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ページ公開:2020/10/20


LOVE & DESTROYラブアンドデストロイ


プラットフォームプレイステーション
開発インティ・クリエイツ
発売ソニーコンピュータエンターテイメント
発売年月日1999年 12月
ジャンル恋愛アクション
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック、3ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
未完成? ボリューム不足 お色気あり ボイスだけは豊富 高難度 キャラクターデザイン:桂正和





※※※今回のレビューは核心的なネタバラシが含まれています※※※

・ゲーム概要

 プレイステーション末期に販売された「恋愛アクションゲーム」。
 週刊少年ジャンプで「SHADOW LADY」や「I"s」などちょっとエッチな恋愛漫画を連載していた桂正和氏をキャラクターデザインに起用し、ロボットシューティングと恋愛シミュレーションという異なるゲームジャンルをひとつに表現した作品である
 ・・・はずなんだけどなぁ

 Production I.Gによる豪華なアニメムービーを収録し、開発時期もあってグラフィックや操作性などにもソツのない仕上がりなのだが、ある致命的な問題を抱えた本作について見てみることとしよう。


・Q-TRON

 本作のジャケットを飾るのは桂正和氏のデザインによる三人の人造美少女、「Q-TRON」たちだ。
 人類を侵略者による滅亡の危機から救うべく「兵器」として開発された彼女たちは、しかし人間同士がお互いを思いやる気持ち「S.E.E.D.」を攻撃のエネルギーとして使用するよう宿命づけられている。
 外見通りの年頃の少女として、泣き、怒り、恐れる彼女たちに笑顔を与え、絆を育むことで人類に希望をもたらすのはキミだ!とそういうニュアンスだ。

 ・ViVi(ヴィヴィ) (CV:本村真生)
 「いいか!オレはオマエを認めたわけじゃないからな!ふんっ!」
 赤を基調としたトライアルモデルQ-TRON。戦闘用に作られたという意識が強く、それが口の悪さや負けん気となって表れている。
 髪型は肩にかからないショートヘア、コスチュームは軽装でお尻周りに肌の露出がある。

 ・LuLu(ルル) (CV:柳瀬なつみ)
 「あなたの最優先事項は、Q-TRONとのコミュニケーションです」
 青を基調としたプロトモデルQ-TRON。多くの仲間を戦闘で失ってきた記録と記憶を持ち、もの憂い気な表情を見せることが多い。
 髪型はロングのツインテール、コスチュームはギリギリまで体にフィットしたもので最もボディラインが表れている。

 ・KiKi(キキ) (CV:吉住梢)
 「いっしょにガンバローよ!」
 緑を基調としたレイテストモデルQ-TRON。無邪気で好奇心旺盛だが、姉的存在である二人と違い実戦経験が全くなく今一つ自信を持てないでいる。
 髪型は柔らかなショートボブ、コスチュームは奇抜だが尻尾のように伸びたプラグなどヒップラインが特に強調されている。

 ゲーム中ではそれぞれから一人を選択し、選択によって機体が決定したり攻略のヒントを提供されたりすることとなる。
 ロボットの操作においても彼女たちとの交信にボタン一つが割かれており、豊富なボイスが用意されているほか、後述するが攻略上これがかなり重要な要素として据えられている。
 またゲーム内では主人公と彼女たちの接触を描いたアニメムービー(Production I.G制作)が挿入され、この内容からどのような感情の変化があったかを選択する「ハートセレクト」という要素もある。
 これら結果の積み重ねによってエンディングが分岐するほか、ムービー自体が本作の大事な見どころになると言えるだろう。

 なお、小動物兼説明役としてエッグ(CV:高木渉)というキャラクターも登場するが、話が長いうえに他人にはせっかちというなかなか邪魔くさいキャラクターとされている。
 インターミッションの説明を全部任されてもいるのだが、正直削除して説明はそれぞれQ-TRONに割り振ったほうが良かったのではと思うところだ。


・ロボット戦闘

 さておいて、本作のもう一つの主題はロボットによる戦闘パートだ。
 視点はロボットの背後から、左右の入力は平行移動になり、ロボット本体と共にサイトを動かして狙った箇所に攻撃する形式。
 ジャンプ操作はあるがダッシュは無く、サイトを操作する煩わしさがあるので全体の操作感としては重量型の手触りだろうか。

 機体は4種類。
 最初のステージでだけ操作する簡易機体の「VIRGINAL ARMAMENT」 (概訳:処女的兵装)、
 ViViに対応する高機動ファイティングタイプ「V-SILHOUETTE」 (ブイ・シルエット)、
 LuLuに対応する重装甲ロングレンジタイプ「L-SILHOUETTE」 (エル・シルエット)、
 KiKiに対応する滞空型オールレンジタイプ「K-SILHOUETTE」 (ケー・シルエット)、
 である。

 ・・・ネーミングの手抜き感がすごいが機体デザインはそれぞれで大きく異なっている。

 ViViの機体は常にブースト移動して移動速度に優れるが慣性がかかり小回りが利かない。
 武装はレーザーカッターを放つ「ナイーブソード」と正面にタックルを仕掛ける「スクリュータックル」、あとは申し訳程度のバルカン。
 扱う上ではスクリュータックルをいかに決めるかと言いたいところだが、攻撃のスキが非常に大きいうえ一部の敵には接触ダメージがあるため基本はナイーブソードだけで問題ない感がある。

 LuLuの機体は移動速度が遅いうえ左右への移動に旋回を必要とするため小回りが利かない。
 武装はロックオンミサイルの「ハートホーミングミサイル」と攻撃距離の撃ち分けが可能な榴弾砲「プラトニックスプレッドボム」、あとは申し訳程度のバルカン。
 プラトニック〜はボスを瞬殺できる強力な武器で使用する際にはロマンあふれる変形ギミック付きだが、移動速度が一層落ちるうえ自機で敵が隠れてしまうので狙撃にはイマイチ使いづらい。

 KiKiの機体はジャンプ力が非常に高くボタンを押し続けて滞空できるという特徴があるが、空中移動時は視点が大きく傾くうえ敵との角度が開いてサイト操作が一層煩雑になる。
 武装は中距離ホーミングビームの「パピーレーザー」と自動攻撃するビットを射出する「プリティビット」、あとは申し訳程度のバルカン。
 ビットは性能が高いうえ、ジャンプや旋回によってあえて敵を見失うことで強制的にクールダウンし容量以上の攻撃を仕掛けることができるというバグじみた特徴がある。

 ・・・簡易機体は移動にクセが無く小回りが利く。
 武装は申し訳程度のバルカンしかないがステージ内容的に火力十分で、立ち止まってサイト操作に集中できる程度の余裕はある。
 これを任意にカスタマイズさせてゆくような形であればもう少し快適にプレイできたと思うし、実際ゲーム内ではQ-TRONとの絆でそれぞれの機体に「パワーアップしてゆく」、「パワーアップの方向性を決める」という表現もあるのだが、残念ながらゲーム内ではクセの強い3機体からどれかを選択するのみ、ステージの成績の累計によって攻撃力など?(実感できず)の基本性能が上がるという形式に留まっている。

 さほど新鮮な要素があるわけでもなく、率直な所「ロボットはオマケ」と表現したいほどである。


・あらすじ

 世界に突如として現れた謎の破壊物体群、「ジャム」。
 現代兵器の一切が通用せず後退を強いられた人類は二十数年が経過してようやくジャムに対する有効打「S.E.E.D.」を発見する。
 「人々が互いを思いやる気持ちをエネルギーに変える」このテクノロジーを有効に扱うため、人類はさらに十数年の時間をかけて「S.E.E.D.」の運用にかなうべく少女の姿形を採用したアンドロイド「Q-TRON」と、戦闘用ロボット「バトルポット」を実用化した。
 ようやくの反撃はさらに十数年を数え、いよいよ人類はジャムの殲滅を果たすかに見えたが、しかし遂にジャムの支配者たる「マスタータイプ」が覚醒したことによって人類の抵抗は終焉を迎えることとなった。
 たったひとつ、3人のQ-TRONとバトルポットを乗せた輸送機を「すべてのはじまり」へとタイムワープさせたことを除いて・・・。

 現代。普段通りの日常を送る日本上空に謎の破壊物体「ジャム」が姿を現した。
 しかし、かつての歴史には無かった違いが・・・それを追うかのようにしてもう一つの謎の物体が、Q-TRONたちを乗せた輸送機もまた姿を現す。
 普通の「少年」であったはずの主人公は、事態も把握できぬままQ-TRONの「マスター」に指名されバトルポットへと押し込まれるのだった。

 初めての戦闘を終えた少年は、それが夢であったかのように自分の部屋で目を覚ます。
 あわてて窓からの景色を確認したが、そこにはジャムによって破壊されつくした世界が現実として存在していた。
 記憶を頼りに改めてQ-TRONたちの元へ向かった主人公は、「1年」という猶予を告げられる。
 「1年」後にジャムの本格的な侵攻が始まり世界が破滅すると言うこと、「1年」をかけてパイロットとしての腕を磨かなければならないこと、そして「1年」をかけて育むQ-TRONとの絆こそが最大の武器になると言うこと・・・。

 VR空間でバトルシミュレーションを積む日々の中、しかし予想を超える形でジャムの襲撃が始まってしまう。
 最悪なことにこの襲撃によってQ-TRONたちが機能を停止。
 唯一少年と、少年とプライベートの時間を過ごしていた一人だけがジャムに対する希望として残された。
 最後の決戦に挑んだ少年は、最愛のQ-TRONから彼女の存在を犠牲にして放つ最終兵器「ハートブレイザー」のトリガーをゆだねられる。
 破壊の中枢に姿を現したマスタータイプの圧倒的な力を前にして、少年は――。

 最後の戦闘を終えた少年は、それが夢であったかのように自分の部屋で目を覚ます。
 あわてて窓からの景色を確認したが、そこにはジャムの出現などなかったかのような日常が現実として存在していた。
 記憶を頼りに改めてQ-TRONたちの元へ向かった主人公は、彼女たちの痕跡のない世界に寂しさを残したまま立ち去るのだった・・・。
 ―終わり―


・ゲームボリューム

 ・・・って終わっちゃったよ!? Σ(゚Д゚ ;)

 つまり本作の何が問題かと言うと、実は本作には「育成」や「デート」といった長期的に取り組む要素が無く、全7ステージ(うち一つ使いまわし)を攻略したらおしまいという簡素なロボットシューティングゲームでしかないのである
 オープニングステージ1つの後「1年」の猶予が提示されるはずなのだが、この内容は3人のQ-TRONそれぞれを想定したステージが1つずつあるだけ、さらにそのうちから1つをおさらいしたらあとはセーブ不能のラストステージ2つと言う流れなのだ。
 正直詐欺だと思う

 しかも、先述の通り3機のメインロボットはそれぞれ操作にクセが強い。
 にもかかわらず本作のステージは「それぞれに初見殺し要素のあるボスとの一騎打ち」、「制限時間はわずかに5分」という厳しい内容。
 はっきりいってぶっつけ本番の初プレイでは時間切れでの失敗が濃厚だと思うのだが、きちんとボスを倒さないとQ-TRONとのアニメムービーはスキップされてしまうというキツいおしおき付き。
 自身の体験として、初プレイでは操作の練習をしているうちに時間が切れてラスボスも門前払い、Q-TRONとのアニメムービーはストーリー上必須の2・3本だけという物足りなさでバッドエンドを迎えた。

 ラスボス戦で厳しかったのは、またきちんとスコアを稼いでいないと機体が強化できず弱い状態のままで放り出されることになったという都合もあるようだ。(あまり強化は実感できないのだが。)
 この点不条理だと思うのだが、攻略に苦戦する下手な人はスコアを稼げないので難易度が高くなり、もともとスコアを稼げる上手い人は機体が強化されて難易度が下がる、と難易度調整のベクトルが逆に働いてしまっているわけだ。
 アーケードゲームなど硬派なシューティングゲームにおいてはままある仕様ではあるが、本作ではQ-TRONとの絆によるパワーアップによって補えることを期待したものである。

 が、この「絆」に関してもまた問題がある。
 実のところQ-TRONの好感度は「ステージ中のQ-TRONとの交信回数」によって上昇するという仕様であり、それもあえて時間をかけて回数を稼がないとシナリオ分岐の目標数に満たないという数値設定。
 十分な好感度を稼いでいるとアニメムービーが通常より長いバージョンに差し変わったりQ-TRONの反応が変わったりするのだが、そのノルマがかなり多く通常プレイの範疇で目にするのは難しいだろう。
 この仕様はノーヒントに近く、スコアとハートセレクトの選択という一見攻略に重要な要素はほぼほぼ無意味である。
 本来ゲームに慣れ、素早くステージをクリアできるようになるとスコア評価も高く喜ばしさがあるが、これはエンディングにおいてはなんにも評価されず、むしろQ-TRONの好感度を十分に稼ぐことが出来ていないのでベストエンドには到達不能と言うことになるわけだ。
 ベストエンドを目指す場合はボスを放置して通信ボタンを連打し、ランダムな汎用セリフに何度も耳を傾けるというどう考えても不必要な工程を踏んで低い評価に甘んじて行かなければならないのである。
 どの角度から考えても面白くない
 また、ただでさえ煩わしい操作系においてさらに交信ボタンを連打する手間をかけなければならないというのもよろしくない。

 ・・・もしも「1年」の内容が細かなスケジュールを持ち、予定を訓練に割り振ったりデートに割り振ったりしてゆく内容だったならばまるで勝手が違っただろう。
 ロボット操作が苦手であってもデートを通して育んだ絆で機体が強化されれば難易度を緩和できたろうし、あるいは恋愛要素に関心が薄くとも戦闘を通して好感度を稼げればグッドエンドに到達しやすくなったかもしれない。
 また日常的な出来事を通して「Q-TRON」たちの人間とのギャップを描き、彼女たちの設定を掘り下げつつ特別な思い出を作るなんて見せ方があってもいい。
 長期的な進捗を持つことはロボットを小刻みにカスタマイズするという要素にもつながっただろう。
 ともすればロボットアクションと恋愛シミュレーション、両方の利点を取り入れたゲームとして評価できていたように思う。

 しかし実態は・・・恋愛部分をプレイするにはロボット部分の熟練が必要、かといってロボット部分を十分に攻略できても好感度を稼ぐ手間をかけないとベストエンドを逃してしまう、と組み合わせたことがお互いの足を引っ張る形にしかなっていない
 そもそも無難であまり見るべきところがない本作のロボット要素。オマケだろうと踏んでいた要素でゲームの大部分が終わってしまっているガッカリっぷりは耐えがたく、「裏切られた」とさえ思う内容である。

 なお「ハイスコア」要素にも対応しており、この点アーケードゲームのようなプレイ感を目指したのだろうかとも思うのだが・・・機体ごとの集計が無く性能差に不平等なうえ、プレイヤーアカウントの概念が無く周回ごとに名前入力し直し、しかも名前入力中にエッグから「早くするのだッグ〜」と催促が飛んでくるなどやはりプレイヤー目線が抜けている感が否めないところだ。


・まとめ

 桂正和氏の美少女キャラクターを大きくアピールしておきながら、ゲーム内容自体はまるで別の方向性に向かっている一作。
 恋愛要素を期待すると硬派なロボットアクションを押し付けられ、ロボットアクションを期待するとあえて攻略を放置する作業が求められる、しかしてゲームボリューム自体は貧弱で細部を見ると何かと粗があるという調子であり、全方面をガッカリさせるだろう問題作
 発想自体には可能性を感じるほか、ところどころキャラクターの説明とゲーム内容に齟齬があるあたり未完成の物を無理やりまとめた結果なのか・・・とでも思ってしまいたいが、結果として実物はこの通りだ。
 いちおう、肝心のQ-TRONはボリュームに乏しいながらしっかりと魅力的に描かれており、手放しにハッピーエンドとは言えないちょっとさびしさの残る結末があることも桂正和氏のファンであれば勧められると思うのだが、ハードルは高い一本だろう。


・ワンポイント攻略

 ・オプションから確認できるムービーの再生状況。ムービーの名前や内容を確認できないのでぶっちゃけ意味不明なマークシートどまりなのだが、バッドムービーを含め100%に到達するとようやく再生機能がアンロックされるぞ。
 ・スタート+セレクト同時押しでソフトリセットでき、ムービーの履歴を埋めたまま素早くオプション画面に移動することができる。上記コンプ時に便利だろう。





・関連作品

・「サクラ大戦」シリーズSSのロボットシミュレーション。
ロボットシミュレーションと恋愛シミュレーションを組み合わせた内容で、斬新ながら親和性の高いゲームシステムや「アニメ」を意識した作風、幅広いメディアミックスによって大ヒットしセガの看板タイトルの一つとなった。
・ヘキサムーン・ガーディアンズPSのロボットシミュレーション。
ロボットシミュレーションと学園シミュレーションを組み合わせ・・・るはずだったのが実現しなかったらしい一作。


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