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ページ公開:2019/09/24


西遊記さいゆうき


プラットフォームプレイステーション
開発福気
発売コーエー
発売年月日1999年 11月
ジャンルシミュレーションRPG
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック
ポケットステーション用ミニゲーム3ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
オーソドックス 意外とオリジナリティあり イメージ通り バリエーション不足 稼ぎ必須 テーマ曲はタケカワユキヒデ(ゴダイゴメインボーカル)
「MAGIC GOKU」





・ゲーム概要

 1999年に発売されたシミュレーションRPG。
 極めて検索の利便性が悪いタイトル通り西遊記を題材とした内容で、破天荒な孫悟空やおとぼけものの猪八戒、クールな沙悟浄・・・が三蔵法師を妖怪の魔の手から守りながら旅するというあらましだ。
 シミュレーションゲームとしては仲間たちが妖怪本来の姿を表してパワーアップする「神獣変化」が一つのハイライトを作っており、また要所要所で挿入されるアニメムービーが本作の見ごたえとなると言える。
 ・・・PS末期においてこの内容では印象の乏しさに不安を覚えるところだが、実際姉妹品に当たるコーエー版「封神演義」のように続編を展開することもなく、本作は埋没した一本と言うところだろうか・・・。


・あらすじ

 あらすじといっても、本作はかの有名な「西遊記」をなぞったものだ。
 実在の人物「玄奘三蔵」が唐(中国)に仏教を広めるため天竺(インド)にお経を取りに行った取経の旅を、石猿の妖怪で仙人の修行を積んだ「孫悟空」や三蔵の命を狙う悪の妖怪兄弟「金角・銀角」といったキャラクターを取り入れることで一大冒険活劇に展開した歴史的傑作である。
 物語の冒頭は「孫悟空」の来歴によって始まり、三蔵法師や仲間たちとの出会いを経て「八十一の難」という様々な困難にオムニバス形式で立ち向かってゆくというものとなってゆく。

 現代我々が目にする様々な翻案版ではこの「八十一の難」については正確に訳すというよりぶっちゃけマンネリを避けて面白いエピソードだけピックアップして作品化しているわけだが、本作もおおむねそんな感じだ。
 ただ、シミュレーションゲームにするという都合上か「朱涼鈴」、「桔花公主」という女性キャラクターの登場や、キャラクターが加入する際のエピソードの変更などアレンジが多数加えられており、特に「地上に散った『神将』を集める」というオリジナルの目的や敵も加えられている。
 世界観やキャラクターのデザインが古代中国的なためオーソドックスな「西遊記」である印象を受けるが、本作では本作だけの「西遊記」を楽しむこととなるだろう。


登場人物

 ・三蔵法師
 本作の主人公でプレイヤーの分身。本作では男女を選択できるという異色の特徴がある。
 世間知らずなところがある寺の小僧だが、観音菩薩直々に受けた使命を背に世のため人のための険しい旅を続けてゆく。
 本作では経典の他に地上に散った「神将」を回収して回ることも使命づけられており、これはストーリー上でもゲームバランス上でも重要な要素となっている。
 「木」の属性を持ちヒーラーとしてパーティーを補助するほか、「神将」を召喚して戦局に応じた柔軟な役割をこなすこともできる。

 ・孫悟空
 言わずと知れた主人公格の暴れ者。本作では野性味のある長髪の青年といったデザイン。
 「火」の属性を持ち攻撃力を中心にまんべんなく能力が高く、固有スキルとして筋斗雲で高低差を無視した長距離移動が可能な切り込み隊長。
 (「身外身の術」を範囲攻撃として覚えるはずだが、条件を失念した)
 神獣変化では指定地点を中心に爆発を起こす技を多く覚え、盗賊など多数のザコが出るマップでは優れた爽快感を得ることができる。

 ・猪八戒
 原作では天界を追放された武人が手違いによって豚の妖怪として転生してしまった姿。
 本作では初めから豚人間そのものと言った食いしん坊の妖怪だが、温厚な性格で柔和な表情が多い。
 「土」の属性を持ち一行で最高の攻撃力を誇るが、いかんせん鈍足なため前線への到達が遅れて何もできずに終わると言うことも・・・。
 神獣変化では一転して移動力が倍に向上し、全キャラクター中最高威力の近接攻撃を習得するためこれを叩き込んで速攻するボスキラーというロマンがある。

 ・沙悟浄
 原作では猪八戒と同じく天界を追われた役人が川で人を喰らう妖怪となっていたもの。
 本作では妖怪ハンターが呪いによって妖怪になってしまったというダークヒーロー調のキャラクターで、痩せ身でスキンヘッドの悪人顔 知性派クールガイといったデザイン。
 「水」の属性を持ち孫悟空と同格の能力を持つアタッカー。物理よりスキルへの適性が高いため射程や属性の過不足を埋めるような柔軟な役割を担わせると良い。
 神獣変化では範囲攻撃も強力だが、マップ全域から好きな座標を指定して狙撃できる「暗刃」の使い勝手が突出している。

 ・朱涼鈴
 原作では三蔵法師が乗っている馬で名前は玉龍。
 正体は龍の化身したものであり、本作では馬では無く一人の美少女として旅に同行する。
 「金」の属性を持ち、速度や移動力に長ける。シンプルにアタッカーとして使いやすいほか、速度や移動力を生かせば行動不能を治療するヒーラーや敵を誘導するおとり役といった柔軟な運用も可能。
 神獣変化では地形や高低差を完全に無視して移動できる飛行ユニットになり、これまた移動する間だけ変身するといった一風変わった運用ができる。

 ・桔花公主
 ゲームオリジナルキャラクター。弓を武器とする淑女で、蝶が変化した桜の木の精霊。
 神将と接触した影響で夢の世界に囚われていたが、一行に救われたことで恩返しのためにと旅に同行するようになる。
 「木」の属性を持ちスキル関連の能力が突出しているほか、通常攻撃でもメインメンバー唯一の遠隔ユニットとして重要な火力支援を担うこととなるだろう。
 神獣変化では飛行ユニットになるほか広範囲大回復スキルや広範囲の敵を「魅了(自動的に利敵行動)」するスキルといったからめ手を多く習得する。

 ・牛魔王
 孫悟空の義兄弟で共に天界などで暴れまわった仲。現在は多くの妖怪を配下として大陸の広い範囲を影響下に置いており、一行の旅路の中で対決する運命にある。
 本作では鼻ピアスにパーマのかかったロン毛、派手で露出の多いファッションなど「そっちの方々」をイメージしたデザインである。
 また、ガラの悪さの表現なのか牛魔王一味はエセ関西弁やエセ土佐弁で話すというキャラ付けがなされている。

 ・鉄扇公主
 日本では「羅刹女」とも。牛魔王の妻で「芭蕉扇」を操る妖怪。
 美人だが気が強く牛魔王を完全に尻に敷いている。

 ・如意真仙
 村人のための霊水を独占し苦痛にあえぐ人々から金品をむしり取っていた、原作における牛魔王の弟。
 本作では最序盤のボスとして登場し、設定も地方の元締め程度にスケールダウンしている。

 ・独角児
 ゲームオリジナルキャラクター。牛魔王の部下の一人でサイの妖怪。
 唐の管理を任された実力者で旅人を捕らえては売り払うという真似をしていたらしいが、三蔵一行に目を付けてボコボコに返り討ちにあって以降はやられグセが付いてしまっている。

 ・マハラカ
 ゲームオリジナルキャラクター。桔花公主を夢の中で捕えていた悪趣味な人物。
 三蔵の錫杖や神将の入手を目的としており、妖怪とも仙人とも異なる力を持つほか同様の行動をとる複数の仲間がいるようだが・・・?

 ・金角・銀角
 原作では平頂山で三蔵一行を襲撃した双子の妖怪。
 天界由来の5つの宝具を操っており、その規格外の威力から一行をあわや全滅と言うところまで追いつめた。
 本作では中盤に差し掛かろうかというあたりで平頂山に到達し、そこの妖怪として対峙するのだが・・・。

 ・観音菩薩
 仏教の経典を広めるため、様々な根回しをして玄奘三蔵を天竺に導いた天界の超常者。
 一行が危機に陥った時に様々な形で助け舟を出すワイルドカードである。

 ・釈迦如来
 500年前に天界で暴れまわる悟空を懲らしめた天界の重鎮。
 残念ながら本作に本人の姿は一切登場しない。


戦闘システム

 本作のマップは正方形の方眼を見下ろした形式で高さの概念あり(比較的立体度が高い)、向きや高低差によるダメージ増減あり、反撃なし、明示はないが敵味方全ユニットの行動が一巡するのを待つターン制。
 またマップ内の演出が多くギミックを「操作」するコマンドがあり、特定のマップではこれを利用して戦闘を有利に展開することができる。
 ほか中国にちなんでか属性の概念が五行となっているが、これは得意一つ苦手一つが設定されたのみのシンプルなものである。

 基本システムにはあまり特徴がない本作だが、そこにアクセントとして加えられているのが「神獣変化」と「神将召喚」だ。
 「神獣変化」とは三蔵法師以外のパーティーメンバーが一時的に妖怪としての本性を表して巨大化するというもので、戦闘ごとに一定量使える「神気」を消費して発動することができる。
 孫悟空は大猿、猪八戒はワーボア、沙悟浄は半魚人、朱涼鈴はドラゴン、桔花公主は蝶・・・といった姿になり、HPをはじめとしたステータスが大幅に強化されるほか「神気」を消費する強力なスキルを使用することが出来るようになる。
 一度に変化できるのは一キャラまで、発動中は回復スキルの対象にならない、通常のスキルが使えなくなるので装備によっては射程が落ちる、といった制約もあるが、属性の有利不利を見て適切なキャラを変身させておけばその戦闘がぐんと楽になるのは間違いなしだ。
 この「神気」の最大値は戦闘後の評価によって成長し、早いターンで多くの敵を倒してクリアするほどより多く神獣変化を活用できるようになってゆく形となっているので使い渋らずガンガン使ってゆくようにしたい。

 「神将召喚」は残る三蔵法師の必殺技と言うところで、MPを消費することで一定ターンの間「神将」を召喚しパーティー全体を補助したり強力なスキルを使用可能にしたりという恩恵を受けられるもの。
 例えば「西王母」であれば三蔵のターンごとに味方全体のHPを回復するほか射程2以内の敵に魅了付きの攻撃を仕掛ける「二竜剣」が使えるようになり、「感応仙姑」であれば味方全体(三蔵除く)のMPを回復するほか射程5の広範囲に攻撃が届く「乾坤弓」が使えるようになる、といった具合だ。
 基本的に三蔵本人は非力なキャラクターだが、これら神将のスキルを活用すれば攻撃面でも前線での活躍に足るものとなるだろう。
 なお「神将」は原作(および「封神演義」)に登場するキャラクターで構成されており、物語の進行とともに仲間が増えてゆく形で旅の進捗を実感させる要素ともなっていると言える。

 さて、本作はキャラクターの強化システムとしてレベルアップに加えて武器の強化や防具の更新、およびアクセサリやスキルを「道具」として6つまで取捨選択するといった要素がある。
 特に「道具」の設定次第でキャラクターは自己バフ肉弾特化・範囲回復持ちアタッカー・マルチ属性キャスターなどなど多彩な方向性を見せるので、ゲーム慣れしたプレイヤーはここでアイテム収集に熱中したりビルドの腕を見せたりしたいところだ。
 ・・・ただ、本作は敵のAIにランダム性が強く戦術が不安定、さらにストーリーを最短ルートで進めようとすると敵Lvのインフレが激しく攻略に詰まりやすいなどあまりゲームバランスが良くない。
 幸いにして本作には気のすむまで経験値や軍資金を調達できる「稼ぎ」用の要素があるためコツコツやっていれば突破できるのだが・・・。
 次の項で、これを含めたゲームの進行について詳しく見て見るとしよう。


・進行システム

 本作は物語を章仕立てに区切っており、章ごとに用意されたワールドマップの端から端まで到達するころに物語が一段落して次の章に移るという構成を採っている。
 ワールドマップの中には関所や町、通過点となる地形などが示されており、三蔵一行がこれらに侵入するとイベントが発生して物語と戦闘が展開されるという形になる。

 この旅程の中で重要なのは「町」の存在と施設の機能だ。
 町には規模の差があって全ての施設が揃っているとは限らないのだが、

 ・道具屋・・・防具や「道具」(本作のアクセサリー類)を販売している。町ごとに品ぞろえが異なるほか、個数限定の「掘り出し物」がある。
 ・薬屋・・・消耗品の回復アイテムを販売している。小さな町でもこの施設は確保されていることが多い。
 ・鍛冶屋・・・武器のグレードアップを行うことができる。本作の武器は各キャラクター固有のもので、主にこのアップグレードによって攻撃力や特性が充実してゆくこととなる。
 ・道場・・・模擬戦闘で経験値を稼ぐことができる。模擬戦闘と言うことで経験値以外の戦利品が無く神獣変化もできないがゲームオーバーにもならない。
 ・酒場・・・「仕事」という形でお使いクエストを受注して資金を稼ぐことができる。見返りに応じて道中で戦闘が発生するリスクが高まる。
 ・酒場(賭け)・・・コインを購入してミニゲームをプレイすることができる。景品はレアアイテム。

 といった施設を利用することができる。
 酒場や道場が「稼ぎ」要素となっていて、本作は多少戦術に不安があってもレベリングで突破できるカジュアルな設計になっていると言える。

 言えるのだが・・・。
 厄介なことに本作は一度攻略したワールドマップには戻れない仕様であり、かつ町ごとの道具屋の品ぞろえは上下互換と言うわけでもなくそれぞれ固有のものとなっているので人数分買いそろえるまで先に進むのがためらわれる感がある
 特に基本的な「回復」スキルなどは浪費が多い上位スキルより小刻みに回復できるものの方が重宝することもあり、ゲーム序盤から金策の重要度が強く感じられるだろう。

 また、軽く触れた通り本作は敵のLv設定が厳しい。
 一度の戦闘では1〜2Lv上がる程度のはずなのだが、次の戦闘に入ると敵のLvはそこからさらに2〜3も上というような格上相手の戦闘がやたら多いのだ。
 こうして広がってゆく戦力格差を戦術のみで埋めるのはなかなか厳しい話であり、本作では適度に「道場」でのレベリングを必要とすると言っていい。

 ・・・「道場」は消耗品補充の「薬屋」と同じくらい頻繁に配置されており、この見返りに乏しいレベリング作業の「適度」とはゲームを少し進めて町に付くたびに消化する想定であるようである
 このうえで本作は敵とのLv差によって獲得経験値に補正がかかるため「まとめてレベリングしてパワープレイ」という真似もやりづらく、レベリング周りに関してはなんとも面白みに乏しい。
 幸い、道場での戦闘はゲームオーバーにならず「オートバトル」という機能があるので放置して漫画でも読んでいればいいわけだが・・・。
 モーションの高速化はなく演出スキップも限定的、単純に時間がかかるうえゲームをプレイするにはゲームをプレイしないことがよいという禅問答に至るのは頭を抱えるところである。

 早く続きが読みたくなる「西遊記」という題材に対してこれら経験値や資金回りの設定はかなりマイナスに働いてしまっており、ゲームテンポの悪さが本作最大の難点として全体の感触となる所だろう。
 エピソードをもう少し短くまとめて旅の途中で再プレイできるようにする・・・あたりが理に適う形態だと思うのだが、本作の惜しい部分である。


・ポケットステーション

 なお、本作はポケットステーションのミニゲームにも対応している。
 内容はまあ置いておくとして、景品は酒場の賭けで使えるコインである。
 本体のミニゲームでは賭けの胴元がやたら強いためセーブ&ロードを駆使しても稼ぎとは到底言えないようなペースになるので、実質的にこのコインで交換できる景品はポケットステーション用の特典と言うところだろうか。
 ・・・当然のようにここの景品も期間限定レアアイテムなので、アイテム収集にこだわるとそれこそ500年もかかろうかという足止めになってしまうのだが。
 べつに必須ではないし割り切った方がいいものの、なんとも本筋以外に時間をとりたがるゲームである。


・まとめ

 日本人なら誰もが知る「西遊記」を、原典の世界観から違和感なくシミュレーションゲーム化したといった趣のオーソドックスな一本。
 とはいえストーリーにはオリジナル要素も多く、西遊記に詳しい人も詳しくない人も一個の作品として楽しむことができる内容だ。
 ただシミュレーションゲーム部分のレベルデザインが雑な感があり、ゲームテンポが悪く退屈を覚えやすいといった難点が気になる内容でもある。
 オーソドックスさも一歩間違えば没個性や既視感として捉えられかねず、決して悪いゲームでは無いのだが他のゲームと比べた時に競争力に劣るというのが正直なところだ。
 西遊記好きという方ならばチェックして損はないが、期待度のレベルは抑えめにして手に取ってみよう。


・ワンポイント攻略

 ・破壊可能な障害物には宝箱(当然のごとくレアアイテム含む)が隠されていることがある。
 町の中などイベントで一度しか訪れないマップでは特にレアアイテム率が高いので・・・気分にもよるが要注意だ。

 ・実は第2章でメインメンバー以外のキャラクターも仲間として加入する機会がある。
 ただ一部のマップではメインメンバーが強制出撃となるほか、ゲーム内の出撃枠は最大でも6枠なので全員を均等に育成する必要はない。
 (同様に全員分の装備を買いそろえる必要もない。属性に合わせてパーティーメンバーを切り替えるというのも必須ではないはずだ。)

 ・後戻りできない本作、あえて言うことでもないがこまめに別のセーブデータを残すことを強く推奨する。





・関連作品

・封神演義本作同様、コーエー・福気からリリースされた中国の古典小説を題材としたシミュレーションゲーム。
原作にも接点があり姉妹作という位置づけになるか。
週刊少年ジャンプで藤崎竜版「封神演義」が好評連載されていたためある程度知名度を後押し(実際は別物なのだが)され、後にシリーズ化も果たした。


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