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ページ公開:2018/01/09


EVAR GRACEエヴァーグレイス2


プラットフォームプレイステーション2
開発フロムソフト
発売フロムソフト
発売年月日2001年 6月
ジャンルコーディネイトRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ92KB


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
かなり大味に 難解 粗め 幻想的 非常に大味 前作の装備システムは縮小





・ゲーム概要

 プレイステーション2初期に発売された3DアクションRPG。
 「「装備する」RPG」や「手に入れたものはすべて身に付けられる」RPGを謳いながら実際のところは期待外れであった前作の続編として作られたもので、主人公が3人組のパーティーとなり同時に操作することとなった点が最大の変更点となっている。
 つまり、必殺技「パルミラアクション」を3人連続で繰り出す「連携」の概念や、3人全員で同じコーディネートを施してフィールドを練り歩く視覚的なインパクトを実現しているということだ。
 テーマ自体は可能性を感じるものなので期待したいが、さて・・・?

・「装備する」RPG

 前作は「手に入れたものはすべて身に付けられる」RPGを最大の特徴としており、本作もまたその概念を受け継いでいる。

 この言葉からどのような想像を感じるだろうか?
 例えば民家からナベカマ包丁を集めて武装したり倒したモンスターの毛皮や骨を加工して装備したり魔法の封印を破ったキーアイテムをアクセサリーとして持ち歩いたり・・・いや、この辺りはすでに既存のRPGでも見られる展開だ。
 もっと踏み込んでみよう。店先の看板を鈍器にしたり大事な貨幣を敵に投げつけたり他人の着ている服を盗んで着たり・・・いや、これらでさえも見覚えのある範囲内か。
 となると、なんでも装備できることを売りにするのであればかなり高いハードルを越えなければならないということになるが・・・。

 本作「2」に登場する装備の数は113種類。
 うちアクションの要となる武器は40種類で、コーディネートの要となる鎧は19種類。
 まあそんなところだろうと思うべきか、「手に入れたものはすべて身に付けられる」というより「すべては身に付けられるものしか手に入らない」、あるいは普通の武具として手に入るところを無理やりネタ装備としてデザインしているといったところのオチである。
 序盤から伐採場(木こりの斧がある?)やナイフで留められた地図(ナイフを引き抜いて装備できる?)が目に入る割に特に入手可能な装備もなく、たまに宝箱から装備品が見つかる程度のオーソドックスな内容である。
 消耗品やキーアイテムは非装備品、必殺技「パルミラアクション」はアクセサリー専用のアビリティと、前作よりさらに内容が縮小しているのも残念だ。
 また、ゲーム1週目ではキャラクターごとに装備不可能な武器が設定されており、3人分手に入らない装備もあるのでコーディネイトの楽しみというのもさほど感じられない、結局期待外れな内容だろう。


・パルミラ装備

 期待外れとはいえこれが本作のメインシステムの一つ。もう少し詳しく見てゆこう。
 本作にはキャラクターのレベルアップの概念がなく、キャラクターの強化は装備の更新や強化によって行うことになる。
 普段遊んでいるRPGの感覚で店売り装備をケチって拾い物で賄おうとすると敵の火力インフレの前にあっさりとケシズミになるので、このゲームでは通貨や強化素材が消費型の経験値なのだという感覚でガンガン使ってしまいたい。

 装備は「武器」、「兜」、「鎧」、「具足(誤用だが足装備のこと)」、「パルミラアクセサリー」、の5種。
 「武器」は、本作では武器ごとに固有の攻撃モーションが用意されており使い分けの楽しみが強調されている。
 「防具」は後述する事情から全員分揃えなければならないので特に優先して買うようにしたい。
 「パルミラアクセサリー」は必殺技であるパルミラアクションを設定するもので、3人の連携を考えた組み合わせが大事になるだろう。

 さて気になる「強化」の方法は、武器やアイテムを購入する通貨(アイン)とは別に強化素材「パルミラ片」というアイテムを消費することで行える。
 通貨は敵を攻撃することでドロップするが、パルミラ片は3人で連携を決めた時にドロップする形となっているので、本作はキャラクターの連携が敵への優れた攻撃手段であると同時に経験値獲得手段ともなっていると表現できるだろう。
 実際の強化の手順としては強化したい武具を選択し、次に「青」、「黄」、「赤」、の3つのグレードから使用したいパルミラ片を選択、グレードに応じた強化ポイントを目当てのパラメータに振っていくという形・・・なのだが・・・。

 一つの装備に振れるポイントはパラメーター1つに付き最大「100」、防具なら合計「600」もかかるのに対してパルミラ片のポイントは小さいほうから5、10、50。中心的に使うこととなる「黄」で言えば60個ずつ使用する計算となる。
 というのに強化の際はパルミラ片をまとめて使うことができず1つずつ消費する形、さらにはパルミラ片は1種類につき「9」個ずつしか持ち歩けないためシャトルランのごとく店とフィールドの往復が欠かせない
 50円玉9枚と10円玉9枚と5円玉9枚を持ち歩けても、それを585円として理解できないようなものである。10枚目の10円玉はその場に置いて行くし、支払いは1枚ずつ、勘定の途中でまた追加を取りにいかなければならない。

 はじめてのおつかいに挫折するレベルで強化素材回りが劣悪なのである。

 いかんせんこれをこなさないと攻略がままならないので避けて通れないのだが、前作では普通に貨幣で行えていたシステムがどうしてここまで劣化したのか頭を抱えるところだ。


・パルミラアクション

 では、次に本作のアクション面について見てみよう。「3人」の主人公を操作する特徴的なものだ。
 基本としては1人のキャラクターを操作して他2人はNPCとして同行、「」で操作キャラクターが通常攻撃を繰り出すほか、「」、「」、「×」、のボタンでそれぞれのキャラクターが必殺技「パルミラアクション」を繰り出す仕組みだ。
 また操作キャラクターがパルミラアクションをヒットさせた場合はNPCがヒットした相手をフォーカスし、その敵を狙ってパルミラアクションを放つようになる。
 これによって仲間のパルミラアクションがヒットすればコンボ成立、3人全員が連携に参加すれば「スマートヒット」の評価を受けてパルミラアクションの発動回数が回復(実質ノーコスト)するほか、当然パルミラ片のグレードも相応に高くなることとなる。

 単純明快で爽快感もあるが、つまりはパルミラアクションを精度よく連携させていればそれだけで戦闘が片付くバランス、大味という批評も避けられない賛否両論な設計である。
 キャラクターの初期装備のパルミラアクションも「近距離用浮かせ技」、「中距離用突進技」、「遠距離用飛び道具」、と完成されすぎている感があり、下手をするとゲーム全編を通してこれを順番に使っているだけで攻略できるだろう。

 とまあこの段階でも少々怪しいのだが、本作のアクション面ではそれ以上に問題となる部分がある。まず目につくのは3人のHPが共有されていることだ。
 ストーリーにおいて「魂の呪縛」として理由付けされているこのシステムは、3人のキャラクターが1本のHPで管理されており誰かが倒れると即全滅となる・・・というものである。
 どういうことかというと、自律して動いているNPCがやられるとゲームオーバーであり、範囲攻撃に複数人が巻き込まれると2倍3倍のダメージを受け、プレイヤーが先行しすぎてうっかりやられると後方の仲間2人も絶叫して崩れ落ちるというシュールな光景が繰り広げられる、といった具合だ。
 まあ最後のものは自業自得だとして、本作は多くのゲームにおいて難所となる「護衛クエスト」が全編にわたって続くようなものなのである。
 NPCはガードが固くそう簡単にはミスをしないが、やはりする時はするのでHP周りは常にストレスとなるだろう。

 次に、本作の3人のキャラクターは移動速度に差があり、足の速いキャラクターを使えばプレイが快適な反面孤立しやすく、足の遅いキャラクターを使えば連携しやすい反面プレイ時間がかさむ、とかゆいところに手が届かない設計となっていることも特記しておきたい。
 装備の取捨選択といった準備段階のジレンマならともかく、操作する段階でこうしたジレンマがあるのはアクションの邪魔である。

 そして、そのくせ本作は「初見殺し」を好んで仕掛けてきている感がある。
 ゲーム中最初に開けてもおかしくない位置の宝箱がすでにモンスター入りの罠だった、モンスターから宝箱がドロップしたと思ったら中身が爆弾だった、などである。(ちなみに両方とも引っかかって即全滅した。
 またパルミラアクションが強すぎるためなのか何なのか、これを使用不能にする「封印」の状態異常を持つモンスターが頻繁に登場することもいただけない。自己否定のようなものである。

 あげく、地面にドロップした貨幣やパルミラ片が数秒で消滅するという点には問題が集中する。
 攻撃を中断して回収に向かわないといけないのはもちろん、NPCも各自勝手に攻撃して貨幣をドロップさせるので離れた位置を走り回ることになりかねないし、無茶をして敵の群れに突っ込んでいかなければならない場面も出来る。
 貧乏性なだけだと言われたら反論しづらいが、戦闘メインのゲームで戦闘より優先する必要があるドロップ回収というのは理不尽というほかない。

 装備の更新が重要なシステムに対する劣悪な強化素材回り、3人で展開するアクションに対するそのペナルティ、3人それぞれを着せ替える楽しみに対する防具の少なさおよび武器の制限、そして敵やトラップに加えドロップ周りの意地悪さ・・・。
 本作は自分たちで用意した楽しさや魅力を自身で邪魔し、否定してしまっている、整合性の低い内容なのである。


・キャラクター

 ・ユテラルド (CV:千葉進歩)
 主人公の一人。右手の甲に「クレスト」と呼ばれる不幸の象徴を持ち、幼少期に故郷を襲撃され家族や友人を皆殺しにされたことで己の運命を呪い仇への復讐に燃えるようになった少年。
 負の念を糧に鍛え上げた剣技を国へ売り込み復讐を果たすための旅の途中で今回の事件に巻き込まれる。
 本作ののちの物語として前作の主人公ともなる。

 ・リヤナ (CV:保志総一朗)
 主人公の一人。天涯孤独となったユテラルドを引き取った家の息子でユテラルドとは義理の兄弟にあたる少年。
 心優しいが天才的な剣の腕の持ち主で、ユテラルドを助け国の戦乱を終わらせるために共に旅立つ。

 ・フィルナ (CV:川澄綾子)
 主人公の一人。1年ほど前に起きた「災禍の夜」という災いに巻き込まれ記憶喪失となった少女。
 旅立つユテラルドに同行し今回の事件に巻き込まれたが、その中でソカに対して奇妙な接点を覚えることとなる。

 ・ブラサード (CV:西村朋紘)
 野望を持つ呪術師。カーチミルとともにソカを手中に収めようと暗躍している。
 ユテラルドたちに「魂の呪縛」をかけたのは本人からすれば事故である。

 ・ディムホルツ (CV:石田彰)
 フェルクの義兄である凄腕の剣士。
 自国の戦乱を憂いブラサードと互いに利用しあっている。

 ・ソカ (CV:たかはし智秋)
 謎の少女。ブラサードに追われている。

 ・カーチミル (CV:田中敦子)
 謎の女性。ブラサードに従っている。

 ・フェルク (CV:森川智之)
 ゲストメンバー。ユテラルドらの国の指導者の息子。
 行方不明の義兄を探すためにアルフトアインを雇って旅をしている。

 ・アルフトアイン (CV:梁田清之)
 ゲストメンバー。大剣を振るう異国の剣士。フェルクに雇われている。


 ストーリーは、ブラサードとディムホルツがソカを誘拐するところに通りかかった3人が巻き込まれて「魂の呪縛」を受けてしまったので立ち去ったブラサードたちを追って解除させるというものである。
 あとはまあ流れで・・・キャラクターの事情が延々と語られるくらいのものなのであまり面白くは感じられないだろう。


・まとめ

 「装備する」RPGというテーマを掲げながら期待されるほどの自由度を実現できなかった前作の、どうかというと改悪に当たる一本。
 装備の自由度は低いまま、パルミラ片の劣悪な設計やNPCのミスに巻き込まれてやられる理不尽なバランスを積み重ねたことには鎧兜をまとって調理器具を振り回す3人組以上の異常性を感じるところである。

 強いて言えば、打楽器や女性のスキャットを中心的に用いたBGM群の聞き心地がいいという魅力はあるか。
 「姉ちゃん!姉さん!姉ちゃん!姉さん!」や「和〜三盆!(ぱおーんぱおーん)和〜三盆!(ぱおーんぱおーん)」といった空耳がひどいが、廃墟と化した神殿や王宮を中心に回る幻想的な雰囲気があるので好きな人は動画あたりから探してみるといいかもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・本作はある程度攻略しボスを倒すと次のマップに強制的に移動してしまうステージ攻略型に近い設計。
 言い換えると宝箱はそのマップを訪れた時点で全て取る方法があるので頭をひねろう。





・関連作品

エヴァーグレイス前作。「クレスト」によって異空間へと転移した少女シャルアミと少年ユテラルドの冒険を描いた内容。
「装備する」RPGや「手に入れたものはすべて身に付けられる」RPGというコピーを掲げていたが、実態はさほど特徴的でもない物だった。
こちらに登場するシャルアミは遠距離攻撃の弓を中心とするキャラクターで、防具もユテラルドと同じものでも外見が変わるというユニークな設計があった。


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