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ページ公開:2013/06/25


ENDSECTORエンドセクター


プラットフォームプレイステーション
開発メルヘンブレーカー
発売アスキー
発売年月日1998年 9月
ジャンルカードバトル+サウンドノベル型RPG
プレイ人数1〜2人 (対戦・トレード可能)
セーブデータ4ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
カード設定が複雑 繰り返し楽しめる イラスト豊富 迫力あり AIが弱め 参加イラストレーター111名!





・ゲーム概要

 プレイステーション中期に発売されたカードノベルRPG。
 サウンドノベルの形式で物語を読み進め、道中にて様々な「カード」を入手。これらから「デッキ」を構築して敵との戦闘をこなしてゆく・・・という複合的なゲームジャンルを特徴としている。
 カードバトルは「ターンゲージ」の概念からなるリアルタイムなものとなっており、モンスターカードが成長するというシステムを含めゲームならではの表現を追求した挑戦的な一本と言えるのだが、その内容は果たして・・・?

 なおゲームに登場する381種類+αものカードイラストは総計111名のイラストレーターの手によって描かれており、これもまた本作の魅力の一つとなっている。


・サウンドノベル

 本作の物語は父の遺品である「本」を読み進める学生の少年と、父の遺留品である「デッキマスターシンボル」を受け継いだデッキマスターの少年との物語が交錯しながら進む劇中劇の形式を採っている。
 プレイヤーは学生の少年「ボク」の視点を通して本の中に登場するデッキマスターの少年「僕」の物語を演じ、冒険や戦闘を行ってゆくわけである。

 さて「僕」の物語はタロットカードを題材とした22個の短編に分かれており、一度のゲームでは物語の選択に応じてこのうちの12話ほどをプレイすることとなる。
 1話はサウンドノベルとしての地の文、選択肢、のほか「カードの入手」と「カードバトル」からなっており、物語の選択が入手できるアイテムや対戦する相手を左右する、あるいはカードバトルの結果が物語の流れを変える、などするためノベルとカードの関連性は高い。
 例えば第3話「ブリキの勲章」でのワンシーン。
 これから街を脅かす悪党を退治せんと村を発つ主人公の前に少年が現れ、「井戸に落ちた子犬を救ってほしい」と涙ながらに懇願してきた。
 これに対して「子犬を助ける」選択をした場合、主人公は子犬に「フライヤー」のカードを使って井戸から引き上げるも、すでに虫の息であった子犬は「ヘルハウンド」のカードへと姿を変えて主人公の旅に加わることとなる。
 逆に「敵地へ急ぐ」選択をすると、泣き叫ぶ少年は村人に連れられてゆき、後に残された主人公には旅立ちの選別として「回復薬」のカードが手渡されることとなる。
 と、いった具合だ。

 またこういった選択によって変動する「主人公の性格」もまた重要な要素と言える。
 本作では全てのカードにパトス(悪魔的)〜ロゴス(天使的)からなる性格が設定されており、主人公との性格の差、すなわち相性によってカード使用時のコストが増減したりカードが「反逆」したりするのである。
 例えば、物語の中でパトス的な行動を繰り返す主人公は「サッキュバス」や「ベルゼバブ」といったカードを入れたデッキで力を発揮し、逆にロゴス的な行動を繰り返す主人公は「ペガサス」や「ガブリエル」といったカードを入れたデッキで力を発揮するわけだ。
 この点でもノベルとカードの関連性は強く、リアルタイムで進行するカードバトルがさらにドラマチックな物として演出されているわけである。


・カードバトル

 本作の戦闘を成す「カードバトル」とは、互いのキャラクター「デッキリーダー」の撃破を目的としてモンスターの召喚やスペルの発動を行ってゆくもの。
 この中でモンスターの攻撃やカードの使用は全て時間経過によって蓄積する「ターンゲージ」によって管理されており、これが本作のカードバトルにリアルタイムという特徴を与えている。

 「ターンゲージ」とは行動前・行動後に発生する待ち時間を視覚化したものであり、例えば攻撃時は目盛り3つのゲージが溜まってから攻撃、攻撃後は目盛り4つのゲージが回復してから再行動可能、などとして各カードの行動を管理している。
 下級魔法の「アイスリッパー」は1目盛り、上級魔法の「メテオ」は6目盛り、など強力な攻撃ほど多くのターンゲージが設定されているため、強力な攻撃ほど使用する場を選ぶ必要があるわけである。
 またこれら攻撃前のターンゲージには「攻撃前待機」および「詠唱前待機」という無防備な時間が設定されており、この間に攻撃を受けるとゲージを減らされると共に「クリティカル」という大きなダメージを受けてしまうこととなる。
 このため実際の戦闘では相手の大技に合わせて攻撃を選択する、攻撃後のスキに合わせて大技を準備する、といった一瞬の判断が重要となる緊張感のあるものとなっているのである。


 さてそんなカードバトルを構築するのは「モンスター」、「スペル」、「アイテム」、「フォーム」、と「デッキリーダー」の5種類のカードだ。
 「モンスター」は自陣に召喚してデッキリーダーと共に戦闘を行うカードで、相手への攻撃や味方の防御などを行うことが出来る。
 「スペル」はデッキリーダーが使用して様々な効果を発揮するカードで、複数への攻撃や味方の回復などを行うことが出来る。
 「アイテム」はモンスターやデッキリーダーに装備して能力値を変化させるカードで、攻撃力や属性を変化させるほか使いきりの特殊能力を発揮することができる。
 「フォーム」は自陣に特殊な効果を与えるカードで、攻撃力の上昇などといった恩恵を受ける事が出来る。
 そして「デッキリーダー」はモンスターと同様に戦闘に参加し、攻撃やカードの使用を行ってゆく。

 これらカードから使用したいものを選択し「デッキ」を組んで行くわけだが、この際はカードの効果や能力値のほか先に挙げた「性格」、および「属性」にも気をつけたい。
 本作には火、風、水、地、無からなる5属性が存在しており、この関係によってダメージが増減するなどするのだ。
 例えば「火」は風に強いが地に弱く、水とはお互いに大ダメージを与える、と、強弱のほかに相克という関係が存在しているのである。
 敵のデッキリーダーが風であれば火のモンスターを召喚することで有利に戦えるが、相手がこれを見据えて水のモンスターを召喚していた場合は相克による大ダメージで即座に撃退される恐れがある、など戦略における重要度は高い。

 これをフォローするには自陣への「配置位置」を考えることが重要である。
 本作のカード盤は3×3マスの陣を向かい合わせた形態を採っており、モンスターは標的がいるマスまで移動して攻撃、あるいは標的めがけて飛び道具を放って攻撃する。
 そのうえで標的の前に別の敵がいる場合は、これが壁となって攻撃が妨げられてしまうわけである。
 先ほどの例であれば敵と同族性の風、あるいは無属性のモンスターを最前列に召喚して防御させ時間を稼ぎ、中列に火属性のモンスターを召喚することで一方的に高い攻撃力を発揮できるわけだ。
 特定のマスに攻撃力アップといった効果を付加するフォームカードを併用すれば、こういった配置位置の重要度はさらに上がることだろう。


 ・・・といろいろ列挙してきたが、困ったことに本作のカードバトルを構成する要素はまだまだ多数に存在している。

 壁となる相手を飛び越えて攻撃できる「飛行タイプ」のモンスター、
 行動速度や相手の攻撃への妨害力を左右する「サイズ」の概念、
 ごく一部のモンスターのみに存在する「固有能力」の存在、
 アイテムカードに存在する剣や鞭といった「種別」、
 カードの使用に消費するパワー「マナ」、
 デッキ構築のコスト「カードパワー」、
 全37種類も存在する状態異常「エンチャント」および「ジャマー」、

 などなど正直言ってはん雑であり、クセの強いターンゲージという基本システムも相まって本作は非常にとっつきづらい内容となっている。
 というのに本作には確率次第で回避や反撃を発生させる「AGL(素早さ)」という要素が存在しており、緻密に積み上げた戦略が最終的に運に左右されてしまうあたりは少々不条理と言えるだろう。
 もっともゲーム内のチュートリアルでは最終的に「体で覚えろ」として締められているあたり、ルールや設定については相当アバウトなのかもしれないが。


 ついでに各カードのバランスについて少し触れると、風属性のモンスター「ドミニオンズ」が頭一つ飛びぬけている印象が強い。
 というのも、他のカードの攻撃後待機が軒並み「4目盛り」であるのに対してこのカードは「2目盛り」であるなど、なぜかターンゲージが異常に短いのである。
 詳しく見るとランクが高いため召喚に時間がかかりピュアロゴスという使いづらい性格を持つものの、わずか1目盛りで発動する味方全体強化技「激励」や通常攻撃と同速で装備品を使用できる特性を持ち、装備品による特殊攻撃の威力を左右するINT(知性)はラスボスと同等であるなどその強さはどこかバグ臭い
 過去に行われた第一回公式大会ではこのカードの強さが知れ渡っており、最終的な優勝者はドミニオンズに対するメタデッキとして組まれた「火属性デッキ」であったことなどもこのカードの強さを物語っていると言えるだろう。


・イラスト

 さて、本作に登場する個性豊かなカードたちには1枚1枚に個別の「イラスト」が描かれている。
 特にモンスターは戦闘を繰り返すことで主人公と共に「レベルアップ」し、また特定のカードは別のカードへと「ランクアップ」することもあるので、長く付き合う仲間として愛着を持って選びたいところだ。

 ざっといくつかのイラストレーター名を上げてみると、

作家名カード名代表作
青山広美ガルガリム
シャダイズ
灼熱の巨人
爆炎の大巨人
「トーキョーゲーム」、「バード 砂漠の勝負師」、など
飯田晴子フリーフォーメーション
レインフォーメーション
ほかフォーメーションカードデザイン
「聖♥ライセンス」、「W.i.t.c.h.(あすかコミックス版)」、など
池田正輝棄てられた願望
処刑者の歌
デスブリンガー
ほかアイテムカードデザイン
「シルバー事件」キャラクターデザイン、など
帯ひろ志ゲンブ
鳴動の巨人
ブリザード
グレートタイフーン
オールバキューム
グランドクエイク
「がんばれゴエモン(漫画)」、「ガンプラ甲子園」、など
開田裕治
(開田祐二名義)
キベルズ「宇宙船(雑誌)」、ガンプラのボックスアート、など
かねこしんや
(金子真也名義)
異界の守護者カルドセプト(漫画)」、「クロックワーク」挿絵、など
弘司タロットカード
主人公
ミティ
ほかメインキャラクターデザイン
「トーキョーN◎VA」シリーズイラストレーター、など
小島文美ヴァンパイア
ヴァンパイアロード
「悪魔城ドラキュラ」シリーズキャラクターデザイン、など
田中久仁彦ラストラフ「秘境探検ファム&イーリー」、「ゼノギアス」キャラクターデザイン、など
寺田克也アンチマジックドーム「探偵神宮司三郎」シリーズキャラクターデザイン、「デビルマン(実写)」デビルマンコンセプトデザイン、など
狭霧家薫ホルス
フェニックス
フリーズ
ナパームボマー
リターンモンスター
「鳥っこ倶楽部」、「インコ倶楽部」、など
佐藤元
(さとうげん名義)
メフィストフェレス
ダイアモンドストーム
エアウォール
オールフレッシュ
飛翔せよ
ファイアーピカロ
「水晶の竜」原画、「ふたりはプリキュア」原画、など
末弥純福音「ウィザードリィ(FC、SFC版)」モンスターデザイン、「グイン・サーガ」挿絵、など
千之ナイフアスモデウス
アイスセイバー
スロウワールド
アンティゴ・マーイ(マギ)
「少年X」シリーズ、「死太郎くん」シリーズ、など
水玉螢之丞エルフレンジャー「元祖水玉本舗(ファミ通内コラムページ)」、「火星物語」キャラクターデザイン、など
みやさかたかしウィンドドラゴン
ストームドラゴン
ファイアーボルト
ファイアーボール
ファイアーウォール
「もののけPRESENT」、「ななみまっしぐら」、など
八木田真樹ベガ「ピキーニャ!」ゲーム内音声全般ほか、声優
山田章博ロゴスアトリビュート「十二国記」イラストレーター、「マーメノイド」キャラクターデザイン、など
由羅カイリザカートス
ダゴン
落ち武者の首
「アンジェリーク」シリーズイラストレーター、「彩雲国物語」イラストレーター、など
米田仁士プレーンゾーン「ソーサリアン」パッケージイラスト、「ファンタシースター」パッケージイラスト、など
(敬称略・50音順)
(※代表作は本作発売後のものを含んで記述)

 などなど。その面々は同人作家からイラストレーター、果ては声優やラジオパーソナリティのゲストカードまでと非常に幅広い。
 当然というかなんというか本作のカードイラストのタッチはそれぞれに大きく異なっており、例えば第2話「独りぼっちの皇帝」の道中で出現する「ゴブリン森林遊撃隊」はボウズ頭にくりくりとした目が特徴の悪ガキのような外見をしているのに対し、直後に登場する「ゴブリン岩山警備隊」は人の2、3人は食ってるんじゃないかという凶悪な外見をしていたりする。
 なかなか賑やかな状態になっており、眺めているだけでもそれなりに楽しむことが出来るだろう。


 そんな楽しみ方を想定してか、本作にはカードイラストを個別に表示して眺める事の出来る「カードミュージアム」というモードも用意されている。
 ここではカード一枚一枚の作者を紹介するとともに「逸話」というショートストーリーを読むことができ、カード収集の楽しみをことさらに盛り上げてくれている。

 この「逸話」などに散りばめられた様々な作品へのオマージュも、また忘れてはならない本作の面白さだろう。
 オマージュと言うのはいわば身内ウケを狙った悪乗りのようなものなので手放しに誉められたものではないのだが、

 空を飛ぶことや口から火を吐くことを期待される「ゲンブ」、
 白いイルカや神秘の短剣を持って・・・いない「トリトン」、
 分解して装着出来ない「ペガサス」、
 戦闘前に「うりぃいいいいい!」と叫ぶ「ヴァンパイア」、
 片目の剣士や喧嘩屋に使われる「斬馬刀」、
 むらさま呼ばわりされる「村正」、
 生物を進化させる「月の石」、
 カレー好きな「赤い宝石」、

 などなど非常に幅広いオマージュが散りばめられており、元ネタを類推する楽しみはなかなか病み付きになるものである。


 また、本作のモンスターは盤上に召喚すると2Dのスプライトとなって登場し、攻撃時や被ダメージ時に様々なアニメーションを取ってくれる。
 多くのモンスターはカードイラストからの再現率が高く、まさに絵から抜けだしたように活き活きとした活躍を見せてくれるのだが・・・。

 イラストではパンクファッションなのに戦闘中は三角帽子にロープという典型的魔法使いファッションの「Be-J」、
 先に述べた通りイラストでは大きくギャップがあるのにスプライトは色違いの同じものである「ゴブリン森林遊撃隊」および「ゴブリン岩山警備隊」、
 イラストでは女性っぽいのに召喚すると男性になる「フリーマン」、
 同じくイラストではアラビアン美女なのに召喚するとマッチョなマ神になる「イブリース」、

 などデッキリーダーや高位のカードにはどうにも噛み合っていない物が多い。

 特にこの影響が現れているのがよりにもよって第1話の登場人物で、
 アメコミタッチのマッチョレディ「サンダー・クラック」、
 氷のような肌を持つセクシー美女「ニキータ・コロン」、
 くったくの無い天然少女「ジュエリー・フーア」、
 炎をまとった熱血姉御「ファイアー・ピカロ」、
 の4名が肩パーツと色以外同じスプライトで使いまわされていたりするのである。
 一応、主人公に4つの属性について説明するチュートリアル的なキャラクターであることから統一感を持たせたかったのだろうか、といった類推をすることはできるのだが、第一印象を考えると部の悪い賭けだった気がしないでもない。


・まとめ

 単にサウンドノベルとカードゲームを合わせたのみに留まらず、それぞれの要素を編み込んで一本のゲームを形作っている本作。
 挑戦的な内容であるがゆえに各所に粗さが見られ、特にカードゲームとしては要素を詰め込みすぎた感があるのがいささか残念である。
 が、物語を読み進める面白さ、カードを集めてデッキを組む面白さ、をそれぞれのゲームジャンルの枠を超えて楽しめる内容はオンリーワンと言える怪作である。
 サウンドノベルやカードゲームが好きな人、多彩なイラストを眺めるのが好きな人、幅広いネタに反応する自信のある人、などにオススメの一本である。


・ワンポイント攻略

 ・キャラクターネームが同じデータでは対戦やトレードが行えない。念のためにオリジナルネームを付けておこう。
 ・序盤はランクアップより高Lvのカードへ成長させる方が役に立つはず。
 ・敵のデッキリーダーを最前面へ引きずり出せる「フリームーブ」系カード。CPUに対しては絶大な効果があるぞ。
 ・ドミニオンズと同様に攻撃後待機「2目盛り」の高速カード、バール(※ただしLv2以上必須)。使いやすいパトスでコストも低く、オススメの一枚である。





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