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ページ公開:2018/08/07


WINGウィング COMMANDERコマンダー III Heartハート ofオブ the Tigerタイガー


プラットフォームプレイステーション
Windows95
DOS/V
開発ORIZIN
発売エロクトロニック・アーツ
発売年月日1994年 3月 (米国、DOS/V版)
1996年 9月 (日本、プレイステーション版)
ジャンルスペースコンバットシミュレータ
プレイ人数1人
セーブデータ1つ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
不便さが目立つ 淡泊 やや寂しい 吹き替えが豪華 カスタム可能 国内ではほぼ知名度のないシリーズ





・ゲーム概要

 1996年に発売された3Dシューティングゲーム。
 スペースオペラ的な世界観を題材としており、宇宙空間をバックに獣人型の宇宙人や主人公の顔のアップを描き、銀色の文字のタイトルでまとめたパッケージがどこか既視感のある一作。
 何を隠そう、この主人公はルーク・スカイウォーカー役でおなじみのマーク・ハミル氏その人である

 パッケージ裏によれば実写によるインタラクティブ・シネマとフライトシミュレーションによって構成されるゲームだとしており、映画の中に自分がいる。そして、物語がはじまる。というキャッチを掲げ、撮影や美術に携わったスタッフの面々の名を連ねている。
 スターウォーズを連想して仕方がないのと実写ゲーの地雷率が高いのと、そして「1」・「2」が知られていないのにいきなり「3」を名乗っていることで期待が止められないが、落ち着きを心掛けつつ内容を見て行ってみよう。


・システム

 本作のシステムはパッケージ裏で掲げている通りインタラクティブ・シネマとフライトシミュレーションによって構成される。
 インタラクティブ・シネマの部分で仲間との会話やインターミッションをこなし、フライトシミュレーション、つまりは3Dシューティングパートで実際にその作戦を遂行してゆく訳だ。
 ミッションは明快な目標が与えられた限られた区域内で進行するため、ステージ攻略型に近いオーソドックスな構成だと言える。

 インタラクティブ・シネマのパートは、母艦「ビクトリー号」のブリッジと兵器管制室、リビングとロッカールーム、フライトデッキとハンガー、の6画面を任意に切り替えて、仲間がいる場合はそれと会話を行うことができる。
 またフライトデッキから「作戦会議」を選べばムービーで今回の作戦が指示され、僚機「ウィングマン」と機体設定を選択してミッションを開始することとなる。

 ・・・なんとも淡泊である。
 ムービー中には仲間への反応を選ぶ選択肢が出ることがあり、これによってストーリーの展開が変わることもあるが、ムービーの大半は主人公視点で会話をこなしてゆくだけの物なのでこれといった見どころもなく物語が進んでゆく。
 当然のように母船の外に出る場面はほぼない(全く無いわけではない)し、敵船に潜入して仲間を救出したり、潜入した敵のスパイを暴いたり、主人公が居ない場でのやり取りが描かれたり、ということがまるでないためアドベンチャーゲームとしての側面が無いほか、人物の存在感が薄く映画らしさもあまり感じられないだろう。

 フライトシミュレーションのパートは、宇宙空間で機体を操作しながら敵機を撃退する、味方を護衛する、といった目標をこなしてゆくものだ。
 機首を上下左右に傾けて推力を調整することで移動、武器としては一定時間捕捉した敵に飛んで行くミサイルと、機体によっては多少の自動補正が効く機銃とがある。
 一見シンプルな操作だが本作はやたらとLRボタンの同時押しを操作に取り入れており、機体速度の調整が「R2+or×」、ブーストが「R1+R2」、次の作戦宙域へのスキップが「L1+R1」、という具合。
 母艦への着艦に関してはL1で簡易メニューを切り替えたのちL2+方向キーで母船と通信して着艦許可を得る必要があるという複雑さで、説明書も基本の説明のほか操作方法に一冊を割いているほどだ。
 一方で機首を敵の方向に自動補正する機能や急停止を行う機能はなく、それでいて機銃は着弾までラグがあり命中率に難がある設計。複雑ではあるが利便性は低く、ローテクな印象である。
 ただ、戦闘に関しては僚機「ウィングマン」の活躍に任せることもできるし、特に裏技でもなくオプションから自機の無敵設定をオンに出来るのでゲームの進行に詰まるということはあまりないだろう。

 また、本作は作戦の成否にかかわらず帰還に成功すれば物語が進行する仕様で、ストーリーもこれによる分岐が多く用意されているようである。
 DISC4枚組という大ボリュームの本作だが、物語はディスクの番号順に進んでゆくとは限らない・・・というところに攻略意欲をくすぐられるところだ。


・ストーリー

 キルラー帝国と地球連邦。この2つに種族の間では、長年にわたって戦争が続いていた。そして近年、キルラー帝国軍の猛攻により、地球連邦軍は窮地に立たされつつあった。
 クリストファー・ブレア大佐は、地球連邦軍歴戦のエースパイロットである。所属する空母コンコーディア号と共に、彼はこの戦争中、各地を転戦していた。しかし、キルラーとの激戦の渦中、コンコーディア号は轟沈し、ブレアは母艦を失ってしまう。彼を意気消沈させたのはそれだけではない。秘密作戦で出撃した恋人、エンジェルからの消息が途絶えたのだ。
 一方エンジェルは、同時に出撃した仲間と共に、キルラーに捕獲されていた。彼女の目の前で、仲間が次々と分解されてゆく。キルラー帝国の王子スラカスは言う。
 「恐るべきは彼女の恋人、名付けて”タイガー・ハート”!!」
 失意のうちに、ブレアはトルウィン提督に呼び出される。そこで受け取ったのは、空母TCSビクトリー号への着任命令だった。すでに老朽化し、戦力として数えるには問題のある船に、ブレアはあからさまな不満を抱く。

 ビクトリー号に着任したブレアを迎えたのは、館長と、かつての戦友ホッブスだった。ホッブスは、地球に亡命してきたキルラー人だが、パイロットの腕は超一流。以前、ブレアのウィングマンを務めたこともあり、2人はともに死線を乗り越えてきた無二の親友であった。再会を喜ぶぶレアだったが、すでにホッブスがパイロットの座から退き、現在はビクトリー号の副長として艦に従事していることを知る。ビクトリー号は、キルラー人であるホッブスと一緒にフライトしようというパイロットはいなかったのだ。ブレアは、乗組員たちの反感を買いながらも、かつての戦友をパイロット名簿に戻した。
 ひとくせもふたくせもあるビクトリー号の乗組員たち。ブレアは彼らをまとめ上げ、次々と困難な作戦に挑んでいく。ブレアの働きで、ビクトリー号は局地的ながらも、確実に勝利をおさめていった。
 しかし、人類の想像を超えたところで、地球は静かに、破滅への道を進みつつあった――。

 (説明書より抜粋)


 と、敵軍に恋人を捕らえられた主人公が腹に一物ある上官に左遷させられ一癖二癖ある仲間たちと衝突しながら奇跡的な戦果を上げて行く・・・という、黄金パターンそのもののミリタリー調スペースオペラである。
 映像の水準はさすがに現代では古臭く映る水準だが、それ以前にも乗組員の格好がSFらしからぬフライトスーツだったり、バーの椅子が金属製のダイニングチェアだったり、戦闘機ほかのOSが黒い背景に緑の文字が浮かぶDOS的な物だったり、と各所に前時代的な要素が並ぶのも気にかかる所である。
 なおキルラー人は二足歩行するライオンというあまりひねりを感じないデザインの着ぐるみで、高身長と逆関節の演出に履いているシークレットシューズがなんともいえない怪しさを醸し出しているのだが、猫口の造形と動きはかなりリアルなので顔のアップのシーンはわりと見ごたえが有る出来である。


・「Wing Commander」シリーズ

 と、パッケージから受けるブッ飛んだ印象とは裏腹に本作は奇をてらって作られたものではなく、あくまでもフライトシミュレーターを本文と据えてリアリティのために実写映像を取り入れた、無骨で真面目な作品だったのだった。
 実は「Wing Commander」とは米ORIGIN社が1990年より開発しているゲームシリーズで、当時先進的なグラフィックと白熱するドッグファイト、分岐する物語を魅力としてアメリカでは後にテレビドラマ化されるほどの人気を集めたシリーズなのだという。
 本作の「III」は、シリーズが正統進化してきた第三作の「III」だったわけだ。
 また、「I」はFM TOWNというPCとスーパーファミコン、メガドラCDで、「II」はFM TOWNのみで、ローカライズも行われており、この時代から知る人であれば冒頭のような反応もなかったかもしれない。

 これを踏まえて見ると、不便な操作系やSFらしからぬデザインセンスなどは「ドッグファイト」というキーワードを強調するための演出だったのかもしれない。
 複数の動作を同時にこなす必要のある操作は煩わしい分操作している感覚が強く、敵機を正面に捉えなければ攻撃がままならない武装は否応なくドッグファイトを必要とし、宇宙空間にそぐわないフライトスーツは戦闘機乗りにとっての正装のようなものとして設定された・・・と深読みすることができるだろう。
 また、これをSFを題材に実現したゲームも希少だと言える。
 重力の影響がないため空中で静止して位置を保持することが容易く、そのまま上下左右360度好きな方向を向くことができ、バリアというSF兵器の存在によって多少の被弾は挽回することができる、というのは本作ならではの特徴だ。

 ・・・が。
 冷静に考えるとバリアがあるのは相手も同じ、実在の戦闘機に倣ったのか本作の自機に搭載できるミサイルは基本6〜8発と数が厳しく、どうしても主力となるのは自機の正面にしか撃てず命中率に難のある機銃。
 堅いうえにフラフラ動き回る敵を追って画面を揺らし続け、バリアの回復に間に合えば削り倒せるというゲームの流れは爽快感に欠けており、人によっては画面酔いも感じるかもしれない。
 またさらに釈然としないことに、敵側の戦闘機はふつーに後方に機銃を撃って反撃してくるので、ドッグファイトによって敵の後方を取ることが十分に有利とは言えない側面があるのだ。
 こうした設計はSFでもドッグファイトでもない、理不尽な不都合を押し付けられているようで不満を感じるところだ。

 ついでに言うと空戦(宙戦?)以外のステージが無く、作中の地上作戦ステージでは母艦と作戦地点への往復路をプレイするだけで肝心の地上作戦はムービーで済ませてしまう(QTEもない)という肩透かしを食らうこととなる。
 というわけでシューティングパートの舞台となる宇宙空間だが全体的に目標物となる物が少ない寂しい設計なので、視覚的なシチュエーションの乏しさが飽きを生みやすいという難点もあるかもしれない。


・キャラクター

 ・ブレア大佐 (演:マーク・ハミル、吹き替え:山寺宏一)
 物語の主人公。凄腕のパイロットでキルラーとの戦歴も長く、敵軍の司令官である王子スラカスをして「タイガー・ハート」と恐れられる人物。
 しかし不運にも所属する空母を轟沈させられ、恋人も行方不明となり、とうに型落ちしたビクトリー号へ転属させられたあげくゲリラ的な作戦に駆り出されることとなる。
 人当たりに関してはプレイヤーの選択によって毎回変わるため、性格はやや掴みづらい。

 ・トルウィン提督 (演:マルコム・マクダウェル、吹き替え:堀勝之祐)
 ブレア大佐をビクトリー号へ転属させた張本人でかなりのくせ者。
 強力な攻撃能力を持つ巨大戦艦「ベヒモス」を戦争の切り札として建造し、のちにブレア大佐にその護衛任務を下すが・・・。

 ・アイセン艦長 (演:ジェイソン・バーナルド、吹き替え:小林修)
 ビクトリー号の指揮を執る艦長。
 ビクトリー号が戦力として数えられていない老朽艦であることを認めながらも、乗組員と共に艦を動かすことに誇りを抱いており様々な作戦を立案・実行している。

 ・ロリンズ通信士 (演:コートニー・ゲインズ、吹き替え:子安武人)
 ビクトリー号の通信全般に携わる通信士。
 それゆえに前線の兵士たちよりも戦局に詳しいと自負しており、先行きについては悲観的に捉えている。
 が、根はお調子者であり、ブレアの着艦許可ついでに任務の内容をねぎらうというマスコット的な活躍も。

 ・パラディン大将 (演:ジョン・リス=デイヴィス、吹き替え:石田太郎)
 コンコーディア号でブレアと共に戦った戦友。
 ブレアに対していくつかの秘密を抱えており、戦況次第ではそれを明かすためビクトリー号に現れる。

 ・エンジェル大佐 (演:ヨランダ・ジロット、吹き替え:高山みなみ)
 優秀なパイロットであり、ブレアの恋人。とある秘密作戦に従事していたが失敗しキルラー帝国に拘束されている。
 その後はしばらく出番がない。

 ・レイチェル技術チーフ (演:ジンジャー・リン、吹き替え:高島雅羅)
 ブレアの機体を担当し、任務に合った機種や装備の選択も行うややおせっかい好きな整備士。
 一方で人見知りするところがあるらしく、機械と違って人間は簡単には信用できないという持論も持っているようだ。

 ・スラカス王子 (声:不明)
 キルラー帝国軍の司令官の一人で、ブレアを目の敵としている人物。
 好戦的で傲慢、地球人類を基本的に見下しているが、秘密作戦に失敗したエンジェルをブレアを誘導する切り札とみなすしたたかさも持ち合わせている。

 ・ホッブス大佐 (声:渡部猛)
 ウィングマン候補の一人。キルラー人ながら地球へと亡命し、かつてはブレアと共に数々の死線を潜り抜けてきた名パイロット。
 ただしキルラー人であること、またキルラー人でありながらキルラー人と戦っていること、に不信感を抱く者も少なくないようだ。

 ・マニアック少佐 (演:トーマス・F・ウィルソン、吹き替え:天田益男)
 ウィングマン候補の一人。やたらと自意識が強く根拠のないビッグマウスを叩き、会話によってはブレアに「(こいつはバカだな)」と内心一蹴される。
 実際そんな感じである。

 ・コブラ中尉 (演:B・J・ジェファーソン、吹き替え:高乃麗)
 ウィングマン候補の一人。キルラー人に拉致された過去からキルラー人を激しく憎悪し、それを原動力に目覚ましい戦果を挙げている。
 それゆえにホッブスのことも激しく拒絶しており、ホッブスと親しいブレアに対しても嫌悪感を覚えているようだ。

 ・ヴァガボンド中尉 (演:フランソワ・チャウ、吹き替え:田中正彦)
 ウィングマン候補の一人。かつて命令に逆らえず不本意な殺戮に加担してしまったことを悔いており、現在では不真面目で反抗的な態度が目立つ人物。
 賭けトランプを唯一の趣味としていつも相手を探しているが、狭い艦内で腕前が知れ渡っているのか同じテーブルにつく者はほとんどいないようだ。

 ・フラッシュ少佐 (演:ジョシュ・ルーカス、吹き替え:森川智之)
 ウィングマン候補の一人。若手ながらシミュレーターで高い成績を出している新型機のテストパイロット。
 腕前に天狗になっているが実戦経験は全くなく、スクランブルにも出動しないので艦内の不和の原因となる。

 ・バクエロ中尉 (演:ジュリアン・レイエス、吹き替え:藤原啓治)
 ウィングマン候補の一人。パイロットとしての腕前は悪くないが生活のための手段と割り切っており、戦争が終結したら自分の酒場を営みながら大好きなギターを弾くのが夢。
 死亡フラグビンビンな気がするが、作中終盤の展開では・・・。

 ・フリント中尉 (演:ジェニファー・マクドナルド、吹き替え:水谷優子)
 ウィングマン候補の一人。歴史的な名パイロットを父に持ち、空を飛ぶことの素晴らしさに触れて自身もパイロットとなった。
 実力は申し分ないが彼女もまたキルラーの攻撃で家族を失った過去を持ち、感情の昂ぶりによって暴走することも・・・。

 ・・・と、俳優陣もさることながら、吹き替えを担当した面々もそうそうたる顔ぶれである。
 ブレアの恋人で敵軍に囚われた女パイロットのエンジェル大佐などは、高山みなみ女史が声を担当していることもあり極めて重要な活躍が期待されるだろう。
 ・・・実際はどうか、というと、作中で人物の活躍が限定的なことが何とももったいないものだ。


・まとめ

 ドッグファイトを重視したSFフライトシミュレータ「Wing Commander」シリーズの第三作である本作。
 パッケージのあふれるうさんくささからバカゲーとしてのヒットを期待するところだが、実際はそんな印象とはまるで異なる真面目な内容である。
 なので宇宙戦闘機や3Dシューティングゲームに関心のある人にこそ勧めたいところだが、操作の複雑さを始め難点ともとれる特徴によって個性が作られているゲームなので内容を許容できるかどうか注意して見極めてほしいところ。
 豪華キャストで送るムービー部分についても繰り返す通り会話中心であまり見ごたえが無いので、どの部分に期待しても左ゴロが出るくらいのやや煮え切らない一本である。





・関連作品

・「Wing Commander」シリーズ米ORIGIN社の看板シリーズとも言えるSFフライトシミュレータ。
先進的なグラフィック、白熱するドッグファイト、自由度の高いシナリオ、の3点が魅力となりテレビドラマ版や映画版が作成されるほどの人気を得たという。
なお、続編や映画版においてもマーク・ハミル氏がブレア大佐役を務めているらしい。
クォヴァディスグラムス製の艦隊戦シミュレーションゲーム。
スペースオペラという世界観や任務の成否によって分岐するストーリーに共通点がある。
宇宙軌道ヴァンアークプレイステーションの3Dシューティングゲーム。
スペースオペラという世界観やシューティングゲームにアドベンチャーパートを取り入れた設計に共通点がある。


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