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QUOVADISクォヴァディス


プラットフォームセガサターン
開発グラムス
発売グラムス
発売年月日1995年 12月
ジャンルSFシミュレーション
プレイ人数1人
セーブデータ1つ193ブロック、2ファイルまで (セガサターン本体のメモリ容量は460ブロック)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
物足りない 楽あれば苦あり マクロス調 ボイス多め 悪い メディア展開が派手





・ゲーム概要

 1995年にグラムスより開発・発売されたターン制シミュレーションゲーム。
 惑星国家間の戦争を舞台に宇宙艦隊の戦いを描いた内容であり、「マクロス」の美樹本晴彦によるメカ・キャラクターデザインや、緑川光や國府田マリ子といった豪華声優陣が目を引く一品だ。
 、ゲーム発売に先駆けてラジオドラマ(全24話)を展開する、ゲームサントラ、ドラマサントラ、ノベライズを次々と発売する、といった過剰なメディア展開を行った末に会社ごとずっこけたという強烈な経歴が目を引く一品でもある。

 なお、「Quo Vadis」はラテン語で「どこへ行くのか?」という意味だとか。
 今となっては自虐ギャグの匂いがしないでもない。


・ストーリー

 遥かなる未来、人類は銀河系の全域へと進出していた。
 複数の惑星からなる惑星国家の時代は新たなる戦乱を引き起こし、宇宙戦艦による艦隊戦が各地で繰り広げられていった。
 やがて、長い戦乱の時代は10の大国が結んだ「平和条約」によって終結の時を迎え、以後現在に至るまで平和な時が維持されてきた。

 平和条約締結より99年。
 各国は条約締結100周年を記念すべく、国籍に縛られない無国籍艦隊の設立を計画する。
 「平和艦隊」、通称「イブコーア」である。

 「学内3番手」の愛称で知られるハル・バランシン (CV:緑川 光)、
 問題児ながら影の実力者であるベンジャミン・バック (CV:林 延年)、
 軍人一家に生まれた才女イリナ・ミュラー (CV:根谷 美智子)、
 同郷のイリナと主席の座を争うウォルフ・ドレクセル (CV:森川 智之)、
 穏やかながら負けん気の強いアディラ・カーン (CV:深見 梨加)、
 真面目で頑固者のサレス・マテラ (CV:堀内 賢雄)、

 彼ら、イブコーアの担い手となるべく各国から集められた若き士官候補生たちは、必ずこの理想が現実の物になると信じていた――


 ・・・というのがおおまかな導入部だ。
 ラジオドラマにするだけあって本作のストーリーはかなり冗長 壮大なものとなっており、プレイ時間の7割は雑談なんじゃないか?というほどのボリュームを持っている。
 それでいて本作はマルチシナリオを採用しており、その内容が実にユニークなものであるのだが・・・。
 とりあえずは、本作の基本的なシステムから見てゆくことにしよう。


・システム

 本作はストーリーが「第○話」の形で区切られており、「導入部→会話パート1→戦闘パート→会話パート2」という流れで進んでゆく(会話のみの回もある)。
 うち「会話パート(ストーリーモード)」はボイスが豊富なこと以外に特筆すべき点が無いので、「戦闘パート(シミュレーションモード)」について詳しく見てみよう。

 本作は宇宙艦隊同士の戦闘を描いた内容であり、旗艦含む8隻の「艦隊」を1つのユニットとして扱う。
 「ミサイル艦」、「重巡洋艦」、「空母」、といった戦艦に「艦長」を配置し、「I型陣形」、「横列陣形」、「鶴翼陣形」といった陣形を選択して1ユニットとして完成するのだ。
 このうち「旗艦」が撃破されるとユニットが消滅するので、搭乗する戦艦や陣形をよく考えて配置したい。

 「戦艦」は耐久力や装備などが異なっており、
 「ミサイル艦」・・・耐久力に難があるが、射程と威力に優れたミサイルを搭載した戦艦。
 「重巡洋艦」・・・やや攻撃力に欠けるが、耐久力が高く艦隊の盾となる戦艦。
 「空母」・・・耐久力に優れ、無人戦闘機を特攻させるという強力な攻撃方法を持つ戦艦。1艦隊に1隻までしか配置できない。
 などが存在する。旗艦には耐久力の高いものを、前面には攻撃力の高いものを、といった適材適所が重要だ。

 また「陣形」は、
 「I型陣形」・・・前面に3隻、背面に3隻、中央に2隻、で「エ」の字に並ぶ陣形で、攻撃面、防御面、移動面が平均的な基本陣形。
 「横列陣形」・・・横2列に4隻ずつ、「ニ」型に並ぶ陣形で、攻撃面に優れる分打たれ弱く、移動力も低い陣形。
 「鶴翼陣形」・・・「Y」の字に並び敵を一斉攻撃できるが、側面・背面から旗艦が丸見えという危険な陣形。
 などが存在する。

 そして実際の戦闘の流れについてだが、戦闘は1ターンが「艦隊の移動→攻撃目標の決定→敵艦隊との戦闘」で構成され、それぞれを敵と同時に選択・実行する。
 つまり「艦隊の移動」においては敵と同時に移動を行うため、有利な位置に付けるよう「敵の艦隊がどう移動するか」を読み合うことが重要になってくるわけだ。

 敵の艦隊と真正面で向き合えば前面〜中央の戦艦が戦闘し、双方共に大きなダメージを負うことになる。
 だが上手く位置を調節し敵艦隊の側面を取ることができれば、こちらは高火力で攻撃しつつほとんど反撃を受けない・・・という有利な状態に持ち込むことが出来る。
 しかし有利な位置を狙いすぎて相手に背後を取られてしまうと、手も足も出ないまま旗艦を集中攻撃される・・・など。
 敵艦隊との位置取りがこのゲームにおける戦闘パートの要であり、また醍醐味でもあるわけだ。

 が、その分本作は1作戦中に登場するユニットの数が非常に少なく設定されており、プレイヤーが指揮するユニットも1つ、2つと戦略要素には物足りなさが残る。
 戦艦8隻からなる宇宙艦隊を指揮しているわりには、「包囲」だとか、「援護」だとか、そういった要素がなく単調な内容になっているのが残念だ。

 なお、各戦艦に搭乗する「艦長」はステータスが異なるほかにそれぞれが固有の名前、顔グラフィックを持っており、撃沈されると戦死するなどしっかりとしたキャラクターを持っているので愛着を持って接したい。


・ストーリー分岐

 ・・・といったシステムを持つ本作であるが、一番の見所はやはりストーリー、中でもその「分岐」だろう。
 主人公ハル・バランシンの目線で進む物語は、作中でいくつか重要な作戦や決断にかち当たる。
 もちろん、作戦を成功させ、悔いのない決断を行い、順風満帆な物語を送ることが出来ればそれに越したことはないのだが、本作の物語はそれら作戦に失敗したとしてもいくらかの寄り道を経て挽回できるようになっている。
 旗艦が撃沈されてゲームオーバーにならない限りは、蛇行しながらも物語が続いてゆくのである。

 特に、1度ゲームをクリアした人でも宇宙海賊の「ナパ・ラートリー」というキャラクターには聞き覚えが無いはずだ。
 それもそのはず、このキャラクターはとある人物に2度負けなければ物語に登場してこないのである。
 作戦に失敗し続け、なんだかんだとなじられるリスクはあるが、平淡な直線ルートを通るよりも山あり谷ありの寄り道ルートのほうが長く起伏に富んだ物語が楽しめる。
 そう考えると主人公ハル・バランシンの愛称である「3番手」も、そんなストーリー設計を意識しているようで実に味わい深い。


・まとめ

 シミュレーションゲームとしての側面は「読み合い」の面白さこそあるものの少々単調であり、ゲームとしての魅力はむしろキャラクターやストーリーにある本作。
 そのストーリーには冗長な部分も多いが、「失敗」から物語が広がる点などはゲームならではの側面があってなかなか興味深い一品だ。

 声優ファン、作画ファン、スペースオペラファン、色々と興味を抱く人がいると思うが、もしプレイする機会があればセーブ&リセットの満点プレイではなくある程度自然体でプレイし、本作の醍醐味を味わって欲しい。


・ワンポイント攻略

 ・旗艦以外の敵艦を攻撃しても多くの経験値は得られない。人道的にも、手間的にも、旗艦を集中攻撃して撃沈させるよう心がけよう。
 ・特定の艦長を一定レベルまで成長させると、固有の名前を持った「スペシャル艦」が登場する。一品モノなので気軽には使えないが、大きな戦力になるぞ。





・関連作品

クォヴァディス 〜イベルカーツ戦役〜プレイステーション移植版・・・かと思いきや・・・?
クォヴァディス2 〜惑星強襲オヴァン・レイ〜続へ・・・ん?色々別物になり、地上戦用ロボットが主役のリアルタイムストラテジーに。


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