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ページ公開:2019/12/31


Anotherアナザー Mindマインド


プラットフォームプレイステーション
開発スクウェア
発売スクウェア
発売年月日1998年 11月
ジャンルつっこみゲー
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック、4ファイルまで


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
感覚的 サスペンス 実写 ボイス少な目 イージー 「ブリザラ中毒」ってなんだよ





あなたは、誰?


・ゲーム概要

 1998年年末、時期としては「FFVIII」の発売を翌年2月に控えるころにリリースされたテキストアドベンチャーゲーム。
 「武蔵伝」のおまけディスクなどであちらと同時期に広報が行われ、一人たたずむ女子高生が「あなたは、誰?」と語りかけるという電波系のキーワードと実写取り込みゲーであることを押し出していた奇ゲー臭プンプンの一作
 実際のジャケット裏では本作についての説明として、

 史上初の「つっこみゲー」
 主人公の言動に対し、プレイヤー側から「ちょっと待て」とツッコミOK!
 つっこむか否か、その判定がシナリオに影響をおよぼす。


 ・・・などと書かれており、多くの人はこの段階でああスラップスティック系のバカゲーなんだなという印象に決着するところだろう。

 間の悪い事に翌12月にはお笑いコンビの「ナインティナイン」を主人公にしたタレントゲー、「ナイナイの迷探偵」というソフトがこれまた「世界初のツッコミゲー」というコピーでリリースされてしまい、こちらを知っているとますますその印象が固まってしまったものと思われる。


・ゲームシステム

 では先ずは本作の目玉となる「つっこみ」について見てみよう。
 本作は女子高生「葉山瞳」を主人公としつつ、プレイヤーは彼女の中で目覚めたもう一つの意識「真野俊平」として彼女を見守り導いて行く役割を担う。
 (この設定がもう思春期の黒歴史をキリキリと刺激するわけだが、ともあれ。)
 プレイヤーが彼女自身を操作することは一切なく、行動の決定権も彼女にあるが、日常におけるふとした選択や危機的状況において告げられる冷静な助言はほぼそのままに瞳を動かすこととなる。

 また逆に、瞳の側から助言を求めてくることも多い。
 ゲーム内ではこれらの「助言」を単語の組み合わせで対話内容を作文する「ダイアローグシステム」として設計しており、自分の意思を柔軟に表現し瞳に伝えることが本作の体験のキモとなっているわけだ。
 例を作ってみよう。以下の状況は創作だが、例えば・・・


 瞳「はっ!?・・・今、二階で何か物音がしなかった?」


     
 __

 


 ・・・という具合に、「主語」、「動詞」、「活用形」、「対象」、といった形で単語を組み合わせて多彩な意思表現と物語の変化を可能としているのである。
 なんかせがれいじり(同年6月)でもこんな作文をやった気がするが、重要度は言うまでもなく・・・よくよく妙なタイミングに恵まれてしまったゲームである。

 一方、「つっこみ」というのは瞳が迷っているときに「見守る」か「口を出す」かをワンボタンで決定できる以上の要素では無い。
 瞳は社会常識に疎い天然少女でも注意力散漫なドジっ娘でもない常識人で、ボケ倒しを期待できるような人物ではないのだ。

 ・・・アピールする部分とやり方を間違えすぎだと、こういうツッコミは準備されていないのが嘆かわしい。


・ストーリー

 交通事故によって意識不明となっていた葉山瞳は、意識を取り戻したとき自分の中に「真野俊平」と名乗るもう一つの意識が住み着いていることに気付く。
 自分の名前以外ほとんどの記憶を失っていると語る真野であったが、瞳には不思議と恐怖心は無くその正体を探ることを約束した。
 しかし、真野の名前に心当たりがあるという看護婦・村井の失踪と変貌をはじめ瞳の周囲には様々な怪現象・事件が巻き起こるようになり、瞳は突如目覚めた事件を「予知」する能力と真野のアドバイスによってこれらを切り抜け事件の真相に迫ってゆくこととなるのであった・・・。

 ・第一章「あなたは誰?」
 ・第二章「TIAMATの呪い」
 ・第三章「明神池の怪」
 ・第四章「夕暮れ爆弾男」
 ・第五章「夢猫」
 ・第六章「メリーゴーランド」
 ・第七章「明かされた過去」
 ・第八章「隠したもの隠されたもの」
 ・最終章「アナザー・マインド」

 キャスト:
 ・松下恵(葉山瞳)
 ・伊藤かずえ(向井夏子)
 ・高知東生(明円輝夫)
 ・横山夏海(高木真理子)
 ・松永博史(猿渡純)
 ・筧利夫(桐原育夫)
 ・山下真司(鳴海健一)
 ・菊池万里江(渡瀬鈴・玲)
 ・田中ちなみ(村井薫)
 ・吉満涼太(阿久津安弘)
 ・石堂夏央(亜月レイカ)
 ほか

 ・・・と本作は土曜9時(今は10時か)の日本テレビ系テレビドラマを彷彿とさせる構成であり、毎話異なる舞台で話が展開される。
 第二章は学園祭、第三章は温泉回、第四章は爆弾魔・・・という具合で、おそらく脚本の担当もそれぞれ異なるのだろう。
 (逆に、物語の大筋が固まっておりゲームオーバー以外の分岐に乏しいという難点も見え隠れするが・・・。)

 それから、キャストには
 ・あなた(真野俊平)
 を加えよう。

 「真野俊平」は実は明確な設定を持つ存在であり、プレイヤーが自由に設定を考える分身というキャラクターではない。
 しかし性格の細部にはプレイヤーの言動が反映され、瞳からも「信頼できるが親しめない人物」や「身近だけど冗談ばかり言ってる人」といった異なる評価を受けることとなる。
 また「主人公の意識の中で助言を与え行動や成り行きを見守る存在」とはテレビドラマの視聴者よりも一歩踏み込んだ存在、すなわちテレビゲームのプレイヤーだからこそ実現する配役だと言える。
 テレビドラマの中に参加して物語を組み立ててゆくという楽しみは、期待して間違いないだろう。


・心理テスト

 なお、本作ではところどころで「心理テスト」が登場する。
 これはプレイヤーに判定結果を見せることで自己像を意識させ、ゲーム内で判定されている「真野俊平」により感情移入しやすくする狙いがあるのだろう
 ・・・と思っているが単に考えすぎのおまけかも知れない。

 心理テストを受けるシチュエーションというのも瞳がいわゆる多重人格を疑われてセラピストの厄介になるというかなり拒否感を感じるシチュエーションで、あえて不正確な結果に誘導しているとも取れるのでまあケロリと流すことにしよう。

 もう一つクリア後のおまけとして用意されているものもあるが、これはプレイするのもしないのもお好みだ。


・まとめ

 と、サスペンス要素のあるテレビドラマを思わせつつ「物語に参加する」というゲームならではの体験を用意した一本。
 内容を誤解するのに十分な前情報が揃いすぎているが、本作は決して「つっこみゲー」と集約されるようなバカゲーでは無く、熱中して読み込める物語性がある内容だ。
 当時奇異に映った実写ゲーという特徴も、現代ではかえってグラフィックに古臭さを感じづらい普遍性として評価できるだろう。
 家庭用ゲームとしてはやや対象年齢が高めである感もあるが、テレビドラマ好きならば期待して損のない一作であると思う。





・関連作品

BRAVE FENCER 武蔵伝おまけディスクに本作のPVを収録。
とはいえ実写映像で一人たたずむ女子高生が「あなたは誰?」と問いかける電波気味な内容であった。
・チョコボの不思議なダンジョン2おまけディスクに主演:松下恵(葉山瞳)のインタビュー映像を収録。
とはいえやはりゲーム内容の説明は一切なく、ゲームの制作風景とは思えない撮影現場を映す映像が続く内容であった。
・ナイナイの迷探偵本作に先を越されてしまった「世界初のツッコミゲー」。
かの「さんまの名探偵」の系譜にあたるゲームなのだが、かなりコメディに寄せたミニゲーム中心の作風となり、そのうえでギャグがいまいちだという辛口の評価が目立つようだ。
・せがれいじりエニックスのバカゲー。
単語を組み合わせてシュールな作文を作りショートムービーを眺めるというシステムがあった。


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