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GRANDIAグランディア


プラットフォームセガサターン
プレイステーション
PC
開発ゲームアーツ
発売ESP
発売年月日1997年 12月(SS)
1999年 6月(PS)
2019年 10月(PC)
ジャンルRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック(PS版)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
柔軟性あり 冒険アニメ的 ドットとアニメ 壮大 柔軟性あり SS版の外伝作品あり





・ゲーム概要

 1997年末にセガサターンで販売されたRPG。
 一人前の冒険家を目指す少年ジャスティンが幼馴染の少女スーや先輩冒険家フィーネといった仲間と共に秘密を秘めた石の真実を追い求める・・・という王道的な冒険活劇を題材とした内容。
 顔グラフィックやムービーシーンなどのイメージグラフィックでは「アニメ調」を採用し、広告ではこれを「冒険」というまっすぐなテーマと共に強調して少年の心をくすぐる作風をアピールしていた。
 同年初めに「FF7」が美麗な3Dグラフィックとクールな主人公の複雑なストーリーで大ヒットを挙げたのとは好対照の作品と言えるが、結果としては本作もセガサターン屈指のヒットを挙げ名作の一つに数えられることとなった。

 果たして本作の何が人々の心を強く惹き付けたのか。
 ライバルとなった同年作品の影響も無視できないが、本項ではシンプルにストーリーとシステムの2点について見て見ることとしたい。


・ストーリー

 人々がはるかな海の向こうに新天地を夢見、多くの冒険に繰り出した大航海時代も今は昔。
 航海の末に「新大陸」を見出した冒険者たちだったが、さらにその先にははるか天までそびえる壁が広がる「世界の果て」が広がっていたという事実を前にして、冒険の時代は静かに幕を下ろすこととなった。

 一方で、各地に遺跡を残す古代文明についてはこんな神話が伝わっている。
 はるかなる神話の時代、精霊は人々を祝福し、その証として精霊石を光翼人に授けた。
 精霊石の光は世界中を照らし、人々は豊かに暮らしたという。
 だが、人々の繁栄が頂点を迎えたとき、平和な時代は突如として、その幕を閉じることとなった。精霊石は7つにくだけ、精霊と光翼人は去っていった……。

 (説明書より一部を抜粋)

 さて、かつての冒険の時代の始まりとなった「旧大陸」メッシナの港町パームに、一人の少年がいる。
 名前は「ジャスティン」。勇敢な冒険家を父に、名高い海賊を母に持つ彼は、いつかは自分も冒険家になることを夢見て育った。
 他愛のない事を冒険と見立てて町の子供たちと競い合う彼の姿を見れば、その夢は大人たちにしてみればほんの夢物語に思える物だったろうが――。
 強く握られたジャスティンの手の中には亡き父の遺品が、かの神話に登場する「精霊石」のかけらが輝いていた。


・キャラクター

 本作のキャラクターデザインは、オリジナリティがありつつも親しみやすく完成度が高い。
 具体的に見ると、伸ばし放題のボサボサ頭でわんぱくな印象を与えるジャスティンや、前髪を揃えて毛先を結んだロングヘアーで活動的かつオシャレな印象を与えるフィーネなど「お約束」な特徴を盛り込みつつも、服装は不思議な文様をちりばめた異世界的なデザインとし、かつゴーグルやポーチなどの小物も加えて一定のリアリティも出している、といったものだ。
 ゲーム雑誌への広告掲載が多かった本作では、このデザインの出来栄えと「冒険」のキーワードから多くのプレイヤーが本作に注目し、期待で胸を膨らませたことだろう。

 ・ジャスティン (CV:瀧本 富士子)
 旧大陸のパームの街で、母親のリリィと暮らしている少年。古代文明に憧れを持ち、いつも冒険の旅に出ることを考えている。冒険者だった亡き父の形見の「精霊石」を大事にしている。熱血少年で行動力があり、元気で単純で、お人好し。物事を深く考えずに、いきなり行動に移してしまうのが欠点。

 14歳。武器は刀剣、斧、メイス、を扱うことができ、固有の必殺技も袈裟斬りから剣先を返す「Vスラッシュ」や高く跳び上がって縦回転斬りを放つ「天空剣」など攻撃偏重の戦士タイプ。
 ただし主人公として魔法を習得する機会に恵まれており、魔法に習熟することで使用可能になる必殺技もあるため魔法を使った活躍も重要だ。

 ・スー (CV:西原 久美子)
 ジャスティンの幼なじみ。両親はすでに亡くなっていて、伯父夫婦に育てられている。おしゃまで元気な女の子だが、いつも大人ぶっていて、口うるさいのが玉にキズ。彼女本人はジャスティンの保護者のつもりだとか。

 8歳。武器はメイス、射撃、を扱うことができ、序盤において貴重な遠距離攻撃持ち。
 必殺技では仲間全員を回復する「応援「ガンバ!」」などの補助系と、敵全体を攻撃する「撃ちまくり」などの殲滅系を併せ持ち、魔法も多彩に習得できるオールラウンドタイプである。

 ・プーイ (CV:橘 ひかり)
 ジャスティンの父親が、生前に旅先で見つけてきた謎の動物。スーによくなつき、いつも彼女の頭に乗っかっている。羽は生えているものの、人の背丈ぐらいまでしか飛べない。人間の言うことを理解するが、それほど知能は高くない。「ぷうぷう」と鳴くのが特徴。

 ?歳。丸っこい翼を持ち、スーの頭に乗っかっているときは髪飾りのように見える。
 スーの必殺技では一緒に応援したりブン投げられたりして活躍する。

 ・フィーナ (CV:日高 のり子)
 新大陸のニューパームの街に住んでいる冒険者。新大陸の冒険者協会に所属し、協会で一番の腕を持つ。得意な武器はナイフとムチ。明るく活発な美少女で、周囲の人望も厚い。

 15歳。とある事情から一人で自立しながら冒険活動をこなしており、ジャスティンにとっては先輩冒険者に当たる。
 必殺技はナイフを投げて攻撃する「ナイフ投げ」やマヒ効果付きの「しびれムチ」など攻撃に偏っているが、素早さに長けているため魔法を使った時の回転率が良く、適性がある。

 ・ガドイン (CV:納谷 六朗)
 ジャスティンが冒険の途中で出会う、凄腕の戦士。寡黙な彼は、自らについて多くの事を語らないが、その剣技は長年の研さんによってしか得られぬ、一撃必殺の威力を持つ。

 38歳。他の登場人物と見比べて異色の年齢であり、その経験を物語るように加入時点のレベルは適正レベルを大幅に上回っているというベテラン。
 必殺技も魔法もあまり習得していないが、全体攻撃の「竜陣剣」の威力はまさに一撃必殺だ。

 ・ミューレン大佐 (CV:小杉 十郎太)
 私設軍隊「ガーライル軍」の軍人。一般兵士たちの間に人望がある有能な指揮官で、軍の秘密計画の実行部隊を率いる。軍の最高司令官、バール将軍を父に持つ。

 23歳。ジャスティンの持つ「精霊石」と同じものを収集する任務に就いており、ジャスティンの冒険の先々で衝突するライバルとなる。

 ・リーン (CV:橘 ひかり)
 ミューレン大佐の副官を務める少女。軍人向きではない優しい性格と、その容姿端麗さから、一般の兵士からも慕われている。軍が極秘にすすめる計画にも加担し、軍内部ではかなり特殊な存在である。

 15歳。ミューレン大佐の副官として現場に立って様々な作戦を率いており、ジャスティンたちとの接触も多いもののなお様々な謎を秘める少女。

 ・ナナ (CV:冬馬 由美)、サキ (CV:萩森 q子)、ミオ (CV:久川 綾)
 ガーライル軍の軍人。階級はいずれも中尉。

 高飛車でヨーヨーを武器とするナナ、乱暴者でハリセンを武器とするサキ、化学オタクだが天然ボケのミオ、の、ミューレン大佐にあこがれを抱く三人娘。
 リーンを恋と功績のライバルと目し、ジャスティンを生意気な邪魔者として攻撃するが、基本的にやられ役である。

 ・リエーテ (CV:井上 喜久子)
 ジャスティンがサルト遺跡で出会う美少女。古代文明の力によって生み出された幻なのか、現実に存在する人間なのかは一切謎につつまれている。

 精霊石の力でサルト遺跡が起動したことでホログラムとして現れ、「アレント」という土地について語る少女。
 彼女との出会いがジャスティンの目標となり、長い冒険のはじまりとなる。


・食事イベント

 また、共に冒険するパーティーメンバーをより掘り下げるイベントとして「食事」イベントがある。
 主に新たな町の宿屋などの冒険の節目に見ることができ、パーティー全員で同じ料理をつつきながら今後の作戦会議やここまでの苦労をねぎらい合うなどのコミュニケーションをとるというものだ。

 具体的には、テーブルについたパーティーメンバーから発言するキャラクターを選択して話題を展開し、それに反応したまた別のキャラクターを選択して会話を行ってゆくというもの。
 一般的にRPGのパーティーメンバーというのはイベントで自動的に会話することは良くあれど、能動的に話しかける機会というのはなかなかない。
 とすれば、この操作は一見些細なことながら主人公を含むパーティーメンバーを一人の登場人物として意識する特殊な視点となると言える。

 また食事の内容に目を向けても、様々な種族の入り混じるジャスティンのパーティーでは郷土食に対する感想も様々であり、キャラクターの味覚面からは親近感を得ることができ、料理の内容からは異なる風土を旅しているという実感を得ることができる。
 食事という行為自体がプレイヤーにも身近で、所を変えても繰り返されることだからこそ、細かな変化を通してパーティーの雰囲気や仲間と共に冒険している実感などを伝える大事な演出になっていると言えるだろう。
 実のところこの「食事」は後のシリーズ作品にも受け継がれており、本シリーズを語るうえでは外せないポイントなのである。


・戦闘システム

 本作はシンボルエンカウント制であり、フィールドやダンジョンでエネミーのアイコンと接触すると「エンカウント」して戦闘に突入する。
 戦闘においては箱庭状の空間内にパーティーメンバーとエネミーそれぞれのアイコンが現れ、「位置」や「距離」の概念がある攻撃が交わされることとなる。
 「剣」による攻撃ならば対象まで接近してから攻撃し、「弓」による攻撃ならば遠くからの攻撃が可能、鈍足なエネミーに対しては距離を取ることで攻撃そのものを不発に終わらせることができる・・・などの要素があるものだ。
 他にも「魔法」と「必殺技」の概念があり、まとまった敵をいっぺんに攻撃するアクションもある。
 なお魔法はレベルごとのMPを管理しているというオールドライクな回数制で、「マナエッグ」というアイテムを消費することで任意の属性の習得Lvを強化してゆく形式となる。

 ・・・というところをベースにしつつ、本作ならではのシステムとして「IPゲージ」というものがある。
 これは戦闘に参加しているキャラクターの行動順を視覚的に表現したもので、各キャラクターのアイコンが同一のゲージ上を進み、端に到達したものから行動を選択・実行するというもの。
 アイコンの速度は「素早さ」によって決まるほか、ゲージは行動の選択を待つ「待機」ゾーンと行動の実行を待つ「行動」ゾーンに区切られており、行動ゾーンでは選択した行動によってゲージの進み方が変動することとなる。

 そして、キャラクターには総合威力が高く隙も小さい「コンボ」と、威力に劣る代わりに相手のIPゲージを後退させる「クリティカル」という2種類の攻撃方法が用意されている。
 特に「クリティカル」は使いづらいが重要なアクションで、上手い具合に連携すれば相手の足を止められるほか、行動ゾーンにいる相手に当てると行動そのものを「キャンセル」させ未然に防ぐことができるのである。
 また、IPゲージの進み具合を調整する「パス」のような役割として移動や防御といったコマンドもある。
 言うは易しだが、このあたりの戦術眼があれば多少の戦力差はひっくり返してボスを攻略することが可能というわけだ。

 不必要な戦闘を回避できるシンボルエンカウント制と、それによって多少レベリングが遅れても突破可能とするIPゲージシステム、この2つは合理的に相性が良く、本作の攻略スタイルにおいていくつかの選択を可能としている。
 例えば、他のRPGと同様に愚直にレベリングを行って突破するスタイル。
 または、エネミーシンボルを適当にあしらってボス戦をパズルゲームのように解いて行くスタイル。
 そして両者を折半し、効率の良い狩場を見つけた時に集中してレベリングし、そのほかではボスに直行するスタイルなども可能だ。
 時間に余裕のある人からプレイングに自信のある人まで各々が快適と思える攻略方法を選んで取り組めるこのバランスは、アニメ調のストーリーと共に万人向けの作品とするに相応しい設計だと評せるだろう。


・まとめ

 かくして、本作を一言で表現すれば「王道的」、キーワードを挙げるとすれば「冒険」、それと「成長」、というところだ。
 神秘の石に導かれて少年が世界中を旅する物語も、シンボルエンカウント制のダンジョンも、魔法回数制のバトルも、別段目新しさのあるものでは無い。
 が、アニメ調のデザインや、パーティーを掘り下げる食事イベント、プレイングの反映が大きいIPゲージとクリティカルのシステム、と、そこに付けくわえられた一工夫は見事に噛み合っており、全体としては古臭さどころか「王道」の壁を超える高い完成度を感じさせる。
 奇抜で馴染みのないシステムも、考察を要する複雑なストーリーもない、誰であっても素直にゲームに入り込めるまっすぐで純粋な作風。
 本作「グランディア」は、「これこそがRPGだ」と声を大にして言える数少ない傑作なのである。


・補足情報

 なお、2019年10月16日よりPCゲームのダウンロード販売サイト「Steam」で本作のHDリマスター版が発売されている
 発売から22年、時を越えて愛される傑作の貫禄と言うところだろうか。
 ・・・と言いたいものの、2020/02/25時点で日本語字幕未対応の「おま国」案件なので注意されたい。





・関連作品

・グランディア デジタルミュージアム本作の外伝作品。
サウンドトラックや設定資料集、モンスター図鑑といったデータベース・・・を、集めることのできるダンジョンに挑むRPG作品。
制作に関してはプロデューサーの強い意向があったようだが・・・。
・グランディア パラレルトリッパーズ本作の続編?のGBCソフト。
第一作の世界観を舞台にしつつ、本編では出番のなかったNPCたちをパーティーメンバーとして活躍させることができるとか。
グランディアII続編。
「マナエッグ」と「スキルブック」を新規の成長システムとしてカスタマイズ性を強化し、バトルの戦略性を高めた作品。
世界観やストーリーは本作とは別の物になっている。
グランディア エクストリーム続編。
「IPゲージ」を円盤状に表す、コンボヒット数に応じてダメージボーナスを適用する、などのさらなるバトルシステムの洗練に加え、「スキルブック」や「マナエッグ」にレアリティを取り入れたことでオンラインゲームのようなアイテム収集の面白みも実現した作品。
ストーリーは・・・まあ、うん。
・グランディアIII続編。
「空」を題材とした豊かな世界観や「空中コンボ」の爽快感をウリとしたが、あらゆる面で期待未満と揶揄された問題作。
・グランディア オンライン2009年08月26日〜2012年09月28日の間運営されていたPC向け基本無料MMORPG。
なんでも「光翼人」など第一作の世界観を一部引用しているがストーリーは新規の物で、システム面でも「マウスでマップ上のモブをターゲットして狩るMMORPG」にジャストコマンド・IPゲージの利点を落とし込めておらず、早期から音楽以外でのグランディアらしさの無さが指摘された、らしい。
その後は簡易的なブラウザゲーとのデータ連携構想や「ソロオンラインRPG化宣言」などをブチ上げて迷走したのち、コンテンツの追加・サービスの向上が困難であるとの見識を示してサービスを終了したようだ。


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