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ARCANA STRIKSアルカナ・ストライクス


プラットフォームセガサターン
開発REDエンターテイメント
発売タカラ
発売年月日1997年 12月
ジャンルタクティカルカード
プレイ人数1人
セーブデータ1つ77ブロック、5ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
RPG寄り 空想的 幻想的 神秘的 単純 14人の作家陣によるゲストカード有り!





・ゲーム概要

 広井王子率いる「REDエンターテイメント」が開発し、タカラから発売された「タクティカルカード」ゲーム。
 デッキからカードを引き、モンスターを召喚したり魔法を発動したりして戦う・・・というカードゲームの体裁を取りつつ、モンスターの成長や進化、捕獲といったニュアンスを取り入れたRPG的な一本だ。
 作中ではREDエンターテイメントと関連の深い(あるいは同社に所属する)作家陣がデザインした「レアカード」が登場しており、これがウリの一つとなっている。
 パッケージ裏によると、そのほか「戦略性」と「コレクション性」をウリとしているようなのだが、果たして・・・?

 なお、アスペクト出版の攻略本によると「カードゲームの面白さに触れるきっかけ」を目指して作られた一本らしい。
 言われなければ絶対に気付かないテーマだと思うのだが、その辺りを念頭に詳しい内容を見て行くとしよう。


・ストーリー

 旅立ちの予感

 少年はいつも空を見ていた。
 空高く飛ぶ鳥や、ゆっくり形を変えていく雲をいつまでも眺めていた。
 彼は、いつものように市場へ繰り出した。
 彼が市場から立ち去ろうとすると、1人の老婆が彼の前に現れた。

 彼は老婆の顔を見ようとしたが、深いフードと独特の雰囲気が邪魔をして、見ることができなかった。
 「おぬしは、きれいな目をしておるな…」
 「お前に…これをやろう…」
 老婆に手渡されたものは古ぼけたタロットカードだった。
 「知っておるか?このカードにはそれぞれ神がいてな…生きておるのじゃ」
 「さあ、カードの声に、耳を傾けるがよい。さすれば神はお主の願いを聞いて下さるじゃろうて…」
 「大事なのは信じる事、真っ直ぐに見つめる正しい心じゃよ…」

 そう言うと、夢か幻の様に老婆の姿が消えてしまった。
 彼の手にはタロットカードだけが残されていた。

 満月がきれいに輝くその夜、彼は老婆にもらったカードを一枚一枚眺めていた。
 カードにはいろいろな絵や人物が描かれており、美しく神秘的だった。

 少年は、昼間の老婆の言葉が気になっていた。
 『さあ、カードの声に、耳を傾けるがよい。さすれば神はお主の願いを聞いて下さるじゃろうて…』
 だが、いくら耳を澄ましても、カードは何も話しかけてはくれなかった。

 最後の一枚、なにも描かれていないカードがあった。
 不思議に思った彼に、どこからともなく老婆の言葉が響いた。
 「大事なのは信じる事、真っ直ぐに見つめる正しい心じゃよ…」
 その白紙のカードをじっと眺める…。
 …何も描いていないカードから徐々に光が溢れ出し、まばゆい光が広がり、気が遠くなっていった。

 少年はカードの世界「アルカナ」へと導かれた。

(説明書より抜粋)

 ・・・というところから、主人公「エステル」のアルカナを救う冒険が始まる。
 世界に散らばる22枚のアルカナカードを束ねその力を復活させるため、守護者「ティタン」や道化師「ウルキ」に導かれながら数々のダンジョンを攻略してゆく、というのがあらましだ。
 とは言え物語は少々薄く、ダンジョンにも仕掛けらしい仕掛けが無いためシナリオ面はやや物足りないかもしれない。
 それでもシステム面のおかげでカードには強いキャラクター性がある(後述)ため、プレイ後にはなかなかの充足感が味わえるだろう。

 なお、ストーリー中に「タロットカード」という言葉が出てきたがこれは現実のタロットとほとんど関係の無いオリジナルである。
 アルカナ(切り札)として活躍するのは確かだが、この点には注意されたし。


・ルール、システム

 さて本作のルールであるが、基本は敵、味方の「リーダー」がカードを使用し、モンスターの攻撃などによって先に相手リーダーを撃破した側の勝利、というものである。
 1つのターンは

 ・ドロー
 デッキから手札が4枚になるように手札を補充する
 ↓
 ・行動の選択
 モンスターの召喚、撤退、マイトカードの使用、カードの破棄、などからそのターンの行動を決定する
 ↓
 ・BATTLE
 AGL(素早さ)の高いカードから行動し、ターンを終了する

 の3フェイズで構成され、それぞれを相手と同時に、一斉に行いながら対戦が進行する。


 またカードの種類を大きく分けると、

 ・モンスターカード
 リーダーの両隣、合計2体まで召喚でき相手への攻撃とリーダーの防御を行うカード。HPやATを左右するLvの概念があり、戦闘経験を積むことで成長する。

 ・マイトカード
 リーダーが使用し、相手に直接ダメージを与えるほかモンスターのスキルを発動するコストとなるカード。

 ・消費系カード
 味方カードを回復させるヒーリングカード、敵モンスターを捕獲するキャプチャーカード、など使用することでデッキから消滅する使い捨てのカード。

 ・非消費系カード
 地形やステータスを変化させる効果を持つカード。毎戦闘で繰り返し使用できる。

 ・アルカナカード
 戦闘中いつでも任意のターンで使用できる「切り札」的カード。一種類につき一戦闘中一度まで使用可能。

 といったものとなる。


 このうち「消費系カード」の特徴である「デッキから消滅する」は、少々カードゲームらしからぬものと映るだろう。
 むしろ、ヒーリングカードは回復アイテム、キャプチャーカードはモン○ターボール、と置き換えれば一般的なRPGにおける「アイテム」のイメージがしっくりくると思われる。
 加えてターン中に行われる「BATTLE」がAGL順に行動するあたりはド○クエなどを連想させるし、「アルカナカード」以外に複雑な効果を持つカードが存在しない点は「タクティカルカード」として首をかしげたくなる状態である。

 また敵リーダーへの攻撃は主に召喚したモンスターが行うのだが、これは「BATTLE」時にオートで正面の相手に攻撃するだけ、というもの。
 相手がモンスターを召喚していればそれを攻撃するし、そうでなければリーダーを直接叩く。
 要は次々にモンスターを召喚して耐久値一杯殴り合わせ、状況を見て補助カードを使用してゆく、と言うのが本作の対戦の基本なのである。


 と、いまいちカードゲームらしからぬ本作。
 だがそれゆえの魅力も存在する。「モンスターカード」である。
 HPやAT(攻撃力)、DF(防御力)を持ち、EXP(経験値)を貯めてLvアップする・・・という点はすでに述べたとおりだが、その他にモンスターカード一枚一枚に固有の名前を付けられるという特徴があるのだ。
 モンスターカードは対戦の中で弱らせて捕獲するほか、ダンジョンや物語の中でイベントとして入手できることがある。そして、そのいずれにおいてもカード一枚一枚は個別の名前を持って仲間になってくれる。
 それらの名前を見るたびにそうした出会いやエピソードが蘇り、手札に来た時、勝利の決め手となった時、などにカードへの思いを次第次第に強めてくれるはずである。

 さらに消費系カードの中にはステータスを永続的に上昇させる「UP!カード」、必殺技を習得させる「スキルカード」、といったものがあり、好きなモンスターに使用して自分好みに強化・カスタマイズ出来るというシステムとして用意されている。
 わずか24枚で構成される本作のデッキだが、それは少数精鋭の相棒たちが活躍するのに程良い数字であるのかもしれない。


・ゲストカード

 そんなモンスターカードたちは「ピクシー」、「プチドラゴン」、とファンタジー作品においてわりとポピュラーな存在が中心となっている。
 モンスターの色を変えただけで枚数を倍ほどに水増ししている部分があるのだが、全211枚(実質93枚)+αのモンスターはなかなか見ごたえがあるだろう。

 その中で、著名な作家陣がデザインしたのが「レアカード」である。とりあえず説明書からその一覧を書き出してみると、

作家名カード名代表作
青木 コブ太ファンクロック「PC原人」キャラデザインなど
明貴 美加カレイドスコープ「銀河お嬢様伝説ユナ」キャラ・メカデザイン、「機動戦艦ナデシコ」メカデザイン(ブラックサレナ)、など
麻宮 騎亜エンド(炎怒)
ティン
シアン
「サイレントメビウス」、「Compiler」、など
芦田 豊雄サニーフェイス「魔神英雄伝ワタル」キャラクターデザイン、など。スタジオ・ライブ代表取締役
樫本 学ヴジョーク「学級王ヤマザキ」、「コロッケ!」、など
草河 遊也チャオ「魔術師オーフェン」表紙・挿絵、「サウザンドアームズ」表紙・挿絵、など
ことぶきつかさヴィヴィ・ドゥ「セイバーマリオネットJ」キャラクターデザイン原作、「アキハバラ電脳組」デザイン・原画、など
竹浪 秀行シャイニング「みつめてナイト」キャラクターデザイン、「クリムゾンティアーズ」キャラクターデザイン、など
辻野 寅次郎(辻野 芳輝)ヨミ(黄泉)「天外魔境」シリーズキャラクターデザイン、「ノスタルジオの風」キャラクターデザイン、など
永田 太ヒルコ「ホーンテッドカジノ」キャラクターイラスト、「遊☆戯☆王5D's」CGプロデュース、など
幡池 裕行(伊東 岳彦)ダイナソア「覇王大系リューナイト」、「星方武侠アウトロースター」、ほか
藤島 康介リュミエール「ああっ女神さまっ」、「逮捕しちゃうぞ」、など
水谷 謙之介クライン「ナン魔くん」、「ロボットポンコッツ」キャラ・メカデザイン、など
森木 靖泰タイムゲート「超力戦隊オーレンジャー」キャラクターデザイン、「魔法騎士レイアース」デザインワークス、など
(敬称略・50音順)
(※代表作は本作発売後のものを含んで記述)

 ・・・と、なんとも「知る人ぞ知る」なラインナップ。
 REDエンターテイメント関連の作家も多く、友情出演と言うよりは身内で済ませた感じがそこはかとなく・・・と言うのは邪推であるが。

 ともあれこれらカードはいずれも強力なステータスを持っており、物によっては序盤から手に入る・ボスとして対決するなどして活躍するので扱いは良いと言える。
 コレクションカタログも存在するため、主人公が所有できるカードはデッキ3つ+かばん1つの合計96枚のみという制約の中でどうにかやりくりして入手しておきたい。


・まとめ

 「タクティカルカード」を名乗ってはいるものの、カードゲームと言うよりモンスター収集系のRPGに近い内容を持つ本作。
 ここまで一切記述が無かったためお気づきだと思うが、そもそも本作は対人戦に対応していないことだし。
 決してつまらないわけではないのだが、戦略性やコレクション要素も「カードゲーム」と呼ぶには少々物足りない所だ。

 もっともその分気持ちを切り替えてRPGとして楽しめば、特徴的なシステムや多彩なモンスターの登場するライトなRPGとして楽しめる(はず)なのでなかなかオススメである。
 もし本作を手に取る機会があれば、「天秤宮」などの上質な音楽と併せてモンスターたちとの冒険を楽しんで欲しい。


・ワンポイント攻略

 ・説明書を良く読めば4枚のレアカードが入手可能。簡単な暗号になっているのですぐに気がつくだろう。
 ・オープニングムービーは2種類。タイトル画面で放置してみよう。
 ・カードをコンプリートする場合、中ボスが使用するモンスターカードに注意。後のダンジョンでは手に入らないものがいくつかあるぞ。





・関連作品


・「PC原人」シリーズ「ファンクロック」のデザインを手掛けた青木コブ太氏がキャラクターをデザインした、PCエンジンの2Dアクションゲーム。
・「銀河お嬢様伝説ユナ」「カレイドスコープ」のデザインを手掛けた明貴美加氏がキャラ・メカデザインを担当。
・「闘神伝」シリーズ「ヴィヴィ・ドゥ」のデザインを手掛けたことぶきつかさ氏が公式イラストレーターを担当。
・「クリムゾンティアーズ」「シャイニング」のデザインを手がけた竹浪秀行氏が後にキャラクターデザインを担当した、PS2のアクションダンジョンRPG。
・「天外魔境」シリーズ「ヨミ」のデザインを手がけた辻野寅次郎(辻野芳輝)氏が一部作品のキャラクターデザインを担当。
・「ホーンテッドカジノ」「ヒルコ」のデザインを手がけた永田太氏がイラストを担当した、セガサターンの18禁ギャンブルゲーム。
・「テイルズ」シリーズ「リュミエール」のデザインを手がけた藤島康介氏がほとんどの作品でキャラクターデザインを担当。
・「ロボットポンコッツ」シリーズ「クライン」のデザインを手がけた水谷謙之介氏がキャラ・メカデザインを担当。
あえて明言しておくがゲーム版のこと。


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