サイトトップ/ゲームレビュー/ブシドーブレード弐
ページ公開:2011/10/25


ブシドーブレード弐


プラットフォームプレイステーション
開発ライトウェイト
発売スクウェア
発売年月日1998年 3月
ジャンルチャンバラ格闘
プレイ人数1〜2人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
本末転倒 三文芝居 百鬼夜行 大胆不敵 阿鼻叫喚 支離滅裂





・ゲーム概要

 同社より発売され(主にバカゲーとして)話題を集めた一撃必殺の3D格闘「ブシドーブレード」の勇気ある続編。
 システム面では「鳴鏡館(めいきょうかん)」と「捨陰党(しゃいんとう)」という2つの流派を取り入れることで「同じ武器でも流派によって構えが異なる」というシステムを搭載しており、シナリオもそれに即した血で血を洗う抗争劇となっている。
 そのほか前作から大幅な変更・調整が加えられた盛りだくさんな内容となっているが、その出来は果たして・・・?


・シナリオ、キャラクター

 先ずは大まかなストーリーから。

 800年前、瀬戸内海に浮かぶ神島には「鏡家(かがみけ)」と「須惠家(すえけ)」という2つの武家があった。親戚関係にあり、良好な仲であった両家は、源平の戦いを機にたもとを分けた。
 片や、平氏の不利を知って源氏に寝返った鏡家。
 片や、壇ノ浦で平氏と運命を共にした須惠家。
 身を寄せていた源義経の死後、須惠家の残党から復讐されることを恐れた鏡家は家を守るために山中にこもって「踏鞴神社(たたらじんじゃ)」を建立し、須惠家の怨念を封じつつ人知れず生きてゆく道を選んだ。

 やがてその執念で踏鞴神社の存在を突き止めた須惠家の残党は、怨念の封印を破るための御神刀「夕霧(ゆうぎり)」の作成を計画。が、この計画は鏡家によって破られ、首謀者は斬首。残された夕霧は神社に封印されてしまう。
 その後の200年に渡り断続的な小競り合いを続け、鏡家を追い詰めて行った須惠家であったが、不利を見た鏡家は備前の武士「向原神和斎(むかいはらかんなぎさい)」に依頼して剣術の新流派を作成。「鳴鏡心当流(なるかがみしんとうりゅう)」と「鳴鏡館(めいきょうかん)」、そして暗殺集団「陰」を誕生させる。
 「陰」によってまたたく間に主要人物を殺害された須惠家残党は一時的に活動停止せざるを得なくなったものの、長い年月をかけて力を蓄え、対抗組織「捨陰党」を結成。実力の拮抗した両者はその後現在まで500年にもわたり水面下での争いを続けてきた。

 が、須惠家の怨念によって妖刀と化していた「夕霧」を手にし、鳴鏡館の師範代ハンザキが暴走。「陰」の変質に疑問を感じた構成員の脱走からなる内部闘争で鳴鏡館は大きく弱体化してしまった。(※前作)
 これを好機と見た捨陰党は総攻撃を決意。800年にもわたる因縁に、今、最後の決着がつこうとしていた・・・。

 (※参考:アクセラ版「剣客十八番」)

 ・・・と、概要はこんなところだ。

 そしてこの抗争劇に参加するキャラクターは、鳴鏡館9人(うち初期キャラ3名)+1+α、捨陰党も同じく9人(うち初期キャラ3名)+1+α、そしてラスボス2名+1とザコ大勢、という総力戦
 さらにその中には「幼馴染に刺激されて入門した魚屋の娘」や「長ドスを振り回す通りすがりの風来坊」、果ては「剣術にダンスの要素を取り入れたがっているアフロブラザー」なんてブっ飛んだキャラクターまでいる「ブシドー」っぷり。少し前作のハラキリを見習えと言いたい所だが、その本人まで黒マントにタキシード+仮面というアレな姿で再登場しているため始末に終えない。
 スクウェアの本気ワルノリである

 で、気になるキャラクターの性能については、前作と同じく「打ち込みの強さ・速さ」、「移動速度」、「専用技・構えの有無」、「サブウェポンの種類」、あとは外観程度の差しかない。
 一応、前作では大して役に立たなかった「サブウェポン」に強力な物が増え、「二刀流」や「居合い」の概念が生まれたためにキャラクター性能の差は多少大きくなったとも言える(詳しくは後述)。
 とは言え、本作で真に重要なのはやはりキャラクターの技や闘い方を決定する「武器」である。そこで本作で使用可能な武器の種類を見てみると、

 ・打刀
 ・ロングソード
 ・野太刀
 ・ブロードソード
 ・薙刀(鳴鏡館のみ)
 ・槍(捨陰党のみ)

 (※火器除く)

 ・・・以上6種類である
 いや、「流派が2つあるのなら実質10種類だ」と思われるかもしれない。だが残念なことに、キャラごとに存在する専用技を除けば2つの流派で使用できる技はまるで同じなのである
 その差は構えが若干異なるのと、「二刀流」と「居合い」を使えるキャラクターがそれぞれに偏って存在していること、くらいだ。

 前作と比較すると、確かにキャラクターは増えた。前作6人+1、今作18人+2+α。約3倍のボリュームだ。
 が、実際に技を決定する武器は前作の8種類から6種類に減っているのである
 キャラクターは増えたのに対戦相手は減っている不思議

 また「(※火器除く)」と書いたが・・・前作の拳銃野郎シュバルツ・カッツェは本作でも(変態度を増して)登場。
 そしてそれに対抗するかのごとく、前作の忍者姐さんホッキョク・ツバメ(44)がビキニ甲冑+ライフルという常軌を逸した状態で登場。
 対戦モードでは拳銃VSライフルという夢のブシドー対決が実現可能に!

 ・・・おまえら刀で勝負しろ!


 ・・・と、キャラクター面を軽く見ただけでも前作を遥かに超越した内容を持っていることがお分かりいただけたと思う。が、スクウェアの本気はまだまだ、こんなものでは済まされないのである。


・基本システム

 では次にシステムについて見てみよう。
 本作も、そのシステムの根底にあるものは変わっていない。「一撃必殺」だ。
 頭や胴体など、急所に対して深く一撃を加えることができれば勝利、というものである。

 しかし本作では、それを実践する「攻撃」と「防御」の基本概念が前作から大きく変更されてしまっているのだ。
 先ず、「防御」に当たる行動が無い。相手の攻撃にはこちらも攻撃を出して「弾く」必要がある。
 攻撃には○ボタンの「表攻撃」と×ボタンの「裏攻撃」の2つがあり、表には裏の、裏には表の攻撃を当てることで防御を成立させる、というわけだ。
 これが「有利防御」と呼ばれるもので、体勢の崩れやノックバックの少ない、有利な状況を作り出す(とされる)防御である。
 逆に、表の攻撃に表を、裏の攻撃に裏を出してしまった場合は「不利防御」となり、攻撃を防ぎはするものの体制を崩し隙を生じさせてしまう。
 つまり本作の防御は、生きるか死ぬかの緊張の中で相手のわずかな予備動作を見切り、一瞬の内に相手の繰り出した攻撃の表裏を見極め、それに対応した攻撃を的確なタイミングに出すことでやっと行なえるものとなっているのだ。
 というのに、CPUはさも当然のごとく有利防御してくるからタチが悪い。
 当然、6種類の武器、3通り用意された構え、各種通常技とレバーの組み合わせ、連続技の回数、いくつか存在する専用技、フリーランニングからの奇襲、不意に繰り出されるサブウェポン、これら全てを熟知し、かつ瞬間的に判断できなけば、理想的な「有利防御」は行なえないのである。

 無理。

 では対戦では「とりあえず適当に攻撃しておけば防御されず一撃必殺が決まる」のかというと、そうでもない。なぜかというと攻撃側の武器と防御側の武器が接触すると発生する「武器弾き」が存在するためだ。
 本作の「武器弾き」はなぜか弾いた側の姿勢まで崩れる仕様の為、連続攻撃が途切れて状況が仕切り直しとなるのである。
 また問題となるのが「武器弾き」の高すぎる発生頻度で、武器の組み合わせによってはほとんどの攻撃が弾かれる「終わっている」組み合わせも存在するのだ。むしろ、下手に防御用の攻撃を空振って隙を作ってくれたほうが攻撃が通りやすい。
 最悪、初心者の場合は攻撃されてもぼーっとしていたほうが安全・・・などということになりかねない。
 オートガード万歳。

 また「武器弾き」の他に、武器の接触判定に押し返されて相手まで攻撃が届かない・・・という状況も頻繁に発生する。
 本作はこの押し返しが突進系の攻撃にも適用されるため、酷いケースになると「飛び込んだと思ったら飛び退いていた」なんてことも。
 届くと見込み、踏み込んで斬りかかったものの、武器の押し返しにあって相手の切っ先で大きな隙をさらすことに・・・などとは目も当てられない。

 (※また参考までに、前作では攻撃は攻撃、防御は防御として存在し、相手の上、中、下攻撃は一括して「当て」によって弾くことができた。それでも技が多彩なためタイミングを見切るのが大変であったが。)


・特殊システム

 そして、各キャラクター固有のシステムには「専用技」、「二刀流・居合い」、「サブウェポン」といったものが存在している。
 先ず「専用技」についてだが、これはそのキャラクターが得意とする武器を選択するとオリジナルの技を使用できる、というもの。通常攻撃から派生するもの、変則的な動きで攻撃できるもの、などがあり、相手の防御を混乱させるにはもってこいとなる。
 だが中でも凶悪なのは、本作より登場した「からみ技」の存在である。
 「からみ技」とは相手を掴んだり、殴る蹴るといった打撃を織り交ぜたりして攻撃するもので、相手に接近した際に「←×」で使用することが出来る。いわば投げ技だ。
 「からみ技」に成功すると相手は即死する
 回避方法としては投げられている最中か技が成立する瞬間に「○」を押せば良いのだが、受付時間が恐ろしく短い物などもありそのプレッシャーは尋常ではない。一部の相手が不自然に接近してきたら警戒するクセをつけるべきだろう。

 そして「二刀流」と「居合い」についてだが、これは「打刀」もしくは「ロングソード」を得意とするキャラクターに存在する特殊な構えで、基本的に鳴鏡館は「二刀流」、捨陰党は「居合い」を使用できるようになっている。
 「二刀流」はキャラクターが所有するサブウェポンと得意武器とを両手に構える物で、両手の武器を交互に使用した素早い連続攻撃が可能となっている。
 「居合い」は一旦武器を納刀し高速の一撃を放つ物で、技後の硬直こそ長いものの一撃必殺の攻撃が可能となっている。
 この点が両流派の数少ない特徴となっているため、キャラクターを選択する際の留意点としておくと良いだろう。
 ・・・特殊な構えが使用できる分、通常の構えが一つ使えなくなっていることだし

 最後に「サブウェポン」について。
 前作にもサブウェポンは存在していたが、その効果は手裏剣や鉄扇などを投げつけて微小な身体ダメージを与える程度、相手を一瞬ひるませる程度、の微々たる物であった。
 が、本作のサブウェポンには「脇差し」や「ドス」、「斧」と殺る気マンマンの品々、「当たれば即死」という効果を持つ物が登場している。
 もちろんこれらは投げて使用する
 基本ガード可能とは言え、距離が離れても一切の油断は出来ないのである。踏み込みが足りずに攻撃を空振ったときなどは綺麗なお花畑を拝むことになるだろう。
 また、いくつかガード不可能なサブウェポンも存在する。中でも気合声「喝!」と「カエル」は凶悪だ。
 気合声「喝!」は効果範囲内の相手をひるませ、その隙に斬りかかる、というもの。ひるんだ相手は武器を落としてしまうためガードも出来ず、最悪そのまま切り伏せられることになる。
 「カエル」は相手に生きたカエルを投げつけるもので、女性キャラのほとんどとある男性キャラのみを一定時間無防備にするもの。相手は大きな隙をさらすため、追撃に成功すればガード不能即死連携の完成である。

 これらキャラクター固有の性能、特にからみ技や即死サブウェポンの有無などが、18人ものキャラクターの中から1人を選択する上での大きな基準となるだろう。


・ストーリーモード

 また、本作を語る上で避けて通れないのはストーリーモード、「決戦の間」の内容だ。
 前作は選択しなかったプレイヤーキャラが追手となって襲いかかってくるというもので、戦う前に一礼してきたり、その状態で斬りかかれたり、そんなことばかりして「卑怯者」エンドを迎えたり、あるいは戦わずして逃げてやり過ごすことができたりと、非常にユニークな内容となっていた。
 が、残念ながら本作に「卑怯者」エンドは無い
 流派同士の抗争だからなのか、ガケから突き落とそうが、背中から斬りかかろうが、泥で目つぶししようが(これは前作でもセーフ)、何をしても「勝てばよかろう」の仁義なき戦い

 対戦相手について見てみると、敵流派のプレイヤーキャラは中ボス扱いで複数のザコ忍者と戦わねばならないという水増し状態。
 1対複数・・・ではなく1人1人順番に登場するもので、その登場の仕方も画面内のランダムな位置に突如として配置されるという手抜きっぷりだ。
 が、ザコとは言え侮ってはならない。当然こちらは一撃で即死する危険があるし、ザコ忍者のサブウェポンは拳銃である
 本作の場合一応拳銃の弾はガード可能であるとは言え現実的ではないので、十分警戒しておこう。

 このほかサポートキャラや銃使いとの決闘などが待ち構えているが、やはり最もインパクトが強いのはラスボスの能力だろう。
 先ずは、鳴鏡館側でのラスボスについて。
 ・・・説明書にこういう記述がある。「〜敵の中には、正面からの攻撃だけでは倒せない者も存在します。(説明書7P)」
  _,._
 (;゚д゚) ・・・!?


 つまりはそういうことである。ラスボスには正攻法が一切通じず、背後からの攻撃を狙う必要があるというわけだ。
 さらにはプレイヤーが背後攻撃を狙えるようにわざと貧弱なAIとなっており、もう何がしたかったのかさっぱりわからない。
 またもう一方、捨陰党側でのラスボスについては、輪をかけて凶悪な状態となっている。

 ・・・だから、おまえら刀で勝負しろっっ!!

 ついでに言えば、鳴鏡、捨陰、両方とも相手の隙を見て即死サブウェポンを投げつけるのが非常に有効な状態となっており、800年にもわたる因縁は背中にドスを投げつけられた総帥の死で決着・・・となりかねない。
 どちらにせよ、「ブシドーブレード」の根底にあるはずの「一撃必殺」からは程遠い内容である。


・まとめ

 ・・・と、前作からさまざまな変更を取り入れたものの、その大半が何を目指していたのか見失った、支離滅裂な結末に終始してしまった問題作。
 何のための2流派か、
 何のためのキャラクターか、
 何のための武器か、
 何のための防御か、
 何のためのラスボスか・・・。
 前作を「一見バカゲーに見えて実は名ゲーだった」とするなら、本作は「一見バカゲーに見えて実はもっとバカゲーだった」というニュアンスである。

 ただ、「居合い」のかっこ良さや強力な「サブウェポン」を交えた攻防、敗北時に武器を手放す演出、などは前作では楽しめないものであり、そういったものに関心があればオススメできなくもない。
 また強烈な個性を持つキャラクターたちを選んでガヤガヤ対戦する「見る楽しさ」は前作よりも親しみやすいものとなっているため、その点を考慮してみてもいいかもしれない。


・ワンポイント攻略

 ・サポートキャラを使用可能にするには、「決戦の間」でキャラクターチェンジした後そのキャラクターでステージを攻略し、かつそのままゲームをクリアすること。
 ・他の隠しキャラクターを使用可能にするには、初期キャラクター6人でゲームをクリアすると出現する「百斬の間」で良い成績を残すこと。

 ・捨陰党の場合、「決戦の間」の最後にエンディングの分岐が存在する。

 ・なお、ザコ忍者(捨)のセリフは「社員のために!」ではなく「捨陰のために!」である。(蛇足?)





・関連作品

ブシドーブレード前作。「一撃必殺」を体現した緊張感ある対戦が楽しめる。
・チョコボの不思議なダンジョンおまけディスクに本作のPVが。


サイトトップ/ゲームレビュー/ブシドーブレード弐