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ページ公開:2018/04/17


Syphonサイフォン Filterフィルター


プラットフォームサイフォン・フィルター
開発SCEベンドスタジオ
発売989スタジオ(米国)
スパイク(日本)
発売年月日1999年 2月(米国)
1999年 8月(日本)
ジャンル3Dアクション
プレイ人数1人
セーブデータ1ブロック


システム シナリオ グラフィック サウンド ゲームバランス その他
臨場感高し 続編に続く 粗い 吹き替えが名演 ヘッドショット命 続編のローカライズは無し





・ゲーム概要

 1999年にアメリカで開発・発売された3Dアクションゲーム。
 銃器を用いる主人公兵士が敵兵士の勢力下に潜入し作戦を遂行してゆく内容で、3D空間の地形や遮蔽物を駆使して身を隠しながら進む「ステルス」性に重きを置いたデザインが施されている。
 いわば前年に発売された「メタルギアソリッド」と似たコンセプトを持っており、スパイクよりローカライズされ日本国内で販売された際にもその類似性からか、あるいは難易度が高い「洋ゲー」としてかさほど注目されることはなかった。

 とはいえ本作は「メタルギアソリッド」とはゲーム中の視点が大きく異なり、特にすべての武器で照準を合わせるエイム操作が可能、敵兵士が防弾ジャケットで胴部を保護している、という点で「ヘッドショット」の重要度が高いという特徴がある。
 慎重に物陰を移動して敵を観察し、足を止めたところにじっくりと狙いを定めて・・・スドン。
 そんな狙撃の快感にどっぷりと浸れる一本である。


・戦闘

 本作は主人公の背後に視点が置かれた三人称視点をベースに、要所要所で銃のエイム操作を用いて行く設計。
 三人称視点時は主人公の移動を主に行うほか「ロックオン」が使用でき、走り撃ちや振り向き撃ちによる乱戦への対処が可能。
 エイム操作時は確認した敵に正確に狙いを合わせることができるほか、周辺を見回すことで地形や状況をよく把握することができる。
 いずれにせよ主人公を起点とした視界によって状況を判断することになり、この点は敵から隠れる難易度が高いが臨場感も高められる設計だと言えるだろうか。
 なお一部の狙撃銃ではスコープを覗いた主観視点での操作となり、ズーム操作にも対応しているためこれらではこのゲームの肝となる「ヘッドショット」をより決めやすくなるだろう。

 このゲームの「ヘッドショット」が有効なのは、一つに与えるダメージが大きく上昇して敵を即死させることができ、自分が見つかって反撃される可能性を大きく減らせることが挙げられる。
 主人公の基本装備が「SILENCED 9MM」、音の小さなサイレンサー付き拳銃であることもヘッドショットがステルスにつながるアクションであることを後押ししていると言える。

 もう一つに、このゲームのキャラクターの耐久力が「ボディアーマー」によって支えられていることが挙げられる。
 本作の主人公は生存に関して3つのゲージを持っている。
 1つ目は「HEALTH」。主人公の生身での生命力であるが、超人的な高さは無く集中射撃をもらえばあっさりと力尽きるうえアイテムや時間経過による回復は存在しない。
 2つ目は「ARMOR」。被弾を一定量防ぐことができ、アイテムとして補充することで回復も可能。本作ではこれが主人公の生命線というわけだ。
 3つ目は「DANGER」。主人公がどれだけ敵の攻撃にさらされているかの目安で、これが一杯になるまではアクション映画のスターのごとく被弾しない。

 そして、アイテムとしての「ボディアーマー」は敵兵士が装着しているものをそのまま回収して再利用することができる。
 そのまま・・・ということで兵士の胴体を狙ってボディアーマーごと撃破してしまうとこちらの攻撃がある程度防がれるうえアーマーの回収もままならず、逆に頭部を狙った「ヘッドショット」で敵を倒せば相手を即死させつつ無傷のボディアーマーを回収することができるというわけだ。

 こちらに敵対している相手の頭部を正確に狙うというのはなかなか困難な話であるが、こちらが発見されていない場合は話が別。
 警備中の相手は見晴らしの良いところをゆっくりと歩いていたり立ち止まったりしており、安全かつ容易に、時間をかけて狙いを合わせることができるのである。
 つまり、ステルスもまたヘッドショットにつながるアクションであるというわけだ。

 本作は「ミッション」という形でゲームが管理されており撃ち合いが避けられない場面も多々用意されているが、本作はこの基本設計を構築したことで「ステルスアクション」の面白さの何たるかを提言したと言っても過言ではないだろう。

 ちなみに、DANGERゲージは回避アクションのローリングや、物陰に隠れて敵の射線から逃れることで回復するので、万が一撃ち合いを避けられなくなってもこうした回避を意識することで生存率を高められるだろう。
 物陰に隠れて安全性を回復したら、そこから身を乗り出してヘッドショット狙いで逆襲だ!


・ミッション

 1994年12月某日、全米が記録的な大寒波に襲われた夜。
 ロスにある製薬会社、ファルコン社の第二研究室では、若い研究者がサンプルの成分表に恐れおののき、コーヒーカップを落として割った。
 彼は、当時アメリカに多発していた奇病を治すワクチンの合成を試みていたが、生成されたのは
 「致死率100%、感染後の潜伏期間が3時間」
 という恐るべき殺人ウイルス。
 だが翌朝、同僚が彼のもとを訪ねると研究室はもぬけの空。
 室内にはコーヒー・サイフォンの蒸気音だけが不気味に漂っていた……。

 時は経ち1999年。
 今やワシントンD.C.は軍事テロ集団の制圧下にあった。
 恐怖におののく市民たちが一様に恐れていたのは、ファルコン社の殺人ウイルスを加工して作られた悪魔的殺人兵器「サイフォン・フィルター」。
 バラ撒かれれば、人間が確実に数百万単位で、死ぬ。
 そんな中、事態収拾に悩む合衆国政府は、ついにパンドラの箱を開ける。
 そう。天使の名を持つ悪魔の兵士、ガブリエル・ローガン中将を戦闘に投入すると・・・。

 (説明書(当然日本語版)より抜粋)

 そして、主人公ガブリエル・ローガン中将はワシントンD.C.を解放し、テロリストの本拠地を探し出してサイフォン・フィルターを奪還・もしくは破棄するという任務に当たってゆくこととなる。
 これはアメリカの市街地や地下鉄、旧ソ連基地といった様々な建造物を舞台とする「ミッション」という単位に区切られており、爆弾の処理や目標地点への到達、目標人物の殺害といった明確な目標をこなすことでゲームが進行してゆくこととなる。
 いわばステージ攻略型の設計であり、多彩なシチュエーションが用意されている反面やや自由度に劣る感があるのでそこは留意されたい。
 (実際、とあるステージで後から見つかるのを嫌がって見張りを一人一人殺しながら進行していたら目標がおびえ切ってクリア不能になってしまった覚えがある

 また、その難易度に配慮してか日本語版の説明書では全20ミッション中11ミッションの内容が解説されているというネタバレがあるのでここも警戒されたい。


・キャラクター

 ・ガブリエル・ローガン (吹き替え:千葉 繁)
 アメリカ情報局のトップ・エージェント。
 アメリカ陸軍の特別任務に従属して湾岸戦争や大統領の護衛などを経験し現在の組織に帰属、35歳の若さで中将の位が充てられているらしい。
 任務においては常に単独で行動し、基本的に作戦方針を尊重しながらも状況に合わせた臨機応変な行動を取ることができる、言語・知能・体力あらゆる面に秀でた武器と爆破と生化学のエキスパート。
 ・・・作戦中もこれといって反抗的であったり非人道的であったりという扱いづらさはなく、実践投入がタブー視されている理由がイマイチ思いつかない優秀な兵士である。
 終始シリアスな千葉繁の渋い名演は必見。

 ・リアン・シン (吹き替え:加藤 優子)
 ガブリエルのオペレーター兼相棒を務める通信技術専門官。
 ガブリエルからの信頼は厚く、作中では人質としてテロリストの標的となってしまう。

 ・トーマス・マーキンソン (吹き替え:堀 勝之祐)
 ガブリエルらが所属する組織の長官。
 拉致されたリアンに代わりガブリエルのオペレーターを務めるなど現場目線でガブリエルの任務を指示する。

 ・エドワード・ベントン (吹き替え:糸博)
 ガブリエルらが所属する組織の副長官。
 実はサイフォン・フィルターの入手を目的として裏でテロリストと結託しており、リアン誘拐の手引きも行った裏切り者。

 ・エリック・ローマー (吹き替え:梁田 清之)
 国際テロリスト組織「ブラックバトン」の総帥。
 ファルコム社が偶然開発した殺人ウイルスを入手し「サイフォン・フィルター」に改良、ウイルス爆弾を用いたテロ活動で物語冒頭ではワシントンD.C.を制圧下に置いている。
 どう見ても生身なのにヘッドショット無効の石頭。

 ・マーラ・アラモフ (吹き替え:山口 由里子)
 ブラックバトンに所属する女暗殺者。
 ファルコム社のジョナサン・ファーガンとの密談など交渉能力に優れ、ある暗躍を行っているようだが・・・。

 ・ジョナサン・ファーガン (吹き替え:八木 光生)
 製薬会社ファルコン社の創設者。
 若い研究員が偶然「サイフォン・フィルター」の原型を発見したことで今回の事件に巻き込まれたと思われていたが・・・。

 ・アントン・ギルドー (吹き替え:酒井 哲也)
 ブラックバトンに所属するテロリスト。パイロマニア。
 ワシントンD.C.のメモリアルホールに到達したガブリエルを迎え撃ち対決を繰り広げる大ボス。
 火炎放射器の炎はボディアーマーで防げず、全身に着込んだ耐火服が銃弾を弾く序盤の難敵である。


 ・・・水面下では登場人物同士の思惑が絡み合った複雑な頭脳ゲームが展開されているようなのだがプレイヤーがそこに干渉することはできず、少々置いてけぼりな感がある。
 また、本作は「ヘッドショット」を重要視しキャラクターの顔面を注視することが多い設計であるにもかかわらずキューブリックのように簡素なグラフィックとなっているのでこの点もいくらか違和感を覚えるかもしれない。


・まとめ

 「ステルス」と「ヘッドショット」、この2つの要素ががっちりと噛み合ってステルスアクションの基礎的な面白さを実現した本作。
 ゲームの設計が3Dを基本とするようになった現代ではステルスアクション自体は特段目新しいものでは無く、むしろジャンルとして定着しつつあり本作の独自性は薄れてしまっている。
 また、ステージ攻略型でボス戦もあることからくる自由度の低さや、グラフィックの質の低さによる違和感は難点として映るかもしれない。
 
 しかし、ステージ攻略型であることには区切りが明確で様々に異なる場面を楽しめるという魅力がある。
 現代のゲームが逆に自由度やオープンワールドであることにこだわって肥大化し、初心者にとってとっつきづらい物となりかねないことを考えると、旧来のアクションゲームに連なる手軽さを残している本作は飽きることなく遊びつくせる一本と見ることができるはずだ。
 新しいジャンルの礎の一つとなった本作を旧来のジャンルの特徴を残す点で勧めるのは無礼な話かもしれないが、ジャンルとして発展しすぎていないからこそ本作は混じりけのないステルスアクションを楽しめる入門書的な作品となりうるのではないだろうか。

 というわけで、ある程度アクションゲームに慣れていてステルスアクションを体験してみたいと思った人にはオススメの一本だ。
 また、ステルスアクションはえてしてパズル的な要素を含んでいるので謎解きアクションが好きで銃器に抵抗がないという人も興味を持っていいかもしれない。





・関連作品

・「メタルギア」シリーズコナミのアクションゲームシリーズ。
第一作「メタルギア」は敵に見つからないことでゲームを攻略してゆく「ステルス要素を完全に取り入れた最初のビデオゲーム」としてギネスに認定された作品。
後年プレイステーションでリメイクされた「メタルギアソリッド」が本作の前年に発売されたものだったため、本作はしばしば類似性を指摘される事となってしまった。
・「Syphon Filter」シリーズアメリカでは以降も続編が作成される高い人気を得たが、日本国内ではいずれもローカライズされていない。
「Steam」でも取り扱っていないようだ。
・「Splinter Cell」シリーズ米国UBIソフトよりリリースされているステルスアクションシリーズ。
潜入作戦を題材としたステルスアクションシリーズとして、上記2つと並べて語られることが多いようだ。
UNDER COVER AD2025 Keiドリームキャストで発売された「ディティクティブ・アクション・アドベンチャー」。
「ホールドアップ」というシステムを持ち、敵の無力化と物資の獲得の両面でステルスが有効であったという共通点がある。
ただまあ、完成度については・・・。


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