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BATTLE MASTERバトルマスター


プラットフォームプレイステーション
開発たき工房
発売たき工房
発売年月日1998年 1月
ジャンル新感覚バトルブリーディングゲーム
プレイ人数1〜2人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
苦痛 難解 粗い 一部は迫力あり 苦行 ホロカード1枚入り!





・ゲーム概要

 1998年の初めにリリースされた「新感覚バトルブリーディングゲーム」。
 3Dで描かれたキャラクターが対面して格闘技によって対戦するというスタイルは格闘ゲームのそれなのだが、実際のシステムを見て行くとそのゲーム内容は分類不能と表現したくなるようなあまりに個性的な物であった。
 「使いこむことで技が成長する」、「成長した技をロボットにアップロードしてオリジナルの機体をデザインする」、とゲームの柱だけを見れば魅力的なのだが、土台や肉付けを含めた全体像を見るとそれがゲームを支えているのではなく重荷として乗っかっているという、頭を抱えざるを得ない一本である。


・対戦ルール

 本作の「対戦」は、対面した2体の3Dキャラクターを側方から見て、そのうち自分に割り当てられたキャラクターを操作、リアルタイムでパンチやキックと言った攻撃を繰り出して相手にダメージを与え、先に相手の体力を0にした方の勝ち・・・という物だ。
 また攻撃には上段・下段の概念がありそれぞれに対応した回避動作が用意されているほか、リーチや動作の大きさなどで使い分けが必要となっている。

 ・・・と、概要だけならばほぼ格闘ゲームと表現できるのだが。
 本作には「ガード」の概念が無く、相手の攻撃をいなすには後方へのステップか上・下段に対応した「かわし技」をタイミング良く合わせることとなる設計。
 しかも「かわし技」は硬直が妙に長いため回避に成功しても大した有利フレームを得られず、一度タイミングを外して小技を当てられると技によってはそのまま永パに入るというバランスだ。

 この時点で「格闘ゲーム」と見るには拒絶反応が起きる素材である

 一応永パ対策と思われるシステムもある。「同じ技を連続で繰り出していると徐々にダメージが減少して行く」という物だ。
 これはまた多数の技を使い分ける重要度も用意し、「技の育成」を促す狙いもあると思うのだが・・・。
 まあ言うまでも無く永パに入った後の展開は完全に相手側任せということになり、ペチペチ殴られている側は圧倒的に不利、別の小技を挟めば再度永パスタートと、見事に何の解決にもなっていない

 基礎がこの状態ではゲームとして何が面白いのかと言うところだが、まあ辛抱して次の項で技の成長と転送についても見て見よう。


・技の成長と転送

 本作に登場する技は×、の各ボタンとL1・2ボタンの組み合わせによる12パターンのコマンドに割り振られる。
 うち□ボタンはパンチ系の小技、×ボタンはキック系の技、○ボタンは踏み込み距離のある大技、が充てられる傾向にある。△ボタンは先述したかわし技と「位置の入れ替え」で固定だ。
 そして、本作に登場するキャラクターはそれぞれの技に対して「経験値」の概念を持っており、対戦中にそれぞれの技をヒットさせた(かわし技はそれで攻撃を回避した)経験によって上位の性能に「成長」するわけである。
 ここで注意したいのは「対戦中に技が成長する」わけではなく、「対戦を繰り返すことで技が成長してゆく」点。
 つまり、この「成長」は対戦のシステムでは無くRPG的な育成のシステムであるわけだ。

 成長した技は威力や動作速度が向上して純粋にパワーアップするほか、中には相手を大きく吹き飛ばし壁際に押しやる(=バックステップを封じる)効果が付く物もある。
 さらに、こうして成長した技はキャラクターが所持するロボットに「転送」してカスタマイズできるようになり、本作は最終的に「全キャラクターから好きな技をピックアップしたロボット同士による対戦」を楽しむゲームとなるわけだ。

 ・・・その概要自体はなかなか魅力的だと思うのだが。
 実際のところを見て見ると、本作に登場する人間キャラクターは「5人」しかいない。(※対戦条件の特殊な一名を除く
 それはつまり技の選択にあまり余地が無い事、および、技を成長させるための対戦では自分以外の4人を延々ローテーションするしかない事を意味している。
 攻撃技の成長に必要な経験値は減らした体力に比例し、技一つを最大(3段階)まで成長させるためにはおおよそゲージ4・5本分も減らす必要があるだろうか。
 そして、ロボットで対戦を行えるようにするには各コマンドに何かしらの技を設定する必要があり、必要な対戦量はさらに何倍にも増えて行くこととなる。
 ロボット対戦と言う本分を楽しむ前にはオンラインゲームと見まごうようなレベリング作業が必要となるわけだ。

 なお、これらの技の経験値は対戦に「勝利」しなければ反映されない。
 CPU対戦では成長前の技でも繰り返し勝てているのだから楽勝には違いないが万が一という事故もありそこそこ神経を消耗する事だろう。
 そこで、人間キャラクター同士での2P対戦に注目したい。
 本作は対人戦でも経験値が入る設計となっており、多少つまらなくてもコントローラーを2つ用意すればサンドバッグを殴り続ける作業で経験値を稼げるわけだ
 ・・・と、思いきや。
 本作はその程度では済まない。説明書によれば「このゲームは、技の研究をするために、コントローラ1つでも2P対戦を選べるようになっています。」とのこと。
 本当に技の研究に使うならCPUが特定の行動を繰り返すプラティクスモードを求めたいところだが、まあ要は本作は暗に案山子殴りによるレベリングを推奨している節があるのだ。
 対戦に関わらない部分で緩和・救済するくらいなら最初から目標値を引き下げろと言わざるを得ない、オンラインゲームの悪例のような設計である。


・ロボット対戦

 ともあれ、レベリング作業と言う苦行を乗り越えた先にはようやくロボット同士での対戦が待っている。
 5人のキャラクターがそれぞれデザインの異なるロボットを持っており、性能差はないが好みの外見を選ぶ余地はある設計だ。
 ゲーム中でロボットで対戦できる相手は3体。ラスボスとその前哨戦である。
 いずれもCPU特有の超反応と高火力の技でガチガチに武装した強敵であるのだが、やはり強すぎるのと数が少ないのとで少々ボリュームは物足りない。
 ボリュームを求めるのであれば、ここで改めて対人戦の出番だ。
 他人がカスタムしたロボットはどのような技が設定されているか分からず、まるで新鮮な気持ちで対戦を楽しむ事が出来る
 ・・・の、だが

 本作ではここで、とうとう最もやってはいけないシステムを取り入れてしまっている。
 それは、敗者は育て上げたロボットを相手に没収される(強制オートセーブ付き)という物だ。
 「ヘビーメタルサンダー」が似た世界観を舞台にしたゲームではあったが、もちろんそれは設定上の事。プレイヤーの積み重ねを水泡に帰したり、貴重な対戦相手を自分から消滅させるようなことはしない。
 が、本作はいともたやすくそのえげつない設計を実際のシステムに取り入れているのである。
 なにこの賽の河原オフライン


・ストーリー

 人類の歴史的生への執着は、あらゆる病を根絶し、人類に不死の力をもたらしました。
 子孫を残せない未来無き混沌。歪んだ種の孤独と破壊。人類は新たな生命の基盤を創り出す事で希望に繋ごうとしていました。
 ヒトは神ではないが、科学によって生み出された神なら、新たな種を創り出す事が出来る。
 人類史上最高の科学者達が、史上最高のエネルギーである、反物質凝固体から、超科学の生命「ヴェネガット」を創り上げたのです。
 しかし反物質体であるヴェネガットの出した答えは、恐るべきものでした。
 主を崇める狂信集団を率いたヴェネガットによる反乱の火種は、瞬く間に地上を覆い、統一され平和の美酒におぼれていた脆弱な地球は、自らが創り出した悪魔の手で、終焉を迎えたのでした。

(OPより抜粋)

 もう頭痛が止まらないのだが、本作はこんな具合に世界観にも力を入れていたらしい。
 例えばCPU対戦は5つの町をステージとして移動し、それぞれの町の人間から情報を集める一幕を挟んでから対戦となる。
 ひょっとしたらもっと多くのキャラクターを用意した格闘RPG的な内容を目指していたのかもしれないが・・・。


・まとめ

 対戦部分は格闘ゲームに似ているが格ゲーの基礎がない、成長部分は同じ内容を延々繰り返すだけの作業、キャラクターもロボットの前座に過ぎないなど魅力に欠け、肝心のロボットによる対人戦はバックアップ必須の賽の河原オフライン・・・。
 このゲームの娯楽として楽しめる部分を探した時、小一時間考え込んでしまうほど「何も無い」ためこのゲームを表現するとしたら「分類不能」としたい。
 あれやこれやと要素を取り込み過ぎた結果整合性を失ってしまったゲームや、ゲームバランスや操作性が悪くて魅力を実現できていないゲームは数あれど、ここまで理解困難な物は10年に一人レベルの逸材かもしれない。
 その道のマニアには興味深いかもしれないが、本作の場合はくれぐれも覚悟して手に取られたい。





・関連作品

・ガンダム ザ バトルマスター「機動戦士ガンダム」シリーズをモチーフとした2D格闘ゲーム。
本作を検索しようとするとだいたいこっちが引っ掛かる。妥当である


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