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ページ公開:2014/09/09


Parasite Eveパラサイト・イヴ II


プラットフォームプレイステーション
開発スクウェア
発売スクウェア
発売年月日1999年 12月
ジャンルシネマティック・アドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
まるで別物に 原形をとどめず ムービーは美麗 環境音楽 悪い 続へ・・・ん?





※※※今回のレビューはやや多めのネタバレを含みます※※※


・ゲーム概要

 同名の小説を題材にした大作RPG「パラサイト・イヴ」の続編として発売されたアドベンチャーゲーム。
 進化して自我を露わにしたミトコンドリア生命体と、同様に進化したミトコンドリアを己の力とする女性警官アヤ・ブレアの戦い、という前作同様の構図を引き継ぎつつ・・・アヤ以外の登場人物や舞台を一新しシステムも一から作り直した一本。
 「それって続編なの?」などと思わずにいられないのだが、さらに後の「The Third Birthday」と比較すると、まだ多少マシで有った気がしないでもない。


・ストーリー

 全アメリカ国民を恐怖に陥れた「マンハッタン島封鎖事件」から3年。事件は一応の収束を見せたものの、その後も米の各地では散発的なネオ・ミトコンドリア事件が発生していた。
 そんなネオ・ミトコンドリア・クリーチャー(NMC)に対抗するため、FBIに極秘裏に作成されたミトコンドリア調査・鎮圧班「M.I.S.T.」。
 ネオ・ミトコンドリアが関係されていると思われる事件を調査し、NMCを処理する専門家たちである。
 先の事件で英雄的活躍を見せた「アヤ・ブレア」もまた、その腕と「能力」を買われてM.I.S.T.にスカウトされ、ロサンゼルスでネオ・ミトコンドリア・クリーチャー(NMC)ハンターとして活躍する1人であった。
 とは言え、かつての「Eve」のような大規模な事件は発生しておらず、M.I.S.T.の活躍もあってネオ・ミトコンドリアたちの反乱は着々と収束しているかに見えていた。

 そんな肌寒い夏の終わりのある日、「アクロポリスタワー」が占拠されSWATが全滅するという事件が起きた。
 ネオ・ミトコンドリアの関連が強いと見たFBIはM.I.S.T.へと出動要請を出し、アヤが現場へと向かうこととなったのだが、そこで繰り広げられていたのはこれまでとはどこか違和感のある光景であった。
 人間に擬態するNMC、NMCに取り付けられた人工の器具、そしてNMCの「ハンター」を自称する謎の人物の登場。
 混乱しつつも事件にひとまずの解決を見たアヤは、間もなくこの事件への参加を打ち切られ、「モハーヴェ砂漠」で起きたと言う新たな事件を突きつけられることとなる。
 まるで無関係に思われる事件への異動に不満を抱くアヤであったが、一方で同僚の調査によってそこにはある意外な接点が、そしてNMCを人為的に管理する「何者か」の存在が見出されたのだった・・・。


 ・・・と、いったところ。
 本作はこの「人間に擬態するNMC」、通称「ANMC」を中心とした物語が繰り広げられてゆくこととなる。
 とはいえ序盤から「人の手が加わっている」ことへの伏線が登場する通り、これらANMCは前作、さらに言えば原作のような自然に発生する類の存在では無い。
 「自分が内なる存在に取って代わられる」という恐怖をテーマとしていたパラサイト・イヴの続編としては、少々ずれた方向性と取れるだろうか。

 さらに言えば、物語の舞台を移し新たな生活を始めたことから前作の登場人物は軒並み姿を消しており、アヤ本人も前回の事件や加齢を経て大きく性格が変わっているあたり、前作から引き継いだ要素を探すことの方が難しい内容だと言える。
 ゲームジャンルも変更され、敵キャラクターもほぼ一新、アイテムやパラサイトエナジーについても共通の物が少なく、続編として「2」を名乗るには期待に合わない内容であるだろうか。
 実際「パラサイト・イヴ2 公式完全最終攻略」に掲載された製作者インタビューによると本作は本来サブキャラクターの「カイル」を主人公としたゲームであったらしく、その辺りで二転三転した結果が現在の形で有るようだ。
 素直に別のゲームとして出せばよかっただろうに・・・とは、禁句だろうか。


 とはいえ、本作のアヤが前作から激変したことについてはちょっとした理由が見いだせる。
 同攻略本では前作のAyaについて「人間があんな短期間で超人的能力を手に入れるなんてありえない」と反省した話が掲載されており、またリアリティのない武器システムの見直しと併せて、本作のアヤはレベルアップせず銃器の火力に頼って戦うという平凡な人間にしたのだと言う。
 この時点で前作の面影が無いわけだが、一方でゲーム中の細かな独白にアヤ自身の心境の変化を描くことでその「平凡さ」にリアリティを出している。
 本作のアヤは、自身がNMCたちと同じ化け物であることを認め、認めながらもパラサイト・エナジーを封印するなどして人間に近づこうとしている悲哀のあるキャラクターとして描かれているのである。

 超人的な能力を駆使し、最後まで「人間」として戦った前作のAya。
 自身が「怪物」であることに苦悩し、人間としての力を駆使して戦う本作のアヤ。

 ゲームシステム変更による後付けであるとは言え、それに納得できうる理由を与えたこの対比はなかなか見事なものであると言えるだろう。


・戦闘システム

 本作はアクションアドベンチャーとして、敵キャラクターとの戦闘をこなしつつマップ内を探索し、キーアイテムやヒントを集めて仕掛けを解いて行くという流れを持っている。
 うち戦闘ではリアルな銃器と「パラサイト・エナジー」という超能力を併用して進み、戦闘で得た「BP(バウンティ・ポイント)」を用いてより強力な装備や回復アイテムなどを補充してゆくこととなる。
 また、キャラクターの操作は前進・後退と旋回によるラジコン操作制。

 ・・・「ANMC」が人型に近いモンスターばかりであることも有って、どうしても「魔法・ショップ付きのバイオハザード」という表現がちらつく状態である。

 もっとも、「BP」の概念によって本作の「戦闘」はむしろ積極的に消化するための要素となっている。
 「BP」は敵を撃破することによって所定の額振り込まれ、一方で敵に気付かれた後逃げ出すと差し引かれる
 本作の敵キャラクターはマップ上に出現するタイミングや数が完全に固定化されているので、殲滅しそびれると単純に損が重なってゆくと言える。
 一方で敵の位置は全体マップによっていつでも確認でき、またマップ中には無限に弾薬を補充できる弾薬ケースが散在しているので、これらを上手く殲滅に活かしてゆきたい。


 ・・・ただ、弾薬無限でBPを稼ぎまくるのが楽しいかというと、そうでもない。
 1つ目に、本作においては敵が出現するタイミングが妙に細かく定められており、完全に殲滅しようとすると仕掛けを一つ解く度にマップ全域を回り直す羽目になるという点が挙げられる。
 行動範囲の広がるゲーム後半においては、ゲーム時間の大半がこの作業プレイに費やされると思われる。

 2つ目に、本作の弾薬と銃器は細かく分けられており、序盤に補充できるのはハンドガン用の「9mmパラベラム」のみである点が挙げられる。
 対応した武器の弱さから爽快感に欠ける一方で、BPで弾薬を補充する必要のあるライフルやショットガンには損をしている感覚が付きまとってしまう。
 ハンドガンもグレネードランチャーも同じ弾薬を使いまわせた前作はそれはそれで疑問の残るところであったが、せっかくの種類豊富な銃器に使い分ける楽しさを与えられていないあたり、弾薬の補充方法はもう少し調整できたのではないかと思えてならない。

 3つ目に、敵から逃げることにペナルティが有る点を挙げておきたい。
 というのも本作の敵キャラクターは扉の近くに配置されていたり、部屋に入った瞬間にこちらに気付いたりと、ほとんどやり過ごせない設計となっているのだ。
 敵との戦闘はほぼ避けられず、これを避ければペナルティを受けるあたり、そもそもが殲滅を強制したゲームバランスになっているわけである。
 この状態で敵との戦闘を繰り返しても、感じられるのは束縛感ばかりだと思われる。

 と、殲滅は繰り返すほどに食傷感を感じさせるプレイスタイルになってしまっているわけである。
 「敵の出現率をランダムにして再出現するようにすればよかったんじゃないか?」などという思いがぬぐえないのだが、出現するエネミーを緻密に設定しているあたり相応のこだわりが有ったのだろう。たぶん。


 なお、本作の戦闘で活躍するのは銃器のみでは無い。アヤ・ブレア自身の能力「パラサイト・エナジー(以下P.E.)」もまたアヤの戦いを支える重要な武器である。
 先述の通り、本作のアヤは「人間」として生きるために多くのP.E.を封じている。
 しかしその一方でアヤのミトコンドリアは前作とはまるで異なるP.E.を使用できるようになっており、補助よりむしろ攻撃を中心としたラインナップで力の解放を待ちわびている。
 具体的には、
 攻撃力に長け強敵への対処に活躍する「火属性」のP.E.、
 状態異常を付与でき変則的な相手に強い「風属性」のP.E.、
 体力の回復や状態異常の治療を行える「水属性」のP.E.、
 一定時間防御力や攻撃力を高められる「地属性」のP.E.、
 の4属性に3種類ずつ用意されているものだ。

 実際の戦闘内においては使用するP.E.を選択した後、一定のキャストタイムを経てMPを消費して発動。
 それぞれで異なった効果を持ち、状況によっては絶大な効果を発揮する。
 使用したMPは回復アイテムの使用か敵の撃破によって回復し、またP.E.の習得やLvアップに必要な「EXP」もまた敵を撃破して獲得してゆく。
 ・・・結局は殲滅に行きつくこととなるので、上手くMPを管理してP.E.を効率的に活用してゆきたい。


・謎解き

 さて、これら戦闘が存在感を強める一方で、本作には謎解きの要素も有る。
 ロックされたドアを開けるために鍵を探したり、パスワードを解くためにヒントを探したり、といった要素だ。
 とはいえ、ここにあまり目立った特徴は無い。
 強いて言えば、全体マップを確認する際にアヤが独白を語り、次の目的地などを明確に確認できる点が挙げられるくらいだろうか。
 謎解きに必要なキーアイテムは通常のアイテムと別に管理されることも有り、あまり難易度は高くないと言える。


・周回プレイ

 ところで、前作「パラサイト・イヴ」はクリア後も装備などを持ち越してゲームが継続する「周回プレイ」の概念を持っていた。
 極限まで強化可能なAya及び装備、そしてそれらで挑む隠しダンジョン「クライスラービル」は、そんな周回プレイの明確な目標であったと言える。

 ジャンルをアクションアドベンチャーとした本作にもまた「周回プレイ」の概念が用意されており、ゲームは一度クリアした後も続いてゆくこととなる。
 では、2週目以降で何が引き継げ、何が変化するのか、というと。
 クリアまでに獲得したEXPやBPを一定の割合引き継いで、EXPの評価によってボーナスアイテムを獲得し、新たなモードに挑戦できるようになってゆくのである。
 気になるモードは、
 周回数に応じて多彩なボーナスアイテムがショップに並び、また敵も弱く調整された「リプレイモード」、
 プレイヤーが弱く、敵キャラクターが強く調整され、序盤からゲーム終盤の敵が登場する「バウンティモード」、
 プレイヤーが弱く、敵キャラクターが異常に強く設定され、アイテムショップの品ぞろえも悪い「サポートレスモード」、
 一切の引き継ぎが出来ないうえにバウンティとサポートレスの厳しい部分を併せ持ち、アヤが病に侵されているという設定でほとんどの攻撃で即死する「デッドリーモード」、
 の4つ。

 ・・・冷静に見るとクリア時のボーナスアイテムが有効なのはかなりイージーな調整が施された「リプレイモード」のみで、残りのモードは引き継ぎ要素が少なく非常にマゾい。
 とはいえ「リプレイモード」について見ても大概で、ボーナスアイテムをすべてそろえるとなると「13周」もの周回プレイを要求され、しかもその毎回で非常にめんどくさい「殲滅」作業が必要となるなど食傷感が凄まじい。
 1周目と同じ難易度でプレイするモードも無く、2周目専用の隠しエネミーなども無いあたり、本当にボーナスとして用意したのか違和感を覚えるところである・・・。


・まとめ

 派手な前評判と売り上げの一方でゲーム内容に粗さを残し、芳しくない評価を受けた「パラサイト・イヴ」の続編としてリリースされたものの、ストーリー・キャラクター・システムのほぼ全てが一新されており、前作とはまるで別の内容にまとめられている一本。
 では新作として楽しめるのかというと手間のかかる戦闘や見どころに欠ける謎解き、専門用語の多いストーリーなどゲームとしての出来自体がそれほど良くない。
 それでも強いて言えばCGムービーの出来については当時において目立った美麗さを誇っており、オープニングムービー、ANMCの変身、アヤのシャワーシーン、と何本かは見ごたえが感じられる。
 またリアルさを押しだしたと言う銃器には扱いに楽しみが有り、「ANMC」にまつわるおぞましい非人道的な設定には考えさせられる物が有るだろうか。

 すなわち、ガンアクションのあるB級ホラーとしてならば、いくばかの魅力が感じられるか。
 周回プレイや殲滅へのこだわりを気にしないという前提で、そういった要素に興味が有れば手に取るのも悪くない・・・かもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・序盤で習得しておきたいP.E.は「ヒーリング」のほかに「プラズマ」と「エナジーショット」。
 ローコストの回復手段は言うまでも無く、素早く周囲の敵を転倒させることができ消費MPも少ないプラズマ、「攻撃力を上げる」という効果から弾薬を節約でき習得時のボーナスも大きいエナジーショット、は何かと重宝するぞ。

 ・序盤の「射撃訓練」は、アクロポリスタワー前後の2回しか挑戦のチャンスが無いミニゲームだ。
 周回を重ねても最高評価を得られるかどうか怪しい鬼のような難易度を誇り、ゲーム内容とあまり関係が無いので初プレイでは適当に切り上げよう。
 ・「アクロポリスタワー」内のある場所には「ブラックカード」というアイテムが落ちている。
 ゲーム後半において重要なアイテムなので、頑張って探しておきたい。
 ・「アクロポリスタワー」内で入手できる強力な装備品は、残念ながらその後に持ち越せない。代わりのアイテムが手に入っているのであきらめよう。
 ・ゲーム中にMPを無限に補給できるポイントは登場しない。自販機や水飲み場に特に効果は無いのであしからず。

 ・ゲーム中盤で手に入れることが出来る「ホーリーウォーター」。効果不明のアイテムだが、アタッチメントに入れておくと・・・?
 ・ゲーム中盤でロックを解除する「フルムーンゲート」。たいそうな名前だが、実はこのゲートはゲーム進行に必須では無い場所のゲートであるようだ・・・?
 ・エンディングは3種類。ベストエンディングでは各キャラのエピローグと専用のCGムービーが流れるので探してみよう。





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