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ページ公開:2018/06/19


Nightmare Creaturesナイトメア・クリーチャーズ


プラットフォームプレイステーション
開発Kalisto Entertainment
発売Activision(フランス)
ソニー・コンピュータエンターテイメント(日本)
発売年月日1997年 11月(フランス)
1998年 2月(日本)
ジャンルアクションアドベンチャー
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
格ゲー的 無機的 おぞましい 陰鬱 繰り返し性あり 続編のローカライズは無し





・ゲーム概要

 プレイステーション初期にフランスで開発・発売された3Dアクションアドベンチャーゲーム。
 おぞましい怪物がはびこる近世イギリスを舞台にキャラクターを操作し、怪物との戦闘や街の探索を行いながら事件の場面場面を追ってゆくという内容。
 ゲーム中では主人公2人と事件の元凶1人を除いて生きた人間が全く登場せず、敵となる怪物たちは人間を始めとする生物が変貌したものであるという陰鬱な設定が存在する。
 軽快なアクションに爽快感を持つが世界観はまごうことなきホラー&ダーク、スプラッター表現も遠慮がない異色的な内容を詳しく見て行ってみよう。


・ゲームの流れ

 本作はステージクリア式の進行を採っており、舞台となる街の区画を探索して目的地へ到達することでクリア、次の舞台へと移ってゆくという流れを持つ。
 キャラクターは背後から見下ろした三人称視点で操作し、方向キーの左右を旋回に使用するラジコン操作タイプながら、サイドステップやジャンプの概念もある軽快な操作系が印象的だ。
 この三人称視点はキャラクターの主観視点に近く臨場感があるが、一方で少々追随が安定しない粗さがあり戦闘時のカメラワークは特に激しくなりがちだ。
 とはいえ、視点の変化によって操作に影響の少ないラジコン操作であるあたり、この際の動きは戦闘のパニック感やキャラクターのアクションを演出する効果も見込まれているのかもしれない。

 さて、この操作系が適うように本作の肝となるゲームデザインは2つ。
 一つは臨場感と3Dマップを生かした「マップの探索」で、これによってアイテムを収集しゲームの進行を助けてゆくことができる。
 本作はライフ+残機制で回復アイテムが持ち運び可能、さらには遠距離攻撃を行う「銃」や通常攻撃が即死扱いになる「カッター」、敵を同士討ちさせる「ドクロ」などユニークな戦闘補助アイテムが多種登場するので収集の意義は大きい。
 アイテムは本道からそれた裏路地や破壊可能なオブジェクトの中、ダメージゾーンそばの細い足場の奥など一筋縄ではいかないところにも隠されているので探索派は腕の見せ所だ。
 ステージクリア時にはアイテムの収集率が評価されるシステムもあるので、ちょっとしたやり込み要素として完全収集に取り組んでみるのも良いだろう。

   もう一つは操作系を生かした「モンスターとの戦闘」で、これを特に強調するのがキャラクターに存在する「コンボ」の概念。
 主人公にはそれぞれ「武器攻撃」と「キック攻撃」が用意されているほか、これを一定の順番で入力することで技が派生し強力な連続攻撃を繰り出すことができるのだ。
 例えば棍術使いの神父イグネィシャスは転倒効果付き連続攻撃「四連撃(×)」や高リーチ攻撃「聖なる一撃()」など、レイピア使いの女傑ナディアは広範囲に切断攻撃を放つ「フェアリードライブ(×↑++×)」や飛び込み攻撃から派生する「ローリングコンボ(の、変形)(↑+××)」など、といった具合だ。
 (ナディアの技は一部確認できないものもある)
 相手からの攻撃をさばく「バックステップ」やロックオン機能付きの「ガード」もワンボタンで繰り出せるものとして用意されており、攻撃の処理に成功して痛快な反撃を繰り出すという、オーソドックスながら保証されたアクションの面白さがあるわけである。

 どちらもあまり目新しさを感じるシステムではないのだが、これを同時に取り入れ、しかもステージ攻略型のホラーゲームという仕上げ方をしたものは案外珍しい。
 アクションに自信があればずんずん進めてよいし、そうでなかったり雰囲気をどっぷり楽しみたかったりするなら探索をがんばるとよい、という合理的な設計も嬉しいところだ。
 ただし本作には「アドレナリンバー」というシステムもあり、一定の頻度で敵との戦闘を行っていないとゲージが尽きて徐々にダメージを受けるという設定もある。
 このシステムに関しては探索の側面を邪魔しているので、蛇足だったと思えてならないところだ。


・ストーリー

 歴史は偶然に満ちている。そして、しばしば繰り返されるのだ。
 ロンドンでひそかにささやかれる噂。1666年のロンドン大火災と1834年の火災は、奇妙な因縁で結びついている……。


 時は1660年の霧深いロンドンへ溯る。
 ピープス兄弟(Pepys Brothers)がロンドンへたどり着き、サミュエルは作家、ダニエルは医学の道へと進む。貧しかった兄弟も次第に運に恵まれ始めた数年後、二人は秘密組織「ヘカテ協会(the Brotherhood of Hecate)」に参加する。
 この組織は、実証主義と自然現象の研究の名のもとに、より強靭な肉体を持つ完璧な種族を生み出すことを目的としていた。彼らは大量の死体で実験を行い、ついに人間を”超人”に変える薬の調合法を発見する。しかし、この実験が誤った方向へ進み、”超人”たちが突然、非人間的なモンスターへ変貌してしまう。
 そして運命の1666年、協会はロンドン市内にモンスターを放ち、完全に権力を掌握しようと計画する。

 混沌がロンドン中へ解き放たれるとき、サミュエルはこの惨事を未然に防がなければならないと決断した。サミュエルは、狂ったヘカテ協会のメンバーたちを待ち伏せし、セント・キャサリンズ・ドックの地下墓地に閉じ込めて火をつけた。
 サミュエルが放った炎は、協会メンバーや記録ノートを燃やすにとどまらず、ロンドン中を火の海にしてしまった。

 1834年、ヴィクトリア王朝時代のロンドン。
 英国国教会の神父であり神秘学のスペシャリスト、イグネィシャス・ブラックワード(Ignatius Blackward)は世界を旅し、悪霊や超常現象を調査している中、ロンドン・チェルシー教区の依頼により帰国。行方不明になった聖職者や謎のモンスターの目撃談を聞き、調査を開始する。
 チェルシー教区の事件に1666年にロンドン大火災で焼け落ちたセント・キャサリンズ・ドックの発掘現場が関係しているとの情報を耳にしたイグネィシャスは、どこからか届けられた『サミュエルの日記』と題された古書の判読を始める。判読を進めるうち、謎の集団「ヘカテ協会」に関する記述を発見。事の重大さに気付いたイグネィシャスは、アメリカ・ニューオリンズに住む恩師、ジャン教授(Dr. Jean F.)へこの日記を送り、詳しい分析を求めた。

 高名な歴史家で人文学者でもあるジャン教授は、研究の一環としてヘカテ協会の調査を独自に進めていた。まるで運命に導かれたかのように送られてきた『サミュエルの日記』を読み、アシスタントをつとめる娘ナディア・フォートスミス(Nadia Fortsmith)と共にロンドンへ旅立つ。
 ロンドンで調査を進めていくうちに、日記の中から重大な事実を発見したジャンは、ホテルの自分の部屋へイグネィシャスを呼び出す。しかし、イグネィシャスが到着したときには、ジャンは何者かに襲われ瀕死の重体となっていた。
 「アダム・クロウリーがヘカテを復活さ……」
 最後にこう言い残し、ジャンは息を引き取ってしまう。そして、ジャンの部屋から『サミュエルの日記』が消えていた……。

 男は正義のために、女は復讐のために立ち上がる。
 人類の存続を賭けた戦いが始まった。


 (説明書より抜粋)


・クリーチャー

 かくして、本作に登場するクリーチャーはマッドサイエンティスト「アダム・クロウリー」の手によって人間やその他の生物が変貌したものという陰鬱な設計があるわけだ。
 しかし本作に登場するクリーチャーは腐敗した皮膚や頬のこけた鋭いあごなどの特徴を持つ醜悪なものばかりで、こちらの攻撃によって血しぶきを上げ手足がもげるなどスプラッター表現に遠慮がない。
 粗いグラフィックスながら、作中の雰囲気はいかんなく表現されており直視がためらわれる内容だろう。

 そんな本作のクリーチャーについて、非公式のファンサイトから何体かの大まかなあらましを抜粋させてもらおう。
 情報のソースが不明瞭で、さらに翻訳も例によってつたない物だが雰囲気は伝わるはずだ。

 ・ゾンビ(Zombie)
 墓場から死体が蘇り、凶暴性をもって生きた人間を襲う怪物となったもの。
 と、錯覚させるようにクロウリーが醜く改造した人間のなれの果てである。
 この存在に人々はパニックに陥り、街への襲撃を成功させる布石として成功したという。

 ・ワーウルフ(Werewolve)
 古来よりウイルスによってヒトに動物の特徴が加えられ怪物と化す現象が知られていたもの。
 クロウリーはこのウイルスを隔離し、また死体を操る魔術を見出したことによって後のナイトメア・クリーチャーズの作成に大きな前進を得たという。
 このワーウルフはウイルスの感染によってロンドンの住人が変異したものだが、ウイルスの副作用によって1週間程度で内臓が破壊され死に至るらしい。

 ・グレイデーモン(Grey Demon)
 詳細不明の「悪魔」で、クロウリーの実験体の中でも失敗作に数えられるもの。
 火炎を吐く攻撃能力を与えていたものの、公園に放たれた個体たちは飢えと低温でことごとく死滅したという。

 ・ピープスの怪物(Pepys Monster)
 複数の生物を結合させ3つの頭部と3本の腕を与えたもの。
 クロウリーはこの生物の醜さと恐ろしさを自らの傑作と評し、街への襲撃に複数を投入した。要は、それだけの人間の肉体を弄んだということである。
 しかし左右非対称でバランスを取ることが難しいこの怪物は戦闘能力自体は低い部類で、サミュエル・ピープスの墓の近くで他の怪物に殺された死体を発見されたことから主人公たちにこう名付けられた。
 (実際はバックステップを多用し厄介な部類なのだが。)

 ・ドッカー(Docker)
 主に港湾(ドック)の労働者が変異した巨大な怪物。異常に発達した腕で体を支えながら移動する様はゴリラを思わせるが、作品世界においてゴリラは未発見の生物である。
 奇妙なことにその正体はカエルの特徴を組み込んだウイルスによって生み出されたもので、クロウリー自身は「オーガ(Ogre)」と名付けていたようだが、ともあれ外見通りの怪力によって人々を脅かした存在である。

 ・インセクト(Insect)
 手足が発達し人間状の姿を得たゴキブリ。その容姿を失敗だと扱ったクロウリーはこの怪物が潮風の影響で死滅して以降運用することは無かったという。
 極めて機敏で高い殺傷能力を持ち、単純な殺傷数で言えばドッカー以上の被害を与えたという。

 ・シーワースネーク(Sewer Snake)
 5つの頭と火炎放射能力を与えられた怪物で、クロウリーのお気に入りのペットであったという。
 このゲームにおける最初のボスモンスターであり、ギミックを活用した攻略に頭をひねることとなるだろう。


 ・・・などなど。ゲーム内でこれらの設定を目にする機会が無いのは幸いと言うべきか、はたまたもったいないと言うべきか。
 「ナイトメア・クリーチャーズ(悪夢の生物たち)」という題は決して伊達ではないというわけである。


・まとめ

 3Dゲームとしてシンプルなデザインを持ち、粗さも少なくないが完成度は高めにまとまっている本作。
 時間と発想で攻略する探索要素と、反応と技能で攻略する戦闘要素を併せ持ち、「怪物のはびこる街」という舞台によって恐怖や緊張で全体をまとめ上げている。
 ゲーム内ではあまり詳細に語られないが世界観のインパクトも大きく、ある程度ホラー耐性のある人を選ぶがプレイしがいのある内容だ。
 個別の要素は無難なきらいもあり、現在ではコレクタブルやコンボ評価といったシステムがない点で物足りなさもあるのだが、ゲームの全体像は現在でもあまり数を見ない内容なのでじっくりと遊べるホラーアクションゲームに興味があれば押さえておきたい一本である。





・関連作品

・Nightmare Creatures II国内未発売の続編。アドレナリンバーを廃したりフェイタリティを導入したりしたようだが評価は芳しくないらしい。
・Nightmare Creatures倒産した開発元に代わりAlbino Moose Gamesが2017年より制作しているリメイク版が存在するとのこと。
・爆炎覚醒ネバーランド戦記ZEROアイディアファクトリーのネバーランドシリーズの流れをくむ一本。
タイトルやシリーズ作品の傾向からは想像しづらいが、陰鬱な世界観を舞台にしたアクションアドベンチャーとして本作と雰囲気が良く似た一本。


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