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ページ公開:2021/08/24


ばくれつハンター


プラットフォームセガサターン
開発I'MAX
発売I'MAX
発売年月日1996年 4月
ジャンルアドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ2ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
蛇足 ほぼアニメ版 アニメムービー多数だが・・・ フルボイス ミス多し おまけディスク付き





☆今回はキャラクターゲームのレビューです☆


・ゲーム概要

 原作:あかほりさとる、キャラクターデザイン・作:臣士れいによるお色気ファンタジーパンクコミック「爆れつハンター」のアニメ版をゲーム化した作品。
 原作は限られた魔法使いが一般人を支配するファンタジー世界にて、権力を乱用する悪徳魔法使いの仕置き人の活躍を描いたという内容でありゲームという媒体との親和性は実に高そうに思える・・・のだが・・・。
 原作のお色気っぷりにセガサターンというハードが整ったわりに「全年齢」ソフトとなっているあたりを見れば察してしまう、あまり期待できない一本である。

 なお、本作には特典としてアニメ版のセル画や声優座談会を収録したボーナスディスクが付属している。
 内容はともあれ、パッケージではこの点を特に説明していない(CD-ROM2枚とだけ記載)ので注意しておきたい。


・世界観

 ここスプールナ大陸では、魔法を使えるひとにぎりの<法族ソーサラー>が人々の支配階級として君臨していた。
 支配は過酷を極め、力を持たぬ人々は、黙って涙するしかなかった。
 だが、そんな人々にたった一つの光明があった。
 それは、天に代わって非道な<法族ソーサラー>を始末する謎の仕事人たちの存在である。
 人は、彼らを<ソーサラーハンター>と呼んだ。

 (アニメ版ナレーションより)


・キャラクター

 ・キャロット・グラッセ (CV:古本新之輔)
 いちおうの主人公。
 バカで非力で世間知らず、薄汚い身なりににやけた表情というなりで女性を見つけると見境なく関係を迫るまったくのろくでなし。
 ただしたった一点、魔法で攻撃されるとそれを吸収して恐ろしい獣の姿に変身する<獣化ゾアントロピー>という特異体質の持ち主であり、それゆえにソーサラーの天敵たる存在である。
 (ただし、この能力自体が重要となる話はあまりない
 また、女性に見境がないという点は誰に対しても本心で接するということの表れでもあり、その純粋さが人の心を揺り動かすこともー・・・たまにはある。

 ・ティラ・ミス (CV:林原めぐみ)
 ヒロインの一人。
 緊張感のない口調で話す地味な少女で、普段はすぐに暴走するキャロを幼馴染の立場からどついて仕事に連れ戻す役をこなしている。
 顔の半分を覆うような巨大なメガネに後ろで結っただけのウェーブヘア、だぼだぼのローブで全身を隠しているなど容姿にも色気というものがないが・・・。
 その布の下には過激なボンデージ衣装に身を包んだ女王様の姿があり、糸や鞭を使った高い戦闘技術を有するほか、獣に変身したキャロをしばいて制御できる数少ない人間の一人でもある。
 なお本作ではアニメ版の基本コスチュームではなく、アニメ最終話および原作版の過激なコスチュームにアニメ版基準の変身バンクシーン(OVA版とは別物)を付けての登場であり、これが本作のほぼ唯一の見どころとなっている。

 ・ショコラ・ミス (CV:水谷優子)
 ヒロインの一人。
 キャロットに対して熱烈な愛情を示すほぼ唯一の女性で「ダーリン♥」と呼んでは肉体関係を迫っているが、キャロットはこれを猛烈に嫌がりいつも逃げ回っている。
 その本性は妹のティラ以上に過激でサディスティックなものであり、キャロットからプレゼントされた思い出の帽子をかぶると処刑人のごとく容赦のない「仕置き」を行う。
 こちらもコスチュームが変わっており、吊りベルトで辛うじて乳首が隠れているだけのトップレス姿で戦闘する。

 ・マロン・グラッセ (CV:真殿光昭)
 チームの頭脳派。
 思慮深い<東方魔術イースタン・マジック>の使い手で古今東西の伝承に詳しく、清潔感のある衣装に端正な顔立ちという身なりで誰に対しても礼儀正しく接する完璧美男子。
 しかしあのキャロット・グラッセの実の弟で重度のブラコン、コミック版・アニメ版通して色恋に関するエピソードがほぼないという絶食系男子(死語)である。
 本作ではやたらと出番が少ない。

 ・ガトー・モカ (CV:梁田清之)
 チームの肉体派。
 鍛えに鍛えた鋼の肉体を武器とする一方、仕事においては慎重さを忘れず情報収集や状況判断といった頭脳を要する活動もそつなくこなす中堅的存在。
 原作コミック版では事あるごとにブーメランパンツ一丁で登場し肉体を披露したがるナルシストという面があったが、アニメ版ではその点が抑えられた常識人として少々出番が少なかった。
 残念ながら、本作での描写は前者である

 ・ビッグ・マム (CV:島本須美)
 ソーサラーハンターとその表の顔「ステラ教会」の頂点に立つ年齢不詳の美女。
 ソーサラーが民衆を支配する現在の社会に理解を示し、それに増長した悪徳ソーサラーを「始末」することは必要悪だという考えのもとそれぞれの組織を運営している。
 キャロたちに関しては特にその動向を注視しており、将来を見据えた意味深な指示を出すことが多いようだ。
 なお普段は穏やかだが、怒ると一切の容赦がない。

 ・ドーター (CV:玉川紗己子)
 マムとソーサラーハンターの連絡役を務める少女。
 屈託のない笑顔と鳥のような翼がチャームポイントのアイドル的存在だが、マムの真意を悟られないよう無知を装って見せる役者な一面もある。
 アニメ版ではやたらはっちゃけた次回予告を担当しており、本作においてもチュートリアルやミニゲームの審判などの案内役を務める。

 ・ザッハ・トルテ (CV:銀河万丈)
 かつてマムの一番の側近だったが、世界の変革のために袂を別った「限りなく神に近い男」。
 アニメ版では最後の敵、原作コミックス版でも物語の折り返しとなる魔王ポジションという存在だが制作時期の都合上か本作では一切触れられない。


・ゲームの内容

 さて、ゲームジャンルを「アドベンチャー」としている通り本作はキャラクターの会話を読み進め、要所要所でミニゲームや戦闘をこなしてゆくという流れを採っている。
 うちキャラクターの会話は完全フルボイスであり、地の文というものもなく豊富なキャラクターボイスをひたすら楽しめる内容となっている・・・のだが・・・。

 非常に残念なことに、本作の具体的なストーリーはアニメ版から5話を抜粋・編集したものであり、原作ファンであればすでに知っている内容の再演でしかない
 それも、これがゲーム媒体であることに触れたメタネタやミニゲームを挟むための小芝居などギャグ成分を大幅に割り増しした内容とされ、ガトーの苦い過去を描いた「迷宮への歌劇場」の回などもグダグダ展開とされてしまっている。
 ファンにとっては好き嫌いが分かれるだろうし、新規にとってはまるでついていけない温度差のある内容というところだろう。
 また、アニメムービーを多用しているため一見豪華な仕上がりとなっているが、一部を除いてこれはアニメ版をブツ切りにして収録したものである。

 それでももう少し詳しく見てゆくと、本作は「スロットバトル」と「ドッペルごっこ」という2種類のミニゲームを物語の節目に置いている。

 「スロットバトル」とは本作の戦闘に当たるもので、スロットの目を止めて相手のHPを削ってゆくというもの。
 スロットは「キャラクター」、「攻撃方法」、「ヒット数」、の3つのリールが敵味方それぞれに用意され、例えば味方側が「ティラ」、「魔法」、「2ヒット」、であればティラの魔法攻撃力「3」かける2の合計「6」ダメージを相手に与え、敵側が「キャロ」、「技」、「ミス」、であればキャロに攻撃するがダメージは与えられないという具合である。

 ・・・(;゚Д゚)ん?

 ちょっと待ってほしいが、本作の世界観における「魔法」を使えるのはひとにぎりのソーサラーのみで、主人公勢のような一般人は通常、魔法を使うことができない。
 というのに、それが基本システムとして組み込まれているというこの違和感
 また本作に防御の概念はなく、ティラとショコラなら技攻撃、ガトーなら力攻撃、マロンだけは魔法攻撃、と得意芸一つ使っていればそれが最善という結論となる(キャロに得意芸はない)。
 さらに「キャラクター」のリールに着目すれば、味方側のリールは複数キャラクターから一人しか攻撃を実行できないというハンデでしかなく、チームで戦うソーサラーハンターを再現するシステムとはとても言い難い。
 あげく「ヒット数」のリールに関しても相手にダメージを与えられなくなる「ミス」の目が存在しており、そもそもが攻撃の結果をランダムに決定する「スロット」のシステムは戦闘内容を引き延ばすだけの尺伸ばしにしかなっていないということになる。

 正直、原作再現としてもゲームとしても理解しがたいシステムであろう。

 それでも一応、
 ・「味方側のリールと敵側のリールは同時に止まる」というシステムがあり敵側の「ミス」の目を目押しすることで戦闘を有利に運ぶことができる
 ・あえて「キャロ」に「魔法」攻撃を食らわせることで<獣化ゾアントロピー>し大幅にパワーアップすることができる
 ・アドベンチャー中にスロットバトルを有利にする「アイテムカード」が手に入る

 といった要素があり攻略要素がないわけではない。
 またキャラクターの攻撃やダメージはアニメムービーで表現され、ガトーの魔法攻撃(攻撃力0)など一部オリジナルのムービーが用いられているのも演出として見ごたえがあるだろう。
 しかし、なじみ深いコマンドバトル方式などもう少し原作に適したバトルシステムがあったのではないかと釈然としない気持ちをぬぐえないところである。

 さてもう一方の「ドッペルごっこ」とは、端的に言って旗上げのミニゲームだ。
 「赤上げて」、「白下げて」、「赤下げない」、といった号令に素早く反応してミスを回避するおなじみのゲームである。
 作中では仲間同士のもめ事を解決する場面で行われ、相手の出題を一定数クリアすれば「アイテムカード」を獲得しつつ直後のやり取りが若干変化するという具合だ。
 ストーリー中の出題者は基本的にショコラとティラであり、一定数クリアするとブチ切れて変身するというサプライズがあるがそれ以外に特に見どころはない。
 ただしストーリー中ではこの「ドッペルごっこ」でカタをつけることを妙に深刻に盛り上げており、無駄に存在感だけはあるのが反応に困るところだ。

 ちなみに、アドベンチャー中に「選択肢」が出ることもあるが選択しても意味のないやり取りが追加されるだけのスカや結局すべての選択肢を選択しなければならないチェックリストなどとして選択肢としての機能はほぼない。
 アニメをなぞっている以上は、ストーリーに分岐がないのは必然ともいえるが・・・。


・収録回

 ・「命召しませ紅花あかきはな
 アニメ版第2話。人間の精気を吸収し、それとそっくりな人間を生成する魔法花「メタセニア」の復活が察知された。
 元々は優秀な兵士を量産するために用いられたというこの「禁呪」を、事件の黒幕アモーレ夫人は理想の男を創造するために用いたというのだが・・・。

 ・「影と光の不文律」
 アニメ版第3話。例のごとく見境ないナンパを行っていたキャロが、地方の領主バルバラに招待された。
 ところがこのバルバラ、可憐な少女に見えてキャロ以外の4人には極悪非道なソーサラーとして仕置き任務が下っており・・・。

 ・「愛、流れるまま」
 アニメ版第7話。宙を流れる神聖な川、マジックリバーには救世主にまつわる伝説と儀式が綿々と受け継がれていた。
 はじめはそれをロマンチックと考えていたティラとショコラだったが、その伝統の裏で人生を犠牲にした乙女たちがいた事を知ると怒りをあらわにし・・・。

 ・「迷宮への歌劇場オペラハウス
 アニメ版第9話。ガトーはかつてオペラというソーサラーハンターと活動していたが、あるソーサラーを追う中で彼女を亡くしてしまっていた。
 今回舞い込んだ依頼は、そのオペラの仇だとして善良とされるソーサラーの始末を依頼するものだった・・・。

 ・「異端の夢は水晶クリスタル
 アニメ版第6話。人間をクリスタルに変えるという禁呪を追ってきたマロンは、町を見下ろす崖の上で妹を探す青年コウの草笛を聞く。
 やがて調査を進めてゆくうちに明らかになったのは、禁呪の犠牲となったのはあの草笛を知る少女リンに接近した者たちだということであった・・・。

 ・・・例外となるような回もあるが、アニメ版の敵役は一話につき一人であり「スロットバトル」は各一回ずつしか発生しない
 例外となる「影と光の不文律」では執事との戦闘がギャグで済ませられて結局一戦闘のみ、「愛、流れるまま」の回はそもそも敵役がおらずスロットバトルも発生しない
 なまじフルボイスで再演しているだけにアニメ版の尺20分をろくに分岐もないシステムで消化することとなり、これがゲームとして適当なのかどうか・・・。
 また順番から言って最終話となる「異端の夢は水晶クリスタル」は主人公たちにとって特別節目となる回でもなく、一連のチョイスは適当だったのか首をかしげてしまう。
 表裏のあるバルバラを序盤に顔見せして禁呪関連の話を続け、最終的に禁呪を拡散した黒幕として執事・バルバラの連戦にするなんて改変を行えば素材そのままでもまだ整った形になったのではないかなどと愚考するところだ。


・ボーナスディスク

 さて、本作にはファン向けのボーナスディスクが付属している。
 内容としてはキャラクターの設定画とセル画・原画、それとメインキャラクターの声優陣へのインタビューと座談会を収録したという内容だ。
 ただし掲載点数があまりなく画像の拡大機能などはなし、アニメ版オリジナルキャラクターの初期稿などインパクトのあるものもなく、座談会は本人たちも触れているが「爆れつ」に関係ない雑談会のノリとなってしまっている。
 PCで読み込んでみても壁紙などの特典はなく、正直なところ本編の変身バンクシーンとエンディング前のスペシャルムービーこそが最大の特典だろう。

 なおI'MAX開発・発売の新作RPG「サイバードール」の広告画像も収録されたが、お色気・ファンタジーの本作でバイオレンス・サイバーパンクの広報を行うというマーケティングが成立したのかどうかは怪しい所だ。


・まとめ

 RPGでなじみ深いファンタジー世界を舞台にした「爆れつハンター」を原作としながら、アニメの内容をなぞるのみの一本道アドベンチャーというまるで原作を活かしていない形でゲーム化された一本。
 ある意味では原作を活用しているが、全編アニメーションのアニメ版(当然ではある)に対して部分的にアニメムービーを取り入れて見どころとした本作が見ごたえで勝るわけもなく、理想を言えばよりゲームに寄せるかオリジナルストーリーとするかしていなければ原作ファンの期待に叶うものとはなりえなかっただろう。
 一方で新規ファンの獲得にも頼りなく、メタネタの多様やキャロの全く自重しないお下劣ぶり(選択肢として「マムに食べられたい」「(行きずりに女性を見つけて)おそいかかる」「(行きずりに女性を見つけて)ねぇ俺とピ〜ッしようぜ!」)が人を選ぶうえ、そもそも「スロットバトル」や分岐のないアドベンチャーなどゲームとして面白くないものに求心力があるとも考えづらい。
 まあ単純に、予算や製作期間といった都合からゲーム化を実現できる着地点がこうだったのだろうとあきらめるところなのかもしれないが・・・。

 コミック版を既読だがアニメ版を未視聴でボイスを試し聞きしたい、ギャグはえげつなく空気を読まない方がいい、オリジナルの変身バンクシーンや一部のムービーに関心がある、といったややディープな原作ファンに対してのみ勧めえる作品というところである。





・関連作品

爆れつハンターRセガサターン用ソフト。オーソドックスなRPGとして原作に沿ったストーリーを展開した作品のようだが、未所持につき詳細は不明。
爆れつハンター それぞれの思い・・・のわんちゃってプレイステーション用ソフト。フルボイスのアドベンチャーゲームとしてオリジナルストーリーを展開した作品のようだが、未所持につき詳細は不明。
爆れつハンター まあじゃんすぺしゃるプレイステーション用ソフト。シリーズキャラを使ったイカサママージャンらしいが、未所持につき詳細は不明。
ブルーシード 〜奇稲田秘録伝〜セガサターン用ソフト。原作はアニメがTV放映もされた全年齢向け近未来ファンタジーものだったのだが、メインキャラの男性の趣味が主人公のスカートめくりだった関係か「女性用パンツをアイテムとして収集する」という要素が取り入れられ、これが原因かははっきりしないが18禁判定を食らってしまった非業のソフト
露出なら爆れつのほうがよほど上なんだがなあ。


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