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UNDER COVER(アンダーカバー) AD2025 Kei


プラットフォームドリームキャスト
開発パルス・インタラクティブ
発売セガ
発売年月日2000年 1月
ジャンルディティクティブ・アクション・アドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ12ブロック、9ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
操作性悪し 不自然 昭和風の町並みが見事 ミステリー調 「ホールドアップ」次第 小説版:「撃つ薔薇 AD2023 涼子」





・ゲーム概要

 2000年1月に発売された「ディティクティブ・アクション・アドベンチャー」。
 ミステリー作家の「大沢 在昌」氏がストーリーを担当し、ゲームというエンターテイメントに勝負を挑んだ一品。

 氏は本作の発売に先駆けて「撃つ薔薇 AD2023 涼子」という本作の前の物語を描いた小説を連載しており、このゲームに対する意欲や思い入れの強さが伺われる・・・のだが・・・。


・スタッフ

 本作のパッケージ裏には、ゲーム開発に参加した3名の名前が記されている。

 Story
   大沢 在昌 (※代表作:「新宿鮫」など)
 キャラクター
   くつぎ けんいち (※代表作:「ガード・ドッグ」など)
 音楽
   Gomi (※代表作:※すみません探せませんでした

 ・・・このパターンはどこかで見た気がするが、まぁ気にせずゲーム内容を見てゆこう。


・ストーリー

 西暦2025年。その混沌ぶりを反映するかの如くさまざまな人種・民族が混濁する東京。

 鮫島ケイは警視庁刑事部捜査第1課に所属する美貌の女刑事である。9ヶ月前この課に配属されたばかりの彼女には、公務中に負った頭部の大怪我から半年間のリハビリを乗り越え、見事現場に復帰したという壮絶な過去があった。
 それほどその美貌より刑事としての力量に強いこだわりを持つ彼女には、同僚である李 建というパートナーが居る。まさに容姿より刑事としての力量を評価してくれた李にケイは好意を抱き、二人は仕事上のみならず私生活でもパートナーとなっていった。

 その日、朝を共に迎えた2人の元に石田刑事部長から一本の電話が訪れる。コード808・・・テロリストがロイヤルシティーホテルに立てこもり、李とケイを呼び出してきた、という。
 「仕事よ、キャット・・・」
 もう一人の相棒に声をかけるケイには、自らの過去から訪れる過酷な運命など知る由もなかった・・・。


 ・・・と、おおまかにはこんなところだろうか。
 オープニングから事後のシャワーを浴びているというCERO必須の内容っぷりである。

 なお、潜入捜査官(アンダーカバー)としての活躍はこのオープニングの事件を解決してからとなる。
 その舞台は昭和日本の裏町、といったアンダーグラウンドな雰囲気をかもし出す素晴らしい出来なのだが、残念ながら物語に登場し、中に入って捜査することができる店舗は3つ4つのみとなっている。
 サブイベントもなく一本道で、「聞き込み」や「家宅捜査」の楽しさを欠く物足りない出来であるのは否めない。

 ほかにも「ゲームシナリオ」として不適切・不自然な部分が散見されるのだが、まぁキリが無いので次に主なキャラクターを見ていこう。


・キャラクター

 ・鮫島 ケイ (Cv:勝生 真沙子)
 主人公。警視庁刑事部捜査第1課に所属する刑事で、公務中の大怪我から復帰してきた過去を持つ。ロイヤルシティーホテルで起きた事件の後に黒幕を追って横浜ベイエリアへと潜入捜査を行う。
 蛇足だが、ロイヤルシティーホテル占拠事件中に現場の酒をラッパ飲みするという問題行動を取っている。

 ・CAT
 「公務中の大怪我」後の手術によってケイの脳とリンクしている猫型情報端末ロボット。ケイと共に任務に参加し、情報面でのサポートを行う。

 ・李 建 (Cv:梁田 清之)
 ケイのパートナー兼恋人。ケイの実力を高く評価しているらしく、そのためか任務中は後方支援に徹している模様。

 ・サミー (Cv:内川 藍維)
 ベイエリアを捜査中に出会う謎の少女。何か明確な目的があるらしく、次第にケイと協力してゆく。

 ・ロン・ウェイ (Cv:古澤 徹)
 物語の黒幕。ロイヤルシティーホテルで初対面のはずのケイを「涼子」と呼び、自らの手で殺すと豪語するなど浅からぬ因縁を持つようだが・・・?

 ・石田部長 (Cv:藤本 譲)
 ケイたちの上司。ケイの過去など物語の全容を知る人物。

 ほか大勢、といったところである。

 ちなみに本ゲームに登場するザコキャラクターは、着ている服(装備)が違うだけの4種類のみで、全員モーションが同じである。
 さすがに体力の量や所持する武器で差があるものの、いずれも行動パターンは変わらないし、あるシステムのせいで全員同じポーズをとるなどバリエーション不足が強調されてしまっている。
 次はそのシステムについて見てゆくことにしよう。


・システム

 本作はアドベンチャーゲームであり、その中で敵犯罪者と主人公刑事とが銃を撃ち合う「戦闘」が繰り広げられる。
 普通のゲームであればそのまま犯人を蜂の巣にしても構わないが、本作はこの戦闘に関して「ホールドアップ」というシステムを取り入れることで内容に特徴を持たせている。

 「ホールドアップ」とは相手を降参させることで、よくドラマなどで銃を突きつけながら「武器を捨てて両手を上にあげろ」と言うアレである。
 刑事たるもの無闇に犯人を殺してはならないということなのだろうか、本作は負傷した犯人などに銃を突きつけることで降参させ、アイテムを没収することが出来るのだ。
 消費する弾丸を抑えた上にボーナスアイテムまで手に入るため、プレイヤーは積極的にホールドアップを狙ってゆくことになるわけだが・・・。

 先ず、このシステムは非常に重要度が高い。
 説明書にも「背景に隠されている弾や救急パックはごくわずかだ。」とある通り相手をホールドアップさせてアイテムを没収することが前提のゲームバランスとなっており、勢いあまって相手を倒してしまうと次第次第に苦戦してゆくことになる。

 そして本作の場合、操作性が非常に悪いという問題がこの重要度を悪い方向へと向かわせてしまっている。
 本作で相手を攻撃するボタンは「Rトリガー」である。そして、銃を構える(突きつける)のも「Rトリガー」である。
 どういうことかというと、ドリームキャストはL、Rトリガーの入力をアナログ的に感知可能な仕様となっており、本作はトリガーを完全に押し込むと射撃、指をかけた状態だと構え、という形で設定されているのである。

 つまり相手をホールドアップさせるには人差し指を中途半端な位置で固定する必要がある訳である。
 ホールドアップの細かい条件としては「死角かつ近距離で銃を突きつける」か「あと1回で倒れる程度までダメージを与えて突きつける」かする必要があり、犯人瀕死→緊張した指に力が入って暴発→犯人死亡という流れが起きかねない。
 リアルといえばリアルだが、構えと攻撃を別のボタンに割り振れば起きない問題であり、ゲームシステムとしては不満を感じる。
 こうなっただけで前述の通り、弾を余計に消費した上アイテムも手に入らず、その後の展開が苦しくなってゆくのだ。

 このほかにも方向キーだと移動中に方向転換できないとか移動中にカメラが平気で頭上を通過するとか、さまざまな点で操作性の悪さが目立つのだが、これもキリが無いので割愛する。


 で、相手をホールドアップさせるわけだが、この際の挙動がなかなかにシュールである。
 ホールドアップされた相手は武器を捨てて両手をあげるポーズをとる。これは全てのザコキャラクターに共通で、マスクをつけたテロリストも、スーツを着たアッチの方たちも、場所によっては2〜3人が並んでこのポーズをとることになる。
 まるでラジオ体操である
 そして、一度ホールドアップさせた相手は部屋を移動するまでそのままの姿勢を保つ。部屋によっては移動してきてもそのままである。
 スキを見て反撃するとか逃げるとかしないのか?と。いや、ゲーム上反撃されても困るが・・・。

 極めつけは、前述の「いずれも行動パターンが変わらない」について。
 基本として敵テロリストは銃を持ち離れた場所から攻撃してくるのだが、中にはなぜかナイフや警棒を持った「北斗の拳」のザコっぽい連中がおり、彼らもまた共通の行動パターンに基づいて離れた場所から武器を振り回してくる
 当然勝ち目が無いとわかっているらしく、軽く銃を向けただけで降参する。宝箱状態である。


・カメオ出演

 説明書によると、ホールドアップ数や殺傷数などによって「大沢在昌さん、宮部みゆきさん、京極夏彦さんに会える」という隠し要素がある。
 大沢氏はこのゲームの「ストーリー」を担当した方だとして、残り二人は一体誰だろうか?
 ご存知の方もいるかもしれないが、2人は大沢氏の事務所に所属する小説家である。つまり本作とは全く関係がなく、大沢氏に併せて友情出演しているのである

 ・・・しかも、それをいわゆる「ごほうび要素」としているわけだ。

 まぁ、ファンの方にはたまらないのかも知れない。オマケでアイテムも手に入る。だが・・・。
 だが・・・。


・まとめ

 このゲームを特徴付ける「ホールドアップ」は、確かに独特なシステムであるものの操作面などのせいで今ひとつ完成度に欠けている。
 このシステムがゲーム全体の屋台骨となっているため、結果としてゲーム自体もそんなものである。

 もう一つの見所であるストーリーは、アドベンチャーというジャンルも手伝ってさしてボリュームのあるものでなく、意外性に欠けるわりに不自然な点が目立ち、「潜入捜査」に期待しすぎると肩透かしを食らう。

 それでもいいという、「警官」に強い思い入れがある人か・・・大沢氏の大ファンという人にならば、どうにかオススメできなくもない。


・ワンポイント攻略

 ・本作のGD-ROM内には大沢氏の意気込みから始まるプロモーションムービーが収録されている。ネタバレが激しいためプレイ前には見ないほうが良いが、一見の価値がある出来だ。
 ・弾が無くなったとしても、特殊警棒でダメージを与えて空の拳銃で威嚇すれば相手をホールドアップさせることが出来る。後半で特に有効だ。





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