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鋼鉄霊域 (STEELDOM(スティールダム)


プラットフォームPS・SS
開発テクノソフト
発売テクノソフト
発売年月日1996年 8月 (PS)
1996年 9月 (SS)
ジャンル3Dシューティング
プレイ人数1〜2人
セーブデータなし(セーブ機能が無い) (PS)
5ブロック (SS)


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
複雑 単純 個性的 音楽は極楽。
キャラクターボイスは地獄。
システムの把握がすでに高難度 SS版ディスク内に「開発後記」あり





・ゲーム概要

 1996年にテクノソフトから発売された、「リヴァーシオン」の続編にあたる3D格闘シューティングゲーム。
 「リヴァーシオン」のSS移植版を発売してからほとんど間を空けずにPS、SS両方で発売するという驚異的スケジュールで世に出たゲームだが、前作から新たなシステムを組み込んで独自の面白さを追求しているなど意欲的な姿勢が見える一品。

 ちなみに、パッケージの背には「鋼鉄霊域 (スティールダム)」と書かれており、どうやら「鋼鉄霊域(スティールダム)」と読むのが正式なタイトルである模様。「小宇宙(コスモ)」とか「波紋疾走(オーバードライブ)」とか、そういうことのようだ。


・システム

 基本システムは前作と同じく、「3Dアクションシューティングで格闘する」といった感覚である。弾を避け、相手を向き、反撃する。
 そして本作になって新たに追加されたシステムはおおまかに以下のようなものだ。

・索敵旋回の追加相手の方向に向かって自動的に旋回するアクションが追加された。
 
・ホバリングの追加ゲージがある間、滞空して自在に移動や攻撃を行うことが出来るようになった。
 
・移動アクションの追加・変更ホバリング以外にも、真後ろにブースト移動できるようになり、左右ロールの代わりに無敵回避行動「スライド」が登場した。また、ブースト移動に攻撃判定がなくなり各キャラ固有の「ブーストアタック」が登場した。
 
・必殺技バランスの変化無敵時間のある必殺技や投げ・ロック系乱舞技(セット技?)が増えた。
 
・ダウンの追加強力な攻撃を受けたときにキャラクターがダウンするようになった。ダウン直前には食らい判定が残っており、これを利用した連続技も可能。
 
・リング際のブロック機能自分からリング際に向かってもリングアウトしなくなった。便利といえば便利だが、ブーストアタックや特殊攻撃の性能などによって相手をリングアウトさせる難易度が大きく偏ってしまった。
 
・勝利演出の追加勝利したときに勝利ポーズをとるようになった。

 ・・・このほかにもさまざまなシステムが追加されたわけだが、旋回が煩わしいのは相変わらずである
 新システムの「索敵旋回」だが、地上で行うと旋回が遅く相手の動きについてゆけないうえ、相手のほうへ向き直るか攻撃するかまで旋回し続ける。ホバリングしながら行えば多少素早く索敵できるものの、相手に下をくぐられたら結局索敵しなおしである。
 SS版ディスク内の「開発後記」によると「バーチャロン」に似ているのを意識していたらしく、常に相手を向き続ける機能などは意地で付けたくなかったのではないか・・・などとつい邪推してしまう。

 ところで、本作は前作からキャラクターや世界観が一新されている。(というかシステム以外別物。)
 次の項からは新たな物語や登場人物について見ていこう。


・ストーリー

 舞台は「朧国(ろうこく)」。肥沃な土地と美しい水をたたえた、世界の東端に位置する帝国である。
 今をさかのぼること十数年前、地獄山の火口から現れた「魂喰鬼(こんしょくき)」がこの国を襲い、帝国全土を焼き尽くしながら朧国と49日間の戦いを繰り広げた。
 朧国側は「霊牙(りょうが)」という、使用者の魂を物質化して身にまとう秘法を用いてこれにあたったが、魂喰鬼は最後に皇帝である「閤元(こうげん)」自らの手によって封印されるまで抵抗し、この戦いは多くの犠牲を生んでしまった。
 ―そして現在―
 かつての英雄、閤元は民に圧政を引いて享楽に溺れる狂王に成り果てていた。
 それは、魂喰鬼を封じたその年より王妃の惨殺事件や皇子の誘拐事件など不幸が続いたため・・・魂喰鬼の呪いのためである、と噂されている。

 今回で戦乱後16回を数える、皇帝主催の霊牙による武闘大会もそんな狂王の享楽の一つに過ぎないのだろうが、圧政に苦しむ臣民たちにとってもこの日ばかりはお祭り騒ぎに興じるめでたい日である。
 修行の成果を試すために参加する者、賞金を目当てに参加する者、あるいはまるで別の目的を持つ者・・・それぞれの思惑を内に、会場は熱狂に包まれていた。
 「自らの魂の昇華に励んだ強者どもよ、我にその成果を見せよ!そして、その高貴な生命の光を我もとに捧げよ!
 皇帝・閤元からの激励の言葉が発せられ、今、武闘大会の火蓋が切って落とされた。

 ・・・といったところ(一部説明書より抜粋)。なにやら非常に複雑な事情があるようだが、まったく関係の無いエンディングを迎えるキャラが全8キャラ中3キャラもいるあたり案外どうでもいいのかもしれない。


・キャラクター

 本ゲーム中に登場するキャラクターたちは、

 ・是雷 〜ゼライ〜
  武道を極め自らの成すべきことを見定める為、武者修行を兼ね風来の旅を続ける武士。今回の大会参加は、育ての親であり師匠でもあった玄武の遺言を受けての事である。

  霊牙は鎧武者をかたどったデザイン。刀を使った接近戦の強力なキャラだが、遠距離で威力を発揮するホーミング技も併せ持ち、どの間合いでもそれなりに闘うことが出来る。


 ・蒼馬 〜ソーマ〜
  他国の侵略により、君主を失い国を追われた騎士。祖国奪回の手段を模索する内に霊牙の力に目を付ける。そして、朧国を訪れた彼は、激しい修行の末その秘法を会得した。帰国前の腕試しに今大会への参加を決める。

  霊牙は槍を携えた騎士といったデザイン。突進乱舞技「イリュージョンスティング」の性能が高く、中〜近距離、特にリング際で活躍するキャラ。


 ・樹梨亜 〜キリア〜
  高名な拳法家の孫娘で、自らも拳法を嗜む。祖父が営む道場が豪乱に襲われた時、偶然居合わせた是雷に助けられた。それ以来、是雷に対して好意を抱いている。今回、大会での優勝を条件に一緒に旅行する約束を是雷と無理やり取りつけた。

  霊牙は阿修羅のようなデザイン。コマンドは難しいが移動投げ「頭破落」の性能が光る中〜近距離キャラ。


 ・豪乱 〜ゴウラン〜
  幼い頃から、その容姿ゆえに虐待を受けてきた獣人。人間への復讐のために、破壊と殺戮の限りを尽くし、朧国の刑務所に捕らえられていた。今回、皇帝から勅命が下り、余興として大会へ出場する事となった。

  霊牙は両手に刃物を持った怪物のようなデザイン。長い距離を移動するブーストアタックと、相手を瞬間的にマヒさせる「裂爪投」を中心に攻めるテクニカルキャラ。


 ・麗羅 〜レイラ〜
  朧国における反体制派によって組織された、武装集団”幻鋭(げんえい)”の構成員。帝国に捕らわれ処刑された恋人の仇を討つべく、皇帝暗殺の任に自ら志願した。大会参加を装いその機会を伺う。

  霊牙は忍者の幽霊といったデザイン。「開発後記」によると、開発チーム内でさえ「紙くず」と呼ばれるほど耐久力の低いキャラ。攻撃を回避しつつ反撃できる「呪縛陣」が勝負のカギだ。


 ・醍久 〜ダイク〜
  朧国の守りの要である警固隊の老将。ここ数年の皇帝の所業に疑念を感じ、独自の調査を進めていた。そして遂にその原因を究明し、皇帝への謁見の機会を得るべく大会に参加する。

  霊牙は重厚な鎧といったデザイン。移動性能は低いが無敵突進技「猛虎連撃」の性能が非常に高く、接近すれば無類の強さを誇るキャラ。


 ・魁 〜カイ〜
  帝国の圧制のもと、孤児になった子供たちが集まって出来た盗賊団の頭。幼い子分たちの食い扶持を稼ぐために、大会の優勝賞金を目当てに参加を決意した。

  霊牙は巨大な腕を持つデザイン。ブーストアタックでの吹き飛ばし距離が尋常でなく、投げ技「獄握襲」も投げ飛ばすといった感覚の技。さまざまな局面からリングアウトを狙っていけるキャラだ。


 ・美咲 〜ミサキ〜
  いま朧国で最も評判の高い舞踏家だが、それは世を忍ぶ仮の姿。その真なる姿は邪気を封じるため使わされた天つ国の狩人。大会にこれまでに無い邪気を感じ取り、表舞台に立つ決意をする。

  霊牙は天女のようなデザイン。広範囲を攻撃する「火宴」、タイミング調節の可能な「五芒符」、ホーミングする初弾が当たれば大ダメージ必至の「胡蝶」と火力が尋常ではない。遠〜中距離のみならず近距離でも高い実力を誇るキャラ。


 ・・・と、おおまかには以上である。
 前作と比較するとキャラが人型になり、使い勝手の良い特殊攻撃が増えてショットの重要度が下がったために「格ゲー」っぽさが増した気がする。
 「バーチャロン」を意識したつくりだとするならば、確かにまるで別物に仕上がっていると言えるだろう。面白いかどうかは別として
 また、特殊攻撃の使用時などにキャラクターが声を発するようになった。
 これが闘いを盛り上げ、キャラクターの人気を支えてくれるアピールポイントに・・・
 ・・・なっていないのだ・・・。


・キャラクターボイス

 本作では特殊攻撃の発動時などに掛け声を、勝利時のデモで対戦相手へのコメントを、それぞれ発するのだが、そのどちらも酷いものである

 先ず掛け声についてだが全体的に音質が劣悪で、キャラによっては恐ろしく滑舌が悪いため聞き取るだけでも一苦労である。
 こうなると当然「空耳」が発生するもので、ラスボスの「消え去るがいい!」は「死ねハンガリー!」とか「ヒゲ剃るがいい!」に聞こえるし、蒼馬の生命線「イリュージョンスティング!」は「友情リング!」に聞こえる。
 ラスボスの攻撃を避け、必死の反撃を行う際に聞こえてくる会話が「ヒゲ剃るがいい!」「友情リング!」では一気に脱力すると言うものである。

 ちなみに、この空耳は「開発後記」に載っていた公式ネタである。このことからいかにこのゲームの音声が劣悪か察していただければ幸いである。

 そして勝利コメントに関してだが、こちらは単純にヘタクソである。
 声を作るのに必死で演技に力が入っていないとか、原稿を見るのに必死でつまづきながら読んでいるとか、いろいろと難点だらけなのである。
 文章で表現すると、
 「樹梨!そんなぁついたー気持ちでー闘いびぼべば・・・怪我どころではすまないぞ!」と、こんな感じだろうか。
 女性キャラは多少マシだが、こんなセリフが全キャラクターの組み合わせ分+α、81通り用意されている全くうれしくない


・PS版・SS版の比較

 両版を比較してみると移植版と言うよりアレンジ版といった内容で、エフェクトやセーブ・通信対戦機能の有無など細かな違いが多い。
 とは言え最大の違いはセガサターン版の、音楽CDとしてキャラクターの勝利ボイスを再生できるという機能(?)だろう。
 蒼馬や樹梨亜ステージの上質な音楽も収録されているが、やはり20分以上に渡るほど大量の勝利ボイスを連続再生する苦行には目を見張る物がある。

 「開発後記」のこともあるし、セガサターン版のほうがいろんな意味で楽しめると言えるだろう。


・まとめ

 3D格闘シューティングという前作のシステムを引き継ぎ、独自のテイストに調整した一本。だが、その複雑なシステムやショット軽視の性能バランスなどは本来単純で奥が深いはずの「シューティング」からかけ離れた代物になってしまった感がある。
 質の低いキャラクターボイスや、イラストのキャラが戦うわけではないという難点が加わって「格闘ゲーム」としての魅力もなく、どうにも中途半端感がぬぐえない。

 だがある程度練習すれば、3Dフィールドを自在に駆け回って派手な必殺技を撃ち合う独特の対戦を楽しめるようになるはずである。
 「シューティングで格闘する」というより、「格闘でシューティングする」ゲームに興味がある人や、前作のファンにはオススメできる一品である。
 また、ゲームで変わった楽しみ方をする人にもオススメだ。


・ワンポイント攻略

 ・タイトル画面で放置するとデモプレイが始まる。テクニックの勉強や対戦の見本に見てみると意外とためになるかも。





※追記


・鋼節 〜HAGANEBUSHI〜

 これは今回のレビュー後少しして知ったことであるが、なんと2006年、実にゲーム発売から10年の月日がたってから「有限会社ファクトリー・ノイズ&AG」より「鋼節 〜HAGANEBUSHI〜」という名で本作のアレンジ・サウンドトラックが発売されていたのだ!・・・某同人グッズサイトを通して。

 同社(同サークル?)はテクノソフトのスタッフが移動して設立したものらしく、形態こそ「同人」であるもののこれは紛れも無い「公式」として捉えてよいだろう。

 なお、パッケージの画像は現代風の萌えタッチで描かれた巫女キャラとなっている。本作にそんなキャラクターは存在しないが、符を持っていることから「美咲」と考えるのが妥当か。
 しかし、こうなるとセガサターンCDのことを書いたのは失敗だったか・・・?





・関連作品

リヴァーシオン前作。本作よりシューティング色と戦略性が強い。
・「電脳戦記バーチャロン」シリーズセガのロボット対戦ゲームシリーズ。
第一作はダッシュやジャンプからなる爽快なスピード感を持ち味とし、これを自動ロックオンの概念や「ツインスティック」という独特な筐体で余すとこなく実現した快作。
続編「オラトリオ・タングラム」はその正当進化系としてより高いスピード感とターボボタン同時押しによる攻撃のバリエーション増加を実現し、
「フォース」はネットワークを利用したタッグ対戦プレイや機体バリエーションというコンテンツの増加を実現した。
「マーズ」に見られるように世界観も練られており、いくつかのメディアミックスや「スーパーロボット大戦」へのゲスト参戦も果たした、オリジナルロボットを用いたロボゲーの代表作といった存在である。


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