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ページ公開:2016/09/27


HEAVEN'S WILLヘブンズウィル


プラットフォームプレイステーションポータブル
開発グローバルエースエンターテイメント
発売タイトー
発売年月日2006年 10月
ジャンルSFアクションホラー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ128KB、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
物足りず 背景は魅力的 ややバリエーションに不足感 テクノ調? 単調 全体的にロード多し





・ゲーム概要

 PSP初期に発売されたダンジョンRPG。
 プレイヤーは謎の組織に誘拐され記憶を失った青年となり、与えられた武器と協力者を駆使して閉じ込められた施設からの脱出を図る「サバイバルゲーム」に挑まされるという内容。
 EO(エクスペリメント・オブジェクト)、研究「物」と呼ばれる協力者たちは一度に3人まで同行させる事が出来、彼らを守りながら怪物を撃退して行くのがこのゲームの主な流れとなる。
 主人公の頭には爆弾が埋め込まれている、脱出に失敗すればEO達も皆殺しにする、ゲームの主催者は「バタフライ」を名乗る謎の人物・・・青年コミックのようなシビアな世界観が魅力となるゲームだが、果たして・・・?


・ストーリー

 突然暗闇の中で主人公は目を覚ます。
 見た事の無い暗い部屋。
 彼は完全に記憶を失っていた。
 その中で唯一確かな事は生き抜くための闘争心と自分の身に危機が迫っている事。
 生きてその場所から脱出するために武器を手に仲間を護りつつ襲い来るモンスターを倒してゆくSFアクションホラー。

 (UMD読み込み時のイメージビジュアルより抜粋

 それはゲームを未購買の層に見せるコピーでは無いのか?と思わずにはいられないのでいくつか設定を補足しよう。

 先ず、主人公が目覚めたのは全10フロアからなる地下施設の最下層。
 主人公を誘拐しこの施設に監禁、一方で身を守るための装備を与えたのは「バタフライ」を名乗る謎の人物であり、その目的は主人公が施設内の怪物たちと命のやり取りを繰り広げる「サバイバルゲーム」の開催にあるという。
 施設のフロアは通路と部屋の連続で構成されており、一つのフロアを探索するのに許された時間は「15分」。
 フロア内には主人公の命を狙う怪物「ミミック」と、主人公の装備を強化する特殊能力の保持者「EO(エクスペリメント・オブジェクト)」たちが配置されているので、上手くEOたちと合流し、彼らを守りながら怪物を退けて出口に向かって行く事がゲームの主な内容となる。
 そして主人公が「ミミック」との戦闘に敗北して命を落とす、あるいは制限時間を超過して頭に埋め込まれた爆弾が爆発する、かすると、フロア内に青酸ガスが散布されてEO達も死に絶えゲームの結末は無に帰することとなる。
 主人公が記憶を取り戻して解放されるには、全てのフロアを踏破してゲームをクリアするのみ・・・。
 最後に主人公に暫定の呼び名、「ネームレス」から「ネス」が与えられて、この狂ったゲームは幕を開ける。


・主人公の装備

 さて、ネスに与えられた装備は以下の物だ。

ボディスーツネスの全身を包む、奇妙な素材でできたスーツ。高い耐久力を持つ一方で動きを制限しない柔軟さも備えている。
VM-GUMガン。エネルギーを発射する、使用限度の無い銃で遠距離への攻撃手段となる。
GN-SWORDソード。精神反応合金製で、使用者の意志に応じて伸長する取り回しやすい武器。近距離・対集団戦闘に活躍する。
SHOCK WAVEショックウェーブ。右手首に備え付けられた周囲に衝撃波を放つ装置で、接近してきた敵の体勢を崩す効果が期待できる。
ウォッチ腕時計。左手首には、フロア内で探索を行えるタイムリミットが表示された時計が備え付けられている。

 なおネスの装備に失った生命力を回復するための物は無く、これは各地に点在する回復剤を消費するしかない。

 これらを駆使して対抗する「ミミック」たちは、一部のEOの言によれば設定された目標の殲滅を念頭に開発された生物兵器の一種であるらしい。
 二足歩行の「ラーバ」シリーズ、這いずるように行動する「ラーバタイプ:タイプ2」、それぞれ特殊な形態を持つ「クリザリス」シリーズ、といった形態があるが、どれも一様にネスやEOたちの命を狙うべくフロア内に配置されている。
 一部は部屋のロックと連動するなどして無視する事が許されないため、与えられた武器を駆使してこれらを殲滅し、サバイバルゲームの完遂を目指してゆこう。


・EO(エクスペリメント・オブジェクト)たち

 では、ゲームの途中で発見する「EO」たちを詳しく見てみよう。
 彼らはネスと異なり身を守る術を持たない非力な存在だが、一方でそばにいる間ネスの身に付けた装備に干渉し強化する能力を備えている。
 例えばゲームを開始して最初に出会うEO「THX7021:ティア」はガンに電磁気属性を付与する「ガンブルー」の能力を持ち、付近を徘徊するラーバ:タイプ1のミミックに対して特効効果を発揮する事が出来る。
 同じくこのフロアで出会う「THX2077:ヒース」は敵やアイテムの位置を表示する「レーダー」、「THX0028:タリフ」はフロアの構造を表示する「マップ」、という具合だ。
 レーダーの能力は最初は何も表示されず頼りない物だが、ゲームを進めると同様の「レーダー」の能力を持つEOが他にもおり、彼らを複数同行させることで大きな効果を発揮してゆくこととなる。
 このEOの重複効果は、「ガンブルー」や「マップ」でも有効だ。

 ただ、今軽く名前が出た通り彼らはただの強化パーツでは無い。
 彼らは一人一人固有の名前と人格を持ち、また生きて脱出するためにネスに同行しフロア内を移動することとなる仲間たちだ。
 そして、その中ではミミックたちに襲われ命を落とす事もありうる。
 戦闘能力を持たない彼らは逃げまどうことしかできず、万が一戦闘に巻き込んでしまうと状況の混乱は必至。彼らを失えばもちろん能力のサポートも失うこととなる。
 そこで、ゲーム中では彼らに「待機」と「同行」の指示を出してゆく事が重要となる。
 安全な箇所に彼らを待機させてネスが先行してミミックを殲滅、安全を確保してから同行させれば無事に進む事が出来るというわけだ。
 しかし、別の部屋に待機させるなどしてEOと離れすぎるとこれまた能力のサポートが受けられなくなる。
 ゲーム中ではどこまで彼らにリスクを強いるか、能力のリターンと天秤にかけて常に問われているというわけである。

 また、天秤にかけるのは彼らの安全だけではない。彼らの自由もまた選択を強いられる事柄である。
 ゲーム中では複数のEOが登場する一方で、一度に連れて歩けるのは「3人」までという限界がある。
 つまり、道中では発見したEOを見捨てて行かねばならない状況が頻繁に起きるというわけだ。
 個人個人の人格を持つ彼らにはまた「双子の兄弟」を持つ者も居て、その再会を望む一方、備えている能力によっては要・不要が分かれる事となる。
 何を重視して彼らを取捨選択するか?肉親の再会という情か、それまで共に戦ってきた義理か、戦術上の価値か――。
 このサバイバルゲームでは、EOたちへの接し方を通して自身の人間性が表れると言えるのかもしれない。

 ・・・と、EO周りのシステムは非常にシビアで想像の広がるところであるのだが。
 残念ながらゲーム中にはEOと同じ効果を発揮する「アイテム」や、武器の性能が向上する「レベルアップ」という概念もあり、最終的にはどのEOも能力的な重要度を失うこととなる。
 ゲームとしての特徴やEOへの愛着など様々な点を削いでおり、これは蛇足だったと言わざるを得ないところだ。


・ホラー要素?

 こうしてシビアな背景を持つ本作は、ゲーム前のコピーを見る限り「SFアクションホラー」として作られたものであるらしい。
 のだが・・・。
 本作の敵キャラクター、「ミミック」についてもっと良く見てみたい。
 彼らはフロア内の通路や部屋に待ち構えていて、ネスやEOを見つけると接近して攻撃を仕掛けてくる。
 EOが優先して狙われた場合は恐怖があるが、それを除くと「通路や部屋に最初から現れている」、「どれも撃退できる強さである」、「再生したり部屋を移動したりする事は無い」、とパッとしないザコキャラだ。
 ガンを使えば狙撃して気付かれずに倒す事ができるし、気付かれても接近して殴ってくるだけのワンパターン、EOについても別室への待機を徹底すれば安心だ。
 デザインがちょっとグロテスクなだけで、ホラーとして望まれるような緊張感や展開の緩急は何も無いわけである。

 このあたりは、シンプルすぎて何とももったいない。
 敵がこちらに気づく条件も「接近」のみと単純で、例えば「戦闘力が高いが感知能力が低く静かにやり過ごすタイプの敵」や「床下にじっと潜んでいてレーダーにしか映らない敵」、「死んだフリをしていてネスが離れるとEOを襲う敵」、といったバリエーションは無いわけだ。
 EOが戦闘で無力なのは先述したが、こうした協力して対処するシチュエーションでもあればEOの存在感とホラーゲームとしての雰囲気をもっと高められたのではないかと思えるのだ。

 また、戦闘におけるアクションは今一つ爽快感に欠ける。
 ソードからガンなど使用武器を変更する際に立ち止まって「持ち替え」のモーションをとってしまう、防御や回避が無いので敵の攻撃は全て歩いてよける、部屋から移動するたびにロードを挟み音楽が途切れる・・・。
 本作はある程度慣れると部屋の入り口か移動前のエリアにEOを待機させて敵を殲滅、という流れを繰り返して攻略するハズなので、その繰り返しとなるアクションが今一つということになるとゲーム全体の感想もこれに引きずられることとなる。
 緊張感を高めるための制限時間も実際にプレイして見ると余程非効率的な戦い方をしていない限りは余裕で間に合う程度の設定であるし、そのうえで「マップ」の能力者かアイテムがあれば道に迷う事も無くなるわけだ――。
 結局、本作はホラーとしてもアクションとしてもパッとしない、魅力に欠ける内容であると言える。


・まとめ

 世界観の設定や個性豊かなEOたちなど魅力的な土台はあったはずなのだが、開発人数が足りなかったのか開発期間が足りなかったのかSIMPLEな完成度に留まってしまった本作。
 意外にもマルチエンディング制を採用しているという面があるのだが、そのプレイ時間の水増しのような分岐条件(ゲームの周回を繰り返す、マップの広さなどは徐々に拡張されて行く)からはかえって内容の薄さが印象付けられるところである。
 未プレイのまま妄想する分にはともかく、完成度の観点からプレイして楽しむ事は難しい一本だろう。





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