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ページ公開:2013/07/23


WACHENRÖDERバッケンローダー


プラットフォームセガサターン
開発セガ
発売セガ
発売年月日1998年 8月
ジャンルシミュレーションRPG
プレイ人数1人
セーブデータ150ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
スレッジシステムが特徴的 世界観は秀逸 必殺技が残念 ややうるさい 地味だが良好 スチーム度、満点!
(せがた三四郎調べ)




Hohe Türme ragen senkrecht und dicht gedrängt gen Himmel隙間なくそびえる高い塔が空を遠ざける

Stahl, Qualm und rauchende Schornsteine鋼鉄と煙突の煙

Eine Zukunftgesellschaft im Zerfall退廃的な未来社会

Angeborene Lichtphobie先天性恐光症

Vögel in Finsternis闇の鳥

・ゲーム概要

 セガサターン末期に発売されたシミュレーションゲーム。
 スチームパンクというテーマを前面に押し出しており、蒸気の熱を利用した武器システム「スレッジ」や公害によって妹を失った主人公「ルシアン」といった独特の世界観が特徴的である。
 またロックバンド「キング・クリムゾン」の結成メンバーであるイアン・マクドナルドをメインテーマ作曲として招いたなどスタッフ面もそうそうたる面々が集められており、システム面でも「AP」をはじめとする斬新なシステムが取り入れられているなどセガサターンの意地が詰め込まれた一本だと言える。

 なおタイトルの「WACHENRÖDERバッケンローダー」とは、守り手など意味する「Wache」に土地の開墾などを意味する「rode」を組み合わせて「〜する者」でまとめた造語であるらしいとか。(英語版ウィキペディアの該当記事における考察より)
 すなわち「道を切り開く騎士」として、主人公ルシアンを表したものといったところだろうか。


・ストーリー

 深い霧によって外界から隔絶された孤島、エドゥアルド。
 鉄鋼の道を鉄塊が走り、そびえ立つ鉄塔から絶え間なく黒煙が吐き出される、巨大なメカニズムという文化が形成された地。
 輝かしく栄える社会の裏側では、汚染された「死の水」による病が貧困層の人々を蝕んでいた。

 ルシアンと妹は、そんな下町の貧しい町に双子として生まれた。
 すこぶる健康に生まれたルシアンと、重度の先天性恐光症に冒されていた妹。
 決して陽の光を浴びる事が出来ず、暗闇の中で日々衰弱してゆく妹に少年時代のルシアンは献身的に尽くした。
 貧しいながらも高価な「蛍水」を買い求め、薄明かりの中夜更けまで本を読み聞かせていた。
 中でも妹が気に入っていたのは、騎士と王女の物語だった。
 物語の中の王女の様に、自らを守る騎士へ憧れる妹にルシアンは自分が騎士になると約束した。

 苦しい生活や上流階級への漠然とした不満や憎しみを糧にし、我流の剣はめきめきと上達していった。
 やがてその腕を闘技場の勧誘員へと売り込み、スレッジという剣を与えられると、ルシアンは家を離れ妹の為に闘いの日々を送った。
 幾度の負けを経験し、わずかばかりの懸賞金を手に家へと帰ると、すでに妹はこの世の人ではなくなっていた。
 妹が最期に自分を呼んでいたということが無力さを苛み、ルシアンにはただ果たされなかった約束だけが残された。
 「誰を憎めばいい…
 絶望のまま街を彷徨うルシアンは、やがて水の街の最高責任者である剣帝デュレンへの復讐を思い立った。
 蛍水の生産により懐を潤す一方で死の水を垂れ流し、妹の死の原因を作り出したデュレンを許すことはできない。
 しかし、肝心のデュレンは謀反の罪に問われ行方をくらましているという。

 ルシアンは、デュレンの足取りを追い、旅を始める。
 それが、今の自分にできるすべてであると、そう信じて。

 (一部説明書より抜粋)


 ・・・と、おおまかにはこういった物語である。
 妹の復讐を胸に元権力者を追うというアウトサイダーな主人公がどう活躍してゆくのか、さまざまな期待を抱かせてくれる事だろう。


・システム

 さて、シミュレーションゲームである本作のシステム面での特徴と言えば「AP(アクションポイント)」制と「S.R.G.(スレッジ)」システムが大きいだろうか。
 「AP(アクションポイント)」とはターンの中でキャラクターの行動量を管理するシステムで、ターンの初めに全回復するポイントを移動は1マスに付き17ポイント、攻撃は一回に付き20ポイント、などと消費し、この数値内でターン内の行動を自由に組み立てる事が出来るというシステム。
 敵に接近して攻撃した後は再度攻撃してトドメを刺してもいいし、移動して有利な位置関係を保持してもいい、など、戦略における自由度は高い。
 本作は敵・味方がそれぞれの全ユニットを動かして手番を交代し合うプレイヤーフェイズ式で進行するため、ユニット同士の動きなども緻密に組み立てて行きたいところである。

 そんなAP制を後押しするように、本作の攻撃には「S.R.G.(スレッジ)」というシステムが組み込まれている。
 設定面における「スレッジ」とは蒸気によって熱を武器に伝達させ攻撃力に転化するという装置であり、余分な熱が蓄積してしまうこと、動作が不安定なこと、という欠点があるものとされている。
 ゲーム中においてもこの「熱」という概念が重要なものとなっており、攻撃時に熱を溜めることで強力な一撃が放てる反面、攻撃を繰り返すことで熱が蓄積し反撃不能などの動作不良を起こすこととなってしまう。
 溜まった熱は戦闘中の天候によって自然に冷却されるほか、行動後に余分なAPを消費して個別に冷却することもできる。
 溜める熱の量に関わらず攻撃によって消費されるAPは一定であるので、安定動作を犠牲にして高熱の攻撃を連発するもよし、長期戦を見越して低温の攻撃を繰り出し一定の動作を確保するもよし、と攻撃にもいくつかの選択肢が用意されているわけである。
 また細かなことではあるがこの際の熱を溜める操作はボタンを押して計器の針を上昇させるもので、ゲームとの一体感が感じられるなかなか楽しい作りとなっている。

 そのほかに「高度の概念」、「向きの概念」、「回復やアイテム」、といったシステムで基礎が固められているのだが・・・。
 本作にはさらに蛇足感の強い物として、「装器技」および「超装器技」なるものも存在してしまっている。
 これは言うなれば必殺技で、通常の攻撃とは別に発熱量と威力が安定した攻撃コマンドとして用意されているものだ。
 最大の難点はその微妙すぎる演出であり、使用した瞬間にキャラクターの3Dモデルが出現し、軽快な音楽と共に敵をボコスカ叩いて吹き飛ばした後キメポーズを取るというどうにも軽いムービーを拝むこととなるのである。
 はっきり言って世界観に有っていないのだが、威力が高く、発熱量の許す限り何度でも使え、反撃を受ける事が無い、と妙に高性能であるのが悩ましい。
 近づいて派手な必殺技を決めて倒すだけ・・・という流れになりかねないため、この存在に関しては世界観と戦闘バランスの両面で邪魔な存在であったと思えてならない。

 なお、本作の攻撃は全て単体対象であり、複数を巻き込む「魔法」の様な技は存在しない。
 演出ばかり派手な「装器技」が今一つ空回りしている印象を受けるのは、結局単体をチマチマ攻撃するという流れに変化が無いから、という点も手伝っているのかもしれない。


・キャラクター

 ・ルシアン・ティラー (CV:草尾 毅)
 剣帝デュレンの治める「霧都」が排出した死の水により妹を亡くし、復讐を心の支えとする青年。
 「皇都」の酒場でケンカ騒ぎを起こしたことでキャロルと出会い、共に「霧都」を目指すこととなる。

 ・キャロル・ミュー (CV:岡村 明美)
 「皇都」直属の暗殺部隊に追われる謎多き少女。
 これを斬り捨て追われる身になったルシアンと共に「霧都」へ身を寄せる事を提案する。

 ・タイタス・グローン (CV:小形 満)
 ルシアンたちの騒ぎに便乗し旅に加わった賞金稼ぎ。
 思いのままに生きる楽天家というルシアンと対照的な性格ながら、確かな腕で互いに信頼を置くこととなる。

 ・ヴェルベット (CV:氷上 恭子)
 旅芸団「ケミカルブラザーズ」に所属する盲目の歌姫。
 また物語の語り部でもあり、朗読の形式でルシアンたちの戦いを紡いでゆく。

 ・スモール・フェイシズ (CV:増田 ゆき)
 自衛団「ブロウモンキーズ」の一員として活動する少女。
 身軽で手くせの悪い問題児だが、逃げるキャロルを隠れ家に案内するなど一行の手助けとなることも多い。

 ・デュレン・マット (CV:銀河 万丈)
 蛍水の生産地として知られる「霧都」を治める五剣帝のうちの一人。
 しかし現在は謀反の疑いをかけられて行方をくらましているらしい。


 ・・・などなど。
 あらすじの段階では復讐のみを生きがいとする孤高の青年といった印象のルシアンだが、実際にゲームを始めるといきなり謎の少女・キャロルと行動を共にすることとなり、その後も次々と仲間が増えて行くなどストーリーはなかなかにぎやかな物となっている。
 シミュレーションである以上は確かに仲間ユニットの数が無いと辛いのだろうが・・・物語全体の流れも結局仲間を集めて黒幕を倒すという非常に王道的なものとしてまとめられており、少々肩透かしを食らうかもしれない。


・まとめ

 と、世界観とシステムに個性的な物を持ち期待を感じさせるものの、いざゲームを初めて見ると無難な内容としてまとめられてしまっている一本。
 決して駄作なわけではないのだが、期待が強かった分で「凡作」あたりの印象に落ち着くか。

 とはいえ説明書や付属のアートブックで妄想する分には傑作なので、積みゲーの多い人ならばそういう点でオススメ出来るかもしれない。
 また地味ながら適度にまとめられたゲームバランスはシミュレーションとしてなかなかに楽しめるものであるので、シミュレーションに飢えている人にもまぁまぁオススメである。





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