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遊戯王ゆうぎおう しんデュエルモンスターズII 継承けいしょうされし記憶きおく


プラットフォームプレイステーション2
開発コナミ
発売コナミ
発売年月日2001年 9月
ジャンル戦略型カードバトル
プレイ人数1〜2人(対戦・トレード可能)
セーブデータ242KB、1ファイルのみ


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
本作オリジナルルール採用 淡白 3Dモデル必見 種類に乏しい 良好 「王国編」を再現!





・ゲーム概要

 週間少年ジャンプで連載されていた人気漫画「遊☆戯☆王」内の「マジック&ウィザーズ」をアレンジして商品化したカードゲーム、元祖「遊戯王 デュエルモンスターズ」。
 そのPS向けアレンジ作「遊戯王 デュエルモンスターズ 封印されし記憶」の続編(?)に当たるのが本作だ。
 前作の数少ない 魅力であったモンスターのポリゴンモデル群をよりパワーアップし、独自性の強い「パーフェクトルール」を取り入れた内容は新・旧ファンとも必見の一本である。
 本作には原作「遊☆戯☆王」8〜15巻辺りの「決闘者の王国デュエリストキングダム編」を題材とした面も多いので、こちらを読んでおくとより楽しめることだろう。

 ちなみに、当時の封入カードは「妖精王オベロン」、「サイファー・スカウター」、「ニュート」、「電磁ミノ虫」、「リグラス・リーパー」、のうち3枚
 定価6800円を2本以上というのはかなりえげつないな気もするが、前作はさらに鬼畜なラインナップだったためこれでも多少改善されたと言えるのかもしれない。


・デュエルモンスターズ

 では、本作の内容に入る前に「遊戯王 デュエルモンスターズ(以下「遊戯王」)」の基本ルールについて軽くおさらいしておこう。

 「遊戯王」は40枚のカード「デッキ」を用意して相手と戦う対戦型カードゲームだ。
 各プレイヤーはそれぞれ8000点のライフポイント(LP)を持ってゲームを始め、カードを用いて先に相手のLPを0にした者が勝ちとなる。
 LPは「モンスターカード」の攻撃によってダメージを受けるため、こちらもモンスターカードを出して応戦したり、「魔法カード」や「罠カード」を使って妨害したりすることで対戦は進んでゆく。

 モンスターカードには「攻撃」と「守備」の概念があり、「攻撃表示」の場合は「攻撃力」、「守備表示」の場合は「守備力」を用いて戦闘を行う。
 戦闘の際はこの値を比べて大きいほうが勝利。攻撃して勝利した場合は相手モンスターを破壊し、さらに相手も攻撃表示だった場合は数値の差だけ相手LPにダメージを与える。
 守備表示ではこちらから攻撃を仕掛けることが出来ないが、相手の攻撃に耐えればダメージを反射し、耐え切れなくともLPへの超過ダメージを防ぐことが出来る。

 また相手モンスターに勝てない場合でも、「魔法カード」や「罠カード」を使用すればその結果は分からない。
 「装備魔法」で自分のモンスターを強化する、「罠カード」で相手を弱体化する、「通常魔法」によって直接破壊する、とその効果は多彩だ。
 モンスターカードの中にも特殊な効果を持つ「効果モンスター」がおり、これら効果をいかに活用し、カードの力を引き出せるか、が「遊戯王」の勝敗を分ける条件だと言える。


・パーフェクトルール

 さて、内容が平和すぎた気もするがおさらいはこれくらいにして、本作における「パーフェクトルール」とは一体どんなものだろうか?
 これは原作の「迷宮兄弟」戦をベースにしたようなもので、7x7のバトルフィールド上にカードを召喚し、移動によって相手の「デッキリーダー」を追い詰め、撃破することを目的としたルールだ。
 数値や効果を重視したカードゲーム半分、チェスのような戦略シミュレーション半分、といった内容である。

 このルールでは各プレイヤーの代わりにデッキを代表するモンスター、「デッキリーダー(以下「DL」)」がLPを持ち、モンスターの召喚や魔法の発動などを行なう。
 いわば「キング」であり、ここから召喚された各モンスターが手駒、「ポーン」となって敵DLに向かって進撃し、戦闘を行ってゆくのだ。
 すなわち、モンスター同士の戦闘に勝利するのみならず、いかに敵DLを追い詰め、直接攻撃(ダイレクトアタック)を成功させるか?が、パーフェクトルールならではの戦略性を作っているわけである。

 場のカードについては、魔法・罠・モンスターがいずれも一枚のカードとして行動し、守備表示をとる罠カードや、魔法に攻撃を仕掛けるモンスターといった状況も頻繁に発生する。
 パーフェクトルールにおいては召喚直後のモンスターやトラップは基本的に「裏側表示」(裏側攻撃表示)で行動するため、相手の伏せカードがモンスターなのか罠なのかは攻撃するまで分からないのだ。
 伏せられたモンスターが自分よりも強いのか?弱いのか?の判断はより高いリスクを伴い、万が一トラップに攻撃を仕掛けた場合は逆に破壊される恐れもあるなど、OCGとは一味違う駆け引きが必要となっている。

 また地形の概念も「王国編」さながらマスごとに存在しており、有利な地形で戦闘を行なえばモンスターの戦闘力が大きく上昇する。
 戦闘以外でも、通常は1マスずつしか移動できないモンスターが有利地形では2マス一気に移動できるようになるなど戦況に与える影響は大きい。
 さらに特殊地形として侵入不可能の障害物「迷宮」があるなど、本作における「地形」とは戦闘での勝敗を大きく左右する重要な要素となっているのである。

 ・・・と、繰り返しになるが本作は「決闘者の王国デュエリストキングダム編」を再現した面が多い。
 ルール以外でもモンスターの効果などがOCGから変更されており、

 光属性モンスターを強化するホーリー・エルフ(遊闘76 「伝説の竜!!」)、
 敵モンスターを弱体化させる完全態グレート・モス(遊闘68 「魔の電撃」)、
 アンデッド族を毎ターン強化するパンプキング(遊闘90 「墓場からの呼び声」)、

 など懐かしい面々には、原作ファンならニヤリとすること間違いなしだ。


・「真」デュエルモンスターズ

 また、本シリーズを語るならば「融合」の概念も忘れてはならないだろう。
 これは手札から複数のモンスターを選択して召喚することで、それに対応した新たなカードに変化させる・・・と言うシステムで、OCGのそれとは違う、ゲームならではの莫大なパターン数が特徴となっている。

 例えば、融合モンスターの主力「双頭のサンダー・ドラゴン」を召喚する場合。
 原作OCGでは「サンダー・ドラゴン」2体と「融合」が必要となるモンスターだが、本作においては「カイザー・ドラゴン」と「エレキッズ」、あるいは「カース・オブ・ドラゴン」と「雷仙人」など強力なドラゴン族と雷族の融合であればある程度自由な組み合わせでいつでも召喚が可能なのだ。
 また貧弱なドラゴン族と雷族同士では「サンダー・ドラゴン」になってしまうが、3枚以上、2段階の融合を用いれば低Lvモンスターも「双頭の〜」に変化させることが可能となる。
 例えば「ベビードラゴン(☆3)」、「はにわ(☆2)」、「エレキッズ(☆3)」、の順番で融合した場合、
 「ベビードラゴン」と「はにわ」で「ストーン・ドラゴン」に変化し、これに「エレキッズ」が加わって「双頭の〜」が誕生する。
 特殊な効果を持つ低レベルモンスターを組み合わせて強力な戦闘力を持つ高レベルモンスターを召喚できる・・・と言えば、「融合」の重要度がお分かりいただけると思う。
 ついでに、「ブラック・マジシャン」だろうが「青眼の白龍ブルーアイズ・ホワイトドラゴン」だろうがノーコストで召喚できた前作と違って本作ではモンスターの召喚にレベルに応じたコストがかかるため、この点でも省コストとして役に立つだろう。
 (前作と比べ、「ラージマウス」+「火あぶりの刑」=「猛獣の歯」などネタ融合は減っているが。)

 そして、本シリーズ一番の魅力と言えばポリゴンで再現されたモンスター群。
 先にも挙げた人気モンスター「ブラック・マジシャン」、「青眼の白龍ブルーアイズ・ホワイトドラゴン」はもちろんのこと、「ミノタウルス」や「砦を守る翼竜」と言った懐かしいモンスター、はたまた「マグネッツ1号」や「プリズマン」といった忘れ去られたモンスターまでもがPS2のポリゴンで再現されているのだ。
 その総数は700近くにもなり、なおかつその一体一体には攻撃モーション、死亡モーション、勝利モーション、などが用意されているのである。
 この作りこみぶりには、きっと誰しもが驚嘆することだろう。
 またこれらモンスターをデッキリーダーとして採用した際には、デュエル開始時や待機時などに合わせてモンスターが固有のセリフを発してくれる。
 モンスターの意外な一面が見えるようで、これもなかなか面白い。

 いかんせん発売が古く三幻神ですら未登場という難点はあるが、ギリギリ「BMG」が収録されているなど見ごたえはバッチリだ。
 あるいは・・・古さゆえにかえって知らないカードばかりであったりして、新鮮な気持ちで楽しめるかもしれない。


・対戦バランス

 では、実際に本作で対戦を行う場合、そのバランスはどうだろうか?

 先ずは対CPU戦だが、CPUは全ての融合パターンを把握しており手札から的確に中級モンスターを繰り出してくるほか、一人用の「キャンペーン」モードではその多くが有利なマップに待ち構えてモンスター全体を強化させている。
 こう聞くとかなりの強敵に思えるが、実は裏側表示カードに対しての警戒が薄く次々とモンスターを自滅させるほか、少しでも不利を見るやDLをマップの角に逃がしてしまうなど付け入るスキは多い。
 カードの揃わない初期デッキであっても、地形を自分の有利な物に変化させたり、呪縛効果を生かして足止めしたり、とあらゆる戦術を駆使して戦えば十分勝ち抜いてゆけるなど、なかなかにやりがいのあるバランスに仕上がっている。

 もっとも、デッキを対人戦レベルまで強化してしまうといずれの相手もただのカモになってしまうが・・・新カードを入手する方法である「スロット」によって、その後のプレイにも一工夫を与えてくれている。
 本作で新カードを手に入れる方法とは、対戦に勝利してカードを絵柄にしたスロットゲームを行い、止めた絵柄のカードが手に入ると言うもの。
 この際スロットに並ぶ絵柄は「対戦時に破壊したカード」となるため、欲しいカードがある場合は先ず実力で撃破することになるわけだ。
 また相手が出し渋る魔法カードなどは持久戦によって強引に奪い取り、スロットに出現しないカードは同じ絵柄を3つそろえる「フィーバー」を狙う、と、欲しいカードによって戦法を変えることが求められている。
 退屈しがちなカード収集に若干の変化があるようで、この点がなかなか面白い。
 (面倒なのでうれしくは無いが。)

 そんなこんなで収集したカードを元にデッキを組み、対人戦を行なうとどうだろうか?
 属性の強弱による「呪縛」がデッキ間に相性の差を作ってしまったものの、デッキコンセプトには幅が有るためなかなか変化のある対戦が楽しめる。
 いくつかデッキ例を挙げると、

 ・水属性モンスターで海地形を広げながらデッキリーダーを追い詰める海デッキ
 ・強力なモンスターをアンデット族に変化させパンプキングで強化するアンデッドデッキ
 ・敵の強化をリセットさせて圧倒する天使族デッキ
 ・融合で墓地を肥やしてムカムカをパワーアップさせる融合デッキ
 ・呪縛効果のあるカードで足止めし、ダメージ魔法で焼き尽くす火炎地獄デッキ
 ・ホーリー・エルフを大量に融合召喚して圧殺する女性デッキ
 ・自滅によってウイルス地形を撒き散らし支配域を広げる旧神族デッキ

 などなど。
 対人戦ではデッキコストが意味を成さないため、その差に応じてLPに差をつけるなどのハンディキャップを取り決めておくとデッキ作りがより盛り上がるだろう。

 ・・・と、まぁそこそこ対戦にはなるのだが。
 なにぶん本作は据え置き機のゲーム。一つの画面で自分と相手と交互にターンを回すため、互いの手札がモロバレという難点があるのだ。
 手札を隠す機能もあることはあるが、これを使うと自分も手札が分からなくなり、結局は判別のために手札を表示させることになってしまう。
 相手の手札確認中はマンガを読むなりして気をそらすのがフェアなのだが・・・当然、対戦は徐々に盛り下がらざるを得ない。

 相手の手札が分かることでかえって面白いカードゲームもあるが、本作は伏せカードの読み合いが醍醐味であるため・・・。
 ・・・この点、前作のような解決策(隠した手札に判別Noを割り当てた)がなかったのかと残念でならない。


・ストーリー

 さて、ついでに本作のストーリーについて。

 前作・・・古代エジプトで千年アイテムを巡る激しい戦いを繰り広げたユギ(※アテム)とセト。
 二人の子孫は長い時を経て中世のヨーロッパに移り住み、それぞれランカスター家(赤薔薇派)のプリンス、ヘンリー・チューダー(遊戯)とヨーク家(白薔薇派)の戦士クリスチャン・ローゼンクロイツ(海馬)・・・すなわちイングランド王国の王位継承を巡る「薔薇戦争」の中心人物となって再度宿命の対決を繰り広げていた。
 白薔薇派の有力貴族クロフォード卿(ペガサス)のもたらした古代カード魔術と、これを自在に操る「薔薇十字団」に劣勢を強いられていた赤薔薇派は、マーガレット・ピーヘン・ポウフォート(舞)の発案により異なる時代から強力なデュエルパワーを持つ「薔薇の決闘者」の召喚を決行するのだったが・・・。

 ・・・なんというか、かんといいうか。

 この後プレイヤーは赤薔薇派の下で「薔薇十字団」と対決するか、白薔薇派に寝返って残党を殲滅するか、の決断を迫られる。
 一応赤薔薇編のほうが正統派ストーリーであり、ステージにも選択の余地があるので初プレイではこちらを推したい。
 が、どちらにせよ物語と呼べるものは貧弱で、順々に敵デュエリストを倒した後に中ボス、ラスボスと対決してめでたしめでたし、という起伏に欠けた内容となっている。
 周回プレイで両方のストーリーをクリアすると以降は対戦のみのフリーバトルモードになってしまうなど、ストーリー面の薄さは否めないだろう。

 ユニオンフラッグを頭に巻いたキース(時代考証厳禁)とか、ブルーアイズを象った鎧を着てご満悦の海馬とか、デザイン的には大変おいしい状態なのだが。


・まとめ

 原作とOCGを元にしつつ、「パーフェクトルール」という独自色の強い内容にまとめあげられた本作。本作からOCG化されたオリジナルカードの多さも、そんな本作の革新性を表しているのかもしれない。
 OCGに慣れたデュエリストほどその変形ルールに抵抗があるかもしれないが、遊戯王初期から続く「カードの力を引き出す楽しさ」は確かに有る。
 ラインナップこそ古いがカードのボリュームもあり、3Dで再現されたモンスターやバトルといった見る楽しみも良好だ。

 そのため、OCG未経験の人であっても独立した戦略型カードバトルとしてなかなかに楽しめる・・・かもしれない。
 対人戦が残念仕様ではあるが、原作ファン、OCGデュエリスト、カードゲーム好きの遊戯王未経験者、といった面々にオススメの一本である。


・ワンポイント攻略

 ・説明書に記載されていない秘密機能「転生」。これは5デュエルごとに1回行なえ(累積不可)、任意のカード1枚と+-10のデッキコストを持つカード3枚とを交換するもの。デッキ編成画面で「L3ボタン(左スティック押し込み)」で使えるので、忘れずに実行しておこう。
 ・カードライブラリのコンプリートは不可能。現物入手できないカードが多数あるうえ、「召喚神エクゾディア」はカード自体が存在しない。





・関連作品

遊戯王 真デュエルモンスターズ 封印されし記憶前作。「闇遊戯の秘密に迫る」をコンセプトにしたストーリーであったが、すっかり「無かったこと」にされた一本。
ポケステとリモコンで天下が取れる。
遊戯王 フォルスバウンドキングダム 〜虚構に閉ざされた王国〜ゲームキューブで発売された、「真デュエルモンスターズ」シリーズの流れを組むRTS。
ゲーム内容はさておきモンスターのモデルは本作と共通であるようだ?
・「遊戯王 デュエルモンスターズ」シリーズその他ゲーム版シリーズ。その多くは付属カードが本命で、ゲーム内容自体は不出来。


イラスト:「海神の巫女」


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