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Steamポップ その5


 唐突だが、「Staem」をご活用されているだろうか。


 これは米「Valve」社によって開発・運営されているゲームのダウンロード配信サービス兼ランチャーで、ダウンロードならではの低コスト・メディア要らずの販売形態を特徴とするものだ。
 企業側にとっては物理的なパッケージや輸送・小売といった中間業者を必要としないために販売コストを抑えられ、またSteamのアカウントとゲームの購入が紐づけられているためユーザー同士での転売が行われることが無い。
 ユーザー側にとってはコスト削減分が還元された低価格でゲームを購入でき、また同一アカウント内ならば異なるPCでも同じゲームやデータで遊べるほかSteamコミュニティのフレンドに対する「ギフト」としてゲームを購入する事も出来る。
 などなど、双方に魅力のある設計であるわけである。

 そして、ユーザー側から見た「Steam」の一番の特徴といえばその強気なセール群。
 毎週始めに開催され、全ゲームの中から数十〜百数十本が割引かれる「ウィークロングセール」、
 週の中ほどに行われ、一定のコンセプトを持ったゲームが割引かれる「ミッドウィークマッドネス」、
 さらには週の終わりに行われ、ピックアップされたゲームが無料で遊べる「フリーウィークエンド」およびそれらのゲームが割引かれる「ウィークエンドディール」、

 といった割引イベントが毎週開催されており、しかもその割引き率は33%OFF、50%OFFは当たり前。物によっては75%OFFや90%OFFなど驚異の価格が設定されることもある。
 毎週行われるこれらのセールに、新たなゲームの発見や欲しいゲームの割引きを期待するのが「Steam」ユーザーにとって心を躍らせる魅力となっているのだ。


 と、前置きはこれくらいにして。

 絶えず雨音が聞こえてくるアンニュイな現在(2019/06/25〜07/09)はSteamのビッグセールの一つ「Steamグランプリサマーセール」が開催中である。
 ルールが少々複雑だが、とりあえず勝ち馬に乗っておけば毎日ウィッシュリスト1位に設定したゲームが無料で当選するチャンス!という太っ腹なイベントだ。
 当選を逃しても参加特典として500円分のクーポンを交換できるチャンスがあるので、ぜひ乗り遅れずに参加されたい。
 (このため当ページは若干慌てて公開した次第)

 というわけでウィッシュリストの最上位には高額ゲームが並ぶだろうと思われるが、当ページではいつもの調子で「Steam」内で配信されている低価格・無料ゲームに絞っていくつかを簡単に紹介することとしよう。
 なでる程度として内容は抑えるが、ゲームの公式サイトとSteam内の作品ページへの誘導リンクを配置したので興味を抱いたらぜひそちらにも足を運んでいただきたい。




「KARDS (カーズ)

開発1939 GAMES
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/544810/
公式ページhttps://www.kards.com/
リリース日2019年04月12日
人気タグ「早期アクセス」「カードゲーム」「第二次世界大戦」ほか
日本語サポートなし

 第二次世界大戦を題材としたカードゲーム。
 最大の特徴はカードの絵柄で、戦時中のプロパガンダポスターであったり戦車や戦闘機の模型のボックスアート風であったりといったレトロで独特のイラストを揃えている。
 また、カードカタログなどではカードの題材となった兵器や作戦、歩兵部隊についてのウンチクが英語で付属しているのでカードを集めて眺める楽しみは胸が高鳴る物があるだろう。

 ルールに関してはユニットを召喚して相手のリーダーを叩くタイプで、自軍陣地と敵軍陣地の間に「前線」という概念を設けているのが特徴的だ。
 相手のリーダーを叩くためにはまずこの「前線」にユニットを動かして攻撃範囲に捉える必要があり、また「前線」を確保している間はひとまず自軍リーダーは安全でいられるという構図である。
 ただ、ユニットの移動兼攻撃にはコストがかかり、また戦闘においてはお互いにダメージを受けるルールのため、前線の維持にこだわると立ち回りを圧迫し相手の重量型ユニットに対し後手に回ってしまうと言うこともありうるだろう。

 ファクションに関してはメイン1つとサブ1つを混成してデッキを組むことができ、
 アメリカ:ユニットの攻撃力を強化する手段が豊富でアクロ向き。戦闘機や爆撃機(自軍陣地から直接敵軍陣地を攻撃可能)も揃っている。
 イギリス:拠点や味方の回復効果が多く、相手のユニットを一回休みにするPin効果による足止めも豊富。長期戦向き。
 ソ連:隣接したユニットを守るガード能力やダメージを軽減するアーマー効果、シンプルに体力の高いユニットによる粘り強さが売り。
 ドイツ:戦車(前線への移動と攻撃を同ターンに行える)やBlitz(速攻)を持つカードが多く、またファッティ―も揃っている。
 日本:バーンや死亡誘発能力が多い。早い話がカミカゼということらしい・・・。
 といった傾向があるように思う。
 初期デッキの内容から言うとイギリスやアメリカが少々突出している感があるが、フォーラムを見る限りではソ連のアクロが目立つ程度でどのファクションもそれなりに脅威として語られているようだ。

 スキンが貧弱でカードパックの購入を課金の中心に据えているため無課金ではカード入手のペースが遅くもどかしさがあるが、雰囲気を味わうだけならば黙々とAI戦をやっているだけでもそこそこ楽しめるだろう。
 Steamにはシャドバなども並んでいるが、Steamならではのカードゲームもあるということで本作を入門用のひとつとして推しておきたい。




「PlanetSide 2 (プラネットサイド2)

開発DAYBREAK
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/218230/PlanetSide_2/
公式ページhttps://www.planetside2.com/register (※ゲーム説明より先に会員登録しろとかいうウサン臭いデザインだが公式である
リリース日2012年12月20日
人気タグ「無料プレイ」「FPS」「MMO」ほか
日本語サポートなし

 不特定多数参加型FPS。プレイヤーは3つの勢力が覇権を争う惑星の一員となり戦列に加わるというもの。
 このゲームはFPSでありながら一つの戦場における参加人数や階級の概念がごく薄く、惑星の広範囲を示したマップを見ながら勢力同士が衝突する前線に合流したり人口の少ない拠点に駐留して警備に当たったりといった戦略(タクティクス)を考えて柔軟に行動を選択してゆくことができる。
 ヘッドショットで即死する程度にダメージバランスが厳しく、腕前でキルレシオが大幅に変動するシビアなFPSではあるが、兵員輸送車や基地などのリスポーンポイントが活きていればそこから再出撃することができ、また一つの戦場におけるスポーン人数の上限がかなり大きい(完全に無制限というわけではない)ので腕前に自信が無くともとりあえず参加することで作戦に貢献出来、敵の防衛線を押し切ってこれらスポーンポイントを奪取する苛烈な陣取りゲームを楽しむことができる。
 キャラクターにも味方を回復できるメディック、施設を修理できるメカニック、といったサポート向きの兵種や、一定のコストを要するが分厚い装甲と高い火力を持つヘビーアサルトという誰でも戦場の主力を担える兵種があり、FPSを楽しむことにかけて間口の広さがうれしい一作であると言えるだろう。

 また、本作はそのシステムから様々なゲーム体験が独特である。
 スタート地点で兵員輸送機に乗り込んだはいいがパイロットがへたくそで勝手に墜落したり、せっかちな味方の車両に背中からひかれたり、敵スナイパーの位置を報告しても無警戒に突っ込んでいってバタバタ死なれたり、そもそも敵味方の物量に差が有って一方的に蹂躙したり、そんなことをしている間に後方の拠点を奪われて補給路を断たれたり・・・。
 指揮系統が機能しておらず歩兵が現地判断で対処しなければならない前線とはこうも混沌したものなのか、なんてふと思うくらいに、喧噪や混沌を嫌と言うほど味わうことができるだろう。

 参加人数が参加人数なので要求スペックも厳しい感があるが、独自性が強く、基本無料で無課金武器でも戦えるため興味があれば一度プレイしてみることを勧めたい。




「The Flame in the Flood (ザ・フレイム・イン・ザ・フロッド)

開発The Molasses Flood (本作専門のチーム?)
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/318600/
公式ページhttp://www.themolassesflood.com/the-flame-in-the-flood/
リリース日2016年02月24日
人気タグ「サバイバル」「アドベンチャー」「良質サントラ」ほか
日本語サポートなし

 神PV。
 大水害によって文明の崩壊したアメリカで、一匹の犬と共にイカダで漂流生活を行う少女がとあるラジオ電波を拾うところから始まる物語。
 大河を下りつつ陸地に寄って物資を拾い集め、飢えや凍えと闘いながら電波の発信源を目指し、時にこの崩壊世界でたくましく生き延びる人々と言葉を交わしてゆくという工程を、おおよそ4・5時間ほどのボリュームで体験してゆくこととなる。
 切り絵のような特徴的な絵柄や、ブルージー?とでも表現すればいいのか・・・寂しげながらもどこか力強く懐かしい音楽と、水音の協和によって見る楽しみに富んだゲームである。
 とくに、「水音」の表現は本作の特徴の一つだろう。
 平和を感じさせる緩やかな川の音、危機感を募らせる激流の音、凍えを招く豪雨の音、飲料水がのどを流れ落ちる音、水に囲まれた世界ではこの「音」一つで生も死も描き出されるのだ。
 舞台こそアメリカだが、梅雨に悩まされる日本人にとってなかなか共感しやすい世界観が描かれていると言えるのではないだろうか。

 ただ、サバイバル内容にはあまり工夫の余地が無く運と激流下りの操作技術に結構なウェイトが割かれる感がある。
 基本のストーリーモードだけでゲームの内容はほぼ全て体験できてしまうので、その先延々と川を下るサバイバルモードにモチベーションが湧くかどうかは難しい話だろう。
 その辺のボリュームの薄さでSteamでの評価は少々手厳しい事になっているので、価格やプレイ時間を比べて合う合わないを検討してみよう。




「Fran Bow (フラン・ボウ)

開発Killmonday Games
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/362680/Fran_Bow/
公式ページhttp://www.franbow.com/
リリース日2015年08月27日
人気タグ「精神的恐怖」「ポイント&クリック」「物語」ほか
日本語サポートなし

 アイテムを発見したり組み合わせたりして仕掛けを解いて行く、脱出ゲーム系ポイント&クリックゲーム。
 物語の主人公フラン・ボウは両親に愛され、黒猫のMr.ミッドナイトを可愛がる10歳の少女だったが、ある晩に両親のバラバラ死体を目撃し児童福祉施設へと収監されてしまう。
 この晩に「怪物を見た」と言って聞かないフランは精神障害を患っていると診断され、マーセル医師の処方で奇妙な薬を服用することとなるのだが――・・・。
 薬を飲むことでフランの見る世界は一変する。
 あの晩を再現するような超現実的な世界が、血と死肉にまみれ、すぐ隣を異形の怪物たちがうごめく世界がフランを飲み込んでしまう。
 ・・・しかし、幼いフランはその世界のありのままを受け止め、ある発見に至る。
 それは例えば、固く閉ざされた病棟のドアが開いている、などの変化の存在だ。
 超現実と現実の世界をさまようフランは現実の「壁」を超えてしまうことができるようになり、衝動のままこの施設からの脱出とMr.ミッドナイトとの再会を目指してゆくこととなるのだった。

 フランの見ている世界は果たしてただの幻覚なのだろうか?
 フランの両親を殺害したのは何者なのだろうか?
 Mr.ミッドナイトとは本当に実在するのだろうか?
 精神の病と推理ミステリー、正気と狂気が複雑に絡み合う導入部は見る物を瞬く間に超現実の世界へと引き込んでしまうことだろう。
 こうしたテーマをゲームシステムに落とし込んだ形も見事で、導入部に関しては夢中になって遊びこむこと請け合いだ。

 ・・・が、この導入部を過ぎると物語は童話的なファンタジー方向に舵を切り、期待したサスペンス的な側面は完全に肩透かしを食らう形となってしまっている。
 正気と狂気というテーマも実は・・といった結末を迎え、悪い物語ではないのだが消化不良な感が否めないところだ。
 無料のデモ版ではこの導入部をプレイでき、ここだけで妄想する分には傑作かもしれないので興味があればまずはこれをプレイしてみよう。
 ちなみに全編英語だが、一文一文が短く読解は比較的易しいはずだ。




「Dex (デックス)

開発Dreadlocks Ltd.
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/269650/Dex/
公式ページhttp://en.dreadlocks.cz/games/dex/
リリース日2015年05月07日
人気タグ「サイバーパンク」「メトロイドヴァニア」「女性主人公」ほか
日本語サポート字幕あり

 享楽的な機械化都市にて、念じただけでサイバースペースにアクセスする能力に目覚めた女性「Dex」の数奇な運命を描くアクションRPG。
 Dexは自分を襲う謎の武装組織や吐きだめのギャングたちから身を守るためにあえて敵地に忍び込んで様々な工作をしてゆくこととなり、その過程で様々なアプローチが可能であるという「ロールプレイ」の自由度がある所が本作の魅力だ。
 例えば殺意を持つ敵に対して拳で応戦してもいいし銃で安全に処理してもいい、あるいは初めから隠れてやり過ごしたり、会話で敵対そのものを回避してもいい。
 そして、本作最大の特徴と言えるのは「AR」。
 これはDexの特殊能力を生かして敵のサイバネにアクセスし、動作を妨害することで敵を一時的に無力化するという能力である。
 またこの際の「ハッキング」はほかにも様々な個所で活用する能力であり、例えば警備カメラをシャットダウンして潜入の助けとしたりタレットのコントロールを狂わせて同士討ちを狙ったりというアプローチもできる。
 なおこの際は360度自由な方向に射撃できる全方位シューティングという操作性に変わり、この変化も演出的で楽しい場面として映ることだろう。

 また、サイバネ技術に関してはDex自身も利用することができる。
 攻撃力やHP上昇といった戦闘面のサポートからステルス化や偵察といった戦術面のサポートまで幅広い内容で、またジャンプ力上昇や毒ガス無効によって行動範囲が広がるというメトロイドヴァニア的な要素もある。
 人間の肉体のどの部分を機械に置き換えるか?によって人物としての個性を発揮してゆくというのは、なんとも皮肉でサイバーパンクらしさを感じるところだ。

 最近(2019/01/24)のアップデートでほぼ満足のいく水準で日本語化が行われ、「サイバー世界のあらゆるところに遍在する巨大AIの打倒」という物語の魅力を余すことなく楽しめるようになったので興味がある方にはぜひおすすめしておきたい。
 敵やアイテムがリスポーンしないため「詰む」可能性があるというのが少しばかり気になるが、難易度設定もあるので多少操作に不安が有っても結末を見ることは決して不可能ではないはずだ。




「Mighty No. 9 (マイティナンバーナイン)

開発Comcept
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/314710/
公式ページhttp://www.mightyno9.com/
リリース日2016年06月22日
人気タグ「アクション」「プラットフォーマー」「ロボット」ほか
日本語サポート完璧

 ロックマンシリーズのキャラデザイナーおよびディレクターで「ロックマンの生みの親」の異名を持つ稲船敬二氏が独立して興した会社で開発した2.5Dアクションゲーム。
 キャラの配役などが見事に「ロックマン」をなぞっており、開発資金をユーザーから調達しゲーム内へのフィードバックを受けてゆくという新志向の開発形態もあって国内外で注目を浴びたのだが、いざ蓋を開けると期待未満の内容だったとして評価は芳しくなかった一本。
 アクションの基盤としてはロックマンシリーズをベースに「ある程度HPを削った敵は無力化され、ダッシュ・エアダッシュで接触することにより『吸収』することができる」というシステムを組み込んだもの。
 一見敵を少ない攻撃量で撃破し、攻撃力アップや体力回復といったアイテムとして敵を逆用する愉悦感と、ダッシュの爽快感があるシステムなのだが・・・。
 実際にゲームをプレイすると敵は『吸収』前提の体力ばかりで射撃で倒した後体当たりするという操作がほぼ必須、結局手間ばかりが目につき、またダッシュに無敵時間などが無いため敵の攻撃に突っ込んで自滅することもしばしば、接触ダメージももちろんあり、『吸収』が遅れるとクリア評価が下がる、などなどあまり良い形で実装されたものでは無かったのだった。
 またステージには即死ギミックが目立つきらいがあり、タービンを低空ダッシュでくぐるだけながら位置調整の必要性でスピード感を殺しているダイナステージ、同じマップをぐるぐる回ったあげく広範囲に攻撃判定のある電撃ワイヤーで即死しうるシェイドステージ、などはゲームのコンセプトから迷走している感すらあるだろう。
 声優陣が豪華でアニメ版の展開を行ったなど例によって暴走しているらしいが、ゲームとしては凡作止まりというのが大勢である。

 決してロックマンX7のような 問題作というほど悪いわけでもなく、セール時の割引率が大きいので価格分は楽しめると思われるが、群雄割拠のSteam内では他に魅力的なロックマン系のゲームが多数見つかるのが辛いところだ。




「This War of Mine (私のこの戦争)

開発11 bit studios
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/282070/
公式ページhttp://www.thiswarofmine.com/
リリース日2014年11月15日
人気タグ「サバイバル」「戦争」「雰囲気」ほか
日本語サポート必要十分(一部エラーあり)

 弾を撃ちまくり敵を殺しまくりの痛快娯楽であったり、犠牲のもとに敵を打ち倒す英雄譚であったり、冷徹に部下を用兵するボードゲームであったり、として描かれる「戦争」というテーマを、それに巻き込まれる一般市民の視点で描いたシビアなサバイバルゲーム。
 グラフィックは実写を取り込んだようなプロフィール写真や手書きの手帳、鉛筆風の画面効果やモノクロームの色調によって重苦しく描かれている。

 ゲーム世界の市民は孤独である。
 内乱の続く街ではあちこちで銃弾や砲撃が飛び交って断絶されており、かろうじて電気は確保されているものの水道やガスのライフラインは停止、明日の食料すらままならない状態で、ケガや病に倒れてもそれを助けてくれる隣人はまずいない。
 プレイヤーは幸運にも数人の仲間とシェルター(廃屋に過ぎない)に避難することが出来た集団を操作し、終戦まで、さもなくば可能な限りの日数を生き延びることを目的としてプレイすることとなる。

 火急の課題は水と食料の確保である。夜間に「探索」に出かけて物資を集めて来たり、集めた物資を「トレーダー」に渡して有益なものと交換したりすることが必要となる。
 またボロボロの廃屋を少しでも住みやすくするために「ベッド」を確保したり「壁の穴の補修」を行ったりといったクラフト活動も急がねばならない。
 なぜならば飢えや渇きのみならず、それに耐えかねて隣人から物を奪うようになった略奪者たちも生存者にとっての脅威となるのである。

 本作のゲームバランスは非常にシビアである。
 シェルターの改造の優先順位、必要な物資の調達先、食事をとるタイミング、トレーダーとの取引に効果的な物、と、生き延びるために必要な「知識」が多すぎるのだ。
 ゲームに不慣れな段階では物資に困窮したり、絶え間ない略奪者の襲撃に負傷して治療の手立てを失ったり、危険な地域に足を踏み入れて命を奪われたり、といった失策が必至である。
 そして、そうして困窮した末に自分たちも他人から物を「奪う」という選択肢が見え隠れしてくる。
 弱々しい老夫婦の家から食料を略奪して空腹を満たした時、その一瞬の充足のために自分は何を失ってしまったのだろうかという苦悩が始まることだろう。
 プレイヤーが操作するキャラクターたちもこの苦悩によってペナルティを負うこととなるのだが、後悔しても果たしてそれを嫌って死を選び物語を終える選択肢があったのかどうか・・・割り切ろうと割り切れなかろうと、きっと物語はそのまま続いて行くこととなる。

 という、非常に陰鬱だがプレイヤーに様々な問いを投げかけてくる経験深い一作である。
 ゲームに慣れきってしまって生存のための手法が確立されると途端に作業ゲーになってしまうあたりあまりゲームボリュームは無いのだが、体験型の文学作品としてでも広く勧めてみたい。




「Borderlands2 (ボーダーランズ2)

開発2K
Steamページhttps://store.steampowered.com/app/49520/
公式ページhttps://www.2k.com/en-US/game/borderlands-2/ (英語版)
http://www.2kgames.jp/borderlands2/ (日本語版)
リリース日2012年10月26日
人気タグ「FPS」「協力プレイ」「RPG」ほか
日本語サポート完璧

 今回のラストは言わずと知れた「ボダラン2」。言わずと知れたとはいえ現在「3」発売に向けて無料DLC発売中などHOTで価格もワンコインなので触れておこう。
 「ボーダーランズ」シリーズは英語のスラングで「バッドアス」(「悪カッコイイ」とか「クソ偏屈野郎」とかそんな意味合い)と呼ばれる連中同士がお宝を巡って銃で殺し合うアウトローなSF世界を描いたマルチプレイ対応FPSRPGだ。
 といってもFPSの魅力である位置取りやスニーキングといった戦術性は薄め、一定の被弾を無効化する「シールド」やキャラクターごとの特殊能力「アクションスキル」で優位を作りつつ真正面から銃弾をブチ込んで、敵のやられ様をベストアングルで見物するといったニュアンスだ。
 本作「2」では
 自動で敵を攻撃する「タレット」を召喚して攻守に活躍する「アクストン」、
 両手に銃を持って2倍の弾幕を張るトリガーハッピー「サルバドール」、
 敵の拘束や仲間の回復などサポート能力に長けた「マヤ」、
 姿を消して死角に回り込むことで倍々攻撃力の超ダメージを叩き出す「Zer0」、
 自律行動するロボットや勝手に敵の方へ跳弾するショットガンなどで無差別に暴れまわる「ゲイジー(DLC)」、
 近距離戦闘やセカンドウィンド獲得に長けた異色の立ち回りを可能とする「クリーグ(DLC)」、

 の6体のキャラクターを作成可能で、例えばタレットで注意を引きつつクリーグが接近して滅多切りにしたり、マヤが動きを止めつつZer0の一撃で仕留めたりといった具合にキャラクターの協力プレイで毎回異なるゲーム環境が展開されるのが本作最大の魅力である。
 ・・・まあ、難易度の設定がかなり大雑把で最終的には4人そろってアヘ顔ダブルトリガーが最適解と言うことになるようだが。

 また、本作のモチベーションを支えるのは多種多様な「レア」アイテム群。
 本作には一度クリアしたマップに戻ってボスを狩り直すような繰り返し性があり、その目標として装弾数やクリティカル威力が噛み合った理想のビルドの銃や、入手が難しく他の武器とは一線を画す「ユニーク」を狙う遊び方が用意されているのだ。
 例えば銃剣が付いていて近接ダメージを高めるピストルや、リロード時に敵へ放り投げて爆発させるショットガン、攻撃時にランダムで弾薬を消費しないロケットランチャーといったものは「パーツ」や「武器メーカー」のデザインとして一般的に手に入る
 「ユニーク」に至っては攻撃やリロード時にしゃべったり、:)マーク状に弾丸が飛んで行ったり、放り投げた銃が自動的に敵を攻撃したり、剣を発射して爆発しながら分裂してまた爆発したり、となんともやりたい放題だ。
 「シールド」や「グレネード」といった補助的な装備にも近接攻撃のたびに爆発を起こしたり爆発しない代わりに高威力だったりと個性豊かなものがあり、これらを目標にしたり、あるいは手に入れた後上手く活用して更なる強敵に挑んだり、とハクスラの構図を楽しんでゆくことができるだろう。

 この際相手にする敵キャラクターも、「バンディット」とされるならず者などの人間以外に「スキャッグ(通称ケツ口野郎)」や「ブリーモング(雪原ゴリラ)」といった異惑星のクリーチャーたちが存在しており、本作のゲームプレイに独自の体験を加えていると言えるだろう。
 とはいえ、繰り返しになるが戦闘バランスは大雑把だ。
 「レベル」による補正がキツいうえ敵のAIが単純、「敵対すると即座に索敵してこちらに接近しつつ攻撃」一辺倒なのであまり立ち回りに選択の幅が無く、回避不能攻撃連発でゴリ押されるといったクソエネミーの類も枚挙にいとまがない。
 一方でプレイヤー側の「銃の精度」をRPGとして成長する要素にしてしまったためゲームを始めたての頃はFPSなのにロクに弾が当たらず、持ち歩ける弾の数も少数、回復アイテムもその場で消費してしまって持ち歩けないうえ、キャラ固有の「スキル」の成長が遅いなどプレイヤーキャラの弱さもなかなかうんざりするところ。
 もっともゲームを進めて3周目、「UVH」モードに突入してみれば「スラグ」という状態異常にして与ダメージを増やすことを前提に全エネミーのHPを4倍にしたため手間ばかりが増えて爽快感が失せ、一部スラグ無効のボスがアホみたいな耐久力を有するようになってしまったうえ、レベルによる武器の性能インフレも加速してそれまでのレアが産廃化するなどのえげつない改悪を実施してしまっている。
 個人的には本当にこの辺りに不満をため込んでいるのだが、Steamの評価が非常に好評以上であるあたり多くの人にとっては先に挙げたような魅力がこれら不満点に勝るのだろう。

 さておいて、近日正当な続編である「3」が発売されることに併せて本作「2」は強気なセールや新DLCの無料期間を設けて話題を加熱させている。
 今ならばCOOPプレイヤーも見つけやすいと思われるので、関心があるのなら今はなかなか良い始め時となるのではないだろうか。




 毎週新たなゲームとの出会いがある「Steam」。
 まだまだ紹介し足り無い気もするが、今回はひとまずここまでとしたい。




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