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ページ公開:2018/09/24


EVERGRACEエヴァーグレイス


プラットフォームプレイステーション2
開発フロムソフト
発売フロムソフト
発売年月日2000年 4月
ジャンルコーディネートRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ99KB以上


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
粗い サスペンス的 粗い 幻想的 粗い 実現度低し





・ゲーム概要

 プレイステーション2黎明期に発売された3DアクションRPG。
 「装備する」RPGや「手に入れたものはすべて身に付けられる」RPGを謳い、コーディネートや戦術の自由度を押し出した一本。
 3人称視点を採用し、コーディネートしたキャラクターを視界に入れて操作しながらゲームを進める・・・という概要は新ハードの描画能力や容量を活かしたものと取れるが、本作のグラフィックはプレイステーション時代とあまり変わり映えせず同世代の中で見劣りした感がある。

 また装備の概念はゲームシステムにおいて、レベルアップを否定して装備の更新で強くなってゆくというデザインとして組み込まれている。
 となると気になるのは装備の入手や強化手段だが、どれだけ特徴のある内容か空想しつつ見て行ってみよう。


・装備とキャラクター

 本作はゲームの各舞台の中でキャラクターをリアルタイムに操作し、敵キャラクターと戦闘しながら物語を進めてゆくアクションRPG。
 そのうえでキャラクターの強さにLvの概念が無く、装備アイテムの入手や強化によってキャラクターの能力やアクションを補強してゆくのが本作のバランスデザインである。

 キャラクターの能力は
 ・キャラクターの生命力を表す「HP」
 ・キャラクターの行動力を表す「パワーゲージ」
 ・相手に与えるダメージの基準となる「攻撃力」と「属性」
 ・相手から受けるダメージの基準となる「防御力」と「属性」

 ・・・を、算出する基準となる「筋力」・「体力」・「知恵」・「耐性」・「運勢」の5能力と、「斬」・「叩」・「突」・「雷」・「樹」・「炎」・「凍」の7属性分の攻撃力・防御力からなる
 最初からHPや攻撃力を直に上下させればいいじゃんと言いたくなる煩雑ぶりだが、実際続編では簡略化された内容なので第一作相応の粗さということにしておこう。

 装備は「武器(および予備武器)」、「兜」、「鎧」、「具足(誤用だが足装備のこと)」、「アクセサリー」、の5か所が存在し、いずれの装備も5能力や7属性の攻・防を上下させる。
 最大の数値のみならず、数値の平均値や能力低下のデメリットを踏まえて全身の装備を選択する必要を促しているというわけだ。

 また、装備には「パルミラアクション」という必殺技・特殊アクションが設定されているものがあり、戦闘においては全身から1つを設定して使用することができる。
 ただし、この使用には攻撃やダッシュにも使用する「パワーゲージ」全てを消費して放つ必要があり、必殺技に当たるものは逃げ回って単発で撃って終わりの単調なアクションにとどまってしまっている。
 さらに、このパルミラアクションを使用する限度としてか装備には「パルミラエネルギー」という名の耐久度の概念が用意されている。
 耐久度の尽きた装備はロストこそしないものの性能が低下してしまい、長く使う装備は修理の出費と手間をかけてメンテナンスを行ってやる必要がある。
 耐久度を減らしてまでパルミラアクションを使わざるを得ない場面は少なくないのだが、セットできる数や消費のバランスはもう少し練って欲しかったと思うところだ。
 (続編においてはこのパルミラアクションを必殺技として強調しコンボの概念も取り入れたが、そちらはそちらで冒険が過ぎた感があり、セオリーを踏みたがらないことの悪さが見え隠れする印象である。)

 ではこうした様々な要素を念頭にして装備を選択すること、そして入手することについて、次の項目で詳しく見るとしよう。


・装備の入手

 本作の装備は「敵のドロップ」、「ダンジョン内での入手」、「ショップでの購入」、によって入手する。
 うち、ユニークなのは意外にも「ダンジョン内での入手」だろうか。
 というのは、本作は仕掛けを作動させるためのキーアイテムを「特殊加工を施したブーツ」や「遺跡で使われていた衣装」と設定して、装備としても使いまわせる設計を採っているのだ。


 以上、装備の入手に関する特徴終わり

 実は本作の装備品はいずれも一点モノと設定されており、自然と入手手段が限られるうえ性能のブレ幅やエンチャント(付加能力)を見て吟味する必要もない。
 ダンジョン内の宝箱を開ける、ショップで買う、運よく敵が落とす、として入手すれば終わりという、RPGの一人旅であれば特段目新しい事もない「普通」のシステムである。
 装備の選択も結局は装備ごとの最大の数値を見て適不適を決めればよいという形になってしまい、強化に関しても特に方針を選べるわけでもなく一律にアップグレードする単純な形式にとどまる。

 さらに、「アイテムブック」という形でゲーム開始前から確認できる武器と鎧の種類の情報に注目すると「ユテラルド編」が武器24、鎧9種類。「シャルアミ編」が武器15、鎧8種類。
 かつゲーム内では両者で共通の装備があるため実質的な種類はさらに減り、装備を売りとするには貧相という感想を禁じ得ないボリュームが見て取れる。
 先述通りキーアイテムとして登場する装備があるし、比較的形状の自由な武器や兜にはユニークな装備も多いが、わざわざ武器ショップで目玉焼き付きのフライパンや鳥の巣を購入するという不自然極まりない光景には無理があるだろうとツッコまざるを得ないところだ。

 アクション面での特徴は「パワーゲージ」による行動の制約とパルミラアクションだったが、パルミラアクションは大味で単発、ゲージを消費する行動も強弱の攻撃と移動速度を上げるダッシュぐらいなのでシステムとしては弱い。
 RPG面での特徴は、やはり装備と言うことにしたいが設計もボリュームも特徴になるとは言い難い実現度。
 アクションの硬さやダメージバランスの悪さも指摘したいが、それ以前にこのゲームならではの特色と言えるものが希薄でプレイする動機が得られないというのがシステム周りのまとめであるとしておこう。


・ストーリー

 かつてこのエディンベリーという大陸には、クレストと呼ばれる紋章を持つ人間が存在していた。
 クレストを持つ者のまわりでは不可解な惨事が頻繁に起こり、そのため人々はそれを「呪いの烙印」と忌み嫌っていた。

 [ユテラルドの物語
 そんな伝承も風化した現在、ストルタの青年ユテラルドの右手の甲にはその「呪いの烙印」クレストがあった。
 しかし、彼はそれを他人に見せることはなかった。
 なぜなら青年の両親は彼がまだ幼いころ村に攻め入った軍に殺害され、それはクレストがもたらした悲劇だと彼は感じ取っていたからだ。
 復讐とクレストへの憎しみを胸に一流の剣士に成長したユテラルドは、ある日両親の敵を追って入り込んだビリヤナの密林で、憎き敵モレアの象徴であるビリヤナの巨木の前にたどり着く。
 そして彼は未知なる世界への扉を開いてしまった。

 ここは何処だ・・・?
 ユテラルドは全く見たことがない風景の中で、謎の生物フォーリムと出会い、消滅帝国の今の姿を知る。

 クレストの本当の意味と、それを持つ者が背負う宿命とはなんなのか?


 [シャルアミの物語
 自分を姉のように慕ってくれるユテラルドとは家族ぐるみで仲良く暮らしていた。
 そんな小さな彼の右手には、あざのような奇妙な模様があった。

 そして、ある日突然悲劇は起こった。
 その日を境にシャルアミは見知らぬ世界へと飛ばされてしまう。
 目覚めるとそこには心配そうな表情でのぞき込む一人の女性がいた。

 ここは何処なんだろう・・・?

 見たことのない景色の中で、シャルアミは自分を助けてくれた女性が何者かにさらわれるのをただ黙って見ているしかできなかった。

 彼女はなぜさらわれてしまったのか?
 この世界から脱し、元の世界へ戻ることは出来るのか?


 今それぞれの思いを胸に、二人の旅が始まった。

 (説明書より抜粋)

 ・・・と、本作は「ユテラルド」と「シャルアミ」の2人を主人公とした内容となっている。
 「ユテラルド」は近接戦を得意とする剣士で、この消滅帝国リューベーンの秘密を知る謎の生物「フォーリム」に導かれて王家の遺跡をめぐる冒険に、
 「シャルアミ」は遠距離攻撃が可能で、恩人「シエナ」を人秘学者「バグゲバラ」から救出するべく研究所を探る冒険に、
 それぞれ繰り出してゆくこととなる。

 同じ世界観で顔見知りの(顔見知りだった)二人が冒険するわけだが、それぞれで接点は無くプレイヤーは任意のストーリーを任意に進めてゆく形となる。
 最終的には両方のストーリーを進めることで物語のクライマックスを開放することになるのだが、2人のキャラクターを頻繁に交代する必要はないわけだ。
 ・・・というか、アイテムや所持金に至るまで全くリンクしておらず、セーブポイントであればどこでも任意にキャラクターを切り替えることができるため、なぜわざわざこのシステムを採ったのか意図が見えてこない
 別の2本のゲームを並行して進めているようなもので、得意なキャラクターで難所を超えるとかアイテムを集めるとかといった攻略要素は無く、半端に物語を切り替えていると進行状況をド忘れしかねない、難点ばかりが気になる形式だ。

 また物語自体は一本道で、サブダンジョンのようなものもなくひたすらメインダンジョンを攻略してゆく内容である。
 というわけで迷いの森や炎の洞窟に立ち寄って属性付き装備を探す・・・なんて探索要素は無し。
 装備の入手は見落とさない限り順々にアンロックされてゆくようなもので、このあたりも本作が今一つコンセプトを徹底できていない内容という感を強めるところである。


・まとめ

 「装備する」RPGや「手に入れたものはすべて身に付けられる」RPGというキャッチコピーを掲げていたものの、率直に言うと「べつに・・・」とまとめたい無個性な一本。
 ナムコの「鉄拳TAG(PS2版)」やコーエーの「決戦」といった同時期の作品と比べてしまうと、やはりグラフィックやボリュームにおいて前世代的で見るべきところがない。

 その無念が続編で晴らされたかと言うと、「2」は3人のキャラクターを同時に操作するというシステムが特徴となったものの装備関連ではさほど進展が無く、コンセプトが形になりきらないままシリーズは途絶えてしてしまっている。
 強いて言えば人間の声、スキャットを多く取り入れた音楽が2作に共通した魅力となるところだが、無数のゲームが世に出た現代では何とも厳しい内容である。





・関連作品

エヴァーグレイス2続編。ユテラルドの少年〜青年期に仲間とともに巻き込まれた事件を描いた内容。
装備をコンセプトとしたシステムをそのままに、3人のキャラクターを同時に操作することによって特徴が形作られた。
ただし肝心の装備関連はむしろ縮小した感があり、様々な点に粗さが目立つ。
・サイバードールセガサターンのサイバーパンクRPG。
ロボゲーにおいてはままあるが、「主人公にLvの概念が無く、敵の装備を奪って強さを更新する」という点に共通性がないでもない。
なお、「敵のパーツを引きちぎって自分に括りつける」という流れが魅力的で攻略性もある、同作の醍醐味の一つとなっている。


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