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ページ公開:2013/09/17


すなのエンブレイス


プラットフォームプレイステーション
開発アイディアファクトリー
発売アイディアファクトリー
発売年月日2001年 9月
ジャンル穴掘りRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
個性的 幻想的 やや粗い 風土的だが、単調 ぬるい 「キングダムオブカオス」外伝作





・ゲーム概要

 プレイステーション末期に、シミュレーションRPG「スペクトラル」シリーズから派生したオンラインRPG「キングダムオブカオス」の外伝としてリリースされた「穴掘りRPG」。
 ・・・出自の時点で相当複雑なように見えるが、本作自体は単体で完結した小規模RPGである。
 砂に埋もれたアイテムを掘り出し、集めたり、組み合わせたりしながら旅を続けて行く・・・という内容からはゆったりとした穏やかさが感じられることだろう。


・ストーリー

 乾いた大地エディンに住む『ネーブル』は、純粋でちょっと世間知らずな女の子。
 祖母の、「いろいろなものを見なさい、たくさんの経験をしなさい」という遺言に従い旅に出る。
 彼女を待ち受けるのは、奇怪なモンスターと果てしない荒野。

 かすかな風のささやきを感じ取り、苦難の旅を続けるネーブルは、やがて一人の運命の男性と出会い、前にも増して困難な旅に今度は二人で立ち向かっていく。

 あての無い冒険の果てに、二人が見るものは…。

 (公式サイトより抜粋)


 ・・・という物語。冒険半分、恋愛半分といったハートフルさが魅力だろうか。
 物語の舞台となる「エディン」は幻想的な世界観を持つ「ネバーランド大陸」のへき地にある閉じられた領域で、その土地のほとんどは砂漠と荒野で占められている。
 地底にはモリュラ族、砂漠にはシャボン族という種族が暮らしているが、この地に根付く人間は祖母とネーブルの2人しか残っていなかった。
 そんな祖母が病に没し、一人悲しみの晴れぬネーブルは再会を夢見て幻の「何でも願いを叶える石」を探す旅に発つことを決意する。
 やがて旅の途中で5人+1人の男性と出会い、時に支え、時に支えられて、やがて1人の男性が苦難の旅を共にするパートナーとなるわけである。

 これがストーリーの中で大きな分岐点となっており、またゲームバランスにおいても一人旅の辛さを和らげる転機となっている。
 穴掘りや水分ゲージ、レアアイテムの存在など独自要素の強い本作であるが、先ずはこれが魅力の一つと言ったところだろうか。
 (なお蛇足だが、一応はネーブル一人でゲームを進行させることも可能である。ラスボスで詰むと思われるが。)


・キャラクター

 本作のキャラクターは、その後何人かが「ジェネレーションオブカオス」シリーズなどに引き続き登場することとなる。

 ・ネーブル
 砂漠と荒野の続く「エディン」の大地に暮らす一族の少女。
 両親を早くに亡くし祖母と二人暮らしを送っていたが、祖母もまた病によって他界してしまう。
 その後祖母の遺品から「なんでも願いを叶える石」の存在を知り、祖母と再会したいという願いを胸に探索の旅に出る。

 ・マイケル
 地底の住人モリュラ族と交友を持つニューハーフ。
 モリュラ族の住処の中でネーブルと出会い、そのひたむきさに心を打たれる。

 ・アンクロワイヤー
 隠れ里エディンの調査に派遣されたシンバ帝国の騎士。
 仮設街の警備隊長を務めており、モンスターの妨害などで遅々として進まない町の建設に頭を悩ませている。

 後に国に革命を起こした「新生シンバ帝国軍」の総司令官となる。

 ・イフ
 魔族と人間のハーフとして生まれた青年。
 人間と魔族の両方から迫害を受けて育ち、復讐を果たすための強大な力を求めてエディンを訪れた。

 後にネバーランド皇国軍で活躍する武将となる。

 ・ミュール
 勇者を志し、各地で遺跡荒らしを繰り返している少年。
 とある遺跡でネーブルと出会い、「なんでも願いを叶える石」に興味を抱く。

 ・ミロク
 砂漠の住人シャボン族と交友を持つ神父。
 シャボン族のためにと井戸掘りに苦心しているが、機材が足りず手をこまねいている。

 ・アース
 とある神殿に封印された天空人の少年。隠しキャラ扱い。

 後の「第一次ネバーランド大戦」後に天界へと昇り、空席となっていた「聖神」の座に付く。


・穴掘り

 さて、エディンの民であるネーブルにはある特技が備わっている。「穴掘り」である。
 砂に覆われたエディンの地ではあらゆる場所を掘り返すことが可能であり、ネーブルはその中で様々なアイテムを見つけ出すことが出来るのである。
 アイテムにはおおまかに

 組み合わせによってさまざまな回復アイテムを作り出せる「五色の石」、
 使用したり、応用したりできる「消費アイテム」、
 イベントなどで使用する「キーアイテム」、
 剣や服といった「装備品」、
 一品物の「レアアイテム」、

 の5種類が存在し、それぞれが異なる形で冒険の助けとなってくれる。

 例えば「五色の石」について。
 エディンには「青」、「赤」、「緑」、「銀」、「金」、の5種類の石が埋まっており、これらを組み合わせることで多彩な回復アイテムを作り出すことが出来る。
 「青+青」では水分を補給する「水のミニボトル」、「赤+青」では体力を回復する「元気水」、といった具合だ。
 「水分」とはダンジョンRPGでいう満腹度の様な物で、移動や特技の使用によって消費し、0になると急速に体力を奪われてゆくというもの。
 これら石系アイテムは砂のある場所なら無限に補給することが出来るので、こまめに補給することを心がけたい。

 一方、固い岩をくりぬいた洞窟や石畳の遺跡では穴掘りの補給に頼ることが出来ない。
 体力、水分、それぞれの不足に合わせて石を調合してゆくのが望ましいが、アイテム欄の不足などから物資が偏ることなども多いだろう。
 そういう場合は「応用」の出番である。
 先ほどの「元気水」は通常では体力回復の効果だが、「応用」して使用することで水分の補給に用いることもできるのだ。
 多くのアイテムはこの「応用」によって他のアイテムと組み合わせていくのだが、このように単体で応用できる例もあるので覚えておくと心強い。

 ・・・なお、主人公であるネーブルは戦闘中に「慈愛の祈り」という特技を使用することが出来る。
 水分と引き換えに体力を大幅に回復する効果が有るので、ある程度余裕が出来てくるとアイテムは水系と状態回復系だけで十分かもしれない。
 もっとも、それらさえもダンジョン外なら現地調達できるのだが・・・。


・レアアイテム

 また、地中に埋まっているのは消費アイテムばかりでは無い。ゲームの目標となる「レアアイテム」の存在もある。
 ゲーム中に登場するレアアイテムは全部で72種類。図鑑を埋める形で収集が可能となっており、ユニークな外見や説明を楽しむことが出来る。
 例えばゲーム最序盤で入手可能なレアアイテム「穴あき包丁」について。
 自宅の前の「風の噂」の中に、足元を掘れと語りかけてくる物がある。これに従ってその場で穴を掘ってみると、そこから「穴あき包丁」というレアアイテムが出てくるのである。
 掘りだした後は武器として装備できるほか、「アルバム」にてさまざまなデータを閲覧することが出来るようになる。

 「重さ:疲れない400g」、
 「味:生ゴミの味」、
 「匂い:台所っぽいにおい」

 ・・・逐一味を見たり匂いを嗅いだりしているのはシュールというほかない
 中には水分量やアイテム所持数の上限を増やす物もあるので、その意味でも積極的に探索したいところである。

 ・・・が。
 実は、これらレアアイテムは少ないヒントから位置を推理して探し当てる・・・という類のものではない。
 ゲーム中では先の様に「風の噂」というヒントアイテムが存在しているのだが、これらを調べるとよりにもよって明確なマップ座標でヒントが与えられてしまう
 72個のうちイベントで入手するものを除いた全てのレアアイテムで明確な所在地がネタばらしされており、探す楽しみもへったくれもない有様となっているのである。
 さらに言えばパートナーとなる男性キャラクターが婿入り道具として それぞれ一つずつレアアイテムを所持しているので、コンプリートを目指すとなれば6人をとっかえひっかえするという悪女プレイが必須になってしまっている。
 アイテムカタログとなればコンプリートしたくなるのが人情であるが、そこに至るまでの手段はどうにも人の道を外れていると思わざるを得ないところである。


・イベント

 そんなカモ 男性諸氏であるが、具体的にはどうすれば行動を共にしてくれるのだろうか?
 率直に言ってしまうと、これもレアアイテムである。
 特定のレアアイテムを所有した状態で会話するとイベントが進行し、これを最終段階まで続けると晴れてパートナーとして行動を共にしてくれるのである。
 なんともチョロい。
 もう少し本格的なイベントを想像していた側からすると肩透かしを食らうところだが、下手に本格的な内容にしてフラグ立てに奔走させるよりはいいのかもしれない。

 一方、キャラクターには「感情度」というものも設定されている。
 これは言いかえれば新密度で、戦闘に勝利するほどに上昇し強力な特技「合体技」の威力を上昇させる。
 多くの戦いを共にしたパートナーほど息が合い、大きな力を引き出し合えるのだと思うとなかなかに味わい深い。
 ・・・逆に戦闘から逃走すると徐々に低下し、最悪いきなりパーティーから離れることとなるので発生した戦闘は全て勝利して切り抜けるよう気をつけたい。
 ランダムエンカウント制で戦闘を回避するアイテムも無い本作では、これが相当にめんどくさい設定となっている。
 ちなみに装備をひっぺがそうがHP1で連れ回そうが戦闘に勝利する限りは感情度が上がっていくので、悪女プレイではその辺りに要注意である。


・まとめ

 少女がささやかな願いをかなえるために、夢物語とも思える宝物を探して一人旅に出る・・・という、幻想的な物語を持つ一本。
 その途中で運命の男性と出会い、力を合わせて困難に打ち勝つという結末はなんとも純情である。
 アイテムコンプリートなどを目指さなければ

 ゲームの難易度も無限に補給できる回復アイテム、主人公が持つ回復の特技、明確すぎるレアアイテムのヒント、とかなりぬるめの調整が行われているのでライトゲーマー向けの一本と言ったところだろうか。
 さくっとRPGを楽しみたい人、乙女チックなストーリーに興味のある人、穴掘りにロマンを覚える人、などにオススメの内容である。

 また「ジェネレーションオブカオス」シリーズの序章、外伝といった側面もあるので、シリーズのファンであれば手を出してみるのも良いかもしれない。





・関連作品

・「スペクトラル」シリーズ「スペクトラルフォース(1997)」から続くシミュレーションRPGシリーズ。
戦乱の最中にあるネバーランド大陸を舞台に多数のキャラクターを指揮し、大陸統一を目指すという内容。
・「スペクトラル」外伝シリーズその他にも世界観を同じくする外伝作品がいくつか存在する。
・キングダムオブカオスアイディアファクトリーが2000年5月から2012年8月まで運営したオンラインRPG。
テーブルトークRPGの様な内容であったらしく、有名な参加プレイヤーのプロフィールなどをまとめた「KOCキャラクター真書」なる書籍が出版されている。
・ジェネレーションオブカオス本作の少し未来を舞台としたシミュレーションRPGシリーズ。アンクロワイヤー、アースがメインキャラクターとして登場しているほか、ネーブルもゲスト出演している。
スペクトラルタワーシリーズの先駆け的一本。「10000階」もの塔を攻略せよ!という内容だが、その作りは非常に悪い。
・ネバーランド研究史PS2のオムニバスソフト。本作ほか5本が収録されている。
カルディナルアークPS2の戦略ボードカードゲーム。本作のある人物が登場している。


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