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ページ公開:2011/10/04


ガラクタ名作劇場めいさくげきじょう ラクガキ王国おうこく


プラットフォームプレイステーション2
開発ガラクタスタジオ
発売タイトー
発売年月日2002年 3月
ジャンルラクガキRPG
プレイ人数1〜2人
セーブデータ本編データ298KB以上3つまで、ガレージ1つ684KB以上10個まで
備考:コピー不可


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
独創的 寓話的 ジブリ的?
高品質
牧歌的 ラクガキ次第? 協力:スタジオギブリ
協力:社団法人 日本漫画家教会





・ゲーム概要

 2002年3月にタイトーから発売された「ラクガキRPG」。その最たる特徴は、プレイヤーが描いた「ラクガキ」が立体のキャラクターとなって動き出し、活躍するという独創的なシステムにある。
 パッケージの裏から引用すれば、

 「主人公プレイヤーが簡単に書いたラクガキは、あっという間に3D三次元のキャラクターに!
 「羽を描けば飛び、足があれば跳ね回る
 「こうして異なる能力をもつラクガキたちをバトルに参加させストーリーを進めていく。
 「全く新しい次世代RPG!

 ・・・とある。
 まぁ、それほど簡単でもないし、羽や足は指定する必要があったりするが、ともあれ。
 その自由度の高い内容はゲーム界隈のみならず多くの人間に衝撃を与えたようで、特にNHK教育の「天才ビットくん」内では「グラモンバトル」というコーナーとして登場するなど「ゲームのシステムが」お茶の間を賑わせた稀有な例となった。

 なおパッケージに目をやると、アートディレクターとして「となりのトトロ」の作画監督である佐藤 好春氏が参加していること、日本漫画家協会を始めとした多くのクリエータが参加していること、2002年夏に上映された映画「ギブリーズ episode2」などの特典映像が収録されていること、など、アピールされている点が多すぎて嫌な予感を覚えかねない状態なのだが、その内容は果たして・・・?


・ゲームの流れ

 本作の大まかな流れは、

 「ラクガキノート」で「ラクガキ」を描く
 ↓
 「ギャラリー」で「ラクガキファイト」を行なう
 ↓↑
 ラクガキに加筆するなどして強化する
 ↓
 「帝国ラクガキ大会」に参加し、「ホーム」で物語を進める
 ↓
 より複雑なラクガキが描けるようになる
 ↓
 ラクガキノートでラクガキを描く、描き足す
 ↓
 ・
 ・
 ・

 ・・・を繰り返してゆき、次第に物語の核心に迫ってゆく内容となっている。
 このうち「ラクガキノート」でラクガキを描くことが本作の強化・育成部分、
 ギャラリーや帝国ラクガキ大会で「ラクガキファイト」を行なうことが本作の戦闘・進行部分を担っている。


・ラクガキの描き方

 では「ラクガキノート」でのラクガキの描き方を見てみよう。
 先ずは、ノートの中からラクガキを描きたいページを選び、ラクガキモードに入る。
 ラクガキモードに入ったら、

 ・「からだ」、「あたま」、「うで」などの「パーツ
 ・「あか」、「あお」、「きいろ」、などの「カラー
 ・描いたパーツの形を左右する「ペン

 をそれぞれ選び、好きな形に閉じた線を描くことで選択した色のパーツを立体化させる。
 パーツが立体化されたら、それを3Dの自由な方向に向けて次のパーツを描き足して行き、徐々に複雑なラクガキへと完成させてゆくわけだ。

 ここでユニークなのは、描いたパーツの数や形によって完成したラクガキの「動き」が変化することにある。
 たとえば「あし」だが、「あし」の無いラクガキ、例えば雪ダルマなどは全身で飛び跳ねるような動き方をする。対して2本の「あし」を持つラクガキは直立して歩くような動きを見せ、4本の「あし」を持つラクガキは動物のように4足歩行を行なう。
 さらに「く」の字に曲がった足を描けば、曲がった部分が関節のように動作するのだ。
 このユニークさが「ラクガキ王国」の大きな魅力の一つとなっており、このほか「まわる」、「プルン」といった特殊な動き方をするパーツによってその動きの多彩さや奥深さはさらに広がってゆくのである。


・ラクガキの能力

 そして、そうして完成させたラクガキを「ラクガキファイト」で闘わせるわけだが、この際の強さもまた各パーツの形や大きさ、色などによって左右される。
 いくつか例を挙げれば、「うで」を大きく描けば攻撃力が上がり、「あし」を大きく描けばすばやさが上がる。また暖色系の色を多く使えばこうげき型のラクガキになり、寒色系の色を多く使えばまほう型のラクガキになる、といった具合だ。
 これらの能力は基本的に線を描き込むことで変動してゆくため、複雑で高度なラクガキほど強力だと思っていいだろう。もちろん加筆修正した結果も有効なので、ある程度は数値を調節することも可能だ。

 ・・・と、非常に奥の深い「ラクガキ」なのだが、始めは選択できるパーツも描ける線の長さも少なく、ただの丸、や、ただの三角、程度のものしか描けない。
 本編の物語を進めることで新たなパーツを入手し、描ける線の最大値が増えていくわけだが、この過程がなかなかにもどかしく、単純な形状でも問題なく戦えてしまったりするのは少々ばつが悪い。
 後から描けるパーツや線が増えても予定外の描き込みとなるため、恐らく多くのプレイヤーが最初に描いた丸や三角に無作為な腕や足を描き足していった奇妙なラクガキを戦闘の主力として用いたのではないだろうか。

 またラクガキのシステム自体はわかりやすいものの、狙ったラクガキを描くためにはパーツの描き順にまで気を配る必要があり、またラクガキに狙い通りの動作をさせるのは時として特殊な技法を必要とするなど、思い通りのものを描くにはある程度の上達を必要とする。
 全体的にラクガキはさまざまなものを描き、動かせるという「自由度」や「工夫度」こそ高いものの、思ったものを思ったとおりに表現できる「気楽さ」・「手軽さ」にはやや難が有る内容となっており、その点がやや残念である。

 とは言え、本ゲームの対戦相手を務めるラクガキたち、先行配布された体験版のプレイヤーや日本漫画家協会を始めとした多くのクリエイターたちが作成した多彩なラクガキたちを見れば、かわいい物、カッコイイ物、不思議な動き方を見せるものなど、初心者を見た目で楽しませ、ラクガキの奥深さ、可能性にのめりこませてくれるはずである。


・ラクガキファイト

 さて、そうして作成したラクガキを対戦させるのが「ラクガキファイト」だ。
 そのルールは「こうげきワザ」、「まほうワザ」、「バリアワザ」の3すくみからなるジャンケンのようなものと思っていい。
 例えば相手の「まほうワザ」に対して「バリアワザ」を選択した場合、こちらは相手のまほうを防ぎつつバリアを飛ばして反撃を行うことが出来る。
 「こうげき」はその「バリア」を無視して攻撃でき、「まほう」は「こうげき」される前にダメージを与えてターンを終了させる。
 「あいこ」の場合は素早いほうから攻撃するが、お互いにダメージを受けることになる。
 細かく見てゆくとそれぞれに「たいあたり」、「かみつき」や「ミニミニ1」、「水ふうせん2」などの種類があるが、それは割愛しよう。

 これだけならばただの運任せジャンケンゲームに思えるが、本作はここへ2つのシステムを加えることで戦闘に戦略性を持たせている。
 1つは、同じ「ワザ」は続けて選択できないということ。もう1つは、全てのワザに負ける「チャージ」が存在することだ。

 例として、前のターンに自分が「こうげきワザ」、相手が「まほうワザ」を出した場合を見てみよう。
 この場合、自分が次に選択できるのはこうげきワザを除いた「まほうワザ」、「バリアワザ」、「チャージ」の3つ。
 対して相手が選択できるのは「バリアワザ」、「こうげきワザ」、「チャージ」の3つだ。

 こうなると、自分は「まほう」と「バリア」のどちらを選んでも押し負ける可能性があり、相手は「バリア」を選択することで最低でもあいこに持ち込める・・・という不利な状況となってしまっている。
 が、ここで活躍するのが「チャージ」だ。
 チャージは全てのワザに弱く必ずダメージを受けるものの、使用すると若干体力を回復させ、次のターンの攻撃力を上昇させるという効果がある。
 さらに次のターンの行動は「チャージ」以外の3つ、「こうげきワザ」、「まほうワザ」、「バリアワザ」から選択できることになり、戦闘の仕切り直しが可能となるわけだ。

 相手が慎重派のようだったら「あいこ」狙いの裏を突いてみるのもいいし、逆転派のようだったら手堅く行くのもいい。
 もちろん、そもそもチャージを使うほかに相手の「こうげきワザ」に期待して「まほうワザ」を選択する、というバクチ的戦法だって存在する。
 この単純ながらも奥の深い心理戦が、自分の感性を反映したラクガキたちのアクションと相まって「ラクガキ王国」というゲームのシステムを形作っているわけだ。

 また、この単純明快な戦闘システムであったからこそ、チビっ子たちがお互いの「グラモン」をリアルタイムで戦わせる「グラモンバトル」が実現したのだとも言えるだろう。


・ストーリー

 ・・・と、独創的なシステムの数々に押されてなりを潜めがちであるが、佐藤 好春氏の手によるジブリ風のグラフィックの数々や、それに驚くほどマッチする少年少女たちの物語も質が高い。
 ストーリーを要約すると、

 自由なココロを持つヒトと、自由なカラダを持つラクガキたちのいる世界。
 ふと、見知らぬ土地で目を覚ました主人公(=プレイヤー)は何者かに促されるままに「ペンジェル」によってラクガキを描き、それがきっかけで「ヒバナ」という少女、「タロー」という少年、と出会うことになる。
 ヒバナは主人公にペンジェルを使用したラクガキの描き方や戦い方を教え、「帝国ラクガキ大会」への参加を促した。
 何でも、ヒバナの師匠、タローの父親であり、町一番の「クロッカー」であった「ガリレオ」が失踪したため、彼のガレージを帝国の没収から守るために、大会の賞金を手に入れる必要があるのだという。
 主人公はペンジェルを使えなくなったヒバナたちの代わりにラクガキを描き、ヒバナたちは主人公にガレージへの滞在を認める、という関係で、ともに大会での優勝を目指す仲間となるのだった。

 ・・・しかし、そこにヒバナとタローを知る謎の少年、「モノ」が現れ、ガリレオの死を告げたことから、物語は意外な方向に向かってゆく・・・。

 ・・・といったところである。
 うん、まぁ、モノの登場以降主人公(=プレイヤー)は余分とさえ言えるほど存在感が無くなってゆくのだが、そのどこか童話的な、ほのぼのとしながらも物悲しさを持つ物語は、個性的なキャラクターやグラフィックと相まって本作の一つの魅力となっていると言える。
 特に、「ラクガキノート」を開けるホームと「帝国ラクガキファイト」の会場を結ぶ商店街、「ガラクタ市場」の作りこまれたグラフィックは必見だ。活気にあふれイキイキとした人々の姿はそこを通るだけでもプレイヤーを楽しませてくれることだろう。
 ・・・ホームと会場を移動する度に発生することになる、異様に長いロードさえはさまなければ


・スペシャルサンクス

 そして、忘れてはならないのが本作に参加した「有名クリエータ」たちの存在だ。とりあえずパッケージの裏に列挙されている「日本漫画家協会」の面々を見てゆくと・・・。

作家名ラクガキ名(所有キャラ)代表作
一峰大二ナキムシサタン(マサマサ)「スペクトルマン」、「ファイアーマン」ほかのコミカライズなど
小島功マジョッコ(ロイド)「ヒゲとボイン」、「仙人部落」、など
さいとう・たかをニンジャコロク(ロッコ)「ゴルゴ13」、「超人バロム1」原作、など
佐川美代太郎ブルーボンボン(ドン)「汗血のシルクロード」、「望郷の舞」、など
里中満智子ピンクルン(ロイド)
キミドリゴン(ロイド)
「天上の虹」、「海のオーロラ」、など
東海林さだおフラットクン(ロイド)「アサッテ君」(新聞4コマ)、「タンマ君」(新聞4コマ)、など
新谷かおるダイサッカ(コウ)「エリア88」、「ふたり鷹」、など
鈴木義司マッサリハチ(シセン)「サンワリ君」(新聞4コマ)、「お笑いマンガ道場」出演、など
関根義人ヘノヘノサザエ(ロイド)
パンチドラゴン(ワビスケ)
「おしん子ちゃん」(新聞4コマ)、「ヤジ子さん」(新聞4コマ)、など
ちばてつやヒデバロ(ドン)「あしたのジョー」、「ハリスの旋風」、など
花村えい子ハナコハナベエ(ロイド)「霧の中の少女」、「浅見光彦」シリーズのコミカライズ、など
はらたいらゲンペイ(ロッコ)「モンローちゃん」、「クイズダービー」出演、など
バロン吉元キドウ(大将)「柔侠伝」シリーズ、「十七歳」、など
藤子不二雄・Aランシロウ(ロイド)「忍者ハットリ君」、「笑ゥせぇるすまん」シリーズ、など
牧野圭一カイドウクン(ロイド)「"感覚的"マンガ論」(評論)など。 一コマ漫画家。
松本零士ニャンドン(タンゲ)「宇宙戦艦ヤマト」、「銀河鉄道999」、など
みつはしちかこチッチ(レンゲ)「小さな恋の物語」、「ハーイあっこです」、など
モンキー・パンチコウチャン(ツムグ)「ルパン三世」シリーズ、「MUSASHI -GUN道-」原作、など
やなせたかしホシツキクン(タンゲ)
ボウシムシ(レンゲ)
「アンパンマン」(絵本)、「手のひらを太陽に」作詞、など
矢野徳シバテンシ(タロー)「おにのくび」(絵本)、「おにをくったじっちゃ」(絵本)、など
わたなべまさこウィッチ.ペロ(ロイド)「ガラスの城」、「聖ロザリンド」、など
(敬称略・50音順)
(※代表作は本作発売後のものを含んで記述)

 ・・・と、到底子ども向けとは思えないそうそうたるメンバーだ。
 (もっとも、新聞に4コマを連載する(していた)漫画家が多いことなどを含めて「日本漫画家協会」の性質だと思われる。)
 しかし、それらのラクガキの半数を集中して所有する「ロイド」はクリア後でなければ登場しないうえ出現がランダムの隠しキャラであり、彼がこれらのラクガキを繰り出すかどうかもまたランダム、と、本当にこれら作家陣をウリにしたかったのか怪しい状態である(そもそも作家本人がラクガキを作ったわけでもないし。)

 が、本作に登場する「有名クリエータ」たちはこれだけにとどまらない。登場するラクガキの「製作者」のパラメータを見てみると、「さくまのぶゆき」、「みんだなお」、「Dr.モロー」といった聞き覚えの有る名前が散見され、それぞれが多くの個性的なラクガキを描かれている。
 「長谷川祐一(長谷川ゆういち 名義)」氏に至っては、自身の代表作「マップス」のヒロイン「リプミラ」(のそっくりさん)を登場させるサービスっぷりだ。
 また、「シルバーホーク」や「バーン・グリフィス」など、発売元である「タイトー」のゲームキャラが出演していたり、「電撃Playstation」の「ポリタン」が出演していたりとゲスト出演も多く、果ては「でん六まめ」のでんちゃん(白黒のクマ)までもがゲスト出演している点、それも釣りや豆まきなど複数のバージョンを持っている点については、ただただ驚きの一言である。

 このほかにも現在ピクシブや同人誌で活躍する人と同じ名前がいくつかあり、これだけ名前を挙げても網羅しつくせない、底知れぬ数のクリエータたちが関係している模様である。
 まぁゲスト目当てで入手するのは考えづらいが、それらのファンである、という人はチェックしてみるといいかもしれない。少なくとも「でんちゃん」が登場しているゲームなんて他にはないだろうし。


・まとめ

 「自分の描いた絵が立体化し、動き出す」ことは、誰しもが一度は抱く夢ではないだろうか。本作は少々違う形で、規模も小さいものの、その夢を形にしたような独特の魅力を持っている。
 その魅力は次回作「ラクガキ王国2 魔王城の戦い」に引き継がれており、ラクガキの難易度にやや難のある本作はやや「過去の物」になってしまった感があるが、多くのプレイヤーやクリエータたちによって描かれた多彩なラクガキや、牧歌的な世界観などは本作独自のものとして今もプレイヤーを楽しませてくれる。
 「ラクガキ」に興味があり、多彩ならラクガキを楽しみたい人や、ラクガキファイトの内容に興味を持った人、また、ガヴァドンに夢を見た少年少女たちへ、オススメしたい「名作」だ。





・関連作品


・天才ビットくん グラモンバトル事実上の続編。ラクガキ王国→番組コーナー化→ゲーム化という極めて珍しい流れをたどった。
・ラクガキ王国2 魔王城の戦いアクションでの続編。ラクガキの描きやすさが格段に増し、パーツの厚みを調節したり動きを指定したりと自由なラクガキが可能なほか、描いたキャラクターを自身の手で操作できるという魅力もある。
・サイキックフォースキヴァのラクガキ「バーン・G」の元ネタ(タイトー繋がり)
・サイキックフォース2012ロイドのラクガキ「エミリオ」、コウのラクガキ「せつな」、の元ネタ(タイトー繋がり)
・「ダライアス」シリーズキヴァのラクガキ「シルバーホーク」の元ネタ(タイトー繋がり)
・「レイ」シリーズキヴァのラクガキ「R-GRAY」の元ネタ(タイトー繋がり)


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