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TOBALトバル NO.1ナンバーワン


プラットフォームプレイステーション
開発ドリームファクトリー
発売スクウェア
発売年月日1996年 8月
ジャンル3D格闘
プレイ人数1〜2人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
王道的 ほぼなし シンプル 激しめ 渋味がある キャラクターデザイン:
鳥山明





・ゲーム概要

 プレイステーション初期に発売された3D格闘ゲームで、以降「ブシドーブレード」や「エアガイツ」に続いてゆくこととなるスクウェア3D格ゲーの第一弾。
 格闘ゲームとしては「つかみ」から始まる攻防やヒット・ガードによって変化する攻撃モーションなどリアリティを追求した作りとなっており、鳥山明氏によってデザインされたキャラクターたちはまるで生きているかのような活躍を繰り広げてくれる。
 また格闘ゲームとしての対戦本編のみならず、同様のキャラクターを操作して迷宮に挑む「クエストモード」の存在も本作の大きな特徴と言えるだろうか。

 ・・・とはいえ、一つの商品として見た場合はむしろ同梱されたファンディスク「SQUARE'S PREVIEW」に収録されたFFVII体験版の方が高い注目を浴びてしまった一本である。
 この商法はスクウェアにおけるいくつかのPSゲームにも受け継がれることとなるのだが、おかげでゲーム本体の方はすっかり体験版(オマケ)のオマケとしてワゴン入りしてしまった感が無いでもない。


・基本システム

 本作の操作は方向キーの左右で前進・後退、上下で画面奥・手前へ移動という立体感の強いもので、攻撃は上・中・下段攻撃からなる3ボタン制。
 ガードやジャンプは対応したボタンを押しこむことによって行い、攻撃ボタンと組み合わせることでそれぞれ特殊攻撃へと派生する。

 そして、ガード+中段攻撃で行う「つかみ」からの攻防が本作のキモだろうか。
 「つかみ」とは相手の体を掴んで動きを制限する、いわゆるクリンチ状態に持ち込む技で、キャラクターはここから相手を投げたり、相手を引っ張って移動したり、牽制の打撃技を打ち込んだり、といったアクションを取ることが出来るものだ。
 本作には「リングアウト」の概念があるため、相手の移動を制限して動かすアクションが持つ意味は非常に大きい。
 一方で掴まれた側も移動にこらえたり打撃を返したりといった行動をとることが可能で、「つかみ」を絡めた攻防にはアドバンテージを奪い合う熱さが有ると言えるだろうか。

 また、本作はキャラクターのモーションについても特徴的なシステムが見て取れる。
 具体的には打撃攻撃のモーションがガードされたか否かで変化する、というもので、例えば動作の小さいパンチなどでは変化がないが、動作の大きなかかと落としなどは相手にガードされると体勢を崩すといった具合だ。
 技によってはこの変化によって大きな隙が生まれることとなるため、対戦においては慎重に技の組み立てを考えたいところである。

 「つかみ」やリングアウトによって3D方向への移動が持つ戦術性を強調し、キャラクターのモーションの変化によってガードや技の選択の重要性を強調した構図は、言うなれば格闘ゲームの基本と言える「3すくみ」の関係を実現したものだと言えるだろうか。
 高いリアリティと共に原点に立ち返るゲームバランスを実現した設計は、なんとも心憎い。


・キャラクター

 ・・・ただ、格闘ゲームとしては「リアルすぎる」ともとれるだろうか。
 本作は「惑星トバル」で開かれた格闘大会「トバルナンバーワン」を舞台に様々な異星人が闘うと言うSF色の強いストーリーを持ち、一応ロボットや獣人風のキャラクターも登場するものの、そこで繰り広げられる技はソバットやパワーボムといった極めて現実的なものばかりである。
 投げ技や下段技などはキャラクターで共通の技も多く、そもそも基本キャラクター8人のうち5人が地球人型であるなど、キャラクターごとの個性には若干の物足りなさが残る。
 言ってしまえば動作のリアリティはキャラクター達の設定に対して「地味さ」を感じさせる要素となってしまっており、見る楽しさや操作する楽しさについては期待を裏切られるところだろうか。
 これは続編に当たる「トバル2」で飛び道具やジャストフレーム技を取り入れていくらか改善を図った部分であるので、第一作らしい粗さなのかもかもしれない。

 では、この辺りで本作に登場するキャラクター達を軽く紹介してゆきたい。

 ・チュージ・ウー
 拳法をファイトスタイルとする地球人(アジア系、青年)。
 上下に繋がる連続技を持ち、また近距離・中距離に対応した高威力の牽制技を持つオールマイティキャラ。
 性格としては負けず嫌いの正義漢のようだ。

 ・エポン
 蹴り技を武器とするキッタイク星人(ほぼ地球人同様のヒューマノイド、女性)。
 小柄ではあるが移動しながら行う蹴り技のリーチが長く、中距離での牽制合戦に強いキャラ。
 性格としてはややドライで、その実力も有って男性からは距離を置かれているらしい。

 ・オライムス
 パンチを得意とするキエンタック星人(ニワトリのようなトサカを持つヒューマノイド)。
 素早いジャブからのコンビネーションは相手の技に割り込みやすく、近距離において強いキャラ。
 性格としては知的で穏やか、「気は優しくて力持ち」といった理想的な人物らしい。

 ・ホム
 力任せのトリッキーな技を持つトバル製?ロボット(おおむね人型)。
 高威力でリーチのある技を備えるものの、体勢が不安定でガードされると少々辛いキャラ。
 また、特殊コマンドによって自ら機能停止する特殊技を持つなど性格はおとぼけもののようだ。

 ・フェイ・プウスー
 拳法をファイトスタイルとする地球人(アジア系、老人)。
 小柄なキャラクターだが回避しつつ反撃する技を多く備え、相手との打ち合いに強いキャラ。
 過去に大会の優秀経験が有るほかホムの師匠でもあるが、性格は飄々とした好々爺。

 ・イール・ゴガ
 パワーファイターのワコイバヤイ星人(竜のような尻尾を持つ準ヒューマノイド)。
 操作キャラクター中唯一人型以外のパーツを持つキャラクターで、威力の高いパンチに加えて尻尾を使ったトリッキーな攻撃が厄介。
 性格は凶暴らしいが、大会への参加理由はあこがれの彼女にプロポーズしたいと言う純情な物。

 ・マリー・イボンスカヤ
 打撃・投げ共にパワフルな技を備えるプロレスラーの地球人(ロシア系フランス人、女性)。
 巨体に見合わずアグレッシブな動きを得意とし、多彩な突進技から投げの間合いへと持ち込めるキャラ。
 小さな子供を持つ肝っ玉母さんで、意外と涙もろい性格なのだとか。

 ・グリン・カッツ
 マーシャルアーツをファイトスタイルとする地球人(イギリス人、青年)。
 上下の連続技と高威力の牽制技を持つ万能キャラで、チュージよりもやや直線的な技が多い。
 文武両道で性格も真っ直ぐな好青年・・・のはずなのだが、勝利ポーズはやや性格の悪さが見え隠れする?

 ・ムーフー
 長い手足を駆使して戦うジャルング星人(準ヒューマノイド)。中ボス。
 他のキャラクターとは大きく異なるシルエットを持ち、リーチとトリッキーな動きで翻弄する中距離キャラ。
 故郷は文化的に未開の惑星らしく、言葉が通じないため性格や目的などは不明。

 ・怪人ノーク
 他のキャラクターの倍近い巨体を誇るイルドアーボ星人(準ヒューマノイド)。中ボス。
 その巨体をから力任せに腕を振りまわすような動きを好み、リーチ・パワー共に飛び抜けたキャラ。
 ウダン皇帝が直々にスカウトしてきた戦士らしいが、アタマの弱さが玉にキズなのだとか。

 ・ウダン皇帝
 トーナメントの最後に待ち構える、トバルナンバーワンの開催者にして惑星トバルの皇帝その人。ボスキャラ。
 オープニングムービーでその姿を見ることが出来るが、実際の強さは・・・?

 ・???
 クエストモードの最奥地に・・・。


・クエストモード

 さて、本作のもう一つの側面である「クエストモード」についても見てみよう。
 これはモンスターの潜むダンジョンを本編のキャラクターたちで攻略して行くと言うモードで、操作性はほぼそのまま、アイテムやトラップといった要素を取り入れたアドベンチャーゲームのような内容が繰り広げられるもの。
 モンスターとの戦闘は本編同様の対戦によって行われ、モード中では回復アイテムこそあれダンジョン内を通してプレイすることとなるため、リスクを抑えた持久的な立ち回りが重要となると言える。
 ・・・モンスターの動きは、専用の物が多く見切りづらいことだし。
 また戦闘外においては穴を飛び越える、転がる岩を避ける、といったアクション要素も有り、アイテムについては識別の概念が有る「薬」が登場しているなど、その内容は意外にも本格的なものだと言えるだろうか。

 なお余談として、「トバル2」ではさらに装備アイテムやモンスターの捕獲を取り入れるなどのパワーアップを見せており、「エアガイツ」においてもPS版の特典として(本編とほとんど無関係の)クエストモードが用意されるなど、当モードはシリーズの魅力として引き継がれてゆくこととなる。
 さらにはこのクエスト部分のみを発展させたかのような「クリムゾンティアーズ」なるゲームもリリースされており、「クエストモード」は本編以上にドリームファクトリーのその後に影響を与えたのかもしれない。


・付属ディスク

 また、ついでに本作の付属ディスクである「SQUARE'S PREVIEW」の内容について。
 収録されているのは「FAINAL FANTASY VII」体験版、「FAINAL FANTASY TACTICS」PV、「ブシドーブレード」PV、「サガ・フロンティア」PV、の4つ。
 言わずと知れた看板RPG「ファイナルファンタジー」シリーズのPS最新作の体験版が最大の魅力であるが、同時にシミュレーションゲームとなった外伝「FFT」、「Sa・Ga」シリーズのPS最新作「サガフロ」、のゲーム画面を少しだけ公開したPVも大きな話題性が有ったものと思われる。
 ・・・「ブシブレ」は、この中では浮きまくった存在だと思われるが。

 ちなみに「FFVII」体験版として収録されたのは、OPから爆破ミッションまでの流れ。
 体験版を起動して間もなく名曲をバックに映し出される魔光炉とタイトルロゴの対比には、次世代のFFを実感させる驚きと感動が有ったと言えるだろうか。
 また余談ついでにゲーム内容については製品版といくつかの差異が有り、メニュー画面が開けない、既にエアリスが加入している(ただしセリフは一切ない)、クラウドが凶斬りを覚えている、エアリスがリヴァイアサンを覚えている、ガードスコーピオンでなくスイーパーが登場する、ビッグスが倒れている、といった点が挙げられる。
 特にビッグスとジェシーの倒れている位置は体験版において大変わかりづらく、指摘を受けて製品版では現在の位置に修正されたという経緯があるようだ。
 当時まだ数の少ない3DRPGにおいて、方向性を模索していた事が垣間見えるエピソードだろうか。


・まとめ

 格闘ゲームとしてのシステム部分はリアリティとゲーム性を共に実現させた高い完成度を持つものの、キャラクター面の特徴に乏しく、全体としては魅力に欠ける出来に落ち着いている一本。
 ダンジョンモードの存在やSQUARE'S PREVIEWなど、ゲーム本編外に注目要素が多いこともその地味さに拍車をかけていると言えるだろうか。
 そうした地味さを払拭するべく調整された続編「トバル2」は本作と比べてグラフィックや操作の爽快感が向上しており本作より親しみやすく、またクエストモードを進めることで各種モンスターらが操作可能になるなど厚いボリュームを得た内容となっている。
 比べてしまうと、やはり本作にはそうした面で見劣りすると言えるのだが・・・。

 一方で、爽快感よりも動きの重たさ、リアリティこそを重要視するのであれば本作を選択する余地も有るだろうか。
 その他に本作のクエストモードは「2」とはだいぶ異なるものであり、その最奥地に眠る最後の隠しキャラは本作独自の要素である。
 「つかみ」から始まる攻防や格闘ゲーム調のダンジョンゲームに興味が有り、特にシンプルさやリアリティに惹かれる人であれば手に取ってみてもいい一本である。
 また、鳥山明氏のファンも要チェックだ。





・関連作品

・トバル2続編。「トバルNo.2」ではない。
ガード不能の飛び道具「奥義」や入力のタイミングによって技が変化する「ジャストフレームシステム」を取り入れ、格闘面の爽快感を上げた内容。
またクエストモードはより本格的な内容となり、捕獲したモンスターが本編で使用可能になると言う連携要素も持つ。
・ファイナルファンタジーVII付属ディスクに体験版を収録。
・ファイナルファンタジータクティクス付属ディスクにPVを収録。
ブシドーブレード付属ディスクにPVを収録。
・サガ・フロンティア付属ディスクにPVを収録。
BRAVE FENCER 武蔵伝本作同様、「FFVIII体験版」を同梱したことで埋もれがちになった一作。
ゲーム内容はややグラフィックの粗さこそあれ、高い完成度を感じさせる。
・エアガイツトバルシリーズの流れをくむ、ドリームファクトリー製の3Dアクション格闘ゲーム。
アーケード版ではFFVIIのキャラクターがゲスト出演したことで大きな話題を集めた。
クリムゾンティアーズドリームファクトリー製の3DアクションダンジョンRPG。
その内容はどこか「クエストモード」の流れを感じさせる?


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