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TIZティズ Tokyo Insect Zooトウキョウ インセクト ズー


プラットフォームプレイステーション
開発ゼネラル・エンタテイメント
発売ゼネラル・エンタテイメント
発売年月日1996年 3月
ジャンルプレイング・ムービー・ゲーム
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、4データまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
微妙 電波
不可思議
子供向けアニメ 豪華フルボイス 進行が不透明 原作:「リョウのかぶとむし旅行」?





・ゲーム概要

 同社出版の「リョウのかぶとむし旅行」なる絵本を原作として開発されたアドベンチャーゲーム。
 プレイヤーは東京の下町に暮らす少年「リョウ」となり、カブトムシに生まれ変わって仲間たちと冒険するという内容。
 この時点で少々理解に苦しむのだが、パッケージ裏に書かれた

 「ある日突然、カブトムシになってしまったらどうしますか?
 「(前略)「生まれ変わること」を体験する。全く新しいタイプのゲームソフト‘TIZ’

 などというコピーに悶絶せざるをえない一本。

 その他「ゲーム史上初の、アニメーション・ムービーと3Dポリゴンの完全融合。」、「煩わしい文字表示に頼らない、会話による全く新しいゲームシステム Active Talking System。」など大層なコピーが列挙されているのだが、その内容は果たして・・・?


・ストーリー

 はじまりは、生まれ変わること
 私を生まれ変わらせて
 全てはそこから始まる

 明日で12歳になるリョウくんは、幼なじみのシオリちゃんと一緒にお誕生日を楽しみにしながら今日も元気にバスケットボールで遊んでいました。
 けれど、リョウくんが勢いよく投げたボールは狙いを大きく外れ木に引っ掛かってしまいました。
 それを見たシオリちゃんがふとプレゼントのことを思い出してお家に戻ってしまったので、その間にリョウくんはボールを取ろうと木に登り始めます。
 なんとか木に登り、リョウくんが枝に引っかかったボールに手を伸ばそうとすると、なんとボールの向こう側から小さな女の子がひょっこりと現れたではありませんか。
 あっけにとられたリョウ君はタイミング悪く聞こえたお母さんの声に驚いてしまい、木からまっさかさまに落ちてしまったのでした。

 リョウくんが目を覚ますと、そこは見たことも無いような大きな草の生える森の中です。
 ふと、どこかから聞こえる話し声に気付いたリョウくんは草の間を分け入って声の方向へと歩いてゆきました。
 ようやく話し声の元にたどりついてみると、そこでは3本角の大きなカブトムシと大きな1本角のカブトムシが人の様な姿で口げんかをしていたのです。
 リョウくんを見て自分たちの弟だと思い込んだ二人は、そのままの勢いでさまざまなことをまくしたててきました。
 3本角のほうは「ブル」、1本角のほうは「ザッカ」。2人は自分のほうが兄であると言い張りながら、お父さんになるために「結婚ちゃん」を探していて道に迷ったと説明しました。
 仕方なしに2人についていくことにしたリョウくんはそこでメスのカブトムシである「オーガ」と出会い、
 母から伝え聞く所によると「何か」からの生まれ変わりである自分達は間もなく訪れる世界の滅びに向けて仲間を集める必要があるのだ
 という話を聞かされて仲間を探す旅に出ることになったのでした。


 ・・・後半のブッ飛びっぷりについてゆくのが大変だが、大まかな導入部はこんなものである。

 ゲームは球状の「何か」を蝶や芋虫の形にモーフィングさせることから始まり、それから入れ替わるようにして現れたバスケットボールをシュートする場面で本編に入ってゆく。
 モーフィングは自分の周囲を漂う球体を視界に入れてボタンを押すこと、現れたバスケットボールもボタン入力によってシュート、と、本作は些細なことでもプレイヤー自身に入力を行わせることで「体感する」というテーマを表現している。
 上記ではゲーム開始後すぐにボールを取りに行ってしまっているが、この際も自宅に帰る、シオリに会いに行く、といった寄り道が可能であるなどゲームとの高い一体感が魅力的であると言えるだろう。


・キャラクター

 ・リョウ (CV:中崎達也)
 明日で12歳になる男の子。シオリと遊んでいる最中に白い服の女の子に出会い、カブトムシに生まれ変わる。
 悪ガキなところがあり、ややスケベ。

 ・シオリ (CV:前田愛)
 リョウの幼なじみで、愛称は「しーちゃん」。リョウの誕生日を楽しみにさまざまな用意を行っていた。

 ・ブル (CV:石塚英彦(※ホンジャマカ))
 大柄なコーカサスオオカブトのオス。思った事を何度も口に出すクセがあり、「結婚ちゃん」の捜索にご執心の様子。
 スケベ。

 ・ザッカ (CV:太田光(※爆笑問題))
 細身で面長なヘラクレスオオカブトのオス。やや大人びた性格だがブルとは似た者同士。
 むっつり。

 ・オーガ (CV:千秋(※ポケビ))
 カブトムシのメス。リョウと同じように人間に近い姿で描かれているが、腕が4本ある。
 本人曰く「まだ『結婚ちゃん』はできない」らしい。


 ほか、爆笑問題の田中裕二氏、ベテラン声優の千葉繁氏、三木眞一郎氏、など声優はかなり豪華。
 とはいえそれぞれの出番が会話シーンの一度や二度と非常に短いのは(悪い意味で)贅沢と言える。

 なお補足しておくが、本作は一応全年齢対象である。


・システム

 ポリゴンで作られたゲーム世界の中を主観視点で移動し、さまざまな人物(虫物?)と出会って会話を行っていく、というのが主な流れとなる本作。
 そのうえで、彼らと会話を行う際に登場するのが「Active Talking System」だ。
 これは相手からの問いかけに対するリョウの気持ちを選択するシステムで、「L1」、「L2」、「R1」、「R2」、ボタンに対応した独白から一つを決定し、それを元に発言することで会話をつなげていくというもの。
 早い話が音声式の4択である。
 これらの独白は毎回内容が変わるうえ、このボタンは肯定的、このボタンは否定的・・・といった統一感もないため、会話の際は選択肢がある度に音声一つ一つを確認すると言う非常にめんどくさい作業を行なうこととなる。
 これも「体感」させることを目的に採用したシステムだと思うのだが、「煩わしさ」に関しては文字表示からむしろ悪化している気がしてならない。

 なおアニメと3Dの併用についてはアニメの会話シーンと3Dシーンの探索シーンとを交互に行うほか、3D空間の中で板ポリゴンに張り付けられたアニメキャラが登場するというもの。
 当時でもアニメムービーは頻繁に存在していたし、後者についても「ドラゴンボールZ Ultimate Battle 22(1995年7月)」あたりがこういった表現を採用していたので、その水準はともあれ「ゲーム史上初」などと言うのは大仰である。


・まとめ

 「攻略すること」や「挑戦すること」とは無縁であり、「操作すること」がそのままゲームの内容を形作っている本作。
 「操作できるアニメ」として見るのが最も無難であるが、工夫ある内容にはつくづくゲームの切り口は様々だと実感できる一本である。

 とはいえ、肝心の内容については虫を題材にしているだけあってパッケージや一部シーンなど生理的嫌悪をもよおす要素があるほか、会話シーンなどが支離滅裂で理解に苦しむ、どこで次のイベントが発生するのか分かりづらい、など難点が多く遊びづらい。
 それを踏まえたうえで攻略を急がずじっくりと楽しむつもりであれば、3D主観視点でのびのびと虫たちの世界にひたれる一本としてそこそこオススメである。





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