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ページ公開:2016/01/19


破壊王はかいおう KING of CLUSHERキングオブクラッシャー


プラットフォームプレイステーション
開発ファブコミュニケーションズ
発売ファブコミュニケーションズ
発売年月日1998年 11月
ジャンル3Dアクション
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
コンセプトに矛盾 ほぼなし アバウト ファンク系?ロック、
ギター担当は土屋公平(The Street Sliders)
草むしりシミュレーター ※イライラしても物に当たらないようにしましょう





※今回のレビューは多少のネタバレを含みます※


・ゲーム概要

 プレイステーション中期に発売された、自称究極の「ストレス発散ゲーム」
 パッケージ裏に「ヒーローよりも怪獣になってみたい。」そんな子供の頃の夢が実現します!というコピーを掲げる通り、プレイヤーはゲーム中で凶暴な怪物・怪獣と化して視界内の物体をことごとく「破壊」して行くこととなり、それによって得られる爽快感・背徳感でストレスの発散を体感するという内容である。

 ただ一方でパッケージの表面にはタイトルと並んで大きく
 サラリーマン、壊しまくり。
 なる文字や主人公らしき男性と怪獣が並んだイラストが配置されており、この時点でサラリーマンと怪獣のどっちをメインにしたいのかハンドルがぶっ壊れている感が無いでもない。


・主人公

 本作の主人公は新婚ほやほやで子供が生まれたばかりの普通のサラリーマン、「司馬九造(しばくぞう)」。
 子供の頃消防車に恐怖心があり、父親からもらった消防車のおもちゃを破壊して以来破壊癖に目覚めたと言う特殊な一面を除けばごく身近に感じられる人物である。
 が、ある日虫のような知的生命体に噛まれた途端彼は強烈な破壊衝動に支配されてしまい、怯える妻をよそに自宅の中から破壊活動を開始して行くのであった。

 この時点では怪獣の「か」の字も出てこないわけだが、やがて破壊活動を繰り返すうちに心と共に体にも変化が現れて徐々に怪物化。
 人間形態「司馬九造」、
 筋肉隆々の怪人形態「Ogre(※読み仮名はオーガではなく「オージィー」)」、
 肉食恐竜風の形態「Visunu(※スペルの「u」が1個多い気がするが読み仮名は「ビシュヌ」)」、
 そこから直立し巨大化したゴジラ風の形態「Siva(※スペルの「h」が1個足りない気がするが読み仮名は「シヴァ」)」、
 最終的に翼が生え飛行可能となった形態「Brahuma(※やっぱりスペルの「u」が1個多い気がするが読み仮名は「ブラフマー」)」、

 の順に攻撃力や破壊の規模が拡大してゆくこととなり、この流れは説明書の中でPOWER UP!の軽快な矢印と共に紹介されている。

 全8ページの説明書のうち見開き2ページのキャラ紹介だけでもう色々壊れているのだが、めげずにゲームの流れについても詳しく見て行くこととしよう。


・破壊のすすめ

 本作はステージ攻略型の設計を採っており、ステージ1は自宅、ステージ2は勤務先、ステージ3は住宅街・・・と言う形でステージごとに新たな破壊の舞台を用意している。
 序盤では嫌な上司の机やロッカーに当たり散らす程度だが中盤以降は怪獣化の進行と共にダム、ビル街と規模が拡大し、回を追うごとに序盤の日常的な不満をすっかりと忘れてしまうような開放感が味わえる設計となっているわけだ。

 さて破壊の手段、つまり攻撃方法についてだが、これはゲームの大半において肉弾攻撃が中心となる。
 ○、×、△、のボタンそれぞれが殴る、蹴る、頭突き、に対応し、また体勢を低くするR2ボタンと○、×を組み合わせることで形態ごとに特殊攻撃が発動する。
 うち司馬はR2+○で華麗なサマーソルトキックを繰り出し、さらにこれをオージィー、ビシュヌと3形態通して得意技とするあたりは平凡なサラリーマンの司馬がいかに日々過酷な鍛錬に励んできたか胸が熱くなるところだろうか。
 一方でシヴァではR2+○が火炎放射攻撃へとレベルアップし、最終形態のブラフマーに至っては空を飛びながら地上を焼き払う特殊な操作系へと変化する。ここに至ればそれまでとは別格の爽快感が味わえる事だろう。

 ・・・と、ここまでは「ステージを進みながら手当たり次第に物を壊してゆくゲーム」としてストレスの発散を期待できる内容に思えるのだ

 本作はどうにも「アクションゲーム」としてのお約束を破壊しきれなかったらしく、ゲームの進行において2つ難点となるシステムを取り入れてしまっている。
 1つはステージにおける「クリアの概念」。
 プレイ中のステージを終えて次のステージに進むためには「ステージの最奥地に到達する」と共にステージごとに設定された「オブジェクトの破壊率のノルマを達成する」必要があり、このノルマの設定があるせいで本作の破壊行為はプレイヤーの欲求を満たすためではなくゲームの条件を満たすために行う物となってしまっているのである。
 ステージ最奥地に到達した時点でノルマが足りなければステージを引き返して壊し忘れたオブジェクトを一つ一つ叩いてゆく作業が始まり、説明書においてはこれを指摘したうえで避けるための方法として壊し残しのない様に、目の前にあるものはドンドン破壊しましょう。という攻略を推奨している始末。
 ロッカーや机など同じように並んだオブジェクトに一つ一つローキックを決め、カーテン一枚一枚を頭突きで破き、壊し漏れがないかとマップを右往左往するこの設計の、どこでストレスを発散すればいいのかさっぱりわからない

 またもう一つは「制限時間の概念」。
 主人公は「ドーパミンゲージ」という名のゲージを持っており、これが尽きるとゲームオーバーとなってしまう。
 時間経過で徐々に減少し、オブジェクトを破壊すると回復。ゲーム中では時間単位で常に一定の破壊効率を出さなければならない設計でもあるわけだ。
 先のステージクリアの条件と併せて考えると最奥地から破壊率を稼ぎに戻る場合などは目も当てられず、ゲージは徐々に減って行くのに破壊可能なオブジェクトはまばら、仮に破壊率を達成できてもそこからまた最奥地まで戻れるだけのゲージが残っているかは怪しい状態と言う事になる。
 また、さらにゲーム中にはこちらに攻撃を行いゲージを減らしてくる「敵キャラクター」も登場する。
 ゲーム後半の戦車ならまあ軽く踏み潰してしまえるのだが、ゲーム序盤で登場する警官は肉弾攻撃中心のこちらに対して容赦なく発砲、複数で出現し挙句に当たり判定が無く完全無敵というぶっ壊れっぷり
 人間を破壊することへの人道的な配慮かと訝しく思うところだが、ダムやビルの破壊でいくらの命を奪うのかと考えたら焼け石に水と言うところだろう。
 まとめてみればゲーム序盤の数ステージはサラリーマンを操作して警官からハチの巣にされながら丁寧かつ迅速にオブジェを破壊してステージの最奥地に特攻する設計であり、どこでストレスを発散すればいいのかさっぱりわからない


・制御不能

 そして、それら設計からくる不満をことさらに強調するのが「操作性の悪さ」である。
 攻撃関連については先に触れた通り直感的であまり大きな問題はないのだが、厄介なのは主人公の移動である。
 こちらも画面上の奥・手前・左右と方向キーが対応し、押した方向にキャラクターが進む直感操作タイプ・・・なのだが、主人公の旋回が不自然に遅く、旋回しながら向いている方向へ進もうとするため左右に向き直るだけでも大きく弧を描いて移動することとなってしまうのである
 例えば自分の真横に有るオブジェクトを攻撃したい場合、位置やサイズによってはそちらへ向き直ろうとしているのに件のオブジェを中心にぐるりと一回転してしまう・・・と言う事が起こりうるわけだ。
 この場合は反対方向に大きく回るのが逆に近道となるわけだが・・・。
 怪獣ならともかく、一般人の操作に車のような旋回の仕方が必要となるのは頭を抱えざるを得ないところ
 そうして悠長に回っている間にも警官から弾丸が飛んでくるわゲージは減少するわで焦燥感をあおられ、しかもその原因は「キャラクターが思い通りに動かない」ことにあるのだからプレイヤーのストレスはキャラクターを操作するほど積もりゆく一方である。
 ちなみにこの問題はL2と方向キーを入力するその場旋回(すり足)でいくばか解決するのだが、この操作を説明書で説明し忘れているのでこれは大半のプレイヤーが気付かない裏技の一種である。嗚呼。


・まとめ

 「究極のストレス発散ゲーム」を謳う割には既存のアクションゲームとしての枠組みを破壊しきれておらず、歪にゲームとしての制約を取り入れた結果ゲームの魅力が苦痛に反転してしまった本作。
 さらには操作性の悪さや無敵の敵キャラクターなど序盤に用意された要素がことごとくプレイヤーにストレスを与える形で機能してしまっているため、プレイして得られるのはストレスの発散どころか更なるストレスの蓄積と言うところだろう。
 ただ中盤以降はいくらか操作感も合い爽快感ある内容となってくるので、怪獣に思い入れがあればこの辺りからは楽しめるかもしれない。
 当時で見ても粗いグラフィックなど許容するべき点は少なくないが、怪獣を直接操作してひたすら破壊を行う内容は貴重と言えば貴重だろう。

 結局サラリーマン、壊しまくり。最も壊されたのは本作の一貫性だったのではないか、と無念に思うところである。





・関連作品

ゴジラ・ジェネレーションズドリームキャスト最初期に発売された、「ゴジラ」を題材としたアクションゲーム。
やはり怪獣になって町を破壊すると言う内容・・・なのだが・・・。
・ゴジラ・ジェネレーションズ・マキシマムインパクト上記の続編。とはいえシステム周りは一新され、自衛隊機や他の怪獣を敵とするややシンプルなシューティングゲームに。
・ゴートシミュレーターヤギを操作して大量の破壊を引き起こしてゆくひたすらカオスなPC用ゲーム(?)。
有志による豊富なModの中には怪獣をモチーフにした物も有るようだ。(ただ、腹筋がいくつあっても足りない内容なので要注意)


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