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QUOVADISクォヴァディス2 惑星強襲わくせいきょうしゅうオヴァン・レイ〜


プラットフォームセガサターン
開発グラムス
発売グラムス
発売年月日1997年 4月
ジャンルシミュレーションロープレ
プレイ人数1人
セーブデータオートセーブ80ブロック+1つ80ブロック、本体とカートリッジ各3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
シンプル シリアス ストイック ボイス豊富 良好 前作とはあまり関係無し





・ゲーム概要

 セガサターンで発売された艦隊シミュレーション「クォヴァディス」の続編に当たる見下ろし型リアルタイムストラテジー。
 舞台は宇宙空間から惑星の表面へ、ユニットは宇宙戦艦から人型ロボットへ、という前作の原型を残さないほどに思い切った方向転換が行われた一本だ。
 前作と同様美樹本晴彦氏によるメカデザインや豪華声優陣と言ったメディア面の魅力が強いものの、本作は特にこれといったメディア展開も無くグラムスの遺作となっている。
 その原因は本作の少し前に「ありす in Cyberland(※1996、PS)」で壮大にずっこけたあたりにあるのだが、では本作の内容は果たして・・・?


・ストーリー

 「勝利のために、君は何を失うのか…」

 イベルカーツ条約世界(QUOVADISの舞台)から遥か離れた辺境銀河、セテウア銀河がこのゲームの舞台である。
 この銀河では、ワープ航法の技術が低かったことが幸いし、惑星内の紛争は多かったものの、大きな恒星間戦争は経験せずに発展してきた。
 その結果、陸戦兵器アサルト・アーマーが戦闘の鍵を握る兵器となっていた。
 セテウア歴3086年、随一の経済力を誇るG.O.A.その大統領就任式でテロ事件が発生。
 その時、主人公オヴァンは、婚約者ヒルダ、親友ディオンとともに、G.O.A.軍エリート士官として大統領警護の任に就いていた。
 しかし、テロ事件を鎮圧した時、オヴァンはテロの首謀者に仕立て上げられ、全銀河に指名手配されてしまった。
 それから10年、オヴァンは母国G.O.A.の敵、八惑星連合軍で傭兵として生き延びていた。

 (説明書より抜粋)

 ・・・と、一応同じ世界線上にあるものの世界観からして前作とは全く異なるストーリーが展開されている。
 物語は巨大国家G.O.A.に裏切られた青年オヴァンが、これに対抗する八惑星連合の擁する惑星強襲旅団「赤い蠍」の隊長として数々の惑星をG.O.A.の攻勢から解放し、G.O.A.への復讐と10年前の事件の真実を求めて行く、という流れである。
 そのシリアスなストーリーは各ステージを進行する中で仲間たちがフルボイスで会話する形で繰り広げられ、随所に挟まれるアニメムービーと併せて本作のメディア面の魅力を形作っている。

 (余談であるが、メカニックのスケールが人型ロボットになったことで一部ムービーではあの「マクロス」調のミサイルが描かれているのも嬉しいポイントだ。

 仲間たちの会話、というのは、具体的にはゲームの進行中においてキャラクターのコクピットが小さなウィンドウとして映し出され、表情などのアニメーションと共に自動でボイスが再生されてゆくというもの。
 リアルタイムストラテジーとして随時ゲームが進行してゆく本作、この設計はメディア面の魅力もさることながらゲームテンポを損なわないという意味でも理想的な設計だろうか。
 では、次にこのボイスやアニメーションによって彩られる個性豊かなキャラクター達を見て行きたい。


・キャラクター

 ・オヴァン・レイ(主人公) (CV:小杉十郎太)
 本ゲームの主人公。GOAのエリート士官だったが、テロ事件の首謀者に仕立て上げられ、逃亡を余儀なくされる。AAパイロットとして優れた才能を持っており、特に格闘戦で右に出る者はいない。10年前には祖国の発展を願う純真な青年だったが、テロ事件と10年の傭兵生活は、オヴァンをクールなリアリストに変えた。ゴアに残してきた婚約者、ヒルダのことは今も忘れていない。
 AA(アサルトアーマー)としては主に格闘戦用のA9F-4 フェロンに搭乗。全ての能力がトップクラスに高く、特に1対1の接近戦に持ち込めればほぼ無敵。
 ただし撃破されると即ゲームオーバーとなるほか、防御面で突出した物は無いため無闇な単独行動は厳禁である。

 ・ヒルダ・ベーレンス(主人公の元婚約者) (CV:林原めぐみ)
 技術士官としてG.O.A.軍に従軍している時にオヴァンと出会う。大統領就任式の警護任務の後、結婚する予定であった。有能な技術者であり、軍の中でも特別な待遇を受けている。
 G.O.A.を離れたオヴァンとは久しく接触が無く、現在どういう行動をとっているのかは基本的に不明。
 特別な待遇を受けている理由など謎の多い人物なのだが・・・付属するストーリーブックの表紙では、若干ネタばらしされている。

 ・ディオン・ホワイト(主人公の宿敵・元親友) (CV:子安武人)
 オヴァン同様傑出したAAパイロットである。冷静沈着で新技術に精通しており、新型AAの実戦試験部隊を率いてオヴァンの前に立ちはだかる。
 ストーリー中で新型AA「シャドウ」の部隊を率いてオヴァンを襲撃するライバル。
 10年前のオヴァンの行動について怒りを抱いており、出会う度にオヴァンの事を責めるのだが・・・。

 ・ドナー・アナガリス (CV:土井美加)
 10年前に大統領警護隊との戦闘で死亡した恋人の仇を取るため「赤い蠍」で戦っている。
 AAとしては主に格闘戦用のA9F-4 フェロンに搭乗。オヴァンに次いで格闘戦を得意とする勇猛な女戦士。
 敵機撃破時の「くたばりな!ゴア野郎!」などにG.O.A.への強い憎しみを見せる一方、オヴァンに対しては信頼を寄せている様が確認できるが・・・。

 ・ザイコフ・バイスコス (CV:立木文彦)
 無口で冷徹な傭兵。戦友にも自分の過去は一切しゃべりたがらない。
 AAとしては汎用中型のA12M5 モータルを経て中盤から火力支援用の重装甲AA、A3H-1 ホーボーに搭乗。乗り換えてからは鈍足さをどう補うかが重要だ。
 性格としては冷たいマシーンというより冷静なブレーンといった人物。序盤から終盤までオヴァンにとって頼りになる仲間の一人なのだが・・・。

 ・シド・ガッセン (CV:うえだゆうじ(※上田祐司 名義))
 躁鬱気味で、ちょっとしたことでカッとなりやすい。「赤い蠍」でも、周りに噛みついてばかりいる。
 AAとしては主に汎用中型のA12M5 モータルに搭乗。やや打たれ弱く勝手に敵前逃亡することがあるが、中距離戦での能力が高い。
 ストーリー序盤では野犬のように暴れ回るが、「シャドウ」の襲撃によって強烈なトラウマを抱えた後は精神が衰弱した状態となる。

 ・ネリー・カテナ (CV:三石琴乃)
 8年前、難民キャンプにいたところを、飯炊きとして「赤い蠍」に拾われた。神経過敏なところがある。
 AAとしては一時汎用中型のA12M5 モータルに乗るも、その後オヴァンに索敵の才能を見いだされ偵察・狙撃用多脚型AA、A5S-2M スナイパーを任される。
 部隊の「飯炊き」として慕われる少女だが、戦火におびえる人生から狙撃手としての素質が磨かれてきたという。
 索敵時のコクピット画面で大きな目をきょろきょろと動かしたり、作戦成功時にオヴァンを笑顔でねぎらったり、とアイドル的な魅力が強い。

 ・テラード・ジン (CV:石野竜三)
 「赤い蠍」で戦う傭兵。いつも軽口を叩いているが、いざというときには割と頼りになる。
 AAとしては主に汎用中型のA12M5 モータルに搭乗。シド同様逃亡しやすい難点があるが、その他の能力はこれと言った欠点のない万能タイプ。
 初期から参加する仲間であり、部隊の頼れるムードメーカーといったナイスガイであるものの・・・。
 汎用キャラ扱いとしてアニメムービーに登場せず、撃破されるとそのまま戦死してしまう

 ・アグリ・アグイ (CV:柊美冬)
 「赤い蠍」部隊の宇宙揚陸艇「スコルピオα」の通信士官。
 その他のオペレートも担当するが、若干影が薄い。

 ・ニッタ・ヌギヴァ (CV:石井康嗣)
 「赤い蠍」の初代隊長。10年前、売名行為のため大統領暗殺を引き受ける。自分の部下になったオヴァンを陥れようとする。
 10年前の事件の実行犯であり、事件に関するいくつかの秘密を知る人物。
 「赤い蠍」に入隊したオヴァンに対しても、ある思惑を抱きつつ扱っているようだが・・・。

 ・エマ・オコーナー (CV:玉川紗己子)
 中立な立場で報道活動を続ける戦場ジャーナリスト。
 オヴァン達の作戦の過程で何度か遭遇する人物。

 ・リジア・マーカス (CV:山口由里子)
 GOA軍エリート士官、かつてのオヴァンの同僚。ディオンの部下として、オヴァンに挑んでくる。
 ディオン同様、「シャドウ」を繰りオヴァン達を襲撃する人物。

 ・フランク・マロニー大統領 (CV:大塚芳忠)
 GOA大統領。就任式のテロ事件を生き延び、10年の長期政権を築く。
 大統領就任式のテロ事件に「赤い蠍」の隊長であるニッタが関与していた事を大義名分に、現在に至るまで八惑星連合への軍事介入を行っている。
 その一方でG.O.A.国内でもある計画を推し進めているようだが・・・。

 ・ハル・バランシン (CV:緑川光)
 前作の主人公。ザーディッシュ出身。イブコーア艦隊提督として、イベルカーツ銀河を代表する。
 説明書にしれっと登場している前作の主人公。世界観的にまるで関係ないように思われるが、実は・・・。


 ・・・そして、「赤い蠍」でオヴァンらと共に活躍するメンバーたちが挙げられるだろうか。
 彼ら仲間キャラクター達は一人一人が名前、プロフィール、ボイス、アニメーション、を持つ「登場人物」である。
 撃破されると戦死して二度と登場しないというかけがえのない存在であり、それぞれに個性を持っているため、愛着を持って大事に接したいところだ。
 何人かピックアップすると、

 テラード同様初期から加入するものの能力が低めでやられやすい「カモフ」、
 逃亡時の「犬死にしたくは無いんですよ!」のボイスが印象的な銀髪のイケメン「キール」、
 戦闘中の発言が全てノリノリで音楽を聞いているだけの「ヨーヨー」、
 男勝りで男好きというイケイケギャル、能力も機動力を中心に優れた「レビア」、
 追加メンバーで、操作技術と索敵能力に最高峰の能力を見せる魔女「マダム」、
 追加メンバーで、物憂いげな表情を見せる美人スナイパーの「ティア」、

 ・・・などなど。
 容姿やボイスで寄り好み出来るほどにキャラクターが充実していると言える。
 言えるのだが・・・。

 ・・・ゲーム中で一度に仲間にできるメンバー数には上限があり、追加メンバーは戦死者が出なければ登場しないというのが悔しいポイント。
 各ステージには被撃破数などからくる評価の概念が有り、これによって解放される隠し要素もあるため、これを気にすると彼らの出番は大きく減ってしまうのだ。
 仲間になる順番も固定なので、この辺りにはもう少しランダム性や選択の余地が欲しかったところである。
 決して、わざと戦死させてメンバーの選別などしないように。

・ゲームシステム

 さて、そうしたキャラクター達によって繰り広げられるリアルタイムストラテジーはどのような内容だろうか?
 画面構成としては2Dで、戦場となるマップを真上から見下ろした形だ。
 この中でプレイヤーは自分のユニットであるAA(アサルトアーマー)にリアルタイムで「移動」などの指示を出し、刻々と変化して行く戦況に対応しながら作戦目標の達成を目指すわけである。

 具体的な指示のバリエーションは、「移動」、「高速」、「指定」、「兵器」、の4つ。
 各ユニットは「索敵範囲」と「射程距離」の概念を持っており、移動中に「索敵範囲」に入った敵を捉え、「射程距離」に入った段階で自動的に攻撃するようになっている。
 誰か一人が索敵した敵は部隊全体で把握でき、長射程の武器で援護射撃を行うといったシチュエーションもあるものの、基本はこの2つのパラメータが近いユニットを中心にすると無駄がないだろう。
 防御力を犠牲に移動速度を上げる「高速」、特定の敵を優先して狙わせる「指定」、煙幕弾などの特殊兵装を用いる「兵器」、というコマンドもあるが、基本的には「移動」を丁寧に指示して行くゲームバランスであるわけだ。

 戦闘における特殊効果も、やはり「移動」によって利用する物が多い。
 移動や索敵を妨げる反面射撃への防御効果がある「地形」の概念や、敵を複数方向から攻撃すると効果が上がる「包囲」の概念がそれだ。
 「地形」については、例えば「林」の中を移動すると敵の射撃が当たりづらくダメージを押さえられる反面、敵の発見や移動速度が遅れて攻撃にさらされやすくなる危険がある。
 一方で「平野」では一切の防御効果がないものの、万全な索敵を行えるほか高速で移動でき仲間の援護に駆け付ける事も出来る。
 と、すれば、林に沿って仲間を先行させてオトリとし、敵を索敵したら側方から別の仲間を突撃させて「包囲」効果のある十字砲火を浴びせるといった戦法が思いつくわけだ。
 シンプルな基本設計はこういった作戦の重要性を際立たせ、またRTSとしての操作のわずらわしさも緩和しているようでなんともありがたい。

 また地形のバリエーションにおいては、「様々な惑星を強襲する」という基本設定が活かされているのも唸るポイントか。
 氷の惑星、水の惑星、砂の惑星、といった気候の差がマップ内の地形に反映されており、SFらしさとマップの変化が共に表現されているわけである。
 一方の長射程、高機動、といったユニットの性能差についても、「アサルトアーマー」という設定あってこそと言える。

 ・・・と、システム面はシンプルにまとめられた高い完成度が感じられるのだが。
 本作のゲーム画面を良く見ると、戦闘の主役であるはずの「アサルトアーマー」が豆粒大に小さいという大きな難点が見られる。
 付属のストーリーブックに掲載された設定画を見るとそのデザインの緻密さには唸るほかないのだが、実際のゲーム画面では32×32ドット未満の小さなアイコンがよちよち移動する程度までデフォルメされてしまっているのだ。
 一応、不定期にAAの布陣状況をイメージしたドットイラストやイベントを描いたCGムービーが表示されるものの、交戦時などは驚くほど淡々としたやり取りになっており、特に主人公オヴァンの見せ場たる格闘戦はアイコンの腕がカクカクと出し入れされる程度というあんまりな描かれ方となってしまっている。
 ゲームの流れに直接問題を起こすものではなく、キャラクターたちの発言でだいぶ救われるものの、おそらくはこれが本作最大の難点だろう。
 戦闘アニメーションが長すぎるというのも飽きるところだが、ここまでストイックなゲーム画面にどこまでモチベーションが続くかはなかなか試される話だと思われる。


・まとめ

 「クォヴァディス」の続編として発売されながら、その内容はストーリー・システム共に大きく異なる一本。
 前作をプレイしているとニヤリとするシーンが用意されているものの、どうかと言うと独立作の「惑星強襲オヴァン・レイ」として見たほうが良いだろうか。
 シリアスなストーリー、個性豊かなキャラクター、シンプルで深いゲームシステム、と魅力となる部分は揃っているため、後は個人の脳内補完力と相談して手に取ってほしい一本だ。


・ワンポイント攻略

 ・最終盤でイベントの起きるメインキャラクターはランダムの模様。望まない内容ならリセットするのも手のようだ。





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