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ページ公開:2018/07/24


CRIMSON TEARSクリムゾンティアーズ


プラットフォームプレイステーション2
開発ドリームファクトリー
発売カプコン、スパイク
発売年月日2004年 4月
ジャンルファイティングRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ約51KB


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
操作性が快適 不明瞭 特徴的 軽快 かなり粗い 隠し要素でモリガンらへのコスチュームチェンジが





・ゲーム概要

 ドリームファクトリー製のダンジョンクロール型アクションRPG。
 「トバル」シリーズやプレイステーション版「エアガイツ」で頑なに「ダンジョン」系のモードを組み込んでいたドリームファクトリーだが、本作は全編をその「ダンジョン」探索で作り切った一作だ。
 もちろん得意とするアクション・戦闘要素も健在で、連続技を構成する2種類の攻撃、ワンボタンのガードや回避、手軽な必殺技、と操作系の快適さは評価に値することだろう。

 また、詳細は不明だがドリームファクトリーは本作の開発と同時期に映画「APPLESEED(2004年4月)」の制作に参加したとしており、両者の視覚面を構成する「トゥーンシェーディング」という表現技法においてはエンターテイメントとしての技術交流があったのだと思われる。
 (なお、これはまた後に「アップルシードEX」という形で本作のシステムを流用したゲーム化につながったようでもある。)

 と、手軽で娯楽性の高い地盤は出来ているのだが。
 具体的な内容を見て行くと詰め込んだものに多くの難点があり、総合評価ではクソゲーだとしてドリームファクトリーの伝説に数えられている一本でもある。
 果たしてどのように見るべきなのか。システム面から完成形を想像しつつ、その詳細との差を確かめて行ってみよう。


・ゲームシステム(操作)

 本作はランダム生成されるダンジョンを舞台にリアルタイムでキャラクターを操作し、キャラクターの強化やクエスト目標の達成を目指してゆくというローグライク要素のあるアクションRPGだ。
 特筆するべきはその操作性で、十字キーやレバーを入力すればキャラクターが画面の対応した方向に走り、×ではリーチと範囲それぞれに長けた攻撃を実行、連続で押したり組み合わせたりすればルート派生式のコンボにもなり、R1・L1では正面からの攻撃を防ぐガードや攻撃をキャンセルできる回避行動が繰り出せる。
 特に「コンボ」は本作の魅力の一つ。簡単な入力で柔軟に技が変化する「コンボルート」がキャラクターの装備可能武器ごとに用意されていて豊富な選択肢を持ち、さらにダンジョンやイベントで獲得できるレアアイテムでコンボの派生先を開放してゆくという育成要素としても取り入れられている。
 相手となる敵キャラクターもガードや格闘攻撃を使用する人型の物が多く、敵の強さや数を見て浮かせ・吹き飛ばしと状況によってコンボを使い分ける面白みもある。
 本作は格闘ゲーム調の操作性でダンジョンを探索しキャラクターを強化してゆくという、あまり類を見ないものの魅力的なゲームシステムを持つわけである。
 類を見ないと言っても、これは「クエストモード」という形でドリームファクトリーが繰り返し取り組んできた分野ではあるのだが。

 一方で、その他のアクションとしてでは銃による遠距離攻撃、ではスロー演出の入るワンボタン必殺技、+×+では周囲を吹き飛ばす緊急動作、というものも用意されている。
 銃は弾薬を、必殺技や緊急動作は「オーバーヒート」という暴走状態のリスクを、それぞれ引き換えとするので乱用は難しいが、コンボ操作に不慣れであっても派手なアクションや十分な火力を期待できる要素が存在しているわけだ。
 これらをうまく使用するにはRPGらしい準備の計画性が求められるので、主力とするならばその方面での腕前を発揮して見せたいところだ。

 プレイヤーの判断や操作が手軽に・柔軟に反映され、快適にゲームに参加できる本作の操作性は完成度の高いものである。
 この点においては揺るがないと思うのだが、ところが実際にゲームをプレイしてみるとストレスのたまる場面が少なくない。
 その原因はと言うと、おもにダンジョン内の設計や育成周りに難があるためである。


・ゲームシステム(探索)

 本作のダンジョンは箱庭状の小さな部屋が縦横に繋がって形成されており、これらの部屋の中の敵をせん滅したり、あるいは走り抜けたりして各「フロア」の出口となる「テレポーター」や、テレポーターを作動させる「キーカード」を探索してゆく構成。
 ダンジョンによっては敵を素通りしてテレポーターを目指しても構わないが、基本的にはキーカードを持つ敵を倒すことが必要で、また部屋内の敵をせん滅するまで閉じ込められる「アラーム部屋(シャッター)」の罠が仕掛けられていることもある。
 なお、ダンジョンからの脱出は「ダンジョン最奥から脱出」、「『リターナー』という脱出アイテムを使用(戦闘中にも使用可)」、「ダンジョン内で力尽き『救出』を発生させる」、の3つの方法がある。
 「救出」は本作の特徴的なシステムの一つで、現在の操作キャラクターが力尽きた場合に他の操作キャラクターで救出に向かい、制限時間内に救援を待つ仲間の下にたどり着けるか否かに挑むというもの。
 失敗した場合は次の探索時に力尽きたキャラクターを選べなくなるほか所持品や所持金の一部を失ってしまうが、救出に成功した場合はそれらのペナルティがなく、さらに救出成功ボーナスとして一定の経験値を獲得することもできる。

 と、こちらもあまり基本システムに難点は無いのだが。
 一つに「状態異常の質の悪さ」が本作の難点となる。
 具体例としてはHPが減少してゆく「ポイズン」や暴走状態に近づいていく「バーニング」、部屋内の敵が即座にこちらに気付く「アラーム」のほかに、

 ・短時間(2秒)操作不能になる「パラライズ」
 ・一定時間(90秒)コンボが出来なくなる「コンボダウン」
 ・一定時間(30秒)攻撃が出来なくなる「アタックダウン」
 ・一定時間(60秒)ガードが出来なくなる「ガードダウン」

 ・・・と、キャラクターが操作できなければ難しいだろうとでも言わんばかりにプレイヤーから操作を取り上げる状態異常がやたらと多く用意されている。
 敵によっては通常攻撃にこれらの効果が付与されているので、一瞬のワンミスを原因に一定時間(数十秒間)キャラクターの操作が禁じられるフラストレーションを、難しさとして肯定した形であるわけだ。
 消費型の回復アイテムこそあるがレバガチャ等の操作で時間を短縮できるわけでもなく、これはせっかくの良好な操作性をブチ壊しにしにしてしまったものである。
 これはまたクリア後のエクストラダンジョンでも操作を禁じることで難易度を上げようと図っているところがあり、本気で良かれと思ってやったのだと思われるが・・・。

 なお「ポイズン」も放置していれば体力の半分以上を奪い去る凶悪な威力があり、しかも最初のダンジョンの固有ギミックとして毒ガスのトラップが一部屋に3か所くらいのペースで配置されている。
 そしてこれらの問題をより悪化させているのが「カメラワークの悪さ」だろうか。
 アクションの舞台が小部屋単位に区切られている本作だがゲーム画面に映るのはキャラクターをアップにした入り口付近くらいで、部屋内の状況がほとんど映らないという場面が頻繁に発生する。
 室内の状況をうかがうには銃を撃ち込むかイチかバチかで特攻するかくらいしかなく、結果ポイズンのトラップや敵の先制攻撃を受けるというパターンもありうるだろう。
 「小部屋に区切っている割には一つ一つの部屋が大きい」、「キャラをアップで見せたいのかズームアウト機能を用意していない」、というわりと単純な原因が見え隠れするのだが、結果としては小さくない影響が表れてしまっていると言える。

 ほか、「ダンジョン内の明るさが不安定」というのも難点に数えておきたい。
 というのは光のエフェクトを映えさせるためなのかダンジョンの床やドアといった地形が極端に暗く、必殺技の発光などが極端に明るい、という具合に画面のコントラストがやたらと強いのである。
 また部屋によっては敵や障害物はおろか足元さえ判別できないほど暗い所や、明暗の差によってキャラクターの輪郭がぼやけるブルーム効果がかかる所もあり、結論から言えば画面が見づらいのだ。
 ・・・使用しているテレビ・モニタが悪いと言われれば反論しづらいが、ゲーム内で明るさや効果の強さを調整する項目がないあたりはちょっとは責めたくなるところである。


・ゲームシステム(育成)

 さて、「救出」というシステムに軽く触れた通り、本作には得意分野の異なる3人の操作キャラクターが用意されている。
 小型の武器を両手に持つ「二刀流」が可能な「ASUKA(アスカ)」、
 ガード不能のバスターソード、動作の素早いクロー、という両極端な武器を使い分ける「KAEDE(カエデ)」、
 銃器が得意で二丁拳銃や大型の銃の扱いが可能な(代わりにやたらとモーションが乏しい)「TOKIO(トキオ)」、
 の3人で、それぞれ育成可能な要素は「Lv」と、「コンボ拡張」、「必殺技拡張」、の3種。

 「Lv」を上げるとHPや攻撃力・防御力のパラメータがまんべんなく上昇して強くなる。攻略に詰まった場合は意識して上げるとよいだろう。
 レベルアップに必要な経験値は敵を撃破することで獲得できるほか、非操作キャラクターにも一定の経験値が入る仕様で、また「救出」ボーナスではまとまった量の経験値が獲得できる。
 このため、2キャラくらいをちょっと無茶させながら育成するくらいが効率の良い上げ方に結び付くかも知れない。

 「コンボ拡張」はその名の通りコンボの派生先を増やして拡張してゆくもので、ダンジョン内やイベントで手に入る「コンボ拡張パーツ」を消費して実行する。
 実に説明不足なのだが、こうして拡張した技の中には相手のガードを突破することのできる「ガードブレイク」という特徴を持つものがあり、その開放はキャラクターの戦力を大きく左右しうる。
 コンボの拡張はキャラクターと武器種の組み合わせごとに行うので、ある程度の好みや慣れを見て一つを重点的に育成してゆくのが良いだろう。

 「必殺技拡張」も同様に行うシステムで、ワンボタンで繰り出せる「必殺技」をより強力で消費の大きい物へと更新してゆくというもの。
 こちらも実に説明不足なのだが、+×+の入力で下位の物も繰り出せるのであまりためらわずに強化してしまっても問題ないだろう。
 ただ、「必殺技拡張パーツ」はコンボのそれよりレアなのでその点には注意が必要か。

 また、本作はキャラクターに加えて「武器」にも使い込むことで上昇するレベルの概念がある。
 さらに一定の素材を加えて強化値の一部を引き継ぎつつ上位の武器へと「改造」してゆくシステムもあり、愛用の武器は長く使い込め、また武器種によってはキャラクター間で融通するという勝手も効くことだろう。
 反面、武器には「耐久度」の概念もあり、完全に破損したりキャラクターの救出に失敗したりするとロストしてしまうのでそこにはよく気を払っておこう。

 ・・・と、こちらもプレイヤーの得意分野や好みを重点的に伸ばして行ける自由度の高いシステムが用意されているのだが。
 一つの問題点として、本作は「コンボ評価によってさまざまなボーナスが獲得できる」というシステムが存在してしまっている。
 具体的にはキャラクター経験値、資金ドロップ数、ドロップアイテムの質(死体殴りによる)、武器経験値、だ。
 コンボの得意なキャラクターは成長が早くアイテム集めの効率も良い、まあ要するにキャラクターと武器種によってプレイ格差が発生してしまうわけである。
 アスカの二刀流は2つの武器を同時に育成できるうえにコンボ数もうなぎのぼりで、カエデの大剣はヒット数も経験値も稼ぎづらく、トキオの銃に至っては悲しいかな武器のレベルアップ自体が存在しない
 キャラクターや武器種の向き・不向きを全く考えていないこのボーナスも、本作の快適さを損なうちょっとしたトゲとして働いていることだろう。


・ストーリー

 2044年、ロケット製造のシェア85パーセントを誇るA.R.M.A社はついに宇宙基地を建設した。
 社長の甲斐は、それを機にバイオテクノロジーの分野に進出、ここでも飛躍的な成長を遂げた。
 そして第24区にあるA.R.M.A本社ビル内で新たなる遺伝子技術を応用した超生物達の育成を始めた。
 生体兵器の誕生である。
 だが、人類が初めて対峙するそのモンスターとしか呼びようのない生物達を制御することはままならず、ついに生物達の『暴走』が始まった。

 (オープニングより抜粋)

 2049年 東京
 東京は完全な迷宮と化した…。
 超兵器会社A.R.M.A社のDNA研究施設暴走は、次元迷宮と呼ばれるダンジョンを作り出した。
 事故の影響のため次元に歪みが生じ、空間のつながりが不安定な世界。
 そこに、次々と生み出される生体兵器…。

 A.R.M.A社は事態収拾のため、最強の人型兵器「ミューテノイド」の投入を決定する。
 アスカ、カエデ、トキオの3体のミューテノイドは兵器として身に付けた格闘技と、ダンジョンで入手した武器を駆使し、迷宮に挑む…!

 (説明書より抜粋)

 ・・・そして、オープニングムービーの中でアスカはA.R.M.A社の物と思しきビルに潜入し兄弟に当たるカエデ、トキオ、を開放し夜の街へ消える。
 間もなくして「シズカ」からのテレパシーを受け取ったアスカらは、他の兄弟にあたる「アベル」と、彼女たちの生みの親である「小杉博士」の救出を目的に次元迷宮へ向かうこととなるのだった。

 ・・・説明書でもオープニングでも全く触れられていない人名がいきなり3人分登場し、物語はプレイヤーの理解が追い付かない速度のまま次元迷宮へと突入してゆく
 実際は戦闘に不要な機能をオミットされ涙腺すら持たない生体兵器たちの悲痛を描く物語であったようなのだが、いかんせん説明不足が致命的なうえ、ダンジョン攻略後のショートムービーのみで内容を展開するという構成にも無理があり、プレイヤーの印象としては毎回何かに感情を昂らせる主人公たちを見てそのダンジョンの目的が何だったかのおさらいタイムになるかどうか程度のうろおぼえの連続となるのではないだろうか。

 なお、主人公らミューテノイドは黒い光沢素材のレオタードを服装の基本形としているらしい。
 どこがとは言わないがムービー中に良く揺れたりして目のやり場に困るのも本作の物語が頭に入ってこない一因かもしれない。


・まとめ

 基本のゲームシステムは良く、敵モンスターのデザイン等も近未来的かつ個性を感じさせ、期待をくすぐる基盤があったのだが実際にゲームをプレイする側の視点が欠けていたと言おうか不親切・不条理な設計群が盛り込まれて台無しになったという一本。
 「操作性が悪ければ難しいよね」というのはアクションゲームでやるにはゲームの前提を揺るがすタブーだと再確認するところである。
 軽快なアクションや豊富な育成要素、特に武器育成の概念があるローグライク格闘アクションRPGなんてジャンルは希少ながら魅力を感じるのでオススメしたいところだが、本作の場合はある程度不条理を容認できる度量が無ければ難しいかもしれない。





・関連作品

トバルNo.1ドリームファクトリーのデビュー作。
リアル志向の3D格闘ゲームに加えて、その操作系を流用した「クエストモード」というオマケが収録されていた。
・トバル2トバルNo.1の続編。格闘システムの調整に加えてクエストモードが大幅に拡張され、操作可能なモンスターの捕獲などコレクション性・目標性の高いより本格的な内容になった。
エアガイツトバルシリーズの流れを汲み、よりスピーディで独創的な内容に挑戦した一作。
元々はアーケードゲームとしてリリースされたのだが、こだわりがあったのかこれをプレイステーションに移植する際に大規模な「ダンジョンモード」を製作し収録した。
・アップルシードEX志郎正宗氏原作の「APPLESEED」をゲーム化したアクションRPG。
本作のシステムを流用して作成されているらしいが、未プレイに付き詳細不明。


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