サイトトップ/ゲームレビュー/スペクトラルタワー
ページ公開:2013/09/10


SPECTRALスペクトラル TOWERタワー


プラットフォームプレイステーション
開発アイディアファクトリー
発売アイディアファクトリー
発売年月日1996年 10月
ジャンルダンジョンRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、2ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
苦行 ほぼなし 粗い 少数 運ゲー 「スペクトラル」シリーズの先駆け





・ゲーム概要

 1997年に第一作「スペクトラルフォース」が発売され、その後現在まで続くシミュレーションRPG「スペクトラル」シリーズ。
 その先駆けとも言うべき「外伝」が本作、「スペクトラルタワー」である。
 「甘口なRPGファンよ 挑戦してみるがいい…このタワーに!!
 ・・・という大変挑発的なコピーが忘れ得ない一本であるが、いざプレイしてみるとその内容は甘口どころか食料として例え様の無い凄まじい内容であった。
 パッケージ裏で戦闘システムを紹介するコピー「普通じゃないRPGを体験せよ!」が、全てを集約した一文で有る気がしないでもない。


・ストーリー

 ネバーランドにあるこの名もなき町には、たくさんの罪深き人たちがまるで磁石に吸い寄せられるように集う。
 ある者は名のある戦士として人を殺め、またある者は己のために人の財産を奪い、人を騙し、傷つけ、陥れてきた。
 みんな罪という十字架を背負っているかのように・・・。

 (OPより抜粋)


 ・・・と、これだけではさっぱり意味がわからないのだが。
 ネバーランドには5本の塔がそびえ立っており、プレイヤーたちはこれらを登りきることを己の使命として認識しているようである。
 例としてチュートリアルに当たる「ゴブリンタワー」開始時のムービーからセリフを抜粋してみると、

 どうしてかわからないんだ。だけど俺は、あの塔に登ろうと思っている。
 「ゴブリンタワー」。
 醜い食欲の怪物、ブリモリンが治める塔に・・・!

 と、少々イッちゃってる決意表明を見せてくれる。
 塔の中ではまれに「パピルス」というアイテムを拾うことが出来、その中にはこの世界や塔、プレイヤーキャラクターに隠された真実をほのめかす物もあるので、興味が有ればそれらを探し求めるのも良いかもしれない。


・ゲームの流れ

 「スペクトラルタワー」は莫大な階層数を持つダンジョン「塔」を攻略してゆく内容である。
 プレイヤーはまず自分の分身となるキャラクターをエディットし、その後は即、ダンジョンに放り込まれてひたすらに攻略してゆくこととなる。
 拠点となる「村」などのような施設は無く、一度塔に入ったらセーブも回復も塔の中で賄わなければいけないというのだからなるほどシビアな内容である。
 キャラクターが力尽きた場合も即ゲームオーバーとなるのだが、一方でその躯とアイテムは残り続け新たなキャラクターで挑戦した時に引き継ぐことが出来るというシステムもある。
 プレイヤーによっては、厳しい「塔」に挑み、力尽きてはその志を引き継がせ、いつかは全ての「塔」の攻略を目指す・・・という、壮大な挑戦の物語が紡がれることとなるのかもしれない。

 さて、キャラクターのエディットは「名前」と「クラス」の決定からなる。
 うち「クラス」の決定はパッケージ裏でもプッシュされる本作の特徴の一つである。
 具体的には5〜8ケタの数字を入力し、これによってさまざまなクラスが割り振られるというもの。
 適当な数字を入力して登場する基本クラスが10種類、組み合わせによって登場する上級クラスが89種類、さらにそれらに該当しない特殊クラスが8種類、の合計107ものクラスが用意されているのだ。
 例を挙げてみると「旅人」、「シーフ」、「クレリック」、と王道的な物も有れば、「野生児」、「お笑い芸人」、「柔マスター」、と一風変わった物も有り、果ては「おさる」、「カエル戦士」、「ウェアウルフ」、と人間を辞めてしまった物まで登場する。
 派生クラスはゲーム中で発見できる「パピルス」に記された数字を合計することで解放されるので、ゲーム中では見つけるほどにキャラクターが増えて行く喜びが感じられる
 ・・・訳でもなかったりする。

 というのも、基本システムとこの多数のクラスが根本的に噛み合っていないためである。
 クラスが50あろうと100あろうと主人公キャラクター1人で攻略してゆく内容であるため多彩なキャラクターでパーティーを組むという楽しみは無く、またゲーム中で転職する機会が無いため多彩なクラスを使い分ける選択肢も無い、と明らかに数を活かせていないのである。
 先述した通り新キャラクターへアイテムを引き継がせることは可能なのだが前提条件としてそれまで育ててきた自キャラクターを死なせる必要が有り、積極的に行うにはどうにも抵抗が感じられる。
 そもそも本作は戦闘システムが絶望的に単純なこともあり、クラスによる差というのはグラフィック、初期パラメータ、初期アイテム、と3つの戦闘スキルのみに留まっている。
 1人のプレイヤーに107ものクラスで何をさせたかったのか・・・理解に苦しむところである。


・ダンジョンの流れ

 では、次に「塔」の内部について見てみたい。
 「塔」は複数の階層(フロア)から成っており、一つのフロアは「鍵」と「階段」を見つけることでクリアとなる。
 フロアの中にはその他に「敵キャラクター」、「罠の床」、「宝箱」、「その他イベントキャラクター」、が存在しており、これらを回避したり、利用したりしてゲームは進行してゆく。

 うち、敵キャラクターとの戦闘や宝箱の開封はダイスロールによって行われる。
 本作で使用されるダイスは一般的な六面ダイス一個であり、戦闘においては「1」がクリティカルで「6」がミス、2〜5までは敵の強さによって成功と失敗に割り振られる。
 敵キャラクターのHPは1〜3で設定されており、ほとんどのザコは攻撃に成功すると即死する。
 ・・・率直なところ、原始的とでも表現したい内容である。
 一方敵キャラクターの攻撃はほぼ確実に成功し、こちらは一般的なRPGの様に数十、数百のHPで対抗してゆくわけだが、ともあれ。
 ゲーム序盤は最弱エネミーの「コボルド」に対してさえミスの目が3つ。運次第では2ターン、3ターンと手も足も出ず殴られ続けることとなり、到底愉快と言えた内容では無いだろう。

 なお、当たりの目を増やすには各エネミー種別に対する「対抗レベル」を上げればよい。
 これはダンジョンに落ちている「メダル」各種を使用するか、エネミーに対して「クリティカル」を成功させるかによって上昇する。
 逆に言うと、普通に勝利するだけでは何のメリットも無いと言うことでもあるが。
 エネミーは極力避け、一つでも多くの宝箱を開封し、速やかに次のフロアへ移動する・・・と言うのがゲームを進めるコツであると言えるだろうか。
 ちなみに6分の1で発生する「クリティカル」は相手を即死させる
 相手の最大HPが「3」であるのだから、通常攻撃より強力なクリティカルが相手を即死させるのは妥当と言えなくも無い。
 妥当と言えなくも無いのだが、「1」の目はどんな戦力差が開いていようがクリティカルであり、運が良ければ初期状態のキャラクターでさえ6分の1の確率でラスボスを即死させてしまうあたりは運ゲーと表現せざるを得ない。

 ちなみに、対抗レベルが極端に高くなると敵と接触しても戦闘に突入すること無く撃退してしまえるようになる。
 こうなるとなかなかの爽快感が感じられるのだが、今度はフロアの中で鍵と階段を探して歩くだけという退屈な迷路ゲームになる気がしないでもない。


・ゲームボリューム

 さて、そんな存在感の薄いクラスシステムと戦略性の薄い戦闘システムとで挑む「塔」とはどれほどのボリュームなのだろうか?
 本作に登場する「塔」は全部で5つ。

 チュートリアルに当たる全10階層の「ゴブリンタワー」、
 少し難易度の上がった全20階層の「泥棒タワー」、
 本格的な内容で全100階層の「クイーン・ローズタワー」、
 ようやく本番と言える全1000階層の「スペクトラルタワー」、
 最終ダンジョンであり全10000階層の「最後の塔」、

 の5つだ。
 後半での桁違いの伸びが気になってならないところだが、発売当時においては1000階の塔、10000階の塔、を攻略し証拠写真を撮ることで記念ピンズがもらえるキャンペーンが行われたというのだから本気で面白いと思ってやったのだろう。たぶん。
 ちなみに全1000階層のダンジョンなど到底真面目にやれるものでは無く、ゲーム中では数階を省略する「ジャンプロッド」、数十階を省略する「ワープロッド」、などというインチキ臭いアイテムが登場してしまっている。
 結果これを集めて使いまくるゲームとなっており、「普通じゃないRPGを体験せよ!」がなんとも相応しい有様なのである。


・まとめ

 ストーリーはひたすら塔に登るのみ、
 豊富なクラスは操作キャラクターの少なさで活かせず、
 戦闘システムは運任せのサイコロゲームであり、
 ゲームボリュームは数字のインパクトのみにこだわった薄い物・・・

 と、魅力となり得る物がことごとく歪んでいる本作。
 グラフィックや音楽についても上質とは言い難く、救いようが無い。
 「魔王ジャネス」、「天魔剣・流星」、「ヘルガイア」、とスペクトラルシリーズに続くいくつかの単語を見ることはできるが、それほど深い内容でもないのでこれについても「外伝」のレベルだろう。
 黙々と過ごしたいという人には有りかもしれないが、なんとも厳しい内容の一本である。


・余談

 本作の公式ガイドブック(ゲーメストムック)には「スペクトラルタワー外伝」と銘打たれたおまけ漫画が付属している。
 主人公の名前は「シフォン」。これが後にシリーズを代表するキャラクターになって行ったのかと思うとなかなか感慨深い物があるだろう。
 シリーズのファンであれば、こちらを探したほうがいいかもしれない。





・関連作品

・「スペクトラル」シリーズ「スペクトラルフォース(1997)」から続くシミュレーションRPGシリーズ。
戦乱の最中にあるネバーランド大陸を舞台に多数のキャラクターを指揮し、大陸統一を目指すという内容。
・スペクトラルタワーII続編。性懲りも無く「10000階の塔を攻略する」というコンセプトを引っ提げているが、内容はだいぶ戦略性、物語性のあるものになっている。
ちなみに「ひよこむし」の初登場作である。
・「スペクトラル」外伝シリーズその他にも世界観を同じくする外伝作品がいくつか存在する。
砂のエンブレイス続編外伝の外伝。アイテム探索を主とするRPGだが・・・。
カルディナルアークPS2の戦略ボードカードゲーム。本作のはるか未来を描いた、ネバーランドシリーズの一部。


サイトトップ/ゲームレビュー/スペクトラルタワー