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かくゲー野郎やろう Fightingファイティング Gameゲーム Creatorクリエイター


プラットフォームプレイステーション
開発インクリメントP
OUTBACK
D.A.S.T.
発売インクリメントP
発売年月日2000年 2月
ジャンルアクション
プレイ人数1〜2人
セーブデータ8ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
意欲的 分岐なし・特殊条件なしなど不足はある やはり容姿は弱し ボイス選択不可 だいぶ粗い 2D格闘ツクール





・ゲーム概要とまえおき

 プレイステーション末期に世に出た、2D格闘ツクールと言った趣の怪作。
 多様なキャラクターから自分の好みに合ったものを選択し、練習を積んでその性能を十分に把握することで勝利に結び付けてゆくのが格闘ゲームの醍醐味ながら、あるいは格闘ゲーム初期からそこに求められているもう一つの欲求があった。
 「龍虎の拳」のストーリーモードにおけるボーナスステージや、「超人学園ゴウカイザー」におけるトレースシステム、もう少し時代を下っては「ストリートファイターEX3」のエースにPS版「サイキックフォース2」のPSY-EXPAND・・・。
 それはつまりプレイヤーと共にキャラクターも成長するという「育成要素への憧れ」と、それに伴う「あの技が使いたい」や「こういうキャラにしていきたい」といった「カスタマイズ要素への憧れ」だ。

 残念ながら、これはキャラクターを2次元の絵の集合で表現する2D格闘ゲームにおいては倍々ゲームの途方もない労力を必要とし、我々がこれを楽しめるようになったのは主に3D格闘ゲームの技術と人気が発展してのちの話となった。
 容姿に関して言えば、「ソウルキャリバー」シリーズのようにDLCの展開を販売戦略とするものから、PC版「ストリートファイター4」のように各個人がMODを適用して楽しめる双方向的なものまで、非常に充実してきている。
 一方で技のエディットに関してはゲームバランス面で難しいのかまだ数がなく、個人的には「3D格闘ツクール」の続編に期待を寄せつつ、スマホ版「スカルガールズ」において原作の豊富な技から一部分をピックアップして装備するという、引き算において実現したものが記憶に新しいだろうか。
 (なお、「MUGEN」はノーカンとしておく。)

 対して、現在からもう20年以上も昔の作品となってしまったが、あくまで2D格闘ゲームとして全編をスプライトで表現しつつ、多数ある基本技・必殺技から好みのものを選択してキャラクターを作成するという面白さを実現して見せたのが、本作「格ゲー野郎」なのである


 さてゲームアーカイブスにおいて配信があるのでほぼワンコイン価格と言えなくもないのだが、いかんせんゲームアーカイブス自体がサポートを縮小(特に国内で)しフェードアウトする方向に舵が切られているうえ、中古の現物はプレミアがついていてそれなりのお値段がするので今回は特別編と言う扱いとする。
 ・・・しかし、こうして過去のリソースを無駄にしながら「PC勢に勝てない」とか嘆いているソニーの販売戦略はまったく理解に苦しむばかりだ。
 見落としてきたものの中にこそある価値もある、と思うし、というかそもそもゲームソフトに関しては映画や小説に比べて「過去の名作」が過小評価されすぎである。


・ゲームモード

 本作のゲームモードはおおまかに4つだ。
 ひとつはテンプレートとして用意された「ORIGINAL GAME」モードで、このゲームに登場する7通りのキャラクターから一人を選択しそれに沿ったストーリーを進めてゆく一人用モード。
 チュートリアルとしての意味合いも持つが、「同じキャラクターのエディット違いがいない」、「全キャラバトルシステムが同じ」、という点でやや見せ方は物足りない。
 余談だがかつて「月刊ファミ通WAVE」に収録された体験版は「空手家」のブロッキング・打撃タイプと避け・波動昇竜とを用意してエディットの幅を見せるという形であった。

 ふたつには「EDITOR」モードで、このモードで技やバトルシステムをエディットしたキャラクターを作成する。
 詳細は後述するとして、みっつにここでエディットしたキャラクターで「ORIGINAL GAME」に相当する内容をプレイする「USER GAME」モードがあるわけだ。

 それから忘れてはならないのが対戦。
 「VS MODE」ではオリジナルゲームに収録されているキャラクターと、現在エディット中のキャラクター、また1P・2P問わずメモリーカードから「ゲスト」という扱いでキャラクターをロードして対戦することができる。
 バトルシステムの方針や技の選択次第であまりフェアな勝負とはならないし、技表の簡易表示など快適性にあまり配慮されていない(今でいうQoL)ので、あくまでエキシビジョンマッチくらいの感覚と思うが、しかして格闘ゲームなのに相手の技の構成が分らないというのは奇妙な刺激となるだろう。

 ・・・以上、オンライン対戦がないのは当然として、ランダムな相手とCPU対戦を行う「アーケード」や「VS CPU」、CPU同士の対戦を見守る「WATCH MODE」がないのは正直物足りなくはある。
 つまり、一人で遊ぶ分には、手塩にかけた自分のキャラクターが戦えるのはまた別に用意した自分のキャラクターしかいない、ということになるわけだ。
 本作のAIは決して雑なわけではなく、選択した技に応じてしっかりコンボや対空をこなしてくれるのでこの手のモードは悪くないはずなのだが・・・惜しく思うところだ。


・エディット項目

 さて、では本作で一番気になる「エディットの範囲」について見てゆこう。
 ベースとなるキャラクターが7人いるとして、これに「バトルシステムのあり・なし」、「技の構成」、「カラーエディット」、「マスクの設定」、それから「プロフィールやストーリーの設定」を設定することでキャラクターが組み立てられることとなる。

 「バトルシステムのあり・なし」は多少格闘ゲームになじみがあるとわかりやすいが「ブロッキングの有効化」や「避けの有効化」である。
 ・・・えーと、「タイミングよくガードと反対に入力することで相手の攻撃を防ぎつつ有利に反撃できる」や「部分的に無敵になって間合いを詰めたまま相手の攻撃を無効化する」といった特殊な操作を行うか否かの設定だ。
 特にポイントの制限などはなく全部オンにしてもいいし全部オフにしてもいいが、「ジャンプキャンセル」や「小ジャンプ」をスピードキャラだけありにしてエディットキャラ全体でのバランスを取る、といった想定のもとの運用をお勧めしたい。
 オリジナルの重量級キャラ「バッテリー工藤」は回転投げを持つ投げキャラながら、小ジャンプ攻撃による崩しやジャンプキャンセルによる空中戦も苦手としない高機動パワーキャラと言うちょっとよくわからない仕様になっているくらいだ。

 なお、具体的に挙げると「攻撃すかし(避け)」、「攻撃さばき(ブロッキング、ないし弾き返し)」、「前転移動」、「低空跳躍(小ジャンプ)」、「急降下(ジャンプキャンセル)」、の5つ。また、ここでステータスを攻撃寄りと防御寄りから選択することもできる。
 ・・・ダッシュ(前ステップ)は?という疑問を抱くところだが、これは全キャラ固有のダッシュ(前ステップ)・バックステップモーションがあり必ず有効化されている。
 また空中受け身や空中ガードなども標準搭載で、AIは遠慮せず積極的に活用してくることとなる。
 このバトルシステムの編集に関しては家庭版「カプコン VS SNK 2」のEX-グルーヴが近いシステムではあるのだが、比較してしまうと物足りないのは否めないか。

 「技の構成」は本作の真骨頂、1〜3ボタンの立ち・しゃがみ・空中と各レバー入れの通常攻撃と、3つの必殺技と1つの超必殺技を用意されたラインナップから選択することができる。
 ・・・明言しておくが、ダメージ・モーション速度・当たり判定・ヒット特性などなどは調整不可である
 そのぶん一定のゲームバランスが守られていると好意的に見るか、それを踏まえてダメージバランスの不満を解決できないと批判的に見るかは少々難しい。

 通常攻撃については、やはり弱・中・強を意識したオーソドックスなものがある一方、しゃがみガード不能の「ソバット」や移動距離の長い「滑り蹴り」などの変わり種もある。
 どうやら技ごとに弱扱い・強扱い・連携不可の概念があるようで、3ボタンをジャブ・ニーキック・スピンローなんて設定してヒットごとに入力してゆくとビシビシ決まってくれるのはわかりやすい。
 あるいはパンチ・キック・飛び込み攻撃と解釈して使うボタンを絞ってみるのもありか。
 はたまた、もっとビジュアルに沿ってカジュアルに選択する手もある。
 例えばテリー・ボガード 「ライダー」の通常攻撃はストレートやハイキックなど鮮やかな技がある一方でケンカ蹴りやナックルハンマーといった力任せの粗野な技があり、ここから「オフ中のストリートファイター」と「バイクチームの頭」に分岐してキャラクター像を掘り下げてゆく、といった楽しみ方ができる。
 単純に強い技だけを選択するというよりは、こちらの方が想定された遊び方に近いのかもしれない。

 一方の必殺技・超必殺技については、重ねて残念だがコマンドの編集は不可である。
 サマソを昇竜コマンドで出したいとか、いっそもう全技連打で出ればいいだろ!とかは無理な相談だ。
 また3ボタンにそれぞれ1つずつ(超必でもう1ボタン)の技を割り振るという形で、ジャンピングアッパーを威力の高い強と無敵の長い弱で打ち分けるようなことはできない。
 というか、弱昇竜的な技がそもそもない例もある。
 具体的に言うと1キャラ当たり24の必殺技が用意されているのだが、一部はなまじ飛び道具と空中飛び道具が別扱い、急降下蹴りの角度が違う、といった差分を確保したため体感としてはこの半分から1/3くらいに種類に感じるといった調子で、かつそれぞれが強版程度に見栄えのする・・・硬直の長い設計となっているようなのだ。
 数としては、ともすれば物足りないくらいかもしれない。
 カジュアルに寄るでも本格派に寄るでもなく、ここの設計はどっちつかずを感じるところだ。

 「カラーエディット」はキャラクターを構成する色を調整可能な機能で、ここで調整した色はストーリー中の立ち絵などにも反映されるまさにキャラクターの顔となる。
 のだが、プリセットが初期の2カラーしかなく、RGBの数値を調整して狙いの色を出すという形なので少々ハードルが高い。
 配色で個性を出すことは十分可能なはずだが、それもいくつかパターンを用意して導線にするなどできなかったのか、とここも少々物足りないか。

 なお、配色だけでは個性が物足りないと思う人には「マスク」を付けるという手もある。
 カゼやコロナ用のそれではなく、プロレスとか道化師とか「じょしらく」6人目とかのあれだ。
 本作のスプライト(ゲーム中のキャラクターを構成する絵)には一枚一枚キャラクターの顔の位置が設定されており、バイクヘルメットやスイカ頭といった「マスク」をそこに重ねて表示し、キャラクターの個性を演出できるのだ。
 この「マスク」に関してはプリセットとして用意されたものに加え、自らドットを打って描き加えることもできる。
 ・・・設定できるのは「通常時」と「ダメージ時」の2枚のみ、要するに立ちモーションに眼鏡を掛けたら位置が荒ぶりまくりとか回転蹴りを繰り出しながら顔は常にカメラ目線とかといったシュール極まりない光景が約束されているということである。
 「反省を促すダンス」系と言うか、雑コラ臭あふれるこのシステムをあえて取り入れたところに何とも言えない開発の葛藤を感じ取るものだ・・・。

 さておいて、「プロフィールやストーリーの設定」というものもある。
 このなかで「対戦開始時」、「超必殺技の時間停止演出中」、「対戦勝利時」、にセリフを書き入れた吹き出しを表示させるシステムがあるので、ここでもひとつ個性を発揮してやるとよい。
 ヨガインフェルノしながら「城之内ファイヤー!」でもパワーゲイザーしながら「ボンファイアリット!」でも、まあなかなか遊び甲斐はあろう。
 また、ストーリーでは背景と立ち絵と文章を組み合わせてそこそこ読み応えのある物を構成可能であり、極端には「対戦が一切発生しないデモ専用のキャラクター」なんてものも用意できる。
 キャラクターの容姿や背景素材の方で現代から近未来という世界観は揺るがない感もあるが、モブとしてお前が戦えと言いたくなるような死神や天使の姿もあるのでこれも想像力次第だろうか。
 ここにも「選択肢がない」、「戦闘に特殊条件を設定できない」等の不足を指摘することができるが、そこはそれ、ここの評価は結局プレイヤー自身が定めるものといったところだ。

 ・・・あ、ちなみにモブとして「デ・ジ・キャラット」とコラボしている。


・キャラクター

 では、エディットの素体となる7体のキャラクターについて見てみよう。

 ・空手家
 胴着姿でグローブを付けた、ひじょーにスタンダードな空手家。
 通常技もジャブにストレート、急降下蹴りからスライディングまでと良く言えば何でもそろっており、悪く言えば何をやっても型にはまった感じになる。
 必殺技もオーソドックスな波動昇竜にコマ投げといったところで、ひねるとしたらパンチ技一本に絞った正拳バカ一代と言ったあたりになるか?

 ・ライダー
 前をはだけたレザージャケットにロン毛というラフなケンカ師。
 上述の通りきれいなスタイルの技とラフなモーションの技とを選択できるので、これで主な方向性を決められる感がある。
 必殺技に関しては地を這う飛び道具でも速度違いで3パターンあるなど、差分が充実している分ややバリエーションが物足りない感も。
 テリーかと思いきやソニックやサマソがあってガイルな部分があるのも特徴だが・・・波動コマンドとタメコマンド混合って使いづらくね?

 ・カンフー
 手足の長いチャイナドレスの拳法家。
 通常技はリーチや出の速さに優れていて使いやすいものが揃っているほか、踏み込み掌底やしゃがみ状態からの飛び込み蹴りなどパワフルな技も用意されている。
 必殺技に関してもバリエーションが多いほか、飛び道具と大攻撃に炎エフェクトと雷エフェクトのバリエーションが用意されているのでこのあたりから設定を作ると広げやすいものだろう。

 ・女子高生A
 大きなリボンとおちゃらけた雰囲気が特徴の女子高生。
 必殺技に目をやると面食らうが、「どこからともなくテレビが落ちてくる」とか「頭突きを食らわせて自分も痛がる」とか「飛び道具が飛ばない」とかといったおちゃらけ要素のあるキャラクター。
 反面、通常技はあまりきれいな技ではなく、素人がとにかくがむしゃらに暴れているといった趣のものが多いのでおちゃらけ要素なしの雑草根性キャラなんて見せ方を目指すのも面白そうだ。

 ・女子高生B
 女子高生Aとは逆にキレのある技を多く身に着けたテクニカルファイター。
 髪形くらいしか違わんしまとめられなかったものだろうか
 必殺技の中には相手を抱えて膝蹴りを繰り返したりマウントしてボコボコに殴り倒したりとダーティな技もあり、礼儀正しいお嬢様から冷血無比な戦闘マシーンまで広い役を担えるように思う。
 また間合いを詰めるスライディング、相手をけん制する対地飛び道具、出の速い乱舞技、と全体的に技性能が高い・・・ように思うがどうかなぁ。

 ・番長
 横幅がほかのキャラクターの数倍はある重量級ファイター。
 大振りだがリーチと威力に優れた通常攻撃と、ガードを固める相手をブン投げるコマ投げとが特徴という説明不要のキャラクター。
 ・・・だが、飛び道具として口から火を噴く技がある。
 女子高生Aとともにヒップアタックを習得させるなど、ネタ要員として使いやすいのは間違いない。

 ・ロボット
 様々な兵器で武装したロボット。
 出るゲーム間違えてんだろと言いたくなるようなリーチと当たり判定の強さ、飛び道具の数々はどう使うべきか悩ましい存在である。
 いちおう通常移動が遅いという欠点があるものの、ちょっと技の選択を間違うと飛び回ったり撃ちまくったりで軽く手が付けられない感じになる。
 オリジナルゲームではラスボスとして登場するので、まあそういった扱いが妥当なのだろう。


・まとめ

 考えるだに莫大な労力を必要とする「2D格闘ゲームツクール」を、考えるだけでなく実際に形にしてしまったという大いに意義のある一本。
 ただし、キャラクターを動かすモードの不足やコマンド編集不可など設計に不便なところが少なくなく、商品としてどのようなユーザーを見据えていたのか、は少々疑問が残る。
 格闘ゲームビギナーには発展的なシステムの数々や複雑なコマンド(主観的に)といったものがやはり参入を阻むだろうし、エキスパートには必殺技に強弱がないとかダメージバランスが気になっても修正できないとかといった不足に不満を残すだろう。
 あるいは格闘ゲームに対しこだわりも苦手意識もなく、むしろストーリー語りやエディットと言う遊び方に関心がある・・・という人には合うはずだが、それだって一人で自分が作った格闘ゲームを黙々とやるか?と問われると相当キツい話だろう。
 本作は初めからヒットを狙わない実験作だったのではないか、などという愚考が浮かぶものだ。

 現代ならオンラインプレイにせよファイルアップロードにせよ、本作が実現しようとした面白みをよりプレイヤーが望む形で実現できる下地が整っていると思うが、対して本作が埋もれたままというのは何とも惜しく思う。
 決して商業的に成功したとは言えず、ガラクタのごとく埋もれてしまったものだとしても・・・。
 技術や時代が追い付いてきたときに「早すぎた作品」が再評価されてほしいと、今回本作の名を挙げた次第としよう。
 ・・・まあ、「早すぎた『傑作』」とは呼べない理由もたっぷりあったわけで、これも他山の石だと思うものだが。





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