメラワークは様々な角度の静止画を背景にキャラクターを重ねているという点で「バイオハザード」と同様の形式を採っている。
 静止画であることでポリゴンよりも美麗な画像を用意でき、また様々な視点をとることによる演出効果も高い形式である。
 広い場所ではカメラを引いて空間を強調し、特徴的な美術品はアップで映し、またあえてキャラクターの正面の空間を映さないことでその先に何かが潜んでいるかもしれないという恐怖を煽る、ホラーに相性の良い設計だ。
 ・・・が、ここでもまた残念な点を一つ指摘できる。演出の一部たる移動中に主人公以外のキャラクターが登場しないのだ。
 もちろん主人公以外の登場人物もおり会話イベントが発生することもあるのだが、この場合は無人の部屋に到達して「部屋の中では誰それが何々をしている」というナレーションを挟んでからイベント画面に切り替わる。
 中盤まではこれはこういう演出なのだろう、と思っていたが、次第次第に敵キャラクターがいないことはホラーの演出として力不足と言うほかないという場面にいくつも遭遇した。
 先に挙げた何かが潜んでいるという恐怖は全くとっていいほど感じないし、モンスターの登場シーンはランダムエンカウントの場面転換一種類しかないのだ。
 「バイオハザード」がどれだけクリーチャーの登場シーンに変化を付けていたか考えると、モンスターの演出については比較するべくもない水準だろう。
 (例えば「バイオハザード2」に登場する「リッカー」などは天井や壁に張り付いて移動でき、窓の外を這ったり天窓を破って落ちて来たりと登場シーンの匠であった。)

 ・・・と長々と挙げてきたが、実はもっと早い段階で目に付く難点もある。バトルシステムかんれんに みょうにかんじがすくないのだ
 アイテムの分類は「ぶき」「ぼうぐ」「アクセサリー」「どうぐ」、戦闘中のコマンドは「いどう」「アクション」「たいき」「ステータス」、アクションの内訳は「こうげき」「まほう」「アイテム」「そうび」、という調子で明らかに浮いている
 詳細な説明やドキュメント系の文章は普通に漢字を使っているのでフォントの問題などでもなく、まるでファミコン世代をパロディするかのような表現に笑いを覚えるだろう。

 まとめとして一つ具体例を見よう。ゲーム序盤のある部屋でクローゼットを調べた場面(必須イベント)。
 「クローゼットがある
 「クローゼットを開けますか? Yes/No」
 「クローゼットのなかにはウェディングドレスをきたミイラがいた
 「ミイラがおそいかかってきた!
 (戦闘突入)

 ・・・陰惨な舞台背景を美麗なグラフィックと迫真の演技で描いたゴシックホラーRPGにおいて、クローゼットを開けたら「ミイラがおそいかかってきた!」はギャグ以外の何物でもない

 ここまでを振り返ってつくづく戦闘がいらないと思う。
 なんでもインタビューによれば当時のサクノスの代表自身この戦闘面にあきれてサクノスを後にしたらしく、責任の所在はともあれ「まあそうだよな」と納得するところである。


・戦闘システム

 いらないとは思うのだが、特徴的な要素もあるので少し詳しく触れておこう。
 ひとつに「戦闘時にキャラクターの位置の概念がある」こと。
 キャラクターは5×6の戦闘フィールドに配置され、この中で有利な位置をとりながら戦闘することになる。
 かつ、「お互いに生存する相手キャラクターがいる段には侵入できない」、「戦闘不能になったキャラクターと同じ段およびそれより手前に敵キャラクターがいる場合、そのキャラクターは蘇生できない」という制約がある。
 これは敵に近接攻撃が届くか届かないかの前線、および前後列の概念として機能し、また「1キャラクターを突出させると蘇生を封じられるリスクを抱えてしまう」という戦略要素を実現している。
 離れた位置から攻撃できる「槍」や「銃器」の概念もあり、粗削りながらこの位置システム自体は興味深い。

 もうひとつに「戦闘におけるキャラクターの強さは、8種類の能力値を元に計算される」ということ。
 具体的にはHPやMPの概念があるものの、HPの高さは「VIT(バイタリティ、生命力)」、MPの高さは「PIE(パイエティ、信仰心)」、によって上下し、また「VIT」はキャラクターの物理防御力を、「PIE」はキャラクターの魔法防御力を、ともに上下させるという具合である。
 列挙すると

 ・STR・・・腕力。物理攻撃力に影響する。
 ・VIT・・・生命力。HPと物理防御力に影響する。
 ・DEX・・・器用さ。物理攻撃の成功率に影響する。
 ・AGR・・・素早さ。高いほど行動順が早く・多く回ってくる。
 ・INT・・・賢さ。魔法攻撃力に影響する。
 ・PIE・・・信仰心。MPと魔法防御力に影響するが、魔法防御力は回復魔法も軽減してしまう。
 ・MIN・・・精神力。魔法攻撃の成功率に影響する。
 ・LUC・・・運の良さ。具体的な効果は不明。

 の8つ。
 キャラクターがレベルアップした際はこれらから任意の能力にポイントを割り振ることとなり、物理攻撃特化・魔法支援特化・壁役特化と様々な役割を実現することができる。
 「装備」もまたこれらの能力を上下させることによって結果的に各種のステータスを上下させるという形になっており、またゲーム開始直後からこれらの能力を上下させる魔法8種類を習得しているという点においても戦略的な重要度は非常に高い。

 この「能力を上下させる魔法」は特にゲームバランスにおいて必須とも言える存在で、
 ・効果が大きい。2ケタの能力値に対して最大で9を上下させ重ね掛けも可能。
 ・持続が長い。戦闘中永続。
 ・命中率が高い。よほどMINを放置していない限りは誰にでも通用すると考えて差し支えない。
 ・双方向性。味方に撃てばバフ、敵に撃てばデバフとして機能する。
 となかなかとんでもない。
 一見オーバーキル級のダメージを与えてくる強敵であっても上手く間を持たせて重ね掛けすれば、ダメージ一桁のひ弱な坊やまで無力化してしまうことができるわけだ。

 ほか、「熟練度」の概念があり同種の武器や魔法を使い込んでいくと性能が向上するというシステムもある。
 ・・・耐久度の概念がある以上武器を一種に絞って使い込むのは厳しく、また素手の熟練度を上げていないと武器が破損した時にガクッと戦闘力が低下するという事態にもなる。
 STRに極振りするなりバフを重ね掛けするなりすれば素手でもグングンダメージが伸びてゆくため、この点で上述の通り素手が安定、ないしは素手+武器1種が安定すると踏んだわけである。

 あるいは攻撃魔法も悪くない性能を誇るのだが、INTをブーストするアクセサリーや「ロッド」の入手が難しくMPも食うため序盤の運用はかなり厳しい。
 用意が整えばVITをブーストする武器を防具として装備するような芸当もできるが、晩成型だ。

 極端な話どんな敵が出てこようともデバフ連打のワンパターンでやり込めてしまえるゲームバランスなのだが、個人的にはそこに一種の痛快さを覚えたため戦闘システム自体に関してはそれほど悪く思ってはいない。
 ただただ、本作には余計であったという一点に関してはゆるぎないと考えるばかりである。


・まとめ

 映像技術において先進的な試みを行い、俳優の演技力をCGに落とし込むことで陰惨な舞台背景と悲劇の物語を表現したゴシックホラーRPG。
 とはいえそのメディア面を搭載するゲーム部分が致命的にそぐわず、プレイ時間の大半はアピールポイント以外に浪費されてしまう内容となってしまった。
 言うなればムービーだけよくても面白いゲームにはならないという好例(悪例?)の一つだろうか。

 ホラー好きならば多少興味を持って見てもいいかもしれないが、流石に現在ではアピールポイントのグラフィックも魅力として弱く、物語に対して不要な戦闘がかさむことでプレイ時間に対する満足感にも劣る。
 インタラクティブシネマなりサウンドノベルなりで世に出ていればあるいは・・・という、やるせない一本である。

・ワンポイント攻略

 ・「修道院の地図」はかなり有用なアイテムだが見落としやすい。「管理人住居2F」の画面下方向の部屋ではしごを探すのだ。
 ・パネルの間はある場所の箱と、またある場所の柱にヒントが記されている。両者の距離は近い。
 ・ある箇所でヒントが乏しく総当たりで解くハメになったのだが、クーデルカの体重は45kg前後である。





・関連作品

・「シャドウハーツ」シリーズ世界観的続編。近世ヨーロッパおよび東アジア諸国を舞台に歴史上の人物とオカルトが交錯する物語を展開するRPGシリーズ。
しかしストーリーはホラーに限らないバラエティに富んだ展開を目指し、ゲームシステムも「ジャッジメントリング」というルーレットの目押しを特徴とした緊張感のあるRPGとなっている。
レジェンドオブドラグーンSCEの大作RPG。
発売時期やグラフィックをセールスポイントとした点、DISC4枚組やメディアミックスに積極的だったなど展開の仕方に共通点が多い。


サイトトップ/ゲームレビュー/クーデルカ